第５章　　まなざし
　
　やっぱり、ちょっと、後ろめたい。
　裏切っちゃった気がして。
　ううん。気がするんじゃなくて、ホントに裏切ちゃったのよね。
「大丈夫、あいつは、喜ぶから」
　な〜んて、言い残して、お義兄さんは、お風呂に行っちゃったけど。
　男の人って、お気楽よね。
　いくら、仲の良い兄弟でも、奥さんが、お兄さんとエッチなコトしたら、起こると思うんだけど。
　だから、お義兄さんと入れ替わるように、夫が出てきて、もうドキドキ。
　もちろん、その時には、浴衣を着てたけど。
「何だ、待っててくれたんだ」
　何よ。何だは無いでしょ、何だは。
　ホッペをぷくっとふくらませて、私はくるりと後ろを向く。
　夫は、タオルも巻かずに後ろから迫ってくる。へ〜んだ、鏡に映ってますよ〜だ。こういうところにはつきものの、大きめの鏡が、後ろの夫を写してる。　
　不意に夫の姿が鏡から消えて
「きゃう」
　もう。いきなりお尻を触ってきた。ダメよ、ビンカンなのに。
「あれ、穿いてるの？」
「当たり前でしょ」
　さっきの約束、忘れたわけじゃないけど、まさか、本気じゃないわよね。さすがに、ブラくらいならいいけど、下に何にも付けないなんて。
　だって、まだ暖かいから、丹前は部屋に置いてきてしまったもの。
　宿の薄い浴衣だと、きっと、ヒップラインがまるまる出てしまうから。
「そんなあ、本来、浴衣は付けないのが当たり前なんだよ」
　そりゃ、そうかもしれないけど。
「ほら」
「いや！」
　私の後ろに跪いたまま、下から見上げるように喋ってたせいか、つい油断してた。夫の手の早さを。
　いきなり、ショーツが降ろされてしまったの。もちろん、浴衣の裾から、一気に手を入れられたのだけど。
「あなったったら。もう〜、やめてよ」
　私は、手で押さえようとしたけど、そのまま、足首まで下げられちゃうと、あきらめるしかなかったの。
　さっきのお義兄さんとのことがあったせいかな、なんとなく、夫の言うことくらい聞かなきゃって感じもあったのよね。
「ほう〜、素直、素直」
　私が、おとなしく、片足ずつあげたから、夫は上機嫌。　
　ああ、なんだか、頼りない感じ。ペラペラの浴衣だけど、なんだか、肌にはサラサラしてて、着心地は良いんだけど、裾が開いちゃいそう。
　帯がゆるまないように、もう一度締め直そうとしたのだけど。
「あ〜あ、ヘタだなあ。美樹。貸してごらん、こうやって巻くんだよ」
　さっさと、私の手から、結び目を取ると、一度ほどき出す。
「あ、いや」
　私は、帯を取られて、あわてて、前をかき合わせる。
「何言ってるんだよ。誰も見てないだろ。これからなのに」
　だって、帯を取られた姿が、鏡に映って、思ったより、ずっとエッチなカッコって思えちゃったの。
　浅葱色の浴衣がはだけて、私の胸の裾がみんなみえちゃって。もちろん、下の茂みも。オンナのたしなみのとして、あわてちゃうのが当然よ。
「ほら、手をあげて、あ、早々、そのまま後ろにして。前は帯で押さえてるでしょ」
「え、あ、はい」
　私は、素直な良い奥さん。夫の言ったことには素直に従う。器用な夫は確かに荷造りや、梱包をさせたら、私なんかより遙かに上手だから。
　まあ、荷造り、じゃないけど、似たようなものだしね。
　で、特別な結び方をするのかと思ってそのまま手を後ろに。
「え、あれ、やだ、ちょっと、手が絡まってるよ」
「大丈夫、大丈夫」
　後ろで楽しそうな声。夫がこういう声を出すときは、いつもろくなコトにならないのだけど。でも、手が動かせなくなったので、ちょっと、あなたって言いながら、様子を見てる。
　あれ？なんだか帯が、さっきより緩いような気がする。
「ほら、できたよ」
「あなた、何してるのよ、緩いわよ、いいえ、違った、手が動かないじゃない！」
「美樹そのまま、両方の手首を後ろにつきだして」
「何なの」
　なんだか特別な仕掛けかな。
　私は手を後ろに突き出す。絡まった帯がスルスルとついてきて、浴衣の帯が、またきつくなってくれる。
「なんなの、これ。それに、手が取れないわよ」
「大丈夫、美樹、普通じゃ面白くないでしょ。帯で手を結んじゃったから、このまま、手を後ろに引っ張ってれば帯はゆるまないよ」
「ちょっと、じゃあ、手を戻したら」
「そ、帯はゆるんじゃう。それに、手は、絶対前に行かないから、前も直せない」
「ちょっと！そんな。こんなの約束してない！ほどいてよ」
「大丈夫、部屋に入ったら、ほどいてあげるからね」
　私はあわてて、何とかほどこうとしたけど、手を後ろに突き出してないと、たちまち帯がたるんでしまう。
　それなのに、両方の手は、１センチだって、離れなかった。
　ひどい。
　これじゃあ、部屋に戻るまで手を後ろに突き出してないと、前が開いちゃう。
　ただでさえ、サラサラしてる浴衣だから、慎重に動かないと、足が出ちゃうのに。
「ほら、美樹、部屋に行こう」
　夫は、さっさと入り口に向かってしまう。カラリと戸を開いて、私を手招き。
　もう〜。
　普段だったら、絶対許さない。
　だけど、さっき…
　私は、夫に申し訳ない気分がまだ残ってて、だから、できる限り、言うことを聞かなきゃって思えちゃう。
　それにしても、なんだか、夫は強気。こんなことして平気なのかしら。
　私が怒るなんてちっとも思ってないみたい。やっぱり旅先だからかな。
　ま、仕方ないかな。それに、部屋に戻るまで、ほんのちょっと廊下を歩いて、階段を上るだけ。
　５分もかからないもの。
　私は、あきらめて、夫の所に歩いてく。もちろん、そぉーっと。
「むふふ」
「なによ」
　照れ隠しで、乱暴に返事する。
　でも、夫はとってもうれしそう。鼻の下を伸ばすってこういう顔かしら。
　後ろに手を突き出す姿勢なんて、とっても不自然。
　えっと、そう言えば、昔、見た古い映画で、ローマ帝国の奴隷が、そんな姿で船に押し込められてたっけ。それから、足かせがつけられて、船を漕ぐのよね。
　大変だったのね、奴隷さんて。
　ああ、奴隷で思い出しちゃった。
　ＯＬ時代に女同士でお泊まりしちゃった時。もちろん、男っ気なんて無しだったけど、夫にも内緒。みんなでビデオを見たの。
　沙也佳の、仲間内でも、すっごく「オタク」で有名な沙也佳が選んだ、特選ビデオ。
　そうしたら、アニメとエッチなのばっかり。
　その中にあったわ。ぜーんぶ裸で、首輪を付けられて、手を後ろに縛られて、奴隷として売られちゃう話。もちろん、主人公は女の子。
　まだ、夫とつきあい始めたばかりの時。だから、もちろん、エッチは知らなくて。アダルトモノを見たのも初めてだったに。　
　ショックだった。
　海外のだから、全部、丸見えで。男優さんのが、なんか、私の腕くらいあるの。
　そんなに大きいの？　って思ったけど、聞けなかった。
　みんな、なんだかんだ言っても集中して見てたから。
　だから、初めて夫とエッチをしたとき「良かった、小さい」って思っちゃった。
　つくづく、独り言を言うクセが無くて良かった。
　もし、口走ってたら…
　そうそう、奴隷。
　首輪を付けられて、ご主人様に、いろんなエッチなご奉仕をするシーンの連続。
　裸でオークションのステージにあげられて、一切隠せない姿を大勢の人に見られて。お金で買われて、ご主人様の前でオナニーまでさせられちゃう。
　私のオ○○コをお使いください、なんて言って、お尻を差し出して、最後は、ご主人様の出すものを飲まされちゃったり。
　もう、信じられないようなシーンの連続。
　で、最後に主人公がＭに目覚めちゃうんだけど、あのビデオを見ながら、私ったら、濡れちゃったもの。何でだろ。
　恥ずかしくって、誰にも言えないけど。
　あのビデオの最初のシーン。
　主人公が奴隷のオークションに裸で連れ出されるところ。
　あんなコトされたらタマラナイと思う。
　だって、裸なのに、首輪を付けられて、腕を後ろに縛られちゃって。
　大勢にじろじろ値踏みされちゃうの。
　あれ、今の私って。
　腕を後ろに縛られちゃって、下着も着けないで温泉の廊下を歩いてる。もし、腕をゆるめたら、浴衣がはだけちゃう。でも、はだけた浴衣を直すこともできないの。
　ちょっと、ほんのちょっとよ。一瞬だけど、あのビデオの主人公と私、似てるって思ったら、また、エッチなところがキュウーンとしちゃって。
「あれ、美樹、どうしたの、顔、赤いよ」
　横を歩いてる夫が、意地悪な顔で、楽しそうにささやいてくるの。
「あん、そんなこと、ない」
　やめてよ。耳元でささやかれると、耳って、そんな風にされると感じちゃうんだから。
　そうよ。恥ずかしいだけなんだからあ。
　大浴場の前を通り抜ける。
　良かった。誰もいない。
　それに、大浴場の前にある、休憩所。そう、水が飲めたり、マッサージイスがある所。
　今は、ちょうど誰もいなかった。　
　正直言ってホッとする。だって、こんなカッコ、ヒトサマに見せられないモノ。
　私は、悪者につかまった奴隷じゃないんだから。
「あ、そうだ、美樹、コーヒー飲みたいね」
「私は飲みたくないわよ」
「いや、俺が飲みたいんだ」
「後で良いでしょ、まっすぐ部屋に行こ」
　何を言い出すのよ。コーヒーはロビーで飲めるけど、まさか、あんなに明るくて、大勢いるところに行かれるわけ無いでしょ。
「そうかぁ、缶コーヒーで良いんだけどなあ」
　なんだか、とっても残念そうにしてる。
「あ、じゃあさ、ちょっと、ここで待っててよ、僕だけで買ってくるから。それなら良いでしょ」
「先に、部屋に戻ってちゃだめ？」
「だって、その腕じゃ、部屋のカギ開けられないでしょ」
「それなら、一度、部屋に戻ろうよぉ」
「はは、すぐだからさ。それとも、一緒に行く？」
「もう」
「じゃ、あのソファで、座って待ってたら？あそこなら目立たないし」
　夫は、私を抱き寄せるようにして、通路の陰にあるソファを指さす。
　夫もたまには良いことを言ってくれるのね。確かに、柱の陰にあるあのソファなら、通る人からは目につきにくいかも。
　あれ？あなた、なんで、ソファがあるのを知ってるの。
　ちょっと、不思議だったけど、人目につかないというのは大事なこと。そっと、私は、ソファに向かう。
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
「早く帰ってきてよ。こんな姿、人に見られたら、恥ずかしいもの」
　私の不安そうな顔の、何がうれしいのか、夫と来たら、にっこり笑ったの。
　二、三歩歩いて、そこで、急に振り向く。
　何？
「あ、いっけね」
「どうしたの？」
「ごめん、買ってくるついでに、仕事の電話、一本してくるよ。ま、そんなに時間かからないからね」
「そんな、ちょっと、待ってよ、あなたぁ」
　でも、夫は私の方を振り向きもしないで行ってしまった。
　仕事のことになると、ホント鉄砲玉なんだから。
　私は、しかたなく、柱の陰になってる、ソファにゆっくりと座る。
　こんなことなら、せめて、手をほどいてもらうんだった。
「あ！」
　私は、ちいさく、悲鳴をあげちゃう。
　だって、浴衣って、膝が出る動きをすると、自然にはだけちゃうもの。普通なら、軽く手でさばけば、どうってことないけど。
　おしとやかに座ったつもりだったけど、膝の部分が、サラって、はだけてしまった。
　そうよ、フツーなら、座ったり、立ったりする度に裾を直すもの。
　でも、今は、そんなこともできない。
　それに、ソファに座るってコトは、後ろに背もたれがあって、そうすると、腕を後ろに突っ張れない。だって、体重がかかるもの。
　あーん、どうしよ。
　裾が割れちゃって、直せない。帯もゆるんじゃうし。
　ここで、立ち上がったら、きっと、前がもっとはだけちゃう。一度はだけたら直せないのよ。
　どうするのよ！
　私をこんな風にして置いてってしまった夫に、今度は、ちょっと本気で腹を立てちゃう。だって、私をこんな所に置いてくなんて。
　ゆるんだ帯は、サラサラの浴衣を止めてくれない。だから、息をする度に、胸元もはだけちゃう気がして。
　ううん。気のせいじゃない。自分ではよく見えないけど、胸元が広がっちゃってる。
　顔を下に向けると、自分の肌が見えるもの。浴衣が、合わさってるはずなのに。
　足だって、太もものあたりで、スッと左右に分かれちゃってるから、もし、少しでも足を広げたら、きっと、茂みが見えちゃう。
　え〜ん、どうしよ。
　緊張して、身動きできない。
　でも、ドキドキしちゃうから、つい、周りを確かめちゃう。大丈夫、誰もいないわ。
　その時だった。
「いや、いい湯だったな」
「今度は、露天の方にでも行きましょうか」
「ま、その前に、ちょっと一息入れるか」
　どっちかというと、ちょっと年配の男性の声。それも、けっこう大きな声。
　ガラガラと戸を開けて、何人か出てくるみたい。
　どうしよ、見つかっちゃう。
　私は、一生懸命、小さくなろうとしたけど、身動きできない。だって、これ以上動いたら、大事なトコが見えちゃうもの。
「後でカラオケかあ」
「おう、島さん、マイク離さないからなあ」
「ははは、でも、藤八さんのマイクは、女の子が離さないってね」
「言えてらあ。３０センチ砲は健在なりってか」
　ドキ。私にだって、何言ってるのかくらいわかる。
　男の子の人のモノのことを言ってるのよね。でも、３０センチって、いったい、どんなのよ。私は、勝手に想像してドキドキしちゃう。
　だって、ビデオのご主人様は、そのくらい逢ったもの。
「はは、よしとくれよ、もう昔の話だよ」
「そんなこと言っちゃって、『街』のママがご執心だって」
「あ、それで、藤八っつあん、最近店にいないんだ」
「おいおい、そのくらいにしといてよ。あ、俺はちょっとマッサージしてくよ」
「おう、じゃ、俺は先、行ってるよ」
「じゃあ、一緒にマッサージかな。つれション、つれマッサージは男の華ってね」
「おうよ。じゃ、あとで露天で、逢おうか」
「ほいほい、露天、カラオケ、後はストリップでも見っか」
　私は、ドキってする。だって、マッサージ・チェアって私の目の前なのよ。

　壁の方に向いて、柱の陰にソファがあって、壁にはこっちに向けたマッサージチェアが、２台並んでおいてある。
　マッサージチェアに座れば、２メートルと離れないところで、私と向き合っちゃう。
　どうしよ、どうしよ、って考えているうちに、来ちゃった。
　浴衣を着た２人連れ。
　良かった。どっちかというと、もう初老のおじさん達。最初は私に気づかない。
　もちろん、イスに座ろうとすれば、私の正面。
「おお」
　なんだか、そんな声が聞こえたような気がする。
　目が合っちゃえば、会釈くらいはするものよね。でも、あんまり大きく動けないから目だけで、お辞儀をしたつもり。
　あれ、なんだか、おじさん達、うれしそう。お互いに目と目を合わせるような仕草。
　そして、ゆっくりとマッサージチェアに二人並んで座る。
　スイッチを入れながら、おじさん達が話しかけてくる。
「これは、これは、お嬢ちゃん、お一人ですか」
　総白髪の、おじさんと言うより、おじいちゃん。どっちかというと、小さなお店をやってる親父さんみたいなタイプが、話しかけてくる。
　人なつこそうな笑顔だけど、なんだか、目がイヤらしい気がする。だって、私のこと、なめ回すみたいに見てるんだもの。
「いやあ、浴衣の女性は色っぽくっていいねえ」
　こっちは、頭がちょっと薄くなってる。こっちの人の方が若いかな。
「いや、最近の女性は浴衣が色っぽくっていけねえや。どうお嬢さん、一緒に風呂でも、ははは」
「大将、おやめなさいって」
「あ、こりゃどうも」
　大将と呼ばれた方は、どうもと言いながら、どっしりと腰を下ろしたの。
「スイッチ、スイッチ、スイッチはどこかな〜」
　不思議なリズムで、スイッチ、スイッチと言いながら、あっちこっち探してる。あれ？でも、探しながらチラ、チラって、こっちを見てる気がする。
「大将、よこ、横。横だよ」
　深々と腰を下ろした白髪の方が、自分のスイッチを入れてから、教えてる。
「おぉっと、年取ると電気はダメだねぇ。お嬢さんみたいに若い人なら良いんだろうけど」
　私は、なんと答えて良いのかわからないから、曖昧に笑うしかない。夫に言わせると、「他人につけ込まれやすいのに日本人は簡単に笑うんだから」ってことらしいけど。
　だって、私、日本人なんだも〜ん。こういう場合って、笑ってごまかすしかないじゃない。逃げらんないんだから。
　だって、今、立ち上がったら、絶対、浴衣がはだけちゃう。
　それに、この場所から逃げようとして立ち上がったら、手を後ろに縛られてるってわかっちゃう。そんな恥ずかしいトコ、絶対に見せられない。
「う〜ん、効くなあ」
　静かな声で、そうつぶやいて、白髪のおじいちゃんは目を閉じた。
　でも、はげた方のおじさん、『大将』って方よね。こっちは、チラチラどころか、目が私の方に釘付け。
　浴衣がはだけたむき出しの足をじっと見てる。
　恥ずかしい。やっぱりエッチなオンナって思われてるのかしら。
　視線が刺さってくるような気がして、どうしようもないの。
　でも、剥げかけてたペティキュア、昨日直しといて良かった。なんて、思っちゃうのも不思議だったけど。
「いやあ、毎年変わらない、商店街の旅行だけど、今年は、目の正月で、ほんと、よかったよ」
　横の白髪のおじいちゃに話しかけてる。ひそひそ話をしてるつもりかもしれないけど、ガラガラ声だから、ちゃんと聞こえちゃってる。
　どうしよ。見られちゃってるよ〜。
　あれ？
　目を閉じてると思ってたのに、時々、こっちを見てるみたい。白髪のおじいちゃん。
　そして、手をゆっくりと浴衣の中に入れて、何かしてる。
　何してるんだろ。私は、白髪のおじいちゃんの顔を見る。
　チラッて目が合う。おじいちゃんの目が何か言おうとしてる。
　私は、つい目が離せなくなって、目を合わせてると、私の視線を誘導してる。
　つい、下を見た。
「！」
　私の方に向けられてる両膝。男の人ってどっしり座ると足の間が開いちゃうのよね。だから、おじいちゃんの白い下着が見えてたのだけど、さっきまで。
　なにこれ。すっごい。こんなのあるんだ。
　おじいちゃんが、さっき、ごそごそしてたのは、下着の間から、アレを取り出してたのね。
　私の位置からだとはっきり見えてしまった。そうなの、この人が『藤八』さんだったのね。
　さっきいってた３０センチ砲。ほんとうに３０センチかどうかわからないけど、まだ、柔らかいままなのに太ももの半分くらいまで届いてる。
　そんなの見るなんて、はしたないって思ったんだけど、一度見ちゃうと、目が離せない。
　だって、こんなすごいもの、本当にあるのね。ビデオで見たのと、同じくらいの大きさかも。
　私は、ドキドキしちゃって。ふと気になって、おじいちゃんの顔を見てみたの。
　どうしよ。また、目が合っちゃった。
　ニヤって、口元だけで笑ったの。
　あ〜ん、最初の印象は、こっちのおじいちゃんの方が、紳士かなって思ったのにぃ。
　この笑い方は、私が、見ちゃったの知ってるよって、言いたいのよね。
　えぇ、えぇ、どうせ見ちゃいましたとも。でも、おあいにく様。大きければ、良いってモノじゃないもん。第一、あんなの入らないわ。
　壊れちゃいそう。
　あれ？何で、自分に入れること考えちゃうんだろ。私は、夫としかしないもの。
　そう言いながら、さっき見たばかりのお義兄さんのアレを思い出しちゃう。
　あ、ダメ。思い出しちゃうとヘンになりそうで、でも、目を開けると、おじいちゃんのモノが目に入っちゃうから、また思い出しちゃって。
　その時気がついたの。
　浴衣。はだけるだけじゃなくて、胸の部分も浮かんじゃってるから、もし、横から覗かれたら、胸の先端まで見えちゃうかも。
　それに、このサラサラする浴衣。困っちゃう。身動きしないつもりでも、ほんのちょっとだけ、動いちゃうでしょ。
　そうすると、このサラサラする浴衣が、胸の先端をこすっちゃって、それが、絶妙なの。なんだか、先端を手のひらで撫でまわされてるみたい。
　その度に、ヒクンってなっちゃう。
　そうすると、つい、力がはいっちゃって、キュッて太ももを締め付けちゃう。
　あ、いっけない。また、浴衣が…
　ほんのちょっとだったけど、また、見えてる部分が増えてる気が。どうしよ。
　あ〜ん、また、先端がこすれちゃう〜。
　まるで、いやらしいオンナみたいに、人前で感じちゃって、その上、浴衣からカラダが見えてるのに隠せない。逃げられない。
　どうしたらいいの。
　なんだか、ダメになっちゃいそう。どうしよう…