「アップルパイでも作るんですか？」 仕事帰りに寄ったスーパーマーケットで、乃梨子は購入した商品を持参の布袋へ詰めていた。背後から声をかけられたのは、ちょうど紅玉リンゴを手にした時だった。びくっとして振り返ると、アラン模様のセーターにコーデュロイのスラックスというラフな格好の壮一郎がすぐ近くに立っていた。 数日前の電車の中での出来事が思い出され、かぁっと頬が紅くなるのが抑えられない。 （やだ…どうしてこんなところで…） 近所の店なのだから、同じマンションに住む壮一郎とこうして遭遇するのは有り得ることだった。 どう対応して良いのか分からず、乃梨子は黙ったまま手にしていたリンゴを袋に詰める。続いて、野菜類も詰めていく。 「夕飯の買い物？」 壮一郎は無視されたのを気にする様子もなく、質問を続けてくる。 「は…はい」 仕方なく、返事をする。 「僕もですよ。今日は仕事が休みなので、凝った物でも作ろうかと思ってね」 壮一郎が片手に持っていた、レジ袋を軽く持ち上げて示す。 「そう…ですか」 早く立ち去って欲しいと願うのに、壮一郎は隣に立ったまま話を続ける。 「今日は何を作る予定ですか？寒くなって来たし、鍋なんかもいいですよね」 「何にしようかはまだ…考えていなくて……」 わざとゆっくり手を動かしていたが、すべての品物が布袋の中に収まってしまった。 「ご主人は？いつも帰りは早いんですか？」 問いかけながら、壮一郎がさっと布袋を持ち上げた。 「あっ…あのっ…」 乃梨子の荷物を持ったまま、壮一郎は出口へ向かって歩いていく。 慌てて、背の高い後ろ姿を追いかけた。 「僕、車だから送りますよ。同じマンションなんだし、ね」 「いえ、結構ですから、あの…荷物を…」 乃梨子の訴えは聞き流された。 駐車場へ着くと壮一郎はリモコンで紺色のセダンの鍵を開け、自分と乃梨子二人分の荷物を後部座席へ乗せた。 「歩いて帰りますから、返して下さい」 乃梨子は荷物を取り返そうと、一度閉じられた後部座席のドアへ手をかけた。 その手に、壮一郎の掌が重なった。 「そんなに遠慮しなくても」 言葉はやんわりとしていたが、掌に籠められた力は強かった。 「…っ……離して下さいっ」 身体が熱くなる。 顰めたつもりの声が大きくなり、少し離れたところに居た女性が驚いたようにこちらを振り返るのが分かった。 「大丈夫ですよ。何もしませんから」 重なった手を離して、壮一郎が苦笑した。 「ほら、こんなところで揉めていると変です。乗って乗って」 壮一郎は素早く助手席のドアを開いて促した。 「え……」 （だめよ……） あんなことのあった相手だ。乗ってはいけないと思う。 （でも…） こんな近所のスーパーの駐車場で、男と揉めているところを誰かに見られたらと思うと、荷物を無理矢理奪い返そうとするのも躊躇われた。 （あたし……工藤さんの車に乗りたいのかしら……乗りたくないのかしら…） 自分でも良く分からない。 警戒する一方で、何かを期待している自分も確かに居た。 乃梨子の逡巡を見透かすように、 「だから、何もしませんって」 壮一郎がもう一度言った。 「あ……はい……」 （……あたしが妄想しすぎなのかも………） 周囲を気にしながら、乃梨子は助手席へと乗り込んだ。 ※ ※ ※ （まあ、時間も無いことだし） 送るだけにしておこう…と、車を発進させながら壮一郎は考えていた。今日は家に妻も居るし、さすがにここまで自宅に近い場所で事に及ぶのは何かと不都合もあるだろう。 （簡単に乗って来たし、彼女も期待しているのかな） 助手席の乃梨子は、紺色のジャケットにグレーのスカート、黒いストッキングに黒のブーツという地味な姿で、仕事帰りなのだろうと想像できた。 「この間、どうでした？」 曖昧に話題を振ってみると 「えっ…ぇ……あの……」 乃梨子は真っ赤になって口篭った。 「いや、ご主人に忘れ物を届けられたのかなって思って」 「あ……あぁ…はいっ…ちゃんと届けました」 単純な反応に、つい笑ってしまう。 「あれから、電車には乗ってます？」 壮一郎は運転しながら話を続ける。 「いえ……全然…」 乃梨子は助手席で身体を硬くしている。 （あまり遊んで無さそうな女だな） 初心な反応を可愛いと思う反面、深入りしては面倒なことになるかもしれないという気もする。 「そうなんだ。じゃあ、つまらないでしょう？」 「…………？」 言われたことの意味が分からなかったらしい。乃梨子が首を傾げる。そんなささやかな仕草が、嗜虐心をそそるのはなぜだろう。 「いつも愉しんでるのかと思った」 「………えっ……」 「ああいうプレイが好きなんでしょう？」 「………」 乃梨子は黙り込んでしまった。気の利いた言葉ではぐらかすことも出来ないらしい。頬を染め、膝の上で手を握り合わせているのを見ると、もっと苛めてみたくなる。 「痴漢に弄られて、電車の中でおま○こを濡らすのが好きなんでしょう？」 わざと直截的な言葉を使ってみる。 「……違います…」 タイトスカートから覗くストッキングに包まれた膝頭が、もじもじと動いた。 「今も、こうして話しているだけで、もう感じてますよね」 右手でハンドルを握ったまま、左手を乃梨子の膝の上の手に重ねる。 「腰が動いてるじゃないですか」 「やめて下さい」 乃梨子がはっきりと拒絶の言葉を口にしたのは意外だった。 （言いなりになるってわけでもないのか？） 言い返されれば言い返されたで、屈服させたいと思う。 大して会話もしないうちに、マンションの地下にある駐車場へと車は滑り込む。壮一郎は乃梨子から手を離すと、一番奥の割り当てられているスペースへ車を停めた。 「あの…ありがとうございました」 ドアの鍵を外そうとした乃梨子の手を、身を乗り出してぐいっと押さえる。 送るだけと思っていたのが、すっかり気が変わっていた。 「……っ」 小さく乃梨子が息を飲む。 「……離して……っ…んっ…」 何か叫ぼうとする唇を強引に唇で塞ぎ、手を伸ばして助手席のシートを倒す。そのまま華奢な身体の上へ圧し掛かる。 「っ……んっ……ぅ……っ」 乃梨子の脚がバタつき、スカートが捲れる。 そうして抵抗することが、男の情欲を煽るとは思ってもみないのだろう。 身体を押し返して来る乃梨子の手首を掴み、膝を細い脚の間に割り込ませる。 「んんんっ…っ！！」 乃梨子が首を左右に振ろうとする。 少し開いた唇に舌を割り込ませ唇の内側を辿ると、乃梨子の腰がびくんと動くのが感じられた。 ジャケットの中へ手を入れ、ブラウスの上から胸を鷲掴みにする。掌に収まるぐらいの小振りさが、彼女らしくて好ましいと思う。 「んっ…ぅ……っくぅ……」 舌を絡ませる。どうやら舌を噛まれる心配は無さそうだ。 片手を腿に這わせると、乃梨子の抵抗が激しくなる。 懸命に身体を捩り、脚を閉じ合わせようとする。 乃梨子の必死な様子に、すでに濡らしているのを確信して、壮一郎はうっすらと笑みを浮かべた。 乱暴に手を進めて、脚の付け根の部分をぐいっと掴む。 指で辿ると、思った通りストッキングの上まで愛液が染み出してぬるついていた。 （無理矢理されるのがお好みって訳か） 「もうこんなに濡れてますよ」 ゆっくりと股布の上から捏ね回しながら、指摘してやる。 「い……やっ……っ」 乃梨子の身体がずり上がり、抵抗する膝が壮一郎の鳩尾を蹴った。 一瞬壮一郎の手が緩んだ隙に、乃梨子は倒れたシートの上で身体を捩り、四つん這いになって後部座席へ逃げようとする。壮一郎はその腿を強く掴むと、下着の腰の部分へと手をかけ、ストッキングと下着を一気に引き下ろした。 膝まで下がった黒いストッキング、ピンク色のショーツ、薄暗い車内に剥き出しになった白い尻が浮かび上がり、慎ましやかな菊座も、愛液に濡れた秘裂も丸見えになる。 「きゃぁっ」 悲鳴をあげて、乃梨子が身体を伏せる。 「いい眺めですよ。奥さん」 背後から手を伸ばし、割れ目を前から後ろへ軽く撫で上げてやると、 「ぁ……ぁぁっ……」 乃梨子は明らかに悲鳴とは違う、甘い響きの混じった声をあげた。 「どうしてこんなに濡れてるんですか？」 「い…いやっ……ぁぅぅ…」 繰り返し指先で撫で上げると、乃梨子の尻がピクンピクンと跳ねる。 「相変わらず感じ易い、いい身体ですね」 「ぁ……ぁ……いやぁ……」 乃梨子の声がか細くなり、伏せた顔が横にイヤイヤと動く。 白く形の良い尻は持ち上げられたままで、壮一郎の指先が花芽を探り当てると何かをねだるように淫らにくねった。 「いやってことは無いでしょう？こんなになってるのに」 壮一郎は揺れる尻を押さえると、中指を真っ直ぐに伸ばし、蜜を湛えている中心へゆっくりと突き立てた。 |
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| 2009.1.10掲載 |
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