背後でドアが閉じた。 七恵が雅史を導いた部屋は、壮一郎達の入った部屋より一回り広い。ダブルベッドに、サイドテーブル、ドレッサーに、小さなラブソファ、大型の液晶テレビ――普段は夫婦の寝室に使われている部屋だ。 「七恵さんっ…何考えてるんですかっ……俺…こんなことする気ないです！」 七恵は、部屋に入るなり抗議し始める雅史の背後に回り、くすくすと笑いながら抱きついた。 「そう？この間は、こういうことする気満々だったじゃないの」 乳房を押し付け、右手を雅史のベルトの辺りへ這わせていく。 「そ…それは……っ…止めて下さい。乃梨子まで巻き込んで……っ…」 バックルを外そうとする手を、雅史の手が押さえる。 「奥様が心配？」 押さえて来た雅史の手の甲を、左手で擽るように撫でる。 「大丈夫よ。奥様もきっと愉しんでくれるから」 「冗談じゃないっ。今日は帰ります。乃梨子を連れて」 七恵の手を振り解いて、雅史はドアを開こうとした。 「他所の人妻は淫乱で、自分の奥さんは貞淑だと思うの？」 雅史の背中を見つめ、七恵は冷たく笑った。 「男の人って、どうしてそういう夢ばかり見るのかしらね？」 サイドテーブルに乗っていたリモコンを操作すると、壁にかかる液晶画面が明るくなった。 「え……乃梨子……？」 ドアを開きかけたところで、雅史は振り返り、動きを止めた。 音声は流れていないが、画面に映し出されたのは壮一郎に抱きしめられている乃梨子の姿だった。 「生中継よ。もうあちらは愉しんでいるみたいね」 乃梨子の着ている白いセーターが捲り上げられ、緩めたブラの中に壮一郎の手が這っている。 （あらあら…壮一郎も手が早い……） 二部屋に分かれるなりそこまでしているとは、七恵にも予想外だった。 開きかけたドアを閉じ、呆然としている雅史の背中を押してベッドの方へ導く。 「ね？私たちも愉しみましょう？」 もう一度背中から抱きしめ、ベルトを緩めていく。今度は雅史も抵抗することは無かった。 「嘘だ……乃梨子……」 七恵にベルトを外され、足元にスラックスが落ちても雅史は画面を眺めている。 捲られた乃梨子のスカートの中に、壮一郎の片手が入り込む。 スカートの中までは画面に映っていないが、眉根を寄せ唇を半開きにした乃梨子の表情から、何が行われているのかは容易に想像できる。 （そんなにショックだったのかしら…？） 貞操観念の希薄な七恵には、こういう反応をする夫婦がいるのが不思議でならない。 （そういう夫婦ほどハマってくれるけど…ね） 雅史の背中に身体を寄せたまま、薄く笑う。 「消してください………」 掠れた声で雅史が言う。目に涙が滲んでいるようだ。 「そう？……このままの方が愉しいと思うのに……」 七恵はそっと、雅史の両の手首を掴み、背中へ誘導する。 そして、雅史が呆然としている間に用意しておいた手錠を、その手首へかけた。 「え……？」 雅史が身体を捩る。手錠がガチャガチャと金属音を立てた。 「な…なにしてるんです…七恵さん……」 「なにって……んー…なんだろ……」 いい加減に答えて七恵は雅史の前へ回る。 雅史の足元へ跪き、下着をずり下ろしていく。 「わ…っ……止めて下さいっ……」 後ずさろうとして、下がっていたスラックスに足を取られて雅史がよろけた。 そのままベッドへ尻餅をつく。 「これ取って下さいよっ…」 玩具の手錠でも、それなりに頑丈に出来ているようだ。 雅史が腕を動かしても、金属音を立てるばかりで外れる様子は無い。 「だぁめ。今日はこんな風に……ぜんぶ私がしてあげる……」 ベッドの端に座る形になった雅史の脚の間に膝立ちになり、半勃ち状態の肉棒をぱくりと口に含む。 「っ……ぅ……ぁぁ……」 雅史が声を漏らす。 舌先をちろちろと這わせていくと、すぐに口の中で硬く勃ち上がってくる。 （この間も思ったけど…長くていいわ………きっと奥にうまく当たるわね） この子に跨って腰を振りたい……それも乃梨子が犯される映像を見ながら。 唾液を絡め、ジュルジュルとわざと水音を立てて吸いながら、七恵は自分の背中へ手を回してワンピースのファスナーを下ろす。 「っふぁ……ぁ……七恵さん……っ……」 ゆっくりと雅史の腰が前後に動く。 「んっ……んんっ………んっ……」 咥えたままで雅史を見上げ、七恵はワンピースの袖を抜き、ブラを外す。 白い巨乳が零れ出る。雅史の肉棒が口の中でぴくっと動く。 （ふふっ……おっぱいが好きなのよね……） 含み笑いをして、七恵は頭を前後に動かしはじめる。 「あぁ……止めてください……七恵さん……」 雅史の声が上擦る。 画面の中では、乃梨子が緩やかに腰を動かし始めていた。 それを横目で確認しながら、七恵は咥えている肉棒に手を添えて、根元を強く扱きあげる。陰嚢を揉み解し、アナルへ手を這わせ、指先を挿し込む。 「うぁっ……止めて……ぁぁ……ぅぅっ……」 指でアナルを弄りながら、七恵は一旦口元を離して雅史を見上げた。 「どう？奥様の淫らな姿を見ながらっていうのは？」 七恵の言葉に、雅史は眉を顰めただけで何も答えない。 （こっちに夢中で忘れていたくせに……） くすっと笑うと、七恵はもう一度肉棒を先端からゆっくりと咥えていく。 「ぁぁ…うぅぅ………」 気持ち良さそうに呻くと、雅史は腰をもどかしげに動かす。 七恵は伸び上がり、深く、深く咥えていく。 喉の奥を窄めるようにして、肉棒を締め付ける。 「あぁぁ……すごい……七恵さん……」 うっとりと甘えたような声。 七恵は頭を大きく動かして、咥えた肉棒を赤い唇から出し入れする。 喉奥深く咥えては締め付け、唇で扱き舌先で亀頭を刺激する。 グチュッグチュッと唾液が音を立て、唇の端から床へ滴り落ちていく。 「んっ……んっ……ぁぁ……ぁぁぁ………っ……」 口の中で肉棒が膨れ上がった。 すかさず、七恵は強く吸い上げる。 次の瞬間生温い物が口内に溢れてきた。 ドプッドプッと脈打つように溢れてくる。 「……ふぅ……」 口元を離すと七恵は雅史を見上げてにっこりと笑った。 口内の液体を喉を鳴らして飲み込み、唇の端から白い液が垂れるのを舌先で舐めとる。 力尽きたように雅史はベッドに仰向けに倒れ込んだ。 ※ ※ ※ 雅史は後ろ手に手錠をかけられたまま、ベッドに寝転んでいた。 「奥様も、気持ち良さそうじゃない？」 七恵が指差した画面の中で、乃梨子は立ったまま壮一郎へしがみつき、腰を前後に揺らしていた。 （……乃梨子………） 乃梨子が、初めて会った男を相手に自分から腰を振っているなど、雅史には信じられなかった。 「奥様がこんなに乱れるなんて、意外だったわぁ…」 七恵が、腰のところへ引っかかっていたワンピースを脱ぎ捨てる。紫色の小さなショーツ一枚だけの姿になって、ベッドに上がってくる。 「どう？奥様のこういう姿を見て」 聞きながら、雅史の股間へ手を伸ばしてくる。 逝ったばかりにしては、雅史の肉棒は充血して硬く反り返っていた。 （あぁ……どうしてなんだ……乃梨子のあんな姿で……俺……） 「嫌だって思いながらも、興奮しちゃうでしょ？」 画面の中で腰を振っていた乃梨子が、仰け反り、身体を硬直させた。 「奥様ったら……指だけでイっちゃったみたいね…」 くすくすと七恵が笑う。 「七恵さん……手錠を…外して下さい……」 金属が背中に当たって痛かった。手錠を外してもらって、乃梨子を助けに行こうと思いつく。 乃梨子は壮一郎に抱き上げられて、ベッドに運ばれていた。 白いセーターを脱がされている乃梨子に、抵抗する素振りは無い。 「乃梨子……どうして……」 「んもう……奥様の名前ばっかり呼ばないの」 七恵がリモコンで画面を消してしまった。 「今は私と愉しむ時間でしょ？」 柔らかな乳房を押し付けられる。 「七恵さん……とにかく……手錠を……」 「だぁめ。じゃあ、口だけで私を逝かせられたら…外してあげる」 言いながら、七恵はショーツをするりと脱いだ。 （何を言ってるんだ……この人……） セックスをするのに女性に主導権を握られたことなど無かった。 それが今、後ろ手に拘束された雅史の上に、シックスナインの体勢で七恵が跨ろうとしている。 「うぁ……七恵さん……止めてください……」 愛液に塗れた七恵の花びらが、雅史の顔の前数センチのところで揺れる。 濃いボタン色のそこは、ぽってりと充血して、別の生き物のようにヒクついている。 豊かな乳房の先端が、雅史の下腹部に触れる。 「ね……私にこうされるのとか……想像したでしょ？」 ピチャ…と音を立てて、七恵が肉棒を舐める。 （シックスナインは……想像した……けど……こんなんじゃ……） うまく動けないままに、雅史は腰を揺らす。 「ぁぁ…ぁ……七恵……さん……」 「さっきはすぐにイっちゃったから、今度はゆっくり…ね」 七恵が腰を落としてくる。 避けることもできず、雅史の顔の上へ七恵の秘所が圧し掛かる。 むせるような甘い匂いの中、雅史は舌を差し出して花びらを舐め始める。 「ぁ……ん……そう……いいわ……」 七恵は、時折肉棒に舌を這わせながら、腰を前後に揺らす。 （なんて……なんて厭らしい女なんだ………） 愛液が滴り、雅史の顔を濡らしていく。 陶然として、雅史は愛液を舐め取り、目の前に揺れる花びらに、花芽に舌を這わす。 「クリを……強く吸って……」 七恵が腰の動きを止めてリクエストする。 「ぁぁ……七恵さん……やらしい……」 唇に押し付けられたクリトリスを、雅史は強く吸い上げ、舌で転がす。 「んぁぁ……いぃわ……もっと……おま○この中も……舌を入れて……」 七恵が淫語を口にすると、肉棒が勝手にピクピクと反応した。 「ふふっ…可愛い…」 七恵の唇が亀頭を挟みこみ、舌先が鈴口を刺激する。 （すごい……こんな女……初めてだ……） 舌先を尖らせて、花びらの間に挿し込む。 七恵が口元を肉棒から離し、身体を起こした。 もどかしさに雅史は腰をくねらせた。 「七恵さん……俺……ぁぁ……」 「だめ……今は私が気持ちよくなる番…」 七恵は雅史の顔に股間を押し付けて揺らすことに没頭する。 「ん……んん……」 大きな水音をたてて、雅史は七恵の愛液を啜る。 （手錠が無ければ、押し倒して、巨乳をもみくちゃにして、この濡れ濡れのおま○こにぶち込んでやるのに） 悔しいと思う気持ちと、一方的にされている快感が交錯する。 「ぁん……入れたくなっちゃった………」 そう言うと七恵は身体の向きを変えて、今度は雅史の肉棒へと跨りはじめた。 「ぁぁ……七恵……さん……」 （俺……七恵さんに……犯されてるんだな……） 七恵の欲情した顔と、白い乳房が視界に入る。 雅史が、自分の肉棒が七恵の熱い潤みに迎え入れられるのを期待した瞬間、 「そういえば奥様がどうしてるか、見ましょうか？」 七恵がその前にまた液晶テレビのスイッチを入れた。 （………乃梨子っ…！） 七恵との行為に夢中になって、乃梨子のことを忘れかけていた自分が情けなかった。 画面の中の乃梨子は、全裸で大きく脚を広げられ、壮一郎に犯されていた。 「あぁ……乃梨子………」 自分ではない男に身体を開く乃梨子に失望しながらも、乃梨子が汚れていくことに奇妙な快感を覚える。 壮一郎が乃梨子の脚を掴み、体勢を入れ替える。 四つん這いになった乃梨子の顔が、ちょうどカメラの正面になる。 （感じてるのか…乃梨子……俺が隣の部屋にいるのに……） いや、自分が隣にいるからこそ感じているのかもしれない。 「すぐ奥様に夢中になるんだから…」 七恵に肉棒を掴まれて、雅史は我に返る。 ぎゅっと握った肉棒の先端を秘裂へ宛てて、七恵はそのまま腰を落とし始める。 「う…ぁぁ………七恵さん……っ……」 柔らかく熱い肉に包まれ、肉棒が締め付けられる。 「奥様……あんなに腰を振って……貴方とする時もあんななの？」 七恵が腰をゆっくりと回す。 「ぁ……ぅ………」 （乃梨子は……あんなに……淫らじゃない……） 乃梨子は、何か叫んでいるようだ。 『あなた…助けて…助けて……』 幻聴のように、乃梨子の言葉が思い浮かぶ。 （ごめん……乃梨子……俺のせいだ………） 自分が七恵の誘惑に負けたばかりに……後悔の念がよぎる。 「乃梨子さんも、悦んでいるわ……ほら、あんなに腰を振って……」 肉棒を咥え込んだ七恵の秘所が蠢く。 腰をくねらせ、前後に揺らす。 自分が感じるように動いているのだろう。 「あぁぁ……七恵……さん………」 濡れた柔肉が肉棒に吸い付いてくる。 腰を動かしては、出し入れを愉しむ様が淫らでたまらない。 「感じるでしょう？……奥様と一緒に……犯されて……」 ゆさゆさと大きな乳房が揺れている。 （あの胸に吸い付きながら逝きたい……） 豊かな肉塊を揉み、吸い付きたくとも、後ろ手に拘束された身では何もできない。 お預けされたような気分は、もどかしく、雅史の性感を刺激した。 「…っふぁ…ぁぁ……いい……ぁぁ……七恵さん……」 七恵が腰を揺らす。 画面の中の乃梨子も腰を振りたくっている。 （俺と……その男……どっちがいいんだ……乃梨子……） 「ぁぁ……ぁはぁぁ……イきそう……一緒に……イって……ねぇ……」 七恵は雅史に跨ったまま激しく腰を使い、大きな乳房を自分で揉みしだく。 「んぁ……ぁ……イきそうだ……七恵………っ…………ぅぅ………っ」 一瞬、七恵の膣内に射精したくないと思う。 それも膣壁のきつい収縮の前に霧散していく。 「ぁ……………ん……イクわ……ぁぁ……いぃ…………っ…」 激しく腰を振っていた七恵の身体が硬直する。 七恵の中で、雅史の肉棒が震え、精を放っていく。 ほぼ同時に、画面の中でも乃梨子が絶頂を迎えていた。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2009.4.4掲載 |
桜子さんの作品集→ |