後編

　どれくらい気を失っていたのだろう。腰のあたりの妖しい感覚に、恭子は目を覚ました。
「な‥‥なに‥‥？」
「ねえさんのお尻の穴に指を入れてるのさ」
「う‥‥うそ！　いやっ。やめて！」
　いままで、アヌスを他人に触らせたこともない恭子は、そんなところに指が入るなんて信じられなかった。
「そんなこと言ったって、もう遅いね。入っちゃってるから」
　武史は、そう言って人差し指を軽く抽送させる。失神して弛緩してしまった身体と、蜜壷から溢れ出た愛液と精液の混ざったものが潤滑剤となって、武史の指を容易に受け入れてしまったらしい。
「だめ‥‥だめよ‥‥」
　恥ずかしさから来る嫌悪感はあるが、不思議な快感があることもたしかなのだ。
「やめて‥‥おねがい‥‥」
　言葉で抗っても、身体は反応してしまっている。
「痛いの？」
　武史の問いに、恭子は首を振って答えてしまった。
「じゃあ、感じるんだね」
「おねがい‥‥そんなとこ、汚いし‥‥恥ずかしいわ‥‥」
「だめだよ。僕は恭子ねえさんの全部が欲しいんだ」
「そ‥‥そんな‥‥あっ‥‥」
　なかで微妙に指が動いているのが分かる。蜜壷のそれとは異質の快感に、恭子は思わず喘いでしまう。
「やっぱり感じてるみたいじゃないか。じゃあ、これはどうかな？」
　武史は左右にゆっくり指を回転させた。
「ああっ‥‥だめ‥‥こ、こわいの‥‥」
「怖いって。じゃあ、ねえさん、こっちの方は経験ないの？」
　喘ぎながら頷く恭子。
「じゃあ、お尻は処女なんだ」
「‥‥！」
（も、もしかして‥‥ああ‥‥そんな‥‥）
　これからされることへの予感に恭子は震え上がった。
「うれしいな。僕がねえさんの初めての相手になれるなんて。でも、まだ僕の方は準備ができてないんだ。それに、汗かいちゃったから二人でシャワーを浴びようか」
　武史は指を抜いて立ち上がった。
　とりあえず、後ろの穴への攻撃がやんで半分ほっとした恭子だったが、むず痒いような不思議な感覚を忘れることができない。
（うそ‥‥あんなところが感じるなんて‥‥）
　実際、指を入れられているとき、秘肉が熱くなってきたのを自覚している。恥ずかしいし恐怖もある。しかし、それ以上に好奇心というか新しい快感への期待もあるのだ。
　武史は恭子の手を引いてバスルームへ誘う。立ち上がると蜜壷から武史の精液がしたたってくるのが分かる。
（大丈夫よね？　生理が来るのは明後日のはず‥‥）
　あの匂いに恭子は妊娠の心配をした。でも今日は安全日のはず、自分を無理矢理納得させなければ立っていられないくらいの不安に襲われてしまう。
　そんな恭子の気持ちなど武史に分かるはずもない。お湯の温度を確かめると、いきなり恭子の身体にシャワーヘッドを向ける。
「脚を開いて」
　考え事をしていたせいで、つい武史の命令に従ってしまう。
　シャワーの水流が秘肉を刺激する。
「あっ、だめ‥‥武史さん‥‥自分でするから‥‥」
　まだ、疼きが残っているところにシャワーをあてられたのだからたまらない。水が弾けるバイブレーションが容赦なく官能を誘う。
「ああっ‥‥くっ‥‥だめ‥‥」
　我慢ができず、喘ぎ声が漏れてしまう。
「僕のがいっぱい入っちゃったからねぇ。ちゃんときれいにしないと」
「だ、だめ‥‥ゆるして‥‥こんなにしたら‥‥もう‥‥立って‥‥られないの‥‥」
　恭子は必死で許しを乞う。
「だったら、あそこで横になればいいよ」
　武史が指差したところにはビニール製のマットレスがあった。
　そう、ここはラブホテルなのだ。恋人達が楽しむ道具がそろっている。それが恭子には恨めしかった。が、背に腹はかえられず恭子はマットレスにしゃがみ込む。
「ほら、さっきみたいに脚を開いて」
　残酷な命令に涙があふれてくる。
（この子は、自分をどこまで辱かしめれば気が済むのだろう？）
　そう考えると嗚咽が止まらない。
「早くしてよ。約束だろ。言うことを聞くって」
「おねがい。もう、ゆるして‥‥」
「だめだね。ねえさんは僕のものなんだ。そう言ったろ」
「そ、そんな‥‥恥ずかしくて‥‥できない‥‥」
「じゃあ、こうしてやる！」
　業を煮やした武史は恭子の肩を押しながら横にさせ、膝を持ってM字型に開かせる。
「いやっ！　やめてっ」
　必死で抵抗しても最後は武史が望む姿勢になってしまう。
　ふたたび、秘肉へシャワーが浴びせられる。
「よ〜く洗わないとね」
　武史は水流をジェットモードに調節して蜜壷へお湯を流し込む。
「ああ‥‥いや‥‥」
　下腹がいっぱいになるような、なんとも表現しようのない感触。でも、それは不快なものではない。
（ああ、もう、この子の言いなりになるしかないんだわ。かわいそうな恭子）
　自分は奴隷になってしまった。そう思いながら恭子は全身の力を抜き、目を閉じて、武史の行為に身を委ねていた。
　膣口にあてられたシャワーヘッドが外されると、蜜壷の中に溜まっていたお湯が流れ出ていく。武史は、それを三回ほど繰り返した。
「さ、きれいになったか見てみるか」
　恭子の腰を持ち上げ、俗にいうマングリ返しの姿勢にすると両手の親指を使って膣口を開く。肉襞がピンクに光っている。
「ふぅ〜ん、こうなってるんだ」
　感心したようにつぶやくと、指の力加減を変えながら隅々まで観察しはじめる。
　もう、恭子は目を閉じて抵抗することをやめていた。開かれて中まで見られていることは猛烈に恥ずかしいのだが、逆にそのことが不思議な快感を呼び覚ましていることに気がついたのだ。
　ぐったりと、なすがままになった恭子の秘部に武史の舌が這いはじめた。大淫唇の内側に沿わせ花びらの合わせ目まで、右と左を交互に丁寧に‥‥
「や‥‥やん‥‥」
　武史の長い舌は恐ろしく器用だ。秘肉全体がジンジンと熱を帯びてくる。舌先がクリトリスをとらえ左右に細かく震わすように動く。
「ああっ！」
　ビリビリと痺れるような快感が腰全体に走り思わず叫んでしまう。
「あっ‥‥あっ‥‥いや‥‥ああんっ！」
　腰が自然に動く。
　恭子の反応に気を良くした武史は執拗にクリトリスを責め続ける。
「だ‥‥だめっ‥‥そんなにしたら‥‥もう‥‥いくっ‥‥いっちゃう‥‥」
　恭子の叫びに反応して、武史の舌先の動きが速くなる。
「ああっ‥‥いや〜っ！」
　腰を激しく痙攣させながら恭子はオルガスムスを迎えた。
　腹筋の収縮で凹んだ下腹が官能の深さを物語っている。ヒクン、ヒクンと荒い息の中で上半身が痙攣する。
　そんな恭子の姿態を武史は満足げに眺めている。
　そして、今度は親指でアヌスを拡げるようにして、舌先を侵入させた。
「だ、だめっ‥‥そこは‥‥」
　ザワザワと広がる妖しい感覚。
「あっ‥‥いやっ‥‥おしっこが‥‥」
　舌先でアヌスを嬲られるとムズムズと耐えられない排尿感が襲ってきた。レストランを出てから、まだ一回もトイレに行ってないのだ。
「だめ‥‥漏れちゃう‥‥おねがい‥‥トイレにいかせて‥‥」
　武史が舌を引っ込めた。その抜けるときの感触がいっそう排尿感を加速する。もう我慢の限界だ。恭子は立ち上がってトイレへ行こうとした。
「おっと、だめだよ」
　武史が立ちふさがる。
「ここですればいいじゃないか」
「そ、そんな‥‥」
「言っただろ。僕はねえさんの全てが欲しいんだって。おしっこするところも見せてくれなきゃ。ほら、壁に手をついて脚を開いて。お尻の穴を刺激されたからしたくなっちゃったんだよね。子猫を育てたときがそうだったよ。お尻の穴をこするとおしっこやウンチが出るんだ」
　武史は、そう言いながら恭子の手を取って壁につかせ、強制的に脚を開かせた。そして、恭子の後ろにしゃがみ込んで、人差し指でアヌスを嬲りはじめる。
「い‥‥いや‥‥ゆるして‥‥」
　恭子は腰を振って、なんとか責めから逃れようとする。しかし、かえってそれがアヌスにある指を意識させる結果となり、もう我慢ができなくなってしまった。歩き出しただけで膀胱が破裂してしまいそうだ。
　武史は全身を硬直させながら耐える恭子を、下から覗き込むようにしてアヌスへの愛撫を続けている。固く締まったアヌスは指を受け入れないので、まわりを揉みほぐすように撫でている。それが、恭子には堪らない。
「いや‥‥いやぁ〜っ」
　ついに限界を超えてしまった。秘肉の間から黄金水が音を立ててほとばしる。
　同時に弛緩したアヌスが武史の指を受け入れてしまう。
（ひ、ひどい‥‥こんなのって‥‥）
　排尿しているところを見られたショックで恭子の頭の中は真っ白になっていく。なにか大切なものが崩壊していくのを感じながら‥‥
「うっ‥‥ううっ‥‥」
　嗚咽するたび、切れ切れに尿がほとばしる。それでも、アヌスに入れられた指のせいで、残尿感と言うかむず痒い感覚はおさまらない。
「さ、洗ってあげる。動いちゃだめだよ」
　武史はスルリと指を抜くと、恭子にシャワーを向ける。ひととおり流し終わると、ボディソープを手のひらに受け、恭子の背中で泡立てはじめる。
「そのまま、じっとしてるんだよ」
　武史は両方の手のひらを使って恭子の身体を洗う。背中から肩、脇の下を通って両方の乳房が丁寧に洗われる。
　もう、恭子には抵抗する気力がなかった。排尿する姿をさらしてしまったことで、心の何かが壊れてしまったみたいだ。
（もう、わたしは武史さんのもの‥‥）
　自ら服を脱いだときにつぶやいた言葉を心の中で反芻していた。そう思わなければ、きっと恥辱で泣き出してしまっただろう。それに、心の一方では隷属することの快感を意識してしまっている。
（わたしは、子猫とおんなじなのね‥‥）
　自分はペットになってしまった。そう思っても屈辱感はない。むしろ、もっと可愛がって欲しいと思いはじめていた。
　武史の手のひらがヒップから太ももへと移動する。武史は石けんを使って恭子の全身の感触を楽しんでいた。そして、それは恭子の官能を剥き出しにしていく効果があった。
　次第に恭子の息が荒くなっていく。秘肉が疼くのだ。さっきまで蜜壷を蹂躙していた武史のペニスが思い出されてならない。
（ああ‥‥武史さん‥‥欲しい‥‥）
　やがて、武史の方も全身で恭子の肌の感触を楽しみたくなったらしく、後ろから抱きしめてきた。筋肉質の胸が背中と合わさる。右手はバスト、左手は下腹のあたりを彷徨っている。恭子はヒップを突き出すようにして応えてしまう。ヒップの合わせ目あたりにある武史のペニスが硬度を増していくのが分かる。
「恭子ねえさん。こんどは口でしてもらえるかな」
「いいわ」
　もうためらう必要はなかった。恭子は、そう答えると武史の方へ向き直り、ひざまずいて屹立を手にとった。そして妖しい笑みをうかべて上目遣いで武史を見上げると、次の瞬間、泡にまみれたペニスをくわえた。
「うう‥‥」
　武史が呻く。
　口の中で、どんどん硬く大きくなっていくペニス。これが蜜壷へ入ってくることを想像して恭子は蜜があふれてくるのを感じた。よけい愛おしくなり、亀頭の部分を丹念に舐めまわす。昔つきあっていたボーイフレンドから仕込まれたやり方だ。もともとフェラチオが好きだった恭子は、軽く歯をあてるたびに武史が反応するのがうれしくなり熱心にしゃぶってしまう。
「で、出るっ！」
　一言叫んだ武史は、恭子の髪の毛をわしづかみにして喉の奥へ精液をぶちまけた。
「ゴクリ」
　喉を鳴らして恭子はそれを飲み込む。抵抗はなかった。苦いような独特の生臭さが口の中に広がるが、飲み込むことによって自分と武史の繋がりが深いものになっていくような気がする。それが武史の奴隷になってしまう意味であっても、恭子には心地よいものだった。
「飲んでくれたんだね」
　武史も、恭子が自分に屈服したことを知ったらしく、うれしそうに言った。
「もう、逆らわないね」
　武史と目が合う。恭子は頷いて、またペニスを口にふくみ、汚れをきれいに舐める。出したばかりなのに、まるで萎えていない。
「じゃあ、続きはベッドだ」
　二人はシャワーで泡を流すと、お互いに身体を拭き合いベッドルームへ向かった。

「さて、じゃあ、おねえさんの後ろのヴァージンをもらおうかな。ベッドに四つん這いになって」
「た、武史さん。おねがい‥‥そのまえに‥‥」
「いやなの？　言うことを聞くって言ったよね」
「ううん。もう、武史さんの好きにしていいわ。でも‥‥」
「でも？」
「そのまえに‥‥ちゃんと抱いて欲しいの‥‥」
「どうして？」
「まだ、心の準備が‥‥怖いし‥‥だから‥‥」
　自分でも分からない。でも、武史に抱いて欲しかった。
　恭子は、すがるように武史に抱きつく。
「おねがい‥‥」
　そう言いながら、ひざまずき、ふたたび武史のものを口にふくむ。
「じゃあ、後ろから入れてやるよ。ベッドにあがって四つん這いになるんだ。いいね」
　何度も射精した後なので武史は余裕たっぷりだ。年の差などまるで感じない。むしろ、イニシアチブを持つ武史の方が年上にも感じられる。
　恭子は素直に従い、武史の方へヒップを突き出す形になった。
　武史はベッドサイドに膝をつき、ヒップに手を添えると双丘を左右に拡げて、後ろからの眺めを楽しんだ。親指を使ってクリトリスのまわりを優しく撫でる。
　それだけで恭子は甘い吐息を漏らしてしまう。
　ジンジンと股間が熱くなってくる。
「ああ‥‥来て‥‥」
「どうして欲しいか、ちゃんと言ってみな」
「お‥‥おねがい‥‥意地悪しないで‥‥」
「こうかな？」
　武史はクリトリスからアヌスまでを一気に舐めあげる。
「きゃっ‥‥あんっ‥‥」
　ジュンと蜜があふれたのが分かる。
　武史は親指の愛撫をそのままに、太ももやヒップを舐めはじめた。
　そして、洪水のようになっている蜜壷へ舌が差し込まれた。
「やぁ‥‥あんっ！」
　もう言葉にならない。武史の長い舌が肉襞をかきまわす。
「あっ‥‥あんっ‥‥あんっ‥‥」
　恭子はシーツを握りしめながら激しい責めに耐える。
「ああっ‥‥いくっ‥‥いきそう‥‥」
　そう叫んだとき、武史の責めが止んだ。
「や‥‥やめないでぇ‥‥」
　思わず叫んでしまう。
「ふふ‥‥ねえさんって、こんなにスケベだったんだね。でも、ちゃんと何が欲しいか言ってくれないとやめちゃうよ」
「そ‥‥そんな‥‥」
　言葉を交わすたびに主従の距離が決定的なものになっていく。
「やめていいんだね」
　武史はベッドから離れると、備え付けの冷蔵庫からコーラを取り出し旨そうに飲みはじめた。
「‥‥ああ‥‥おねがい‥‥武史さんが‥‥武史さんが欲しいの‥‥」
「僕の何が欲しいの？　ちゃんと言ってくんなきゃ分かんないよ」
　コーラの冷たい缶が秘肉に押しあてられる。
「や‥‥やんっ‥‥武史さんの‥‥オ‥‥」
「オってなに？」
「オ‥‥オ、チンチンが‥‥」
「オチンチンをどうして欲しいの？」
「お、おねがい‥‥意地悪しないで‥‥ああっ」
　武史が缶をゆっくりと動かしているので最後は喘ぎ声になってしまう。
「だめだよ。ちゃんと言ってくんなきゃ」
「ああっ‥‥い、入れて‥‥」
「どこに？　ここかな」
　空いた手でアヌスが突つかれる。
「ち、違うの‥‥オ‥‥オ○ンコに、入れて‥‥」
「えっ、なに？　もう一度言って」
「オ、オ○ンコに‥‥武史さんのオチンチンが欲しいの‥‥」
　ついに恥ずかしい言葉で求めてしまった。目眩がするほどの恥ずかしさが快感に変わっていく。
「最初から、そう言ってくれればいいのに。スケベなおねえさんって好きだよ」
　恭子の腰に手が添えられ、屹立があてがわれた。
「ああっ！」
　それだけで、期待から喘ぎ声が漏れてしまう。もう、羞恥など消えてしまった。ただ、ひたすら蹂躙されたかった。
　武史は、ゆっくりと、その感触を楽しむように挿入しはじめる。
「あっ、ああんっ‥‥い、いいっ‥‥」
　濡れきった蜜壷が武史の屹立を何の抵抗もなく飲み込んでいく。
「あったかくって、やわらかくって、最高だよ。恭子ねえさんのオ○ンコ」
　武史が言葉で羞恥を煽る。しかし、そんな言葉にすら恭子は反応して感じてしまう。
　武史は、屹立を根元まで収めると動きを止めた。
　堪らず、恭子は荒い息をしながら自ら腰を動かしてしまう。
「恭子ねえさんって、こんなにスケベだったんだね。そんなに僕のが欲しかったんだ。じゃあ、こうしてあげるよ」
　武史は、いきなり激しい抽送を開始した。それは、いったん先端が抜けてしまうくらいストロークが長いもので、抽送のたびに挿入されているような感覚が恭子を襲う。
「あっ！　いやっ！　そ‥‥そんなにしたら‥‥ああっ‥‥あんっ‥‥あんっ‥‥」
　肉を打つ音が響き、それに恭子の喘ぎ声がシンクロする。
　何度も射精したせいだろう。武史は恐ろしいほどの時間をかけて抽送を繰り返す。
　シーツを握りしめ、マットレスに顔を埋めながら恭子は気の遠くなるような快感に耐える。
「あっ、あうっ！　だ‥‥だめっ！　いくっ！　いっちゃう！」
　背中をのけぞらせて恭子が絶叫をあげる。
　その叫びに呼応して武史は抽送のスピードを上げる。
「い、いやっ！　いやぁ〜〜っ！」
　経験したことのない高い波に襲われ、恭子は、ひときわ高い声で叫んだ。
　しかし、激しい抽送は止まない。
「だ、だめっ‥‥もう‥‥こ、こわれちゃう‥‥た‥‥たすけて‥‥おねがい‥‥」
　永遠に続くのではないかと思うくらいのオルガスムス。高みに押し上げられたままなのに、さっきのように気を失うこともできない。その悦びの深さに恭子は恐怖すら覚え、
「いやっ‥‥死ぬ‥‥もう、死んじゃう‥‥」
　と、無意識に叫んでいた。
　身体が痙攣するたびに目の前に閃光が走る。
　やがて、全身に力が入らなくなり、ぐったりと弛緩してしまった。
　そんな恭子の姿を見て武史は屹立を引き抜く。青筋の立ったペニスは愛液で濡れ光っている。手を添えて、それを薄茶色のアヌスにあてがい力を入れた。
「ああ‥‥」
　武史が何をしているかを悟った恭子は低い声で呻く。でも、それは嫌だとかそういう気持ちではなく、ついに征服されてしまうのだという、あきらめと被虐の快感が混ざったものだった。
　しかし、いくら力を入れても武史のペニスは入っていかない。あまりにも大量に愛液を分泌してしまったため粘度が薄くなり、潤滑剤の役割を果たさなくなっていたのだ。
　武史は必死になって思いを遂げようとしているが、なかなか上手くはいか　ない。
「た、武史さん‥‥ポーチの中に‥‥」
「えっ、なに？」
「わたしのポーチの中に‥‥乳液が入ってるから‥‥それ、使ってみて‥‥」
　いくら高価な化粧品であっても、それを武史のために使うのが全然惜しいと思えない。いや、武史のためなら何でもしてあげたいと恭子は思うようになっていた。
「これだね」
　テーブルの上にあったポーチから小さな瓶を取り出して恭子に見せる。
　恭子が頷いたのを確認して、武史はふたを開け、直接アヌスへ流し込む。
　ひんやりとした感触が火照った身体に心地よい。
　武史が指先で、アヌスのまわりに乳液を塗り拡げていく。
　また、あのザワザワとした快感が全身を支配していく。
　スルッと、なんの抵抗もなく指が侵入してきた。
「やんっ‥‥」
　甘い声で悶えてしまう。これから後ろの穴を武史に捧げるのだと思うと、まるで自分が処女に戻ったように感じてしまうのだ。
　武史は慎重に乳液を流し込んでは指を入れて、揉みほぐすように中の具合を確かめている。そのたびに襲ってくる不思議な快感に恭子は悶える。
「すごいや。オ○ンコの中とは全然違うよ。入り口がコリコリしてて気持ち良さそう。もう、我慢できないや」
　ふたたび屹立があてがわれた。
　力を入れると、乳液のおかげでズルリと滑るような感じで亀頭が入った。
「ああっ！　いたぁい‥‥」
　身体が二つに引き裂かれたのではないかと思うくらいの痛みだった。
　しかし、容赦なく武史は挿入を続ける。
「あうっ‥‥うっ‥‥うっ‥‥」
　獣のような声をあげながら恭子は必死で痛みに耐える。武史のものが大きすぎるのだ。指のときは妖しい感覚があったのに、異物感と言うにはあまりにも辛い痛みだ。目の前が真っ白になり、何も考えることができない。でも、痛みに耐えることが武史への奉仕だという気持ちと、ついに征服されてしまったという悦びはある。
（わたしは、もう、たけしさんの、もの‥‥）
　心の中で、そうつぶやくと痛みが和らぐ。それと同時に秘肉が熱くなってくるのを感じる。
（ああ‥‥たけしさん‥‥好きにしていいのよ‥‥わたしを‥‥たけしさんの‥‥ペットに‥‥して‥‥）
　被虐の快感に目覚めた恭子は心の中でそう繰り返していた。
「き‥‥きつい‥‥でも、気持ちいいや‥‥」
　武史も呻くように言う。
（武史さんがよろこんでくれてる‥‥）
　その言葉を聞いて恭子はうれしかった。
「い‥‥いいのよ‥‥武史さんの好きにして‥‥わたしは‥‥武史さんの‥‥ものだから‥‥」
　シーツを握りしめながらそう言うと、痛みに耐えるため、またマットへ顔を埋める。
「ううっ‥‥ねえさんがしゃべると、こっちにまで響いてくる‥‥す、すごいや‥‥すごく締まってくる‥‥」
　武史はアヌスの収縮に負けないよう括約筋に力を入れて硬度を増す。
「あうっ！」
　武史のものが何倍にも膨れ上がった感じがして恭子が呻く。その異物感から本能的に肉棒を押し出そうと排泄するときのように息んでしまった。その瞬間、武史のペニスはズルズルと根元まで収まった。
「ああっ！　いやっ‥‥」
　まるで下腹の中が肉棒でいっぱいになってしまったような挿入感。でも、最初に感じたような痛みは無い。それどころか、蜜壷に入れられたときとは違う種類の快感がある。
（ど、どうして‥‥）
　考えている間に、武史はゆっくりと抽送をはじめた。
「ひぃ‥‥い‥‥いたぁい‥‥」
　思わずアヌスを締めると痛みが襲ってきた。
（も‥‥もしかしたら‥‥）
　試しに、また排泄するときのように息んでみる。
　すると、どうだろう。あれほどあった痛みが嘘のように軽減するのだ。
「あっ‥‥ああっ！」
　それと同時に、言いようの無い快感が襲ってくる。
「ああっ‥‥だめっ‥‥こ、こんなのって‥‥あっ‥‥あんっ‥‥」
　まだ遠慮がちな抽送に合わせて喘ぎ声が漏れる。
　クリトリスを中心に、どんどん秘肉が熱くなっていく。
「た‥‥たけし‥‥さん‥‥お‥‥おねがい‥‥あそこも‥‥さわってください‥‥」
　絶え絶えに懇願すると、無言で武史の手が前の方へまわり、クリトリスをとらえた。
「ああっ！　そ‥‥そこ‥‥い、いいっ！」
　訓練された指の動きが恭子を千々に乱れさせる。
「ねえさん。すごいよ。ビショビショになってる。感じてるんだね」
　気がつかないうちに蜜をあふれさせていたらしい。
「た、武史さんがよろこんでくれてるから‥‥最初はすごく痛かったけど‥‥ああっ‥‥いいの‥‥も、もっと‥‥前も‥‥」
「こう？」
　武史は蜜壷に指を入れ、愛液をからめ取ると飛び出した肉芽と包皮の間をこする。そう、恭子が自分でいってしまったときのやり方だ。
「ああっ‥‥そう‥‥そうよっ‥‥武史さん‥‥もう‥‥いっちゃう‥‥」
「ぼ、僕もだ‥‥」
　武史の指の動きが速くなる。
「ああっ！　ああっ！　ああ〜っ！」
「ううっ！」
　恭子が絶叫すると同時に武史も精を放った。
　二人とも荒い息をしながらベッドへ倒れ込む。そのはずみで武史のものがズルッと抜けた。
「ああんっ」
　最後の刺激に恭子が喘ぐ。身体はときおりヒクンと痙攣するものの、もう、立ち上がる余力もない。
　やがて、武史が起き上がり、ぐったりとなった恭子の身体を見下ろす。さすがにペニスは萎えて下を向いている。精を出し切ったせいか、その瞳には慈しむような優しい光が宿っていた。しばらく恭子の肢体を眺めた後、冷蔵庫のドアを開けスポーツドリンクを取り出すと一気に飲み干した。
「恭子ねえさんも何か飲む？」
　恭子は答えない。いや、半ば意識を失い答えられないのだ。
「おねえさん‥‥恭子ねえさん。大丈夫？」
　ベッドサイドにしゃがんで恭子の髪を撫でながら、心配そうに恭子の顔を覗き込む武史。
「‥‥あ‥‥た‥‥たけしさん‥‥」
「ほら、お茶もってきたよ。起きれる？」
「あ、ありがとう‥‥」
　さっきまでの残虐性が嘘のように影を潜めている。恭子は上半身をやっとの思いで起き上がらせると、お茶の缶を受け取って口をつける。今までのことが夢のように感じられた。しかし、二人は裸のまま。それに、まだアヌスに残っている感覚は隷属の刻印なのだ。
　もう、自分は武史から離れることはできない。そう思ったが、「離れたくないのよ」と別の自分がささやく。
　そして、
「もう、わたしは武史さんのものなのね」
　と、つぶやいていた。
「そうさ。僕らはもう離れられないんだ。共犯者だしね。だから‥‥」
「だから‥‥？」
「楽しもうよ。ずっと。お金にも困らないしね」
　武史の方を見ると無邪気に笑っている。その顔を見ていたら、深刻に考えている自分がバカバカしく思えてきた。
「そうね。武史さんの言う通りにするわ」
　恭子は初めて笑った。
「おねえさん。お腹空かない？」
「まだ、そんな気分じゃないわ」
　性欲の次は食欲、武史の若さが微笑ましい。
「ちょっと休んでから、わたしのアパートに来ない。外で食べるより、武史さんに料理を作ってあげたいの」
「いいね、それ。おねえさんの部屋に泊まってもいい？　家には、今日は友達の家に泊まるから帰らないって言ってあるんだ」
　きっとまた、食事が済んだら抱かれることになるんだろう。そう思っても、ちっとも嫌じゃなかった。むしろ、期待の方が大きい。
「いいわよ」
　恭子は微笑みながら答えていた。

　ふたりは軽くシャワーを浴びた後、帰路についた。途中、スーパーに寄って食材を仕入れる。大きなビニール袋を武史が持って恭子の部屋へ着いた。鍵を開け電気を点けた恭子の顔が凍り付く。
「ど、泥棒‥‥」
「どうしたの？　おねえさん」
「泥棒が入ったみたいなの」
　部屋の中が乱暴にひっくり返されている。
「おねえさん。警察だ。警察を呼ぼう」
　武史が大声でそう言ったとき、部屋のドアが開けられ、
「服部恭子さんだね？　警察に電話するのは待ってもらおうか」
　という声がした。
「だれ？」
　恭子と武史の視線の先に男が二人立っていた。
「理事長さんから頼まれてね。ちょっと部屋を調べさせてもらったよ。留守だったもんでね」
「なんなんですか、あなたたちは‥‥」
　一目でヤクザと分かる二人に恭子の声が震える。あのお金を盗んだことが分かったのかもしれない。そう思うと血の気が引いた。
「いやね、職員さん全部を調べさせてもらってるんですよ。ちょっと事件があったもんでね」
　武史が震える手で携帯電話を取り出す。
「おっと待った」
　凶暴な顔つきをした方が素早く携帯を奪う。
「誰だい、この坊やは。それに、あんた、どこ行ってたんだい」
　もう一人が恭子を脅すように言う。
「し、親戚の子よ。東京に出てきたので、今日はいろいろ案内をしてたの。それがなんだっていうんですか。その子に何かしたら大声をあげますよ。いったい、何であなたたちはこんなことをするの」
　武史が燃えるような目つきで男達を睨んでいる。
「おねえさんに何かしたら許さないぞ」
　そう言って、恭子をかばう形で立ちふさがる。
「おっと、威勢のいい坊やだな。何もしないから安心しな。ただ、部屋を調べたことを警察に言うなら話は別だけどね。もっとも、我々も成功報酬で動いてるもんでね。こちらが歩合以上のものを払ってくれるなら、それでもいいんだが‥‥」
「出て行ってください。本当に大声を上げますよ」
　誘導尋問だと直感した恭子は虚勢を張った。どうせ、ばれてしまえば、ただでは済まないのだ。
「まあ、そういきり立たないでください。こっちとしては穏便に済ませたいんでね。理事長さんの顔を立てて、私たちがしたことを黙っていて欲しいんですよ。あと、職場のお友達に変わった動きをする人がいたら、ここへ連絡して欲しいんです」
　男が名刺を差し出す。
「分かったわ。誰にも言わないから早く出て行って」
「じゃあ、くれぐれもよろしくお願いしますよ。私たちが組織だということをお忘れなく」
　最後に脅しをかけて、男達は出て行った。恭子は素早く鍵をかける。ふと武史の方を見るとメールを打っている。
「武史さん。こんなときに何してるの」
「うん、ちょっとね」
　そう答えた武史は、唇に人差し指をあてて「黙って」というサインを送った。間もなく、恭子の携帯の着信音が鳴る。
＜盗聴器が仕掛けてあるかもしれない＞
　と、メッセージに書かれている。
「おねえさん、片付けるの大変そうだから、外でご飯食べない」
　武史がウインクしながら言う。
「そうね。この部屋にいるの怖いし、そうしましょうか。わたしも武史さんが泊まってるホテル、部屋が空いてたら泊まっちゃおうかなあ。着替えを用意するから待っててね」
　慌ただしく宿泊の用意をすると二人は車に乗りこむ。
「危なかったねぇ、おねえさん」
「ほんと、怖かったわ。武史さんがいなかったら、どうなってたかと思うと、わたし‥‥」
　もし、あのとき転んでいなかったら、現金は部屋に置いたままだったろう。それが見つかってしまったら、どんな目に遭わされたかを想像すると気が遠くなりそうだ。それに、武史はヤクザと自分の間に立ちふさがってかばってくれた。武史の自分を想う気持ちがうれしかった。
「武史さんのおかげよ。でも、危ないことに巻き込んじゃったみたい。本当に盗聴器なんて仕掛けてあるのかしら」
「明日、調べてみればいいじゃないか。もし、仕掛けてあって、こんなことしゃべったら大変だからね。あることが分かれば怖いことなんてないさ」
「そうね。わたし、あの仕事辞めるわ。前から嫌だったし、退職金ももらったし」
「大丈夫？　怪しまれない」
「いいのよ。どうせコネで入ったんだから、紹介してくれた人にヤクザが来たこと教えれば円満退社よ。きっと、その方が怪しまれないんじゃないかしら」
「そうだね。そしたら、あそこも引っ越そうよ。もっと、僕らが楽しめる場所にね」
「そうね。わたしたち、お金持ちなのよね。なんだか、うれしくなってきちゃった」
「じゃあ、どこかで美味しいもの食べて、またホテルに行こうよ。まだまだ、もっとしたいことがたくさんあるんだ」
　ズキンと恭子の官能が疼いた。ヤクザを紙一重でかわしたスリルが、余計興奮をかき立ててしまったようだ。それは武史も同じらしい。武史の手が恭子の股間に置かれた。
「武史さん‥‥」
「なに？」
「もう、わたしは武史さんのものよ。だから‥‥」
「だから‥‥？」
「武史さんの好きなようにして欲しいの。したいことがあったら、何でもしていいのよ。痛くたって、恥ずかしくったって、なんでも我慢するわ。だから離さないでね‥‥」
　爛れた夜の予感に、恭子はもう溢れてくるのを感じていた。