前編

　ブラジャーのホックに指をかけると恥ずかしさのあまり動けなくなってしまった。
　ソファーに腰掛けて、そんな恭子をニヤニヤと笑いながら見つめる武史。
「おねえさん。どしたのかな？　約束でしょ」
　言葉遣いは高校生のものだが有無を言わせぬ迫力がある。その武史の言葉に、恭子は我に帰り、おずおずとブラジャーを脱ぎはじめる。
　両手で胸を隠す。これから起こることを想像すると、絶望と恥ずかしさで、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。
「最後の一枚だね‥‥」
　武史の非情な言葉が響く。

　そう、あれは三日前。とある団体の事務員をしている恭子が忘れ物を思い出し事務所に戻ったときのことだった。理事長が重そうな紙袋を持って事務所から出てきた。恭子は、何かいけないものを見てしまったような気がして物陰に隠れた。
「どうして現金じゃなきゃいかんのだ。おまけにピン札もいかんとは」
　理事長のダミ声が聞こえる。
「はあ、昨今は小切手などだと証拠が残りますし、受け渡しも直接やりますとまずいと先生から言われまして‥‥」
　後ろから同じ紙袋を下げた会計部長が答えている。
「ふん、それにしてもゴミの集積場とは考えたじゃないか。このビルの集積場は表からは分からんからな。で、わしらはこの後、銀座へ行ってアリバイを作ればいいんじゃな」
「はい。もうママにも話を通してあります。約束は九時ですので急ぎませんと」
（政治献金だ）
　話の内容から恭子は直感した。あの紙袋には、いったい、いくら入っているのだろう。恭子は、しばらく隠れたまま、いろいろ考えていたが、あの紙袋を盗んでやろうと決めた。お金が欲しかったのではない。恭子を駆り立てたものは、いつもセクハラして恥じない理事長や会計部長を困らせてやりたいという気持ちだった。本当なら、こんな職場はすぐにでも辞めたいのだが、小さな建設業を営んでいる父親の得意先に紹介された就職先だったので我慢を重ねてきたのだ。
　二人がハイヤーに乗ったのを見届けると、恭子はゴミ置き場に置いてある勤め先の名前が入った手提げの紙袋を持って急いで外へ出た。紙袋は予想以上に重い。恭子は苦労して事務所の裏側まで運ぶとタクシーを拾った。
　用心して、アパートから離れたところでタクシーを降りたのが失敗だった。ヒールが歩道の段差に引っかかって転んだはずみで足首をひねってしまったのだ。とても荷物を持って歩ける状態ではない。
「大丈夫ですか？」
　通りがかって声をかけてきたのが武史だった。
「あれっ。恭子ねえさんじゃない。どしたの？」
　恭子は、休日を利用して、武史の母親がやっている菓子教室を手伝っている。武史も菓子作りが好きらしく、よく一緒に生徒さん用の生地の下ごしらえなどをしている仲なのだ。だから、武史は恭子のことを、ごく自然に「おねえさん」とか「恭子ねえさん」と呼ぶようになっていた。
「あっ、武史さん。つまずいて転んじゃったのよ‥‥」
「大丈夫？」
　武史が心配そうに覗き込む。
「うん‥‥ありがと。ちょっと痛いけど、大したことないみたい‥‥ほら」
　恭子は無理に立ち上がって、パンツスーツについた汚れを払った。
「そっか、よかった」
　そう言いながら、転んだ勢いで投げ出された紙袋を拾う武史。破けてしまった部分から札束が顔をのぞかせている。
「す、すっげえ金‥‥」
「あっ‥‥そ、それは‥‥なんでもないのよ‥‥武史さん、お願い、秘密にして‥‥」
「ふぅ〜ん‥‥」
　しばらく考えていた武史は、
「分かったよ。ねえさん。ヤバイ金なんだよね。僕が責任もって隠してやるから安心しな。あとで連絡するよ」
　そう言うと、紙袋を抱えて走り去った。
「ま、待って！」
　何が起きたか分からず、ただ、呆然とする恭子。しかし、どうすることもできず、足を引きずりながら自分の部屋へ向かった。
　大変なことをしてしまった。おまけに、盗んだ金を武史がどこかへ持って行ってしまった。これから先、どうなってしまうのだろう？　悶々として眠れぬまま、恭子は朝を迎えた。それでも、出勤することにした。今日、休んでしまっては疑われてしまうだろう。足首に湿布を貼り包帯を巻いて事務所に行くと、はたして、異様な雰囲気が部屋全体をつつんでいる。
「おはようございます」
　不安でかすれ気味の恭子の挨拶に、直属上司が顔を上げる。
「ああ、おはよう。あれ、どうしたの？　足」
　挨拶を返す上司の顔もいつもに比べて暗い。それでも、包帯を巻いた足首に目を向けて言った。恭子は、いつも職場のオヤジたちから無遠慮な視線を向けられるのだ。野暮ったい事務服の上からでも恭子のスタイルの良さは分かる。猫族を連想させるエキゾチックな顔立ちと１６５センチの身長、大きくはないが突き出すようなバストとヒップは日本人離れしている。
「昨日、階段で転んでくじいちゃったんです」
　そう答えたとき、理事長室から真っ青な顔をした理事長と会計部長が出てきた。見るからにヤクザと分かる男達も一緒だ。
「理事長さん。わしらが間に立って丸くおさめるよう努力しますが、金がない以上、覚悟は決めてもらいまっせ」
　きっと、献金先のエージェントなのだろう。親分らしい太った男がドスをきかせた声で言うと事務所を出て行く。
　いつもは何気なく恭子の尻を撫でたりする理事長なのに、今日は冷や汗をかきながら急ぎ足で理事長室へ戻っていく。
（いい気味。でも、大変なことになってしまった。もう、後戻りはできない）
　恭子は、そう思った。昨日のことは秘密にして隠し通すしかないのだと。
　勤務時間が終わると、管理職を除いて追い出されるように帰らされた。緊急会議が行われるらしい。こんなとき、女子職員はお茶汲みとして何人か残らされるのが普通なので、皆、不思議がった。
　金曜ということもあり、更衣室で、他の女子職員は「ラッキー」などと言いながら飲みに行く話をしている。恭子も誘われたが、くじいた足を理由に断った。

　アパートへ戻り、郵便受けを開けると、四つ折りになった紙が入っていた。携帯電話の番号の下に「武史」とだけ記されている。部屋へ入った恭子は、その番号をプッシュする。
「も、もし、もし‥‥」
「あっ、恭子ねえさんだね」
「は、はい」
「声で分かったよ。ヤバい金じゃなかったら、すぐに僕んちへ連絡あると思ってた。やっぱ、そういう金だったんだね。あのお金、誰にも分からないところに隠したからね。百万円の束が二百個もあった」
「に‥‥二億‥‥」
　思わず息をのんでしまう。
「返さなきゃ困るよね。でも、どういうお金なんだか聞かせてもらわないとね」
　高校生とは思えないくらい、武史の声は余裕たっぷりだ。
「あ‥‥あのね‥‥武史さん。あの‥‥お金は‥‥」
　恭子は、昨日と今日の出来事を洗いざらい説明する。秘密は守らなければならないが、肝心のお金は武史の手中にあるのだ。
「もう、お金なんかいらない。で、でも、もう、返すこともできないの‥‥」
「ふ〜ん。っていうことは、僕が勤め先に恭子さんのことを喋れば‥‥」
「お、お願い！　それだけはやめて！」
　今朝見たヤクザの顔が浮かんで、恭子は震え上がった。
「冗談だよ。でも、お金を返すにしろ、喋らないにしろ、僕にも条件があるんだ」
「ど、どういうこと‥‥？」
「おねえさん。明日は休みだよね？」
「そう‥‥だけど‥‥」
「じゃ、ドライブに連れて行ってくれない？　車、持ってたよね」
「い、いいけど‥‥」
　武史が、何を考えているのか分からない。けど、言うことを聞くしかない。
「じゃあ、明日の十時、駅のロータリーで待ってる」
　それだけ言うと電話は一方的に切れた。

「かっこいいなぁ。この車、乗ってみたかったんだ」
　武史は助手席ではしゃいでいる。新型の真っ赤なミニクーパーは２３才の恭子には贅沢なものだったが、どうしても欲しいとワガママを言って親に買ってもらったものだ。自分の趣味は菓子作りの他にドライブなのだと、武史に何度か話したことがある。きっと、それを覚えていたのだろう。車の自慢話をした覚えもある。
「どこに行くの？」
「そうだなぁ、海へ行こうか。湘南海岸でお昼をしようよ。ほんとは僕が運転したいんだけど、免許がないからね」
　そう、まだ武史は高校二年生なのだ。
（やっぱり、まだ子供ね）
　そう思った恭子は、それが油断であったことを後で思い知ることになる。が、そのときは武史の機嫌を取っていれば、何とかなるのではと考えていた。
　第三京浜に乗っても、武史は、わざと金のことを話題にはしない。
（もしかしたら、こうやって喜ばしていれば、お金も返ってくるし、この子は秘密を守るんじゃないかしら）
　そんな、甘いことを考えると、気が楽になって、恭子にもドライブを楽しむ余裕が生まれてきた。
　ゴールデンウイークを過ぎた下り線は道も空いていて気持ちがいい。一度も渋滞に引っかかることなく鎌倉を抜け江ノ島の入り口まで行くことができた。
　海岸沿いにあるイタリアレストランの駐車場に入り、車を降りると、潮風が淡い花柄のフレアスカートをなびかせる。スラリと伸びた足を、武史がまぶしそうに見つめている。
（かわいいものだわ）
　まだ、あどけなさの残る武史の表情を見てそう思った。
　恭子が現実に引き戻されたのは支払いのときだった。
「おねえさん、これ」
　何気なく渡された封筒の中身。一万円札が五枚ほど入っている。
「武史さん‥‥これ‥‥って」
「そう、あのお金。デートに少しくらい使ったっていいだろ」
「デ、デート？」
「そうさ。前から、恭子ねえさんと、こうやってデートしたかったんだよ。でもさ、なかなかきっかけがつかめなくってさ。それに、僕が勘定したんじゃ、店の人におかしく思われちゃうだろ」
　意外に分別のある物言いに、さっきまで弟ができたように感じていた恭子の気持ちが揺らぐ。

　海岸沿いに車を走らせていると、こんもりとした山の上にラブホテルが見えてきた。
「おねえさん。あそこに入って」
「だって‥‥あそこは‥‥」
「言うことを聞いてくれなきゃ困ったことになるよ。あのお金のことを、ゆっくり相談しなきゃならないしね」
　恭子は血の気が引いて行くのを感じていた。
（このまま、この子に身体を与えることに‥‥）
　アリ地獄にはまってしまったような気分だった。しかし、まだ現実感はない。
「さあ、右に曲がって」
　何も考えられないまま、恭子はハンドルを切っていた。そして、気がつくとホテルの部屋だった。

　小さなテーブルを挟んで恭子と武史が座っている。
「おねえさん。いくら欲しくないって言っても、あのお金は、もう僕らのものにするしかないんだよ。それくらい分かるだろ」
　恭子は声もなく頷く。
「それにさ、僕が、おねえさんのことを話せば大変なことになるんだよね」
　それにも頷くしかない。
「僕も欲しいのはお金じゃない。恭子ねえさんが欲しいんだ」
「た‥‥武史さん‥‥それって‥‥」
　結局、武史に抱かれるより他に方法はなさそうだ。菓子教室の先生の子供だったから、武史を男として意識したことは一度もない。抱かれることに多少抵抗はあるものの、この子ならいいかという気分になってきたのも事実だ。それに、二億の現金が気にならなかったと言えば嘘になる。
「分かったわ。わたしが欲しいのね」
　だったら、早くに済ましてしまった方がいい。そう思って、恭子は立ち上がり武史の方へ歩み寄る。
「ちょ〜っと、待ったぁ」
　武史が手で制止する。
「えっ？」
「分かってないみたいだね。これから先、僕らはず〜っと共犯者なんだよ。で、お金は僕の手元にあるし、秘密をバラされたら困るのはおねえさん。つまり、僕がすべての鍵を握ってるってわけ。だから‥‥」
「だ、だから‥‥」
「おねえさんは、これから僕のものになるんだ。ず〜っと僕の言うことを聞かなきゃならないんだ。一回やったくらいで終わりじゃないんだよ」
「そ‥‥そんな‥‥」
　１７才とは思えない脅し方だった。絶望で、上手く声が出ない。この子は「おねえさん」なんて言葉を、油断させるために、わざと使っていたのだ。そう思うと武史が獣に見えた。
「わ‥‥わたしに‥‥どうしろって‥‥いうの‥‥」
「安心しなよ。これでも、僕は恭子ねえさんが大好きなんだ。前から憧れてたんだよ。だから、こうなることを、ずっと願っていた。でね‥‥今日は記念すべき第一日目ってわけ。何事も最初が肝心っていうだろ。僕はおねえさんが初めての女性だから、いろいろ知りたいことが、たくさんあるんだ。まず手始めに、おねえさんの裸をじっくり観察したいのさ。いいね」
「‥‥」
　恭子は答えられなかった。
「おねえさんには選択肢が二つしかないんだ。分かるよね」
　どうして、こんなことになってしまったのだろう。屈辱感で涙があふれてきたが頷くよりなかった。
「じゃあ、約束だ。僕の言うことを全部聞くんだ。逆らうことは許さない。いいね」
　ふたたび、なにも言えず頷く恭子。
「さあ、僕の目の前で脱いで。よく見えるように、ゆっくりとだよ」
　しばらく考えた後、ついに、恭子はブラウスのボタンを外しはじめた。
　それにしても、この子は１７才だというのに、なんで、こんなに落ち着いていられるのだろう。子供だとばかり思っていた武史に命令され、言うことを聞かなくてはならない自分が惨めだった。
「恭子ねえさん。僕はこの日が来るのを夢に見てたんだ。でも、叶わない夢だと思ってた。なのに、ねえさんの方から、きっかけを作ってくれたんだから、僕らはきっと縁があるんだと思うよ」
　あくまでも恭子を共犯者に仕立てようという狡猾さに目眩がしてくる。でも、落ち着いた声で言われると、なんだか、それが本当のことだと思えてきてしまう。
「思ってた通り、すっごくきれいだ。次はスカートを脱いで」
　薄手のブラウスを着ていたので、ブラジャーは目立たないベージュのものを着けていた。それが、かえって裸に近い印象を武史に与えたようで、目が輝いている。　
　あきらめの境地に達してしまった恭子は、スカートのホックを外しジッパーを降ろす。パサッと床へセミロングのフレアスカートが落ちる。白いレースのショーツからは、うっすらとヘアーが透けて見える。武史の視線に気づいた恭子は両手で前を隠す。
「だめだよ。隠しちゃ。見えないじゃないか」
　武史がニヤニヤ笑いながら言う。
　おずおずと手を両側にのけると、ふたたび、恥ずかしさがよみがえってきた。
「ファッションモデルみたいに、クルッとまわってみて」
　しかし、そんな恭子の気持ちが分かっているかのように、武史は次の指示を出す。
　恭子が身体を一回転させると、武史が「ヒューッ」と口笛を吹く。
「やっぱり大人の魅力だなあ。じゃあ、次はブラジャーだよ」
　恭子の指はホックに手をかけたまま動けなくなってしまった。

　しかし、武史の命令を最終的には受け入れてしまい、ショーツ一枚の姿で恭子は恥辱に震えた。強引に脱がされたのだったら、まだ、あきらめもついただろう。残酷な仕打ちに目の前が暗くなってくる。それに、武史の言葉通り最後の一枚が残っているのだ。
「さっきも言っただろ。隠しちゃだめだよ」
　腕を組むようにして恭子はバストを隠していた。
　そう言われても手のやり場に困る。
「た、武史さん‥‥もう‥‥ゆ‥‥許して‥‥」
　無駄だと分かっていても懇願してしまう。
「まだ分からないのかなあ。そういう問題じゃないんだよ。恭子ねえさんは、もう僕のものなんだ。声に出して言ってみな」
「‥‥」
「恭子ねえさんは僕のものって。意味を、しっかり考えながらね‥‥さあ」
「わ‥‥わたしは‥‥」
「そう、そう、ゆっくりとね」
「わたしは‥‥武史さんのもの‥‥」
「もう一度」
「わたしは、武史さんのもの‥‥」
　まるで催眠術だった。どこで覚えたのか、武史は人の心を掌握する術を心得ているようだ。武史の言うことを口にするたび、理性に濃い霧がかかっていく。
「ようし、いい子だ。こんどは目を閉じてゆっくり言ってごらん」
「わたし、は、たけし、さん、の、もの」
　一言ずつ区切って言うと、ぼんやりと、夢の中にいるような感じがしてきた。
「もう、おねえさんは僕のものなんだよ。分かったね」
　繰り返される言葉に、思わず頷いてしまう恭子だった。
　無意識に手がだらんと落ちてCカップの形のいい胸があらわになる。淡い色の乳輪に小さな乳首が埋没している。息をするたびに小さく上下に揺れる乳房は別個の生き物のようだ。
「そう、そう。やっと分かってくれたみたいだね。じゃあ、最後の一枚を取って。よく見えるようにね」
　後ろのゴムの部分に手をかけた恭子は、スルッとショーツを降ろし、交互に足首を跳ね上げるようにして脱いだ。
「こっちへよこして」
　武史が手を伸ばす。
　恭子は、その意味など考えずにショーツを手渡してしまう。
　武史は受け取ったショーツを鼻にあて、ゆっくりと息を吸い込む。視線は恭子の方を向いている。いや、黒々としたヘアーを凝視していた。見られていると思うと身体が熱くなってきた。
「いい匂いだ」
　武史が笑みをうかべながら言う。オーデコロンのかすかな匂いに、汗と、諸々の匂いが混じっている。それは牝の匂いだ。
　心のネジが一本飛んでしまった恭子は、かすかに恥ずかしいと思いながら、呆然と武史を眺めている。
「すごいな。ねえさんの裸。こんなにきれいだったんだね」
　武史が賞賛するのも無理はない。釣り鐘型で発達した胸、すっきりとくびれたウエスト、縦長に生えたヘアーは細く柔らかにウェーブしている。スラリと伸びた脚の付け根は適度に肉がついて肉感的だ。
「やっと夢が現実になった。いつも恭子ねえさんの裸を想像してたんだけど、こんなにきれいだなんて。僕は本当に運がいいと思うよ。これから、僕が想像してたことを全部叶えさせてもらう。逆らっちゃだめだよ。いいね」
　いったい、武史はどんなことをするつもりなのだろう。霧がかかったような意識では想像できなかったが、それでも、武史の若い性欲に従わなければならないと思うと戦慄で震えが止まらなくなる。
「さてと、後ろの方も見せてもらおうかな」
　武史は立ち上がり、恭子の背後にあったベッドに腰掛ける。
「すごいや」
　ボールを二つ並べたような丸いヒップに武史はため息を漏らす。
　しばらく眺めていて、とうとう我慢ができなくなった武史は、恭子の目の前に立った。そして、両手で乳房をゆっくりと揉みはじめる。
「あんっ‥‥」
　うつろな目をした恭子からため息のような声が漏れる。
「すごい。こんなに柔らかいなんて思ってもなかった」
　武史は行為に没入する。
「や、やめて‥‥お願い‥‥」
　かぼそく懇願する恭子だったが、もう、身体は反応しはじめている。
　埋没していた乳首が固くなり、指の間で弾けるまでになった。
　そこを軽くつまむと、恭子の身体がビクッと震えた。
「感じてる？」
「お、お願い‥‥そんなこと‥‥聞かないで‥‥」
　震える声で恭子が言うと、
「だめだよ。約束だろ。ちゃんと答えないと」
　恥辱がよみがえってくるが、心が二つに分かれてしまったようで、
「か、感じます‥‥」
　と、答えてしまっていた。
　強制され裸になって、年下の男に観察され愛撫されている。恥辱と倒錯がないまぜになって、恭子は訳が分からなくなっていた。
「じゃ、これは？」
　音を立てて、武史が乳首を強く吸う。
「ああっ！　だめ。強過ぎるぅ‥‥」
「痛いの？」
「ちょ、ちょっと‥‥」
「そっか、そうやって、ちゃんと教えてくれればいいんだよ。どうして欲しいのかな？」
「や‥‥やさしく‥‥」
「やさしく？」
「舐めてくれれば‥‥」
「こう？」
　武史がねっとりと舌を這わせる。
「そ、そう‥‥ああっ」
　心の底では、まだ拒んでいるはずなのに、身体は逆に燃え上がってしまう。それに、なぜか武史の言葉に逆らえないのだ。
（く、くやしい‥‥）
　そう思っても、ジンジンと子宮の奥が熱くなってくる。倒錯した快感とでも言うのだろうか、命令されたり、無理矢理触られたりすることで、普通のセックスとはまるで違う感覚がわき上がってくるのだ。
　恭子は、もう立っているのがやっとだった。
　すでに、秘部が濡れて熱くなっているのが分かる。
（このまま、押し倒されて犯されたら、どんなに楽だろう）
　そんな考えが恭子の脳裏をよぎった。
　しかし、武史は執拗にバストの感触を楽しんでいる。
「い、いやっ‥‥」
　ついに、恭子は床へ崩れ落ちてしまった。

「おねえさん。恭子ねえさんったら」
「えっ？」
「だめだよ。まだ始まったばかりじゃないか。こんどはベッドに横になって」
（とうとう‥‥）
　武史に抱かれることを覚悟した恭子だったが、まだ、武史は服を着たままだ。
（えっ、なんで？）
　それでも、恭子はのろのろとベッドに這い上がる。
「さっ、観察の続きだ。いや、解剖の時間かな」
「そ、そんな‥‥」
（この子は、どこまで辱めれば気が済むのだろう？　で、でも‥‥）
　恭子は、次第に被虐を快く感じはじめている自分に気がつき当惑した。
「さ、脚を開いて」
　気がついたときには、もう、脚を大きく開いていた。
「う〜ん、よく見えないなあ」
（やっぱり１７才ね。M字に開かせる知恵はないみたい）
　ぼんやりと、そんなことを考える恭子だった。
「ちゃんと見えるようにしてよ」
　言葉に反応して、恭子は膝の裏に手をやって脚を開き、自らをさらしてしまった。
（な、なんで？　わたしったら‥‥あんなこと考えちゃったから）
　恭子は、自分でしたことに驚いた。
　M字型に開かれた脚の付け根。淡く毛が生えた大陰唇の間にある秘裂がわずかに開き、その下のアヌスまでが武史の方を向いている。
　武史が目を見開いて秘肉を見つめている。
「ふふふ、お医者さんごっこみたいだね。これがねえさんのオ○ンコかあ」
　武史が大淫唇に手を添えると秘裂が割れ、ピンクの柔肉があらわになる。すでに潤いはじめている入り口が開き牝の匂いが漂う。恭子の花びらは控えめで色も薄かった。それだけに内部を簡単にさらしてしまうのだ。
「じゃあ、どうやったらいいのか教えてもらおうかな。クリトリスってどこにあるの」
「お、お願い‥‥もう‥‥許して。武史さんの好きなようにしていいから‥‥」
「だからぁ、その僕の好きなのは、ねえさんに教えてもらうことなんだよ」
「‥‥」
「僕は、恭子ねえさんを最高に感じさせたいんだ。でも、初めてだから教えてもらわなきゃ分からないからね。時間もお金もたっぷりあるんだから、ゆっくり楽しもうよ」
　武史はニヤリと笑う。
（もし、あのお金を無事に持って帰れたら、時間も自由も買えたかもしれない。それなのに、今、自由を奪われようとしている。もし、あのときアパートの前までタクシーに乗っていれば‥‥）
　後悔しても無駄だった。
　それに、恭子は自分から身体を開いてしまっている。なぜだか分からない。まるで、自分の中にもう一人の自分がいて、それが目を覚ましてしまったようなのだ。
「早く教えてよ」
　少しきつくなった武史の声。
　考え事をしていて、ぼんやりしてしまったらしい。
（こんなときに考え事なんて‥‥）
「早く。約束だろ」
　もう、武史の言うことを聞くしかない、それが自分のためなのだ。恭子は覚悟を決めた。
　右手の中指で、花びらの合わせ目に触れる。
「こ、ここよ‥‥」
　触った途端、ズンッと下腹部に衝撃が走り、思わず呻いてしまう。
「ここかあ。でも、お豆みたいって聞いたのに、見当たらないね」
　知っていて言っているのか、それとも、本当に知らないのか、恭子には武史が分からない。前者だとしたら鬼畜の仕業だし、後者なら教えることで、かろうじて恭子はプライドが保てる。どちらにせよ、身体にはもう火が点きかけている。どうせ最後には抱かれるのだ。恭子は後者だと信じることにした。
「あ、あのね‥‥ここに隠れているの。感じてくると‥‥固くなってくるの‥‥」
「ふ〜ん、そうなんだ。だったら、固くなったところを見たいな」
「や、やさしくしてくれれば感じるわ」
「分かった。じゃあ、感じさせるにはどうやればいいのか見せてよ」
「た、武史さん‥‥そんな‥‥」
「僕だって、女の人がオナニーするくらい知ってるさ。そのやり方が、感じさせるには一番いい方法だってこともね。だから、これからのために見せて欲しいんだ」
　駆け引きのできる相手ではない。追いつめられて涙がひとしずく流れる。
「わ‥‥わかった、わ‥‥」
　恭子は目を閉じて、指を静かに動かし始める。しかし、目を閉じても、武史の視線を感じてしまう。声が出そうになるのを我慢していると、息がだんだん荒くなってくる。見られていること、強制させられていることが、思わぬ刺激となっていつもより身体が敏感になってしまっている。
　花びらの合わせ目の少し上を人差し指と中指で軽く押さえ、小さく円を描くみたいに動かすのが恭子のやり方だった。そうしていると、だんだんクリトリスを中心に秘肉が熱くなっていくのがわかる。きっと、直接触れば、もう固くなっているだろう。
　実際、尖った小さな肉芽が顔を覗かせるまでになっていた。
「あっ、ほんとだ。なんか出てきたよ」
「お願い‥‥恥ずかしいから‥‥言わないで‥‥ああっ」
　しゃべったせいで、ついに、最後は喘いでしまった。
　恭子の端正な顔が官能に歪む。
「す、すごいや。おねえさん、感じてるんだね。それも、僕の目の前で‥‥自分の手でやって‥‥すっごくスケベな顔してるよ」
「い、いや‥‥もう‥‥許して‥‥」
　許しを乞いながら恭子の指は止まらない。オナニーを見られていると思うと自分でも信じられないくらい感じてしまうのだ。
「でもさ、直接触らないんだね。どして？」
「さ、最初は刺激が‥‥強すぎて‥‥あまり‥‥気持ちよくないの‥‥でも‥‥」
「でも？」
「も、もう‥‥大丈夫‥‥かも‥‥」
　恭子は荒い息の中で切れ切れに答える。
「じゃあ、やってみてよ」
　恭子は言葉で答えず、行為で答えた。中指で蜜壷の入り口をまさぐる。そして、溢れ出した愛液を絡めるとクリトリスになすり付ける。
「ああんっ！」
　それだけで、全身に電気が走ったように感じてしまい、大きく喘いでしまう。腹筋に力が入り、下腹がキュッとへこむ。
　指の腹でクリトリスと包皮の間を細かく撫でると腰全体が震えだす。
「あっ、あっ、あっ！」
　もう、喘ぎ声を押さえることができない。
　いつの間にか、左手で乳房を揉んでいた。
「い、いやっ！　恥ずかしいっ‥‥あっ‥‥ああっ！」
　脚をピンと伸ばし、全身を硬直させて恭子はオルガスムスを迎えてしまった。
「いったんだね」
　ニヤリと笑った武史の顔を見て、恭子は恥ずかしさのあまり泣き出してしまう。
「‥‥ひ、ひどい‥‥こ‥‥こんなのって‥‥」
　ショックだった。いくら強制されたとはいえ、自分で脱ぎ、自分で開き、そして自分の手で慰めているところを見られるなんて、今までの男性経験ではなかったことだ。おまけに、いってしまうなんて‥‥
「おねえさん、素敵だったよ」
　武史の手が膝にかかり、また脚を開こうとしている。
「いやっ！　やめてっ！」
　必死で抵抗するが、まだオルガスムスの余韻が残っている身体では、１７才とはいえ十分に成長した男の腕力の前には勝てない。
　武史の右手が秘肉にかかる。
「あうっ！」
　まだ炎は去っていない。触れられただけで激しく反応してしまう。
「ここが感じるんだよね」
　武史の指が正確にクリトリスの上側をとらえる。そして、さっき恭子がやったように動きはじめた。
「すげぇ、柔らかくってスケベな感じ‥‥」
「い、いやっ‥‥やんっ」
　抵抗する声にも甘さが混じってしまう。
「だめよ‥‥あ‥‥ああ‥‥だめ‥‥やめて‥‥」
　的確な愛撫に身体の力が抜けていく。
　クチュッ、クチュッ
　溢れてきた愛液が蜜壷の入り口で音を立てる。
「‥‥あ‥‥う‥‥も、もう‥‥ゆ‥‥ゆるして‥‥」
　嗚咽まじりの懇願を無視して武史の指の動きは止まらない。それどころか、恭子のやり方をよく見ていたせいで、無駄なく感じるツボを執拗に責めてくるのだ。
「い‥‥いや‥‥や‥‥あん‥‥」
　じっくりと見られながら、まるで、子供が虫をいたぶるように弄ばれると、被虐の意識が官能を揺さぶる。自分が犯されていると思うと、よけいに感じてしまうのだ。
「あ‥‥だめ‥‥やめて‥‥」
　抵抗の言葉すら甘さを含んだものになってしまう。
　やがて、武史の指が蜜壷の方へ降りてきた。
「こんなになってる。ベトベトだぁ。あったかくて、柔らかいや」
　たっぷりと濡れきった柔肉の感触を確かめながら中指が侵入してきた。
「あうっ、だめっ！　ああっ‥‥」
　恭子はシーツを握りしめながら押し寄せる感覚に耐える。
　ニチャッ、ニチャッ
　やがて、人差し指が添えられ、指二本がゆっくりと抽送される。
「あっ‥‥いやっ‥‥あっ‥‥あっ‥‥あっ‥‥」
　どうしても、指の動きに合わせて喘ぎ声が漏れてしまう。
　それにしても、ただ恭子の官能を引き出そうとする武史の忍耐力が恐ろしかった。まだ、服も脱がず、執拗に秘部を弄んでいるのだ。いったい、この先、どのようなことをされるのか、考えただけで恐ろしくなってしまう。
「ああんっ！」
　強烈な刺激を感じて自分の股間を見ると、武史が秘部を舐めていた。
「ああっ‥‥お願い‥‥ゆるして‥‥」
　武史の舌がクリトリスのまわりを這っている。二本の指は蜜壷に入ったままだ。
「ああんっ‥‥だめっ‥‥だめよ‥‥そ、そんなにしたら‥‥あうっ‥‥」
　二カ所を同時に責められ恭子は身をよじりながら悶えた。
　しかし、恭子が悶えれば悶えるほど、武史の責めは激しさを増す。
「いやぁ〜〜っ！」
　武史の舌が花びらの合わせ目をとらえたとき、恭子は高く叫び、身体を硬直させた。

　ビクン、ビクン
　痙攣する恭子の身体を見下ろしながら武史が服を脱いだ。
　屹立が天を向いている。
（お、大きい‥‥）
　霧がかかったような意識の中、ベッドの脇で全裸になった武史を見て、恭子は息をのんだ。ヘソまで届きそうな長さと、握りきれないくらいの太さが、あどけなさの残る顔立ちと不釣り合いで、悪魔が股間に宿っているのではないかと思えるほどなのだ。
（あんなのが入ってきたら、どうなっちゃうの‥‥？）
　怖くもあり、半分期待してしまう恭子だった。
「いくよ。おねえさん！　記念すべき僕の初体験だ」
　武史は、そう言うと恭子の膝を割ってペニスをあてがう。
　恭子は目を閉じて最後の瞬間に備えた。
　ズンッ
　それは重い衝撃だった。
　蜜壷の奥まで一気に突かれ、武史のペニスで身体が埋め尽くされてしまったような感じだった。
「ああ〜〜っ！」
　恭子の絶叫が響く。
　しかし次の瞬間、武史は呻いて爆発してしまった。
　熱い奔流が恭子の身体の中で暴れる。
　武史は身体を伸ばしたまま硬直している。
（も、もう終わりなの‥‥？）
　一瞬、失望を感じたことに恭子は戸惑った。
（わ、わたしったら‥‥）
　貫かれたときの悦びが大きすぎたのだ。
「ふぅ〜っ。すげえや。これがセックスなんだね。最高だ」
　武史は身体の力を抜いて、恭子の耳元でささやく。
　これで今日は解放されるのだと思うと少し残念だと思う恭子だった。放出してしまえば男は終わりだと、恭子はそれまでの経験から考えていたからだ。
　しかし、武史のペニスは暴発しても硬度と大きさを保ったまま蜜壷の中にある。
（ど、どうして‥‥）
　熱い肉棒の感触はそのままだ。理解を超えた状態に戸惑っていると、逞しい律動がはじまった。
　ジュブッ、ジュブッ
　精液が泡立ちながら溢れる。
「う、うそ‥‥ああっ‥‥き‥‥きつい‥‥こんなのって‥‥いや‥‥ああんっ‥‥」
　武史に抱きしめられながら恭子は悦びの声を上げる。やがて、その口も武史の唇で塞がれた。
「う、うう‥‥」
　恭子は呻きながら武史に応えていた。
　１７才の若い身体は一回の射精くらいで萎えるものではなかった。むしろ、長持ちさせるためのウオームアップといった感じですらある。
（す、すごい‥‥こんなのって‥‥もう‥‥壊れちゃう）
　もう、武史に抱かれることに、何の抵抗もなくなっていた。太くて逞しいものに貫かれ、蹂躙される悦びに、恭子の頭の中は真っ白になっていく。
　武史がバストを弄びはじめた。
　もともと恭子は感じやすい体質で、乳首は特に感じてしまう性感帯なのだ。挿入されながら、そこを責められると、どうしようもないほど乱れてしまう。
「ん、ん‥‥ん‥‥」
　唇を塞がれているので声にはならず、身をよじらせながら悶える。
　武史の長い舌が上あごや歯茎を舐めまわすと、口の中まで性感帯になってしまったようで、次第に身体全体がドロドロに溶けてしまったみたいになってしまう。
　いつの間にか、恭子は武史の背中を抱きしめていた。
　ぴったりと密着した下腹から伝わる武史の体温が心地よい。
（来る‥‥もう‥‥もうすぐ‥‥）
　オルガスムスの予感に、恭子は背中へまわした手に力を込める。
　武史も近いらしい。抽送が激しくなる。
　そして、蜜壷の中にある武史のペニスが一回り大きくなったように感じたとき、突然、熱いものが放たれた。その瞬間、恭子も大きな波にさらわれる。
「ああ〜んっ！」
　背中をのけぞらせたはずみで自由になった唇から絶叫のような喘ぎ声があがる。
　伸びきった脚、その指先が鍵型に曲がってしまうくらい硬直した身体がビクン、ビクンと痙攣しはじめる。
　それでも、まだ武史のペニスは硬さを保ったまま蜜壷の中に収まっている。
「だ‥‥だめ‥‥もう‥‥壊れちゃう‥‥武史さん‥‥ゆるして‥‥」
　恭子の言葉は屈服した一匹の牝のものだった。
「い、いや‥‥やめて‥‥もう‥‥ああっ！」
　抽送の再開に意識が遠のいていく。
　今まで経験したことのないほど激しく深いオルガスムスだったのに、その余韻に浸る間もなく容赦ない若さのなせる責めがはじまった。これだけ激しく長く蜜壷を苛まれたのも初めてだった。身体の力が抜けていく。
　武史は、そんな恭子の膝を胸の方へ押し付けるようにして繋がりを深める。
「ああっ‥‥」
　ペニスを根元まで受け入れ、子宮口まで達した感覚に、恭子は呻いてしまう。
　そのまま、武史は腰を激しく動かしはじめる。
「た‥‥たすけて‥‥そんなにしたら‥‥」
　律動にシンクロして恭子のバストが揺れる。
「あっ‥‥ああっ‥‥あんっ‥‥あんっ‥‥ああ〜っ！」
　ついに、恭子は意識を失ってしまった。