１．入会手続き

「今から紹介する結婚相談所は、かつて例のない画期的なシステムなのです。今日は男性、女性の方々に、別室で同時に、ご説明をさせていただきます。但し、どちらも全く同じ内容なので、皆様、ご安心ください」

　都内のオフィスビルのワンフロアーで説明をしているのは、この結婚相談所の所長、西園寺 龍之介だった。この男の年齢も出身も、詳細は誰も知らなかった。

「先ず、気になる費用をご説明しよう。入会金は50万、お試し特典希望の場合は、10万プラスです。それだけの価値があることは、お約束いたします。そして、ここからが肝心です。普通とは違う画期的なシステムをお聞きになりたい方は、誓約書を書いていただきます。ここで見聞きしたことは、一切他言しないと。万一、その誓約を破られた場合は、その方の生命を奪われても文句は無いと。その２点を誓約できる方のみ、残ってください」

　会場がザワザワとし、10名ぐらいしか残らなかった。
　西園寺は、その人間たちに、誓約書を渡し、署名、捺印、拇印をさせた。

「いいですか。結婚とは、長く幸せに続くことを前提に、愛し合う男女が一緒になる。 顔やスタイルでその相手が決まるでしょうか？答えは、ノーですね。
　それでは、一番大事なことは、何でしょう？・・・・・そう、性格的に合うこと。つまり、相性がいいということです。しかし、いくら相性テストをしても、こればかりは、やはり、時間がかかります。では、２番目に大切なことは・・・？
　そう、セックスです！セックスこそ、男女が長く続く大きな要素であり、こだわり続けるテーマであり、必要最低条件なのです！」

「質問があります〜」

「はい、何ですか？」

「おっしゃることはもっともですが、セックスの相性なんて、試しようがないですよ！それを、ここでは、どうやって見つけようと言うのですか？」

「そう、まさしく、それが、当社の画期的な丸秘システムなのです。ここからは、入会者だけが知りえる内容なので、手続きをお願いします」

　再び会場がざわついて、半数の５名しか残らなかった。
　５名は、手続きを済ませ、次の説明を待った。

「それでは、結婚に対して真剣なあなた方を、歓迎します。今から、別室で写真撮影を行ないます。細かく撮影しますので、宜しくお願いします。
　首から上は、正面、斜め、横、後ろ、上、斜め下・・・身体は、それぞれ部位を分けて、さらに、男性は、局部を肉棒、袋、尻などを、細かに撮影します。いいですね〜その間に、女性の入会希望者へ最後の説明を行ないます」

　５名の男性が別室に移った後、すぐに数名の女性が入ってきた。

「説明を受けられて、いかがでしたか？」

「まだ、よく分からないわ・・・写真を撮るのも、逆に念書をいただきたいわ〜」

「あぁ、それは、もちろんです。このシステム以外には使用はしませんし、退会された後は、焼却・消去します。先に、念書を差し上げますから、安心して、撮影に応じてください」

「写真を細かく撮るのは、はっきり言って何なのですか？」

「はい、部品のように細かに撮影し、コンピュータに登録します。でも、これは、当社のシステムのバックアップのようなものです。どうしても、見つからない方や迷われて決まらない方へのサービスなのです。お試し特典を希望された方は、90％以上、問題なく相手が見つかります。それでも、見つからない方への最後のシミュレーションに使用します」

　女性の方の不安を取り除く時間だったようだ。

「それでは、皆様、別室でご準備下さい〜」