家庭内輪姦の果て 『性愛小説の世界』豪円寺琢磨 作
６． 　リビングルームに朝日が差し込んできた。遠くから小鳥のさえずりが聞こえてくる。 「おうっ、もう朝か。おいっ、近藤。もう離れろ。里穂、朝飯の支度をしてくれ」 　入浴して室内着を身に纏った里穂が、ダイニングでかいがいしく朝食の用意をする。 　ダイニングテーブルに、トースト、ハムエッグ、野菜サラダ、コーヒーが並べられる。 「里穂、お前も座っていっしょに食べなさい」 　４人の男と１人の女が仲良くテーブルを囲む。信治の隣に里穂が座り、向かいに蓮、左右に優斗と琢海が腰掛ける。 　すっかり里穂に惹かれてしまった蓮が、興味津々な様子であれこれ尋ねる。 「里穂さん、誰にエッチされても気持ちよくなるんですか？」 　目を伏せ、うつむきかげんに答える。 「恥ずかしいんですけど、イエスです」 「それが琢海みたいなヤツでも、生理的に受け付けない男でも、ですか？」 　隣の男をちらっと見てから口を開く。 「それはもちろん嫌ですよ。私は普通の女ですから。でも、信治さんの望むことであるのなら、なんとか我慢することができます」 「それは愛ですか？　惚れてるってことですか？　失礼ですが、部長は見てのとおりの方ですが」 　口調が強くなる。 「外見は関係ないです！　心の問題ですから」 「なるほど、参考になります。なら、旦那さんのことはどう思ってるんですか？」 　しばしの沈黙後、かぼそい声が漏れる。 「…そ、それは…も、もちろん愛してます…」 「ということは、“夫が単身赴任中の火遊び”ってことですか？」 　何度も頭を振る。 「違います、違います。けっしてそんなわけでは…これには深い事情があるんです」 「そうなんですか？　そのあたりのことをぜひ知りたいなぁ〜」 　信治が会話を遮って助け船を出す。 「今井、もうそのへんでいいだろ。それよりオマエたち、もう出ないと遅刻するぞ」 　蓮がコーヒーをすすりながら上司に尋ねる。 「で、部長はどうするんですか？」 「俺は重役出勤でいいんだよ。午前中に立ち寄るところもあるしな」 　優斗が席を立って元気に答える。 「分かりました。それでは先に行かせていただきます」 　未練たらたらの琢海はまだ座っている。 「あのー、里穂さん、また来てもいいですか？」 　里穂が困惑して、隣で煙草を吹かしている信治を見る。 「俺の許可なく来たらダメだ。当たり前だろ。勝手に訪ねたら会社を首にするから。いいな？」 　琢海が慌てふためく。 「部長、冗談に決まってるじゃないですか。ひとりで来たりなんかしませんよ。そんなこと、するわけがないじゃないですか」 　優斗が琢海の袖を掴む。 「もう行かないと、ホントに遅刻するぞ」 　信治がリビングルームで朝の情報番組を観ている。その足下では、里穂が股間に顔を埋めている。 「里穂、今日は旦那の頼まれ事で出掛けなきゃいけないんだろう？」 　ヨダレまみれの貴婦人が、静かに顔を上げる。 「はい、そうです」 　醜男が優しく頬を撫でる。 「なら、先に出ていいぞ。合い鍵を持ってるし。適当な時間になったら勝手に出掛けるから」 　他人妻が微笑んで答える。 「そうですか？　じゃあ、お言葉に甘えて。そうさせていただきます」 　身支度を調えた里穂が外出すると、入れ替わりに男が家に入って来る。 　信治が嫌らしい目つきをして笑う。 「おお、今回も楽しめたか？」 　細身の長身男が、真顔で答える。 「まあまあだ」 「オマエはいつも『まあまあ』しか言わないなあ。まあいい。動画のデータはビデオカメラのハードディスクの中に入ってるから、勝手にコピーしてくれ」 「分かった。いつもすまない。これでも感謝してるんだ」 「２階の書斎で観るのか？」 「ああ、隠しカメラの映像も確認したいからな」 　信治が呆れたように言う。 「オマエはホント、マニアだよな。感心するよ。部屋だけじゃなく、風呂場や廊下にも置いてあんだろう？　俺には理解できないよ」 　神経質そうな男が、ぶっきらぼうに答える。 「いいじゃないか。僕の趣味なんだから」 　にやけた顔の親友が忠告する。 「でもなあ、趣味もここまで行くと、ほとんど犯罪だぞ。わかってるのか？」 「そんなこと分かってるさ」 　信治が肝心なことを確かめる。 「で、いつ里穂の前に姿を現すんだ？」 　気むずかしそうな男が、初めて笑顔を見せる。 「明後日の午後10時でどうだろう？」 　太った間男が、歓喜に堪えられず大声を出す。 「もちろん大丈夫だ！　楽しみにして待ってるよ」
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『性愛小説の世界』
2015年6月13日掲載
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