家庭内輪姦の果て 『性愛小説の世界』豪円寺琢磨 作
７． 　４人が泊まりがけで輪姦を楽しんだ日の１ヵ月ほど前、里穂は初めて信治と会った。１年ぶりに一時帰国した夫が、幼馴染みで親友の信治を自宅に招いたのだ。 　木崎信治は、３年前に２度目の離婚をし、子供はいなかった。プライベートではさまざまな問題を抱えていたが、仕事は非常によくでき、四十を前にして取締役に就いたほどだ。部下たちの信望も厚い。 　以前、結婚式のときに会ったはずだが、里穂の記憶に信治の姿はなかった。 　１週間前に電話で話したが、そのとき受けた心象はあまり良いものではなかった。 　この日、会ったときの第一印象も芳しいものではなかった。仕事はできる感じがするが、軽薄なイメージは拭えない。 　なにより清潔感に欠けているのが嫌だった。服がヨレヨレで髭も剃っていない。お腹が出ていて、体毛が濃い。 　何事にもスマートな夫とは全てが正反対だった。二人がなぜ親友どうしなのか、どうしても理解できなかった。 　しかし、バイオ関係の研究員をしている夫にとり、信治は親会社の重役にあたるため、無碍に扱うことができない。 　里穂は愛想笑いをして信治をもてなしたが、心の中では「早く帰ってくれないかなあ」とつぶやいていた。久々に帰って来た夫に甘えたくてしかたがなかったのだ。 　晩餐の準備ができたところで、里穂がリビングで寛ぐ二人に声を掛ける。 　３人は食卓に着き、里穂が腕によりをかけて作った和食を堪能する。 「こりゃあ、旨い。本当に旨いですよ、里穂さん。なあ、俊樹｛としき｝」 「ああ、そうだな。久々に食べたが、やはり日本食は美味しい」 「そう？　喜んでもらえて嬉しいわ」 「俊樹、オマエ、１年ぶりの帰国だっけ？　ずいぶん印象が変わったなぁ。街ですれ違っても気づかないかもしれないぞ」 「そうなんですよ、木崎さん。昨日会ったとき、あまりのやつれように、私もビックリしちゃたんです。いくらお仕事が忙しいからって、健康にも気をつけてくれなくちゃ」 「アメリカは短期間で成果が求められるから、とっても大変なんですよ、奥さん。でも、コイツの成績は抜群だから、そのうち凱旋帰国できますよ」 「そうだといいんですけど」 「もう少しの我慢ですよ。コイツの頑張りは本当に凄いんです。なにしろ、我が社の期待の星なんですから」 「そうなんですか？　この人、なにも言わないから」 「そうなんですよ。担当役員の私が保証します」 「ありがとうございます。これからも夫のことを宜しくお願いします」 　ここで、信治が夫妻に前祝いを提案する。 「じゃあ、私が買ってきたスパークリングで、あらためて乾杯といきましょう！」 　里穂が席を立ち、冷蔵庫で冷やしていた豪州産のロゼを運んでくる。俊樹が食器棚からシャンパングラスを出して並べる。 　信治が手慣れた手つきでワインを注ぎ、威勢のよい声で音頭をとる。 「じゃあ、グラスを手に持って。俊樹の成功と里穂さんの幸せを願って、乾杯！」 　３人がグラスを一気に空ける。 　里穂の記憶は、ここで途切れている。 　目覚めたとき、里穂は寝室のベッドで素っ裸になっていた。 　ベッドの足から伸びた革紐が四肢を拘束し、身動きをとることができない。 　里穂は状況を把握しようとした。しかし、なにも思い出せない。頭が重くて考えることができない。視界もぼんやりしている。 　そのとき、側で男の声がした。 「奥様、やっとお目覚めのようですね」
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『性愛小説の世界』
2015年6月17日掲載
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