この頃ヘンだ…と乃梨子は思う。 原因ははっきりしている。７０５号室の工藤壮一郎のせいだ。 自分は元々、性には淡白な方だと思っていた。 雅史との夜の営みも新婚当時こそ毎夜のようだったが、最近は週に１度あるかないか。それでも特に不満は感じていなかったし、自分から求めることも、自慰をすることも無かった。 （あたし……どうしちゃったのかしら……） 痴漢に尻を触られ、下着の中へ手を入れられ、その一部始終を壮一郎に見られていたこと。耳元で囁く壮一郎の声。地下の駐車場、車の中で四つん這いになっていた自分。秘裂に挿し込まれた壮一郎の指。 日に何度も思い出しては股間を濡らし、自らの指を挿入する。 最初は思い出すだけだったのが、次第に妄想が入り混じった。 妄想の中で乃梨子は、車内で裸に剥かれて大勢の男に犯されたり、自宅に尋ねて来た壮一郎に恥ずかしい行為を強いられたりしていた。 今もキッチンで夕飯の準備をしながら、ふいに淫らな妄想が思い浮かび、作業の手が止まってしまった。 想像の中で乃梨子は、電車に乗っていた。 痴漢が乃梨子の身体を触る。 それも１人だけではない。 スカートを捲り上げて尻を触られ、胸元に手を差し込まれて乳首を摘まれ、濡れた股間をショーツの上から捏ね上げられていた。 自分でスカートを捲り、ショーツの中へ手を入れる。 Ｔシャツもブラも捲り上げ、乳首を摘み、乳房を揉みしだく。 （ぁ……ぁぅ……工藤さん……） 妄想の中では、股間を責めているのは壮一郎になっている。 立っていられなくなり、乃梨子はキッチンの床に膝をつく。 ショーツを膝までずり下ろし、四つん這いの状態で指を秘裂へ挿し入れる。 「ぁ…ぁぁ……いや……」 乱暴に指を出し入れすると、クチュクチュと水音がする。 複数の男に犯されていると想像しながらの自慰は、たまらなく甘美だった。 用意しておいた、泡立て器を取り出す。 その丸みを帯びた柄がとても具合が良いことを、乃梨子はここ数日で見つけていた。 「や……入れないで……」 想像の中で男達に懇願する。 懇願しながら、泡立て器の柄を秘裂に宛がう。 （ぁぁぁ……工藤さんが……あたしを…犯して……） 「やぁ…ん……」 ゆっくり柄を挿入していく。膣壁が抵抗を示して、なかなか奥へは入らない。 『きついな……』 想像の中の壮一郎が言う。 乃梨子は尻を高く上げながら、奥へと挿し込んでいく。 「ぁ……ん……いや……入れないでぇ……」 自分で入れておいて、入れないでも無いものなのだが、頭の中では壮一郎が乃梨子の腰を押さえつけ、肉棒を突き入れている。 『ぐちゃぐちゃに濡らしといて、何言ってんだよ奥さん』 他の男に下卑た言葉をかけられる。 「やっ…ぁ……はぁっ……」 ぐりぐりと奥を抉るように泡立て器を動かす。 「んぁっ……ぁぁぁっ……っ…」 『この間、入れてやれなかったお詫びだよ』 想像の壮一郎の腰の動きに合わせ、四つん這いの乃梨子は腰を振る。 「ぁん……いぃ……いぃっ……」 淫らに身体をくねらせてよがる乃梨子を、見つめる痴漢達の厭らしい目。 激しく突き上げてくる壮一郎の肉棒を思いながら、手に持った道具の動きを早めていく。 「ぁ…ぁぁ……いくぅ……」 犯されながら達する乃梨子に、周囲から卑猥な言葉が浴びせかけられる。 キッチンの床に倒れ伏して、乃梨子は四肢をぴくぴくと震わせた。 「はぁ……はぁ……はぁ………」 達してしまうと、気怠さの中に自己嫌悪が押し寄せてくる。 下着を直して立ち上がり、愛液に濡れた泡立て器をシンクに置いて、乃梨子はトイレへ向かう。 もうすぐ、雅史の帰って来る時間だ。 乃梨子がキッチンでひとり淫らな行為に耽っていた頃、雅史がマンションの同じフロアで他の女の身体に溺れかけていたことを、乃梨子はまだ知らない。 ※ ※ ※ せっかく買ったケーキの包みを工藤家へ忘れて来たことに雅史が気付いたのは、夕食が終わってからだった。なぜか、七恵と淫らな行為を愉しんだことよりも、ケーキを乃梨子に食べさせてやれなかったことの方を申し訳なく感じた。 何事も無く夜は更け、いつものように寝室のダブルベッドに夫婦で横になったものの、目は冴え、いっこうに眠りは訪れなかった。 七恵の白い乳房が目の前にちらつき、揉みしだいた時の感触がまだ掌に残っている。思い出すだけで、雅史の股間のモノは、硬く勃ち上がってくるのだった。 「乃梨子……」 傍らに眠る妻に声をかける。いつもであれば、寝つきの良い乃梨子はぐっすりと深い眠りに落ちているところだったが、 「ん……？」 珍しく返事があった。 無言で抱き寄せる。 雅史が求めた時に、乃梨子が拒絶することは決して無い。 けれど、乃梨子の身体が挿入可能なまでに潤うことが少なかった。 痛がるのを無理強いすることは雅史には出来なかったので、自然と夫婦の営みの回数は減っていた。 （今日も無理なんだろうなぁ……） そう予想していても、雅史は自分の昂ぶりを柔らかな女体にぶつけたかった。 パジャマのボタンを、やや乱暴に外していく。 「ぇ……どうしたの……あなた…」 戸惑うような乃梨子の声。 休日の前夜でもないのに、雅史が求めてくるとは思っていなかったのだろう。 「……すごく………やりたいんだ……」 パジャマの前を開き、露になった乳房を揉みはじめる。七恵のものと比べてしまうと小振りではあるが、柔らかな感触が掌に伝わり雅史は興奮した。 （乃梨子を相手に興奮するのって……久し振りかもしれない……） 乳房に唇を押し付け、強く吸い上げる。乃梨子の乳房なら、どんなにキスマークを付けても大丈夫だ。 「………ぁん……」 乃梨子が控えめな声をあげる。 雅史の唇は、乳房の上を這い回り、乳首へ到達する。 乃梨子の乳首は、硬く尖っていた。 いつにない敏感な反応を不審に思うこともなく、軽く歯をたてる。 「ぁぁっ……んっ……やっ……」 身体の下で、乃梨子が身をくねらせた。 チュパチュパと音をたてて乳首を吸う。 （あぁ……もっと七恵さんのおっぱいを吸っておけば良かった……） 乃梨子の乳房を捏ね、乳首を吸い立てながら、七恵の巨乳を思う。 （あんなチャンス、もう二度とないかもしれない……） 乳首を摘む指先に力が入る。 「んくっ……痛い……ぁん……っ…」 びくんと七恵の身体が跳ねる。 それを押さえ込みながら身体の位置を移し、パジャマと下着を一緒に脱がせていく。 「いや………あなた………」 嫌がるようなことを乃梨子が言うのは珍しい。 （今日は…濡れてなくても……捩じ込んでやる……） 雅史は乱暴な気持ちになり、乃梨子の両脚を掴んで大きく開かせる。 「ぁぅ………」 乃梨子が身体を捩る。 構わず股間へ顔を寄せ、尖らせた舌先でクリトリスをつつく。 「んっ……はぁ……ぁん……」 甘い吐息を零し、乃梨子の腰が跳ねる。 （……ん…？今日は……ずいぶん濡れてるじゃないか…） 乃梨子の秘所は珍しくたっぷりと蜜を湛えていた。 （俺の興奮が伝わったかな……） 勝手なことを考えて、自分もパジャマを脱ぎ捨てていく。 痛いほどに勃起した剛直が現れる。 乃梨子の身体をひっくり返すと、腰に手を添えて引き寄せる。 「ぁ……ぁんっ……や……雅史さん……」 後ろからの挿入を乃梨子があまり好きではないのは知っていた。 しかし、今日は挿入しながら七恵のことを考えたかった。 酷い夫だと心がチクリと痛んだ。 （ごめん…乃梨子……今日だけ……） 暗い部屋に白く浮かび上がった乃梨子の尻に手を添え、ひくつく膣口へと雅史は肉棒をあてがった。 |
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| 2009.2.7掲載 |
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