第２話　はじめて

　私の後ろから伸びている手。
　満員の電車の中でしているイケナイ遊び。まわりの人に知られたら恥ずかしい。だから、ゼッタイ知られてはいけない秘め事。
　でも、その時、ヌルヌルって指が入り口を掻き回したの。とっさに口を閉じたけど、表情までは隠せなかったの。
　目を閉じたまま、私は、軽くあごをあげて反応してしまう。あ〜ん、この人、きっと私のことを見てるぅ。
　ああん、あなた以外に、感じている顔をみられてしまったじゃない。こんな恥ずかしい顔を。初めて人に見られちゃった。
　でも、怒れない。だって、私の下に潜り込んだ指が次々に新しい波を送り込んでくるから。
　女って、愛している人間に気持ちよくされている時って、きっと怒りの感情なんて出やしないのだと思う。ああ、私ってケダモノね。まわりを知らない人に囲まれて、淫らに濡れてしまうなんて。ここは電車の中なのに。
　でも、正直に告白すると、ベッドの中で夫と２人でするときより、よっぽど強い感じ方。私ってヘンタイの素質があるのかしら。
　ああ、だめよ。それ以上したら、声が。
　でも、指がちょっとだけ入り口の中にまで入ってくる。
　え？　
　私は、不意に、バストの方からの妖しい感覚に気づいて慌てて目を開ける。
　さっきから私のことを見ているサラリーマン風の男と目が合ってしまう。男はニヤリと笑う。
　ああん、ダメ、なんてことをするのよ！
　私のバストにさっきから乗っている腕を、さりげなく押しつけいる。
　そして、電車の揺れるのに合わせるようにして、私のバストトップを刺激してくる。そして、時折、感触を楽しむように、胸をタプタプって感じで腕全体を使って押してくる。
　私はなんとか避けようとするけど、身動きできない。お腹に抱えたバッグが邪魔で、手を上に上げることができないの。
　ああん。バストからも妖しい感覚が、ううん、正直に言っちゃう。感じちゃうの。きっと乳首が、ピーンと勃っている。胸全体が熱くなる。
　痴漢されているのに、快感を感じている。私ってそんなにフシダラな女じゃないもの。
　夫がいけないのよ。だって、今も私の中に指を入れてくるんだもの。ああん、こんなに感じちゃうなんて。
　きっと、私、今、とってもエッチな表情をしてると思う。　
　こんな顔見られちゃったら、胸を触っている人に「やめて」なんて言えない。
「いやらしい顔をして感じてただろ」
　なんて言われたら、恥ずかしくって、逃げるしかないもの。でも、電車が着くまで逃げられない。だから、我慢しているしかないのね。
　あなた、私、あなた以外の人に触られて感じちゃってるの。ごめんなさい。
　でも、あなたが悪いんだから。だって、女の身体は、一カ所が感じると止まらなくなるの。だから、バストを触ってくる腕からも、ズキンって感じですごい衝撃が昇ってきてしまう。
　もうだめ、このままだと、声が我慢できなくなる。なんとか、夫にやめてもらわなくちゃ。私は、なんとかもぞもぞと、右手をお尻の方まで降ろすことができた。これで、夫をやめさせれば、きっと、なんとかなるわ。
　だって、いつもの私なら、ホンモノの痴漢に感じたりしないもの。愛している夫の、私をまさぐる手さえ止めれば、きっと、大丈夫…、のはず。
　でも、夫は止まらなくなっていたみたい。私がヒップに手を伸ばしたのに気づいたら、ぐっと手を捕まれた。
　え？何？何？
　私がビックリしているうちに、腕がさらに後ろに引かれる。指先が何かに触れる。すっごく熱い。
　ああ、あなたもこんなになっちゃっているのね。
　私は、今の状況が一瞬だけ遠のいて、なんだか指先に触れたモノが愛しくなる。
　指先に触れたのは、もちろん、夫のものだった。気のせいか、いつもより、熱いし、大きい。それに、なんだかごつごつした感じがする。
　ここは、きっと、私に入ったときに引っかかる部分ね。
　ああ、こんなに大きかったっけ。
　私は、指先でスルスルとくびれをたどり、そして、そっと包み込む。手の中で、ヒクンと動いた。夫に教えられた通り、手のひらで柔らかく包み込みながら、段差のところまで、スルスルと動かして、そして、柔らかく、でも強く握りしめる。
　腕は動かないから、手首から先だけを動かして。
　手のひらは、あなたの段差の部分で引っかかる。この瞬間がキモチイイと言ってくれる。ああ、どうしたのすごい。本当に、なんだか、普段より一回り大きいみたい。
　段差もすごくて、私はつい、先端部分だけ手のひらに包んで指先で段差を辿ってみる。ああ、こんなに硬い。指先をはじき飛ばす勢いでヒクンと動く。
　私はまた、ゆっくりと握りしめてあげる。
　夫は、私が触る感触に勢いが付いちゃったみたい。
　ああ、だめ、そんなに指を入れないで。
　指が私の中に入っては動き、掻き回しては、スルリと出る。そして、また、ヌルリと入ってくる。私はそれに合わせて、手を小刻みに動かしてしまう。
　ああ、身体の奥がムズムズして、もう限界なのに、もっとして欲しくなる。
　いいのよ。もっと入れて。
　私は夫を促すように、握りしめた手を動かす。私の手と夫の指。一緒に動いている。なんだか、ホントにしてるみたい。大勢の人に囲まれながら。
　あん、でも、もうやめて。声が、声が我慢できない。
　それに…、あなた、私、知らない人に胸を触られているのよ。ごめんなさい。私、感じちゃってる。だって、あなたが悪いのよ。こんなヘンなコトさせるから。
　もう、腕をこすりつけてるだけじゃない。いつの間にか、私のふくらみを手のひらに包み込んでいる。
　私は慌ててしまう。だって、周囲はすごく込んでるとはいえ、胸の位置なら周りから丸見え。でも、見られて困るのは私の方。
　だって、こんなエッチな顔をして、もうとっくに「いや」っていわなきゃいけないはずなのに、許している。
　ここで、周りの人に見つかっちゃったら、私がエッチだと思われるに決まっているから。
　私は懸命に体を窓側にねじ曲げる。前に立つ痴漢さんも、協力してくれたおかげで、痴漢さんと私の身体で、触っている手はまわりから見えなくなる。
　その代わり、そう、その代わり、痴漢さんには「逆らいません。触って良いですよ」っていったのと同じ。だから、手は遠慮なく動いてくる。
　プチプチって感じでボタンが２つ外される。
　いやだ、この人、慣れてる。私のブラがフロントホックだって知っているかのように、手が谷間に伸びてくる。
　ピチって、弾ける小さな音がして、私のブラが外されてしまう。
　恥ずかしい。
　夫以外の男の人に、胸を触られている。意外にやわらかい手のひらが、私の胸をゆっくりと覆ってくる。
　あん！ち、乳首まで。指でコリコリと挟まれてるぅ。私は乳首は弱いのに。
　ウウン、そんなことを言っている場合じゃないの。
　直接、私のふくらみを撫で回すいやらしい痴漢。　
　そして、私は、夫の手と同じように、痴漢の手からも、快感を感じてしまう。
　そう、夫。
　上半身をねじった時に、少しだけ右足が外側に開いてしまった。でも、元の左足の位置が変わらないから、お尻だけ突き出したような不自然な体勢。
　その間に夫の足が入ってくる。
　２人の距離が近くなって、そして、手の中の熱いモノが、直接私のヒップに触れてくる。

　私は、結構プロポーションに自信がある。背だって、１６５もあるから、ヒールを履けば夫と身長は大差がない。ううん、私ってけっこう足が長いから、ヒップに位置なら夫より高くなってしまうくらい。
　え？
　夫が私の手を外してしまう。え？いいの？
　そして私の中から指がヌルッと出ていく。ホッとしたような、ちょっぴり残念な、フシギな気持ち。
　あん！
　私の谷間に、直接くっつける気だったのね。
　熱くて、硬いモノが私の大事なところにあたる〜う。
　なんだか、クチュッて音が聞こえてくる気がする。
　派手な動きはできないから、私の外側にあたっているだけ。でも、電車の振動が微妙に振動を伝えてくる。
　息が、とめようとしても、荒くなってしまう。
　ああ、もっと内側をこすって欲しくなる。ああ、あなたの、先端の丸い部分が欲しい。もっと奥をかき回して。ううん、これ以上したら立っていられない。
　でも、欲しい…
　ああ、私の顔がいやらしくなったのに気づいたのね。痴漢さんの手の動きが大胆になってきた。触ると言うより揉まれている。でも、気持ち、いい。
　あなた、私、知らない人に、直におっぱい触られてるのよ。助けて。ううん。助けてなんてウソ。もし、夫に知られたら、きっと、淫乱って怒られちゃう。だから、夫にはわからないようにしなきゃ。
　でも、後ろにいるんだから、きっと気がついているよね。でも、助けてくれないの？　このまま痴漢さんに感じさせられちゃって良いの？
　ああ、もうわけがわからなくなるぅ。
　通勤快速。電車が、駅を通過している。目の前のホームにいる人には、私の胸見えちゃったのかしら。ブラウスは、もう、ボタンを外されて胸がむき出しにされているから。
　ああ、電車が揺れたせいかしら、恥ずかしい入り口に、あなたの膨らんでいる部分が引っかかる。亀頭と言うんだっけ。あの、くびれた部分。
　硬くなっているあなたのモノが、私のびしょびしょに濡れた部分をくちゃくちゃなぞっている。
　ああ、欲しい。
　こんな気持ちになったのは初めて。ベッドの上だったら、きっと、我慢できずに「いれて」っておねだりしちゃったかも。
　だって、はしたないけど、今、あなたが入ってきてくれたら、きっとすてきな感じがすると思うの。
　でも、これ以上は入ってこられない。入り口にグッとあてられたまま、すてきな感覚が揺らめいている。電車が揺れると、私のアソコから、いやらしい快感が昇ってきてしまう。
　お願い、もっと揺れて。
　私は、自分勝手な恥ずかしいことを願ってしまう。
　それに…
　私の胸を自由に触っている痴漢は、とっても上手。つい比べてしまうけど、もちろん比べる相手は夫しか知らないケド。
　こんなことに上手なんてことあるなんて初めて知ってしまった。　
　乳首とアソコは感覚がつながっていると思う。
　優しくイタズラされている乳首から送り込まれる衝撃と、私の大事なところから感じる快感で私は立っていられなくなる。
　満員の混雑がなかったらきっと、とっくにしゃがみ込んでしまっていたと思う。　あ〜ん、もう、やめてよ〜、ほ、ほしくなるぅ〜
　私のモヤモヤとは、無関係に、駅が近くなってきたらしい。
　ポイントを通過したのか、ガタンと大きく揺れる。
　その時だった。
　一瞬だけ、夫の先端が、私に包み込まれる。グッと広げられる感覚。
　その瞬間、私の中の膨れあがったダムが決壊した。
　目の奥が白く輝いて、ああ、私、今、イク、いっちゃうぅ〜。
　私の中で、夫が弾ける感触がする。
　ああ、あなたもなのね。私の中で、ドクドクって、ああん、あなた、こんなところで。これって、私達セックスしちゃったってことなの？
　まだ、ジンジンする身体の火照りが止められない。身体がぶるぶる震えてしまう。
　信じられない。人前でセックスしちゃった…
　きっと、周りの大勢の人に見られてた。セックスしている、恥ずかしい顔。
　私がまだ、身体の奥が熱いままなのに、素早く、アソコから熱いモノが離れていく。入り口のあたりで出されちゃったから、夫の熱い液体は、すぐにドロって出てくる。
　ポタポタと床にこぼれ落ちる感触がする。
　電車がホームに滑り込む。
　私がいる場所と反対のドアが開いて、私のまわりに隙間ができる。
　私は、慌てて、バッグで前を隠しながら、痴漢から反対を向く。夫の方を。
　え？
　夫がいない。
　かわりに、５０歳くらいのおじさんが私の顔を見てニヤニヤしながら、ゆっくりと降りていった。ズボンのチャックを上げながら。
　え？？？
　私は左右を見回すと、いた、夫は、入ってくる乗客の先頭に立って降りる客が途切れるのを待っていた。
　ということは、夫は、反対側のドアのそばにいたってこと。
　だって、礼儀正しい夫は、出口のそばにいたら、必ず、いったん降りて、出口を人に譲るから。
　そして、私の顔を見てニヤニヤしていたおじさん。
　え？え？それじゃあ、私の後ろにいたのは…
　大混乱している私。
　気がつくと、さりげなく、さっき、そばで見かけた人たちに、包み込まれるように囲まれた。
　多分、気のせいじゃない。私の周りにできた人垣で、夫は私のそばに来られなかったもの。
　夫と私を遮っているのは、大柄なサラリーマン。
　私は夫の方を向いているけど、この人の陰になって、完全に夫の姿は見えなくなる。
　夫と離される不安もあったけど、ホッとした方が大きかったのが不思議。
　だって、夫がそばに来たら、きっと、さっきの私のしたことがわかっちゃう。
　ごめんなさい。あなた。だって、あなただと思ってたから。
　初めて、男性のペニスで逝っちゃったの。だって、我慢できなかったのだもの。
　あなた以外の男性で、オーガズムに達しちゃった私。そんなこと考えたこともなかったのに。
　あなた以外の男性に触られるなんて、考えもしなかったのに。
　きっと、怒られちゃう。嫌われたらどうしよう。淫乱な奥さんだって。
　だから、夫には知られたくないの。これは、今日だけの秘密。大丈夫、このまま帰って、シャワーを浴びれば、夫が帰ってくるのは何時間も先だもの。
　今は、夫のそばには行かない方がいい。
　胸のボタンをするひまがなかった。バッグで隠しているけど、前の人が見下ろせば、バッグの陰の、広げられちゃったブラウスが見えてしまうかも。
　外れたままのブラの感触が、すごくミジメ。後で、トイレで直さなきゃ。
　さっきより、混んできたみたい。また息ができなくなる。目の前のサラリーマンのスーツが、顔に押しつけられる。
　電車が発車する。最初の揺れで、ようやく息をつく。
　やっぱり。
　私を取り囲んだ人たちは、さっきの恥ずかしい姿を見ていたのね。
　一斉に伸びてくる何本もの手。
　きっと次の駅まで、また、痴漢されちゃうのね。でも、今度は感じたりしないモン。痴漢の手だってわかっているんだから。
　でも…
　私の大事なところが、さっきのおじさんので汚れている。気持ち悪いのに、そこにいくつもの手が、指が伸びてくる。ああ、そこは、ダメ、敏感なボタンなんだから。あん！
　いくつもの指にいじられて、ああん、貞淑な妻なのに。そ、そんなにかきまわさないで。ああ、声が、出ちゃいそうなの。
　どうしようもなく嫌なのに、どこまで我慢できるのか、自分でもわからなくなっちゃった…