５．

　ここのマスターには、おじさんの事を話した事がありました。　
　トンネルを潜るようなエントランスから、それ程広くはないスペースに、楕円の大きなテーブル。そこには１５・６席の椅子があります。その他に４人席のテーブルが二つと８席のあるカウンターがあります。わたし達はそのカウンターに陣取っていました。

　イタリアンフードを主としたこのお店。 その割にはパスタの類が少ない気はするのですが・・・、ピッツァは秀逸。
　大きめに切られた野菜類と同じ様に大きめに切られたお肉類。
　オリーブオイルの芳醇な香りに包まれて・・・。
　何種類もピッツァはあるのですが、カリッと焼かれた生地と大きく切られ、サクッとした歯応えの後に薫るパプリカの仄かな香りと歯応え、生地に包まれ、具に被せられたプロストチーズの粘りと熟成の香り。わたしはこのピッツァが好き！
　そのピッツァがスゥッと出されました。
「あれ！・レイさん、常連なんだねぇ。注文を聞きに来ないと思っていたのに・・・。」
　おじさんが不思議そうな顔をしていました。
「このお店だと、まずはこれなの！・・・ネッ。」おじさんに応えて、マスターにも「応援してね！」のウィンクを送りました。

　ここのマスターは、 元は商社マンだそうです。
　世界中の名うてのバイヤーを相手に、チョウチョウ発止と遣り合って来た人だそうです。
　ここ２年程は時々ですが、このお店に来る事が良くありましたので、常連さんとお料理のお話からマスターの噂話しをする様にもなりました。
　すぐにマスター自身ともお話する様になり、色々なお話をしました。
　１０年以上もの激しい恋愛の末に御一緒になられた、イタリア人の奥様との娘さんお二人が、時折お店をお手伝いに来ていました。

　７０歳前後に見えますマスターは博学で多趣味。・・・何かさっきのカフェのマスターと通じる処を感じるわ。
　マスターのお話はわたしを、もう二度と出会えないと思っていました、お伽の国へと誘ってくれたのです。・恋のお話も、片思いからお伽話そのものの様な夢見る恋愛、悲恋。・取り引きを成り立たせる為の手練手管のお話。それぞれの国の色々な人々の、それぞれの習慣、風習・・・。
　お話する度に、わたしには一遍の小説の様な感じがしていました。
　アラビアンナイトに出て来るサルタンの心境だわ。・・・次々に展開されるお話を聞きたくて聞きたくて溜まらないの。

　マスターは本当にお話するのが上手！・わたしの取るに足りない経験だって、もしマスターがお話にすれば、胸踊り血を湧かす恋愛活劇にだってなりかねないわ。
　そんなお話の中でも、マスターと奥様の恋のエピソードは、わたしに恋の理想を作らせていたかも知れません？
　同時に、恋の残酷さも、恋した人のあり方も・・・。
　そんな間柄になっていましたから、おじさんとの出合いも話しちゃっていました。

　ですから、おじさんを連れてこのお店に入った時から、マスターが薄々「例のおじさん」と、察してくれていた事は分かっていました。
「気が利いているでしょう？」早速一切れを口に運びながらおじさんに云っていたの。

「ヘェ〜！・・・こう云う店で、オーダー無しに出て来たのを始めて見たよ！」
「だって、いつもこれを食べながら何を食べるか考えるんだもの。・・・おじさんも摘んで！・おいしいんだから。」パプリカとプロストチーズの香りを鼻の奥に感じながらぁ！
「そうなの？」それだけの答えでおじさんも一切れを摘んで口へ運んだわ！

「素晴らしいピッツァだね。・生地の脆い固さからパプリカ、マッシュルーム、オニオンのサックリ主体の歯触り、プロストチーズの粘った歯触り。・総てが一体になって味のシンフォニーを感じるのね！」本物に出会った時のおじさんの眼だったの！
　おじさんの眼が輝いたのを、わたしは見逃さなかったわ。
「すごぉい幸せ！」わたしの好物を誉めてくれた事だけでも嬉しいのに、一切れ食べて、具体的な評価迄できるおじさん。・・・やっぱり本当の漢だわ。料理にでも肥えた舌を持っているんだわ。・・・それをわたしが感想を待っている事まで見抜いて、わたしを喜ばせてくれる。・女性への気遣いに慣れた人・・・プレイボーイってこと？
　それでも、おじさんって見た目はなんかパッとしないのよねぇ。・どう見たって見た目では飛び付きたくなる様な風貌ではないわ。どちらかと云えば只のパッとしないおじさん！
　それなのに、その風貌がわたしの心を和ませるの。・上辺だけではない本物を思わせてくれるの！
　だって、その風貌に似合わない程鋭い感性を写真で見せてくれ、本物としか思えないライディングとドライヴィングで行動力を見せつけてくれたんだもの。
　そう言うのって、知識だけでは粉せないし、それらしい話もしないのに相当の場数を踏んだ力を見せ付けられたんですもの。
　わたしには優しさ以外は見せない様にしても、心の中はいつでも真剣勝負しているみたい？・相撲の錦絵の様な、これでもか！って云う様な強さでなく、ギリシャ彫刻の様に内に秘めた力強さなの。何でも人並み外れて出来るのに、何の自慢もしようとしない奥床しさ。・・・わたしの付き合って来た人達にはまるで見られなかった男の美徳よ！
　わたしが長い間求めて見付からなかったモノを、おじさんに見せ付けられた思いよ。

　あのカフェで、おじさんの実力を見せられて、雌のわたしが牡のおじさんを追って居たんじゃないって分かったわ。おじさんの「本物の漢」を感じ取って追っていたのよ。
　なにか？ホッとしたわ。
　バイクの腕や考え方の一部、写真を撮っている時の真剣さは見せ付けられたわ。だけど、そんな事だけでは、おじさんを誘惑までした理由には物足りないんだもの。
　バージンの頃の恐さがあった訳ではないけれど、いくら男性と経験があるからって、どんな人でも許容できるって訳じゃないわ！
　何だかは分からなかったけれど、信頼に似た何かを感じたのよ。

　この一年、おじさんの影を追い求めたのだって、あの時の「おじさんのくれた悦楽」に夢中になったのかしら？って。自問した事だってあったんだから・・・。
「わたしはニンフォマニアじゃないッ！」って、心の中で叫んでいたんだもの！
　不安で一杯だったわ。・わたしが、こんなに歳の離れたおじさんを追うのが、喜悦の為だったら、わたし自身がわたしの嫌悪の対象になってしまうじゃない！
　これ本当！・・・わたしは、快楽なんかの為に男性を追い掛ける事なんかない！

　おじさんが「漢」でホッとしたわ。
　だって只の男だったら、こんなに追い掛けたのが、なんだったか分からないじゃない。
　ここにはわたしだって期待があったわ。・・・普通に考えたら大きな歳の差があって不倫にさえなるのに、女のわたしの方がこんなに求めているなんておかしい筈だもの。
　だから、わたしだって一直線におじさんに飛び込めないんだわ。
　事情も分からないでおじさんに飛び込んだら、困らせるだけだもの。

「レイさんわたしの事を知っていたの？」わたしの頭の中で凄い勢いが付いた思考に翻弄されていたわたし。・まるで天からの声の様に響いて来ました。
「そんな筈、無ぁいじゃない！・電話もしなかったんだもの。」おじさんと逢いたいだけだったら、おじさんの残していった名刺に電話すれば良かったんだもの。
　わたしには２度目の出合いも偶然でなければならなかったのよ。
「・って事は、名刺には気付いてくれていたんだ。あんなに逢いたかったら、電話くれれば良かったのに。」おじさんの言い方が、余りにも簡単そうに云うので、チョット引っ掛かったけど、わたし自身のこだわりなんだから「分からなくて当然。」って、思い直したの。「おじさんには何でも分かってもらえる。」と期待しても、他人の心の中まで分かるのは神様だけでしょう。

　おじさんと差し向いでの食事、たった一杯のワインの所為でもないでしょうけれど、嬉しくって何もかも上の空・・・。おじさんの声だってリバーブ付きで聞こえて来る感じなの。まるで夢の中のようだわ！
　マスターの御自慢の大好きなポテトスープもどんな味だか上の空・・・。細く切ったラムのパスタだって、細かい味の記憶はすぐに蒸発してしまうの。
　おじさんとの話だって何だか、上の空になっていたわ・？
　ただただ、楽しい時間は、時間だけが凄い早さで過ぎ去って行ったの。
　２時間は、おじさんだけを見詰めていたの。

　エレベーターを出て３〜４段の下り階段。１５歩程でビルの外よ。
　既に辺りは暗くなっていたけど、いつもの不夜城を照らすネオンと照明が、今の時間を忘れさせるわ。
「さっきのワイン、意外と後引くのね。」ちょっとフラッとした格好を見せたの。本当は、全然酔った感じはなかったわ。だけど、わたしのアルコールが抜けてないとなったら、おじさんは放って置けないでショ。
　案の定、わたしを支える手が両肩を掴んだわ。
「そんなに残るとは、思えないんだけどなぁ。」云う通りよ。でも、おじさんを誘導する手を他に思い付かないんだもの。「抱いて！」って、云えれば良いんだけど、とっても恥ずかしくて、言葉には出来ないんだもの。
　わたしにできる事は行動に臭わせるだけ・・・。
　淫乱かしら？・・・あれ程逢いたかったおじさんには逢えたわ。
　わたしはこの１年の間に２度、男の人に許しているわ。
　でも、おじさんだって奥さんと・・・・。頭を振ったわ。色々な妄想が頭を駆け巡って順序立てた考えが出来ないの。
　嫉妬？・・・いけないわ！・おじさんは奥さんのモノ。傍に居たいだけじゃなかった？
　そう、わたしの傍にも居て欲しい！
　わたしの全てを掛けてでも・・・。神様目を瞑って下さい！わたしはおじさんを盗もうとしています。

　肩に掛かったおじさんの片方の手を、その上から押さえて、そのまま駐車場とは反対の方向へ歩き出しました。本店を通り過ぎる処の反対の路地坂を昇りました。
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「直情型なのかい？・・・出会うと、こんな所に誘って・。」
「待っていたのよ！・あれから一年は経つのよ。おじさんを忘れそうで恐いの。・上手く言えないけど、明日の手掛かりが遠ざかって行く感じ・かしら？・・・お風呂入ろう！」
　肩の片手を押さえたまま、わたしからサッサとホテルに入って来てしまったから、おじさん戸惑っているわ。
　そりゃぁそうよね。それまで、それらしい話は、お首にも出さなかった積もりだもの！
　このお風呂、ベッドから丸見えになっているのね！・少し驚いたけど、蛇口を開いて温度を少し緩めにしてから部屋に戻ると、おじさんはまだ立った侭だった。
「どうしたの？・座っていれば良かったのに・。」ポットから急須にお湯を挿しながら、いかにも当然な言い方をしたの。
「レイさん、お酒なんて残っていないな？」見破ったよ。とでも云いたそうな顔して云
うの。
　・路地の坂を上がり始めた辺りでおじさんが気付いた事を、わたしは知っているわ。
「とっくに分かっていた癖に・。」小さな声で独り言。
「でも、レイさんの恥を掻かせたくは、なかったからね。」
　やだ、おじさんに聞こえたんだ！・・・なんと返そうか？と思ったけど、ここは無視する事にした。
　ここで応えちゃうと、話を終わらせるのに一苦労しそうだもの！
　口を開いて余計な事を云う換わりに、まだ立ち尽くしているおじさんに、背中から抱き着きました。

　分厚い背中。・ゴツゴツしている。頬を背に押しつけてジッとしていたの。
　ブルゾンを通しておじさんの暖かみが、わたしの胸に染み込んで来ます。
　黙ったままのわたし・・・。
　黙ったままのおじさん・・・。
　時間だけが過ぎて行きます。

　水の音・？・・・お風呂出しっ放しだった！
「いけない！」おじさんから離れて、お風呂のお湯を止めに行きました。おじさんの処へ戻ろうとしたら、・・・おじさん、バスを出た所にいるんです。
　いきなり抱き締められました！
「アッ！」両腕ごと抱き締められています。・・・これは？
　おじさん、わたしを・・・？
　また、時間が通り過ぎます。
「すまない・・・。」その言葉と共におじさんの戒めが解かれました。
「だめっ！・・・・・抱いていて・・・・。」解かれたおじさんの両手を握りました。
　両手を後ろに回しましたがさっきの力強さがありません。
「おじさん、据え膳喰わぬは・・・。って、知ってる？・・・サックは恥を掻かさない様に・。って、思ってくれたんでしょう？・わたしがおじさんと居たいの。」これだけ云
うのは、必死の思いなのよ。
「すまない・。」俯いたおじさん。
「いやっ！」おじさんを押して、押してベッドにまで押して、そのまま押し倒しました。
　競り上がって、おじさんに口付けします。
　フレンチキスでおじさんに攻め込みます。
　歯牙み付いています。胸を押し付けてより深い口付けです。
　下世話なお話では嫌われる筈の中年の口臭・・・わたしには頼もしく感じられるんです。
　生身のおじさんを愛している。・それは、わたしの心に「確かなもの」を築き上げていました。
　一つになりたい。おじさんの価値観をわたしに教えて・・・。
　おじさんのサムライの様な心を教えて！

　もう、後戻りなんてさせない！・・・強い気持ちは右手におじさんのおじさん自身を握らせました！・・・今まで無かった事です。ここまでわたしが積極的になるなんて！
　おじさんが否定的な事を言い出しそうで・・・、恐くって、口付けを放す事が出来ません。・・・右手に少しずつ脈動が伝わって来ます。静かに膨らんで来ます。

「もう駄目でショ？」アソコが膨らんでしまったら、途中で止める事が出来ないのが男
の人だと信じていたのです。
　結果としてはその通りでした。恥ずかしい事この上ない事でしたが、おじさんをその気にさせてしまえば、こちらのモノです。口付けを放した時には目の前がクラクラしていました。もう息切れ寸前だったのです。
「ぁあ〜、もう駄目・！」ここまででわたしの全ての力を使い切ってしまいました。

　おじさんは、身体を起こしてわたしを横に寝かせました。
「大丈夫かい？・無茶をするからだよ。」
「だって、おじさん・・・。」後の言葉は口に出来ません。
「もう逃げないよ。」深い呼吸を繰り返すわたしの耳にはこれ以上ない心地よさでした。

　おじさんの横でわたしは、呼吸が整うのを待ちました。
「お風呂入ろうよ。・今日は冷や汗何度もかいたから、洗い流したい。」
「それ、わたしの事？」おじさんが間髪入れず、云いました！
「なんでおじさんが？・わたしの事よ。」ちょっと休みたいって思ったお店が、おじさんの行き付けだったなんて！・・・常連さん達の前で、とんだ醜態を曝しちゃったんだもの。」おじさんを見付けた時のうろたえ様は、決して人様に見せられる様なものだった筈が無いのです。・話ながらつなぎを脱いでいました。
　エンジ色のキャミソールと対のブラとショーツ・・・。
　若い女の子はスリップを付ける習慣の無い子が多いみたいだけど、スリップの一枚が身体の動きをどれほど楽にしてくれるか・・・。男の人の眼に、いつ触れるか分からないファンデーションとしても、スリップ一枚は凄い力があるわ。
　
　脱衣場に飛び込んでキャミソールとブラを取り、ショーツを脱ぐと、バスタブに勢い良く飛び込みました。
　一杯に注がれていたバスタブは沢山のお湯をこぼして、大きく水音を上げました。
　少し緩めにしておいて正解！・ここで恐る恐る入ったら、雰囲気無くなっちゃう！
　皮のつなぎって、見た目程は保温してくれないのよ。身体が冷えているから、熱めにしておいたら、ズルズルと入るしか無かったわ。
　気持ち良い！・・・ベッドのおじさんから丸見えなのは承知の上です。
　
　アクリルのウォールの向う側は暗く、ハッキリと見えている訳では無いのですけど、上半身をバスタブから起こして、おじさんにオイデオイデしたの。

　直ぐにおじさんは入って来てくれました。
　膝を曲げて広くは無いバスタブにスペースを開けたの。
　この小さな動きの意味を掴んでくれるおじさん。向かい合って入り、またお湯が沢山こぼれました。
　おじさんを見ていて、あの箱根の時とは何か違うんですよ。
「おじさん！・わたしと再会して何を考えているの？」
「いや、嬉しかったよ。・名刺をバッグに入れておいたのに、何の連絡もくれないから、あれっきりにする積もりなんだろう。って、思っていたからね。」
「レインボーブリッジに向うおじさん、チラッとも振り返ってくれなかったじゃ無い！寂しかったんだからぁ・。」ガバッて身体を起こして、おじさんの上へ仰向けに重なりました。・箱根でそうした様に・。・・・おじさんの手を探って、わたしのお腹の上に持って来ました。・右手も左手も・・・。おじさんに抱いてもらう様に。
「重い？」わたし５４ｋｇ、軽くは無いでしょう？
「女性の身体が乗って重いと感じたら、相手の女性には脈が無いね。・少しでも好意を持っている女性だったら、重くてもそれを口には出来ないのが男だよ。」
「正直なお答えね！・わたしは？」自分の位置を聞いたのと同じ事ですもの。「わたしは？」まで、聞かない方が良かったかも知れない？
「それには答えられないなぁ。」
「なんで？」
「どう答えても、わたしの立場が微妙になってしまうからだよ！・・・レイさん狡いよ！」
「・・・そうね。」わたしの立場をハッキリさせようと思えば、おじさんは、関係を持つ事から引くでしょうね。「奥さんを愛している。」と、ハッキリ云われているんですもの！
　その思いが変わっていない事が、いまの答え方で分かったわ。・・・でも、わたしだっておじさんが必要なの。・・・奥さんとの生活を壊さない程で良いから、ホンの少しおじさんを分けて・。

　いままで、神様を信じる心なんて全く無かったのに、本気であの大国主之尊に祈っていました。
　もちろん声には出せません。・・・不倫なんて神様が許して下さるか？・不遜な行いに走った気はしました。それでも、おじさんに再会させて下さったのですから、許して下さっている気もしました。

　古来、日本の神様方は恋愛には寛容でしたもの。
　神様同士でも恋するお話は、それこそ数知れずありました。
　純愛からどろどろの濁った愛まで・・・。

　おじさんとの再会を果たせたのは、神様の悪戯心かも知れません？
　おおらかな日本の神様には、その位の悪戯心があっても不思議はありませんもの。

　背におじさんを感じ、その手に包まれている。
　暖かいお風呂でおじさんに抱かれている。それはこの上無い幸せを感じさせてくれます。
　心の中から暖まる感じ・・・、このまま時間が止まって欲しい・・・。
　今のままで、わたしは充分な幸せを覚えています。
　でも、頭を回し、上体を捻っておじさんの顔にわたしの顔を近付けました。
　眼と眼が出会います。
　全身から力を抜いたおじさんは、わたしの思うままだわ！
　わたしを抱えるおじさんの両手は、全く力を感じないのに、わたしはおじさんと密着しているの！人生の頼もしさを感じたおじさんに包まれている。
　・・・これ以上望むものなんて、何があるのかしら？
　肉体的にはまだ一体化もしていないかも知れないけれど、こんなに幸せを感じた事なんて無かったわ。
　だって、緩めにしたお湯よりおじさんの暖かみを直接感じていられたんだもの！
　それが言葉を交わす事無く感じられる事が、余計に幸福わせ感を増してくれるの。

　あの出雲大社から、わたしの中に浮かび上がって来た様々な思いはまだ、わたしの中を走り回っていました。ですからもし、言葉を交わしながらでしたら、こんな幸福わせ感は浮き上がって来なかったかも知れません。

　でも、おじさんは違うだろうなぁ。
　お尻の下から突き上げて来るモノがあるもの！
　男の性は、おじさんの歳になっても変わらないのね。こんな状態、もちろんわたしがしたんだけれど、女の身体と密着すれば、そっちの欲がどんどん膨らんで来るんだわ。
「ンンッ！」おじさんの鼻がなった・・・。わたしの右手がお尻に下にあるものを握ったの！・まだ柔らかさがあったのに、すぐにグンって膨らんでしまったのよ！
　おじさんを擦っただけで、わたしだってエロティックな気分になっているわ。
　いやらしいわたし・・・。

　握る力を強くしたり、弱くしたりしてみたの。そうしたら、強くする度に反発が太くなる気がするんだもの！
　いつも不思議に思うの。いくら刺激を受けたって、こんなにも膨張したり硬直するなんて考えられないわ。それも多分、わたしを嗜める言葉を何か探していた筈でしょう？
　握りを繰り返す内に、握った指の先が大分離れている・・・
　おじさんのってこんなに太かった？
　二握り以上あるじゃない！
　そんなに深くまで、受け入れられたの！
　わたしは恥ずかしさなんて忘れていたわ。
　１年前にはわたしをノタ打たせたおじさん、こんなに大きかったの！
　わたしの知った人達って握ったら、先が出るのがやっとの人達だったわよ。
　何だか、おじさんの大きさに恐くなりました。

　男の人って、一旦、ここが大きくなってしまうと自制心が聞かなくなるじゃ無い。
　まだ理性で迷っているおじさんの、自制心を押さえてしまいたかったんだもの！
　他の人には嘘は付けても、自分への嘘は難しいのよ。

　おじさんを握った手を擦らせるの！・・・・ゆっくり元へ・・・ぐうぅッて下半身に押し込む様に・・・グッ！って上向くのを感じてから先の方へ擦り戻したわ。
　硬く大きくなった・先の膨らみ。
　おじさんの鼻息が荒くなっているのが分かるわ。
　・先を、形を確かめる様に指のそれぞれで探って、またもとの方へ握りを擦らすの。
　絶対早くしない様に擦るのを繰り返したわ。
　１年前にはこんな大きいって思わなかった・・・。