第１４章　　　虎太郎との結婚式


　夫には、言えなかった。お芝居での結婚式であるが男として許せないように思えた。遊びの結婚式なのだと言い聞かせていた。翌月には、虎太郎との新婚旅行にも行くことになっていた。
　金持ちの遊びと思っていた。

　虎太郎は、マミを緊縛の世界に連れ込もうとしていた。緊縛美を追い求めていた虎太郎に、マミとの出会いが忘れかけていた緊縛を思い出させた。若い女は、お金を出せば何人も来るがお金だけが目当てなので、緊縛しても、セックスしても終われば、さっさと帰ってしまう。そこには、情とか愛とかという言葉の片鱗もなかった。

　その虚しさに緊縛を諦め、女にも飽きていた。ねっとりと絡まるような情念でお互いのドロドロとした恋心を、肉体の悶えを交わせる女がいなくなっていた。そこに現れたのが人妻であった、マミなのだ。マミには身体をお金で売るという意識は全くなく、身体の悶えをありのままに男に求めてくるところに、マミの女としての価値があった。

　その日は、木曜日の午後に来ることになっていた。東京駅でマミと再会して、デパートでマミの好みのものを買っていた。エルメスのバックと指輪にネックレスとイヤリング、虎太郎は全財産をマミに譲っても良いと思っていた。虎太郎の亡くなった妻でもマミのように慕ってはいなかった。その頃は、奥さん以外に何人もの愛人を抱えており、自宅に戻ることが稀であった。

　そんな夫に愛情の欠片も無くしてしまっていた。当然かもしれない。妻に愛を注ごうと気が付いたときには、他界していた。若い女を金の力で買い求めたが、お金だけが目的で、女に対する魅力を損なった。ここ数年間、女を抱いたことがなかった。マミを抱いたとき、惜しげもなく奉仕してくれるし、男の愛撫に悶え、更に追い求めてくる凄まじさに感心していた。終わっても、その余韻を謳歌するゆとりがあった。虎太郎の理想の女と思えた。

　夫の海部諒は、課長になったことがストレスを増長させていた。これまではマミを抱くことでストレスを解消できていたが、肝心なペニスが勃起しなくなっていた。３５歳という年齢は中間管理職で責任だけは重くのしかかり、ノルマが時代の変化で中々達成できなくなっていた。

　部下は「ノルマのできない理由」を会社の責任、上司の責任として諦めムードがあった。課長としては、「そうか」では済まされなかった。部下の不足した金額をカバーするために必死に得意先を周った。マミがいるとどうして抱きたくなった。抱こうとしても勃起しなくて、何度も天を仰いだ。

　マミが熊太郎・虎太郎と浮気してもいいと思えた。むしろ、其の方が諒には、精神的な負担が軽減された。この期間は、マミが好むように任せていた。マミは諒のところに必ず戻ってくると確信していた。夫婦の絆とも言えた。

「あなた東京に行ってきます」と諒に確認をとっていた。マミも浮気ではない、公認だと自覚していた。それは青春の思い出と考えることにしていた。一度しかない人生を一人の男に、一人だけに固辞する必要もないと思えた。

　虎太郎はマミの好むものを買った。子供もいない。妻もいない身なのだ。財産を残しても仕方なかった。恋する人に、愛する人が現れれば、すべてを譲渡しても良いと思えた。これまでそんな女と巡り合うことがなかった。

　虎は、車に山ほどの荷物を積み込み自宅に戻った。高価なドレスも宝石もバックもマミに与えた。
　マミは余りブランド品には、拘らないタイプであったが有名なブランド品を買ってもらって喜んでいた。女心なのだ。

　虎の考えている結婚式をしょうと思えた。マミ部屋に入ると完成したドレスが飾られていた。こんな豪華なドレスをマミが着るとは思ってもいなかった。ドレスの各所にダイヤモンド縫いこまれている。赤いルビーも、青いトパーズもドレスを飾っていた。

　ディナーの後、虎の寝室で虎のペニスを愛撫し、マミも全身を虎に舐めてもらった。クリストスを舐められると何度も歓喜の絶叫をあげた。虎の精液を口に膣に受け入れて、虎の妻になることを誓った。
　勿論、虎と会っているときだけの妻なのだ。

　結婚式の日となった。虎太郎が招待した300数名の招待客も揃った。挙式も、披露宴も一般的な結婚式で終わった。４０数名だけが自宅に招待された。虎太郎との裏社会での仲間や同士であった。夫婦連れもいたが、男が８割を占めていた。

　緊縛師の喜多村氏が招かれていた。全員の前でマミが縛られ吊るされるのだ。ブラもショーツも脱がされてしまった。明るい蛍光灯の下で新婦のマミが縛られた。後ろ手に廻して乳房の上下を厳しく縛られ股間には、割れ目の中に縄が埋没するまで縛られ、クリストスが縄で擦られ、愛液が溢れ出した。そのまま、天井のロープに繋がれて、全員の鑑賞物となった。

　乳房やお尻は触っても良いと言われるとビールやウイスキーを片手に持ったまま、マミの周りに集まり一人が乳首に吸い付くと次々とキスされる。口からはお酒を口移しで飲まされる。肩にお酒を流して背中でその流れてくるお酒を啜るもの----。

　マミの身体の下にテーブルが置かれ、股間縄が解かれた。マミの膣の中にお酒を流し込み、膣酒を味わうことになった。ビールやウイスキーまで膣に注がれた。膣がアルコールを吸収して、マミの全身が赤く染まった。桜色に染まったマミの肌を確かめるように膣酒を楽しんだ。

　そんな男達の遊びは、時間を忘れたかのように過ぎ去った。虎太郎との結婚披露宴も終わった。夫のある身でありながら遊びの結婚式とはいえ、普通の結婚式と変わらなくドレスを着替えた。ドレスでの写真、ドレスを持ち上げて、ドレス姿での陰毛を撮影することが虎太郎の趣味だった。招待客の前でウェディングでも撮影された。

　ベールを付けたままでブラとショーツを奪われて撮影された。新郎はタクシード姿で、新婦は裸身を披露して撮影された。夫に見せられる写真ではなかった。その夜は、虎太郎に抱かれ、虎太郎の精液を膣と口に受けた。気持ち的には、本当の新婚の様に思えた。