7.衝動

　風呂場の洗面所兼更衣室には、隣の部屋の洗濯機に直接脱いだ服を入れられるように、ちょっとした窓がある。
　あまり使わないので板を立てかけ塞いであるのだが、そこからなら更衣室を覗けるのだ。
　しかも、板をすこしずらしておくだけでいい。

　だが、家庭教師の先生の、若い男性の着替えを覗こうなど正気ではない。
　万が一みつかったら、恥もいいところだし祐二にも顔向けできない。
　しかし、実際に見てみたい欲求には逆らえなかった。

　祥子は言い訳をつぶやきながら板をずらした。
「今日もシャワーを浴びるとは限らないし、そうよ、ずらしったって見に来なければいいのよ、そんな度胸私にはないはずだし、、、第一見れる保証なんかないんだし、、、見れるとしても確認よ、祐二の言ったことの、確認。どれだけ物の大きさを測るちからがあるか、確かめるだけ、それだけなのよ、、、」

　金曜日が来て遅くまで遊び、当然のように汚れた２人はシャワーを浴びることになった。

　更衣室に入った時、亮介は小さな変化を見逃していなかった。
　ちいさな窓に立ててある板に隙間がある。
　おそらく祥子は見たい欲求に負けて、近いうちなんらかの行動を起こすだろうと予測はしていた。
　したがって、いろいろ注意していたのだ。祐二に先にはいっているように言うと、覗き窓の方向を確認し背を向けて祥子が来るのをまった。
　ほどなくして隣の部屋に人が入る気配がしたのを確認すると、亮介はゆっくりシャツから脱ぎ始め上半身裸になった、、、。

　祥子は、やっぱりいけないことだと責める自分と自問自答していた。
　しかし、最終的には相手をしてくれない夫を悪者にすることで、自分に許可を与えた。
　洗濯機の部屋にそっと入り、どきどきしながら窓の隙間から覗く。
　ちょうど小室がシャツを脱いだところだった。背中を向けていたので見つかる心配がないと思いすこし安心した。
　小室の鍛え上げた背中に祥子は驚嘆した。
　着やせするタイプなのか、無駄のない筋肉でおおわれた広い背中と細いウェストは想像外であった。
　ストレッチのような動きをしたときみえた、腹筋と胸板の厚さにも驚かされた。
　ここまで鍛えているとは思いもしなかった。

（あんな体に抱きしめられたら、、、）

　想像したとたん自分の体の中に熱いものを感じてしまう。
　小室はベルトをはずすとチャックを下げ、ウェストに手をかけるとパンツも一緒に一気に下ろした。
　予想外にいきなりお尻があらわれたことに、おどろいて声をあげそうになったが、なんとかこらえる。
　それにしても引き締まったお尻だった。テレビでよく見る水泳選手のひきしまったちいさなお尻だ。
　なめらかできれいな肌に若さを感じる。

　裸のまま上半身の軽いストレッチを始めた小室に、祥子はどきどきしながらも肝心な部分が見えないことに焦りをかんじた。
　そのまま風呂場のドアに向かっていく背中をみながら、（見れなくてもしょうがないか）と思い、あきらめた瞬間、「おっと」と小室が忘れ物をしたような声を出し、振り向いた。

「ひっ！」小さな声をあげてしまい、慌てて手で口をふさいだ祥子の視点は一点に釘付けになった。

　小室はなにかを探しているようで、脱いだ服のところへもどってきた。ズボンのポケットをひっくり返したりしている。声に気づいた様子はないが、ひきかえしてきたため祥子のほうを向いたままなのだ。
　当然全裸で立っている。
　視線の先には、祐二がいっていたような長大なものがぶら下がっていた。

　勃起していない状態ながら、テーブルの足よりすこし細いだけの竿の部分、長さもあるが、なにより目を引くのは先の部分の大きさだった、なにか他からとってつけたようなひとまわり大きい頭が竿の先にぶら下がっている。２人しか経験のない祥子だが、思い出してみてもまったく違う形のものがそこにはあった。

（なっなにあれ、夫とは全然違うじゃない、祐二の言っていたとおりだわ、、、すごい、、、なんであんな形に、、、普通であんなのだったら、、、勃起したらどうなるのかしら、、、）

　探し物をあきらめたかのように、小室が風呂に入っていく。

（あんなのが私の中に入ってきたら、、、）

　思っただけで、熱いものがたまらず溢れてきた。触ってみると下着の中心部がぬるぬるしたものでいっぱいになっている。

「着替えなきゃ、、、ご飯も、、、」ボーとした頭でよろよろ立ち上がると祥子は部屋を出て行った。

　そのころ亮介は風呂の中でニヤついていた、祥子の声はしっかり聞こえていたのだ。
　計画通りに見せていた、そしてこのあとの攻め方に思いをめぐらせていた、、、。