| （１６） やはり拓海は射精していた。ペニスはもちろん、陰毛やブリーフの内側まで糊のような粘液にまみれている。 「先生。ぼ、僕……」 拓海は首を横に捻った。罰を与えられた小学生の顔である。そんな男友達の横顔とペニスを大木が交互に見据える。 「あーあ。もったいないことしちゃったなあ、杉田」 彼は、真穂の心境をそのまま口にした。 落胆すべきは拓海だというのに、彼女も小さな失意のなかにいた。男の精とは衣服の下で暴発させるものではない、女の身体に浴びせるものだ。情交の充足感を女に満喫させるためのものだ。 どうせなら肌にかけてほしかった。口のなかに注いでくれてもよかった。けれども、彼の失態を責める気にはなれない。 これも彼が持つ熱情の一部なのである。そう思うと、恥らう拓海の姿も妙に微笑ましく見えた。彼を惑溺させているという実感があった。 女を辱めることに固執する宮内の気持ちが、今ならよくわかる気がする。異性の秘密を覗き見るのが嬉しいのだ。痛快なのだ。また同時に、それとは別種の驚きも覚えている。 「すごいじゃない、拓海くん」 輝く目で少年のペニスを見据える。これほど大量の精を吐きだしたというのに、彼の勃起は少しも萎えていない。 何より驚くべきは、その長大さである。あの宮内にも匹敵するほどだった。女を魅了してやまないたくましさに、男だけが持つ独特の匂いに、真穂の喉が低く鳴る。 「……ごめんなさい」 視線を床に落としたまま拓海は口を開いた。目尻に涙を浮かべている。 「どうして謝るの？」 「だって、僕」 彼の言いたいことは真穂にもわかった。男としての暴走を他人に見られてしまったのが悔しいのだ、異性や親友の目に触れさせてしまったのがつらいのだ。 宮内の勃起をはじめて挿入されたさい、真穂は淫裂をしとどに濡らした。きっとこの少年も、あのときの自分と同じ心境に陥っているのに違いない。それに、罪があるのは真穂だって同じだった。 指一本も触れずに男を射精させてしまう彼女の裸身にこそ罪があるのだ。その肉体を誇示するように揺らしながら、真穂は、幼子に接する母親の顔で拓海を見あげた。 「別に恥じる必要はないわ、男の子なら仕方のないことなんだから」 「で、でも」 「わたしの裸で興奮しちゃったのね、我慢できなかったのね？」 「……うん」 真穂の目が甘くほころんだ。女にとって、それは名誉なことだった。と同時に、この少年をからかってみたいという悪戯心が生じてくる。 「はじめて触ったのね、女の人のオッパイ」 「うん」 「じゃあ、拓海くんは誰でもいいの？ 誰のオッパイでもかまわないの？」 「違うよ」 拓海は首を何度も横に振った。視線が乳房に刺さる。 「先生のオッパイが……先生の裸が綺麗すぎるから」 「綺麗なだけ？」 「……綺麗だし、とってもいやらしいから」 真穂は、上目づかいに拓海の顔を見た。飼い主に甘えたがっている仔猫の目である。 白い乳房をふたたび大木の手が揉みはじめる。真穂は短い声で一度だけ喘ぎ、クネリと腰を揺らした。拓海に見せつけるための嬌態だった。 「拓海くんはいやらしい女が好きなのね」 「そうじゃないけど、先生になら何をされても嬉しいよ」 「何をされても？」 真穂は、五本の指で勃起を握った。上下にそっと擦る。 「ウフフ、すごいベトベト」 「ああ、先生……ッ」 「こういうのも嬉しいの？」 「うん、うん」 「先生も嬉しいわ。拓海くんがわたしの裸で興奮してくれたのが嬉しいの。射精してくれたのが嬉しいの。でもね、汚れたままじゃ不衛生だわ」 それは彼女自身がやりたいことをするための言いわけだった。 「綺麗にしてあげなくちゃあね」 指に付着した精液を真穂は舌を伸ばして舐め取った。五本の細いペニスを弄んでいるかのような舌づかいだから、自然と少年たちの目も釘づけになる。 白濁に濡れた舌で下唇をペロリと舐めると、次に彼女は、指なんかよりも太い本物の勃起に唇をかぶせた。 「え、先生……ゥああ」 拓海の腰が震える。大木も固唾を呑んだ。 亀頭のくびれまでを口に含んだところで、真穂は、濡れた目で一度だけ拓海を見あげる。それから唇をすぼめて、さらに美顔を沈めた。宮内の勃起を大砲とたとえるなら、これは鋭利な日本刀だった。力強くしなっている。若い性欲がそのまま形になっている。その形状を彼女は舌を絡めて確かめた。 舐めているうちに精液の味が薄くなり、男根独特の塩辛さが口内にひろがってきた。その味も、宮内のものとは微妙に違った。声も違う。少年の泣き喘ぎの声が可愛らしくて、もっと苛めてみたくなって、真穂は、熱心に顔を前後に揺さぶった。 拓海の太腿にまわそうとした手に、何か硬いものが触れた。 「お姉さん、俺も頼むよォ」 いつの間にか大木はペニスを露呈していた。 いったん拓海の股間から顔を離して、すぐに真穂は愕然とした。学生ズボンとトランクスを膝までおろした彼の下半身に釘づけとなる。大きい。拓海はもちろん、あの宮内よりも明らかに長大な勃起である。 「す、すごいや」 拓海まで驚嘆の言葉を口にした。 驚いているのは真穂とて同じである。ふたりを完全に子供扱いしていただけに、衝撃も強かった。 そして、もしや自分の夫には肉体的な欠陥があるのではないのか、という疑念が心に浮かんだ。 「頼むよォ、口でしてくれよォ」 腰を突きだして大木がせがんでくる。少年特有の舌ったらずな声だった。けれども、股間に屹立しているものは凶器以外の何物でもない。 惹かれるように真穂は顔を寄せた。 黒い密林に覆われた幹の根元に指を添え、舌なめずりをしながら赤い口に含んだ。拓海に比べると青臭さの強い勃起だった。唇を膣のかわりにしてしばらくしごくと、次に彼女は、大木の尻に両手をまわした。 強く引き寄せ、自分からも顔を埋める。宮内にさんざん教えこまれたディープスロートである。 「うわァ、す、すっげェ！」 大木は、トイレの壁に片手をついて強い快感に耐えた。単なる口淫の味わいとはまるきり違う。淫裂の締めつけでもない。彼の知らない粘膜と圧迫が亀頭を包んでいる。 苦悶のしわを眉間に寄せながら、真穂は、さらに陰毛の奥深くへと朱唇を押しこんだ。 太い勃起を喉奥まで呑みこんで平然としていられるわけがない。苦しい。気を緩めたら嘔吐してしまいそうなほどだった。しかし、苦しみの裏側には期待がある。耐えることで興奮が高まり、そのあとに待っている性戯の愉悦も強いものになるのだ。また、苦辛には理性を麻痺させる効果がある。 いつの間にか痛覚と性感の区別がつかない女になっていた。そういう女に宮内が変えたのだ。重い呻きとともに真穂は唇を離すと、今度は拓海の尻に右手をまわし、彼の亀頭を喉奥に含んだ。左手の指は大木の勃起に巻きつけ、ゆるゆるとしごく。 数秒としないうちに拓海の口から切羽詰った声がこぼれた。 「ああッ、出る……また出ちゃうよおッ」 真穂は顔を引き剥がした。深い口淫の直後だから、すぐには唇を閉じることができなかった。涎の塊がドロッと溢れ、太い糸を引いて太腿の上に落ちる。 呼吸困難に陥った聖女の顔で拓海を見あげ、真穂は、白い指で男茎を握りなおした。拓海が鋭い呻きを発したのは、その直後だった。勃起が、指のなかでビクビクと跳ねる。 驚いて肩を揺らしたときには、もう射精がはじまっていた。 「はあンッ」 左右の手で二本のペニスを握った若妻の頬に、首筋に、白い樹液が次々と飛び散る。異様に長い噴出だった。ようやく収まったかと思うと、ひときわ鋭い飛沫がまた瞼の下にかかった。 真穂は、目を閉ざしたまま首を突き伸ばした。若い熱情の奔走は少しも終わる気配がない。が、それは拓海ではなく大木の噴射だった。真穂もようやくそのことに気づき、すぐさま今度は彼の亀頭に顔を寄せた。新たな精液が、Ｏ字型に開いた唇のなかに落ちる。 射精の終わりを気配で悟って、真穂はそっと薄目を開いた。 「すごいわ、こんなにたくさん……」 指で触れなくともそのことがわかった。熱い。劣情の雨を浴びた顔がとんでもなく熱いのだ。 まるで炎であぶられているような感覚だった。ただの炎ではない、中毒性を含んだ媚薬の炎である。ふたりの精液が皮膚の上で混じりあい、複雑かつ強烈な匂いを放っているのだ。酔ったような表情のまま、真穂はドロドロの美顔に指を押しつけた。 白い粘液を指先で絡め取り、口に含み入れる。繰りかえし何度も指で拭って舐める。それでもなお残滓があちこちに付着している。顎からも糸を引いている。彼女は途中で拭うのを諦め、舌を伸ばしてふたりの亀頭を交互に舐めた。 そして濡れた指を乳房に押しつけて拭こうとしたとき、不意に、彼女の視線が床の隅でとまった。 仕切りの壁の小さな隙間に黒い何かが見えたのだ。一見すると影と区別がつかないほどのものだった。レンズの目にも見えるし、虫のようでもある。 瞼にも精液が張りついているから、目を凝らすこともできない。小さな疑念が一瞬だけ浮かんだが、それも乳房を握ったとたんに頭から消え去った。 「先生、すごくいやらしい顔になってる」 両手で乳房を持ち支える若妻の頭上で拓海は言った。 「ＡＶよりエロいよ、先生」 「そう？ ……ええ、そうね。こんな顔じゃあ家に帰れないわね」 通行人の目を心配しているわけではない。今度はわたしを気持ちよくしてほしい、という意味から出た言葉だった。そのために彼女は左右の乳房を強く揉んだ。 「あァ、気持ちいい……」 自然と声がこぼれる。それが挑発の姿態であることさえふたりの少年は気づかない。あるいは、気づいていながら口にだす勇気がないのだろうか。 そう思ったから、真穂は拓海の手を取って立ちあがり、今度は彼を便器に座らせた。 「ねえ、拓海くん」 中腰になって少年の顔を見据える。全裸だから、どんな姿勢でも見せびらかすような姿になる。 「さっき言ったこと覚えてる？」 「え」 「わたしのことは誰にも言わないで、ってこと」 「うん、もちろんだよ」 少年の視線が顔から乳房へと滑り落ちる。無毛の股間にも当たる。どの部分も恥液でベトベトだった。 「誰にも言わないよ」 「信用してもいいのね」 「うん」 「本当に？」 「うん、絶対に言わない」 「そう……」 拓海の顔つきに新たな乱れが生じた。射精直後で敏感になった亀頭を女の指が包んだのだった。彼女はさらに、もう片方の手を彼の肩に乗せた。 「素直で優しい男の子は好きよ」 低い声で真穂はささやいた。心の底には、まだひと握りの迷いがある。本当にいいのだろうか。このまま熱情に流されてもいいのだろうか。 いいわけがない。夫以外の男の前で裸をさらし、勃起を口に含み、今度は挿入までしようとしている。無理強いの陵辱ではなく、自ら率先して情交に及ぼうとしている。しかも、相手は自分よりはるかに年下の子供である。 何もかもが道徳に反したことだった。愚かなことだった。理性はそう叫ぶ。だが、状況はもはや理性でどうこうできる次元の話ではない。 欲情した男女が裸で向きあっているのだ、やるべきことなどひとつしかない。真に愚かなのは、この状況で挿入せずに終わってしまうことである。 「いい子だから、もっと素敵なことをしてあげる」 「何をするの？」 「これをね、拓海くんのこれを……」 両腿をひろげて拓海の膝にまたがり、勃起に指を添えなおして淫裂へとあてがった。密接した男と女の性器を大木が横から覗きこんでくる。 「わたしのここに入れるの」 「え、でも」 「わたしみたいなおばさんが相手じゃ、いや？」 「先生はおばさんなんかじゃないよ」 声がひどく枯れているのは、真穂がしきりに腰を揺らしているからだ。濡れた淫裂が何度も亀頭を擦る。 「僕、先生とセックスしたいよ」 「入れてもいいのね？」 「うん……でも、ちょっと怖い」 「最初だけよ、すぐによくなるわ」 「う、うん」 「拓海くんに教えてあげるわ……女のすごさを教えてあげる」 その声は少年たちに対してのものではなく、宮内や夫に対して向けられたものだった。 白い尻がモゾリと動き、膣口が亀頭を挟んだ。 「セックスを教えてあげる」 拓海は身じろぎのひとつもしない。もはや若妻のされるがままだ。 |
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| 2008.8.30掲載 |
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