【６】

「じゃあね……」
「うん」
　マンションの玄関前で拓哉を降ろして、麗香は急ぐように一顧だにせず職場へ……。
　拓哉は２ヶ月半ぶりに、５Ｆの自宅へ一人で向かう。
　１学期が終わって、学校は夏休みに入っていた。夏の陽射しが照りつけて暑い。
　汗をぬぐいながらカギを開け、久々の自宅に入ると、ひんやりした冷気に包まれた。
「はぁ、涼しい……」
　つい声にしてしまうほどの涼感があった。
　麗香がエアコンのタイマーで、前もって帰宅時間に合わせていたのだ。
「やっぱり、ウチがいいなぁ」
　長い入院生活をしたせいか、その言葉には実感がこもっていた。
　しかし今は、入院前とまったく違うことがあった。
　母親の麗香との関係だ。親子の一線を越え、男と女の関係になってしまった今、拓哉の気持ちの中では先行きの不安など一切なく、母親との生活がバラ色に思えた。
「ママ……」
　玄関に揃えられたパンプスにさえ、胸を甘くときめかしてしまう。
　美麗きわまりない母親の肉体、それを締めつけてプロポーションを強調される補正下着、そして官能的な交わり、どれをとっても想像するだけで拓哉を悩ませるに十分だった。
　車の中で甘美なフェラを受けてきたばかりだというのに、拓哉は早くも欲情を駆り立てられる。
「ママ……」
　しきりに唾液が口の中から分泌し、動悸は一段と高まる。矢も楯もたまらなくなった拓哉は麗香の寝室へと向かった。
　緊張、興奮、焦燥、自制、なんとも形容しがたい感情が交錯して、ウブな心を美しき魔性と逸楽に満ちた白日夢へ引きずり込む。
　母親の部屋には何度も忍び込んでいるが、ドアノブに手をかける時の緊張感は変わらない。泥棒猫にでもなったかの妙な気分になる。
　それでも、はばかる気持ちを抑えながらドアを開け、一歩踏み入れると期待に胸が膨らみ、妖しい悦びに支配された。
　カーテンが引かれ、少し薄暗かったが、明りをつけることで、麗香にふさわしいシックな室内はパッと明るくなる。
「やっぱり、きれいだ」
　いつものように整然と整頓されていた。
　麗香らしく几帳面にベッドメイキングされたダブルベッド。その枕元にはシルクのバスローブがきちんと畳まれているだけで、あとの衣類は一つとして転がっていない。
（ママだ……）
　バスローブを取りあげて頬に近づけると、甘い馨しい香りに混じってほのかに麗香の匂いを発見する。
　胸に熱いものが込み上げてくるのと同時に、雁首をピクンピクンともたげ出しているペニスの位置を、無意識にズボンの上からそっと直した。
　しかし、少年にはそこで時間をつぶす余裕はなかった。迷わず、ベッドの横にある白いチェストに視線を指し向ける。入院中に新しいものに変わっていた。
（たぶん、あそこだ……）
　チェストの前に立った拓哉は、乱れる鼓動とざわめき出す焦燥感をなだめるようにして、上の段から開いていく。
　ハンカチやスカーフ、ソックスなど小物の引出し、Ｔシャツや薄手のセーター類が入った引出しに続いて、下の段には、シルクのごとき輝きをもつパステルカラーのキャミソールやスリップ、レースをふんだんにあしらわれたフロアパンティが入っていた。
「……」
　そして、次の引出しを開いた瞬間、喉を鳴らし、瞳をひときわ好色に輝かせる。
　少年を欣喜させるのに十分な女性の秘密、丁寧に畳まれた数えきれないぐらいのパンティとストッキングが潜んでいたのである。
　胸の高鳴りを覚えた拓哉は、侵しがたいパラダイスのさざ波に両手を静かに沈めた。乱反射で煌めく波が立ち、ひとつひとつの煌めきと、そこはかとなく香り立つ麗香の匂いにクラクラッとしてくる。
　１枚のピンク色のパンティをつまみあげた。手が震えだす。
　パンティを広げる。生地はきわめて薄く、綿みたいに柔らかい。
　本当に麗香のふくよかなお尻を包むことができるのかと疑いたくなるぐらいの小ささだが、これで女盛りの熟尻を覆い隠す美母の姿が容易に想像できた。
　腐りはじめの果実にもっとも旨みがあるように、崩れはじめた熟女の肉体ほど淫蕩なフェロモンを放つものはないのだ。
「あぁ、ママ」
　そんな妄想を抱きつつ、薄布に頬擦りをした。
　心地よい肌ざわりである。そのなめらかな感触から、麗香のしっとりとした素肌のぬくもりを感じ取ったあと、５０枚近くはある、目も眩むばかりに咲き誇ったパンティの花園に頬をすりつける。
　白や黒、赤、ピンク、ブルー、ベージュ、パープルとカラフルな彩りで、同じ下着に変わりはないけれど、ふれていくにつれ、ひとつひとつの異なりをおぼろげにとらえた。
　股ぐりの切れ込みが激しいハイレグのショーツ、ギリギリまで切り詰めたビキニ風のスキャンティ、紐としか思えないＴバック。
　素材も豊富だ。薄羽根のようなシルクレースであしらったもの、手触りがソフトなコットンもの、オーガンディのフリルが付いたいかにもよそ着風のファンシーなもの……、どれもこれも、あでやかに咲き乱れる可憐にして魅惑に満ちた花のようだ。
「たまらないよぉ……ママ」
　久々に味わう媚薬のような陶酔感と極上の喜びに、鼻息がしだいに熱くなってくる。
　パンティだけではもの足りなくなった拓哉は、下の引出しにも手をかける。
「あっ」
　開けて見るなり、頭に血が昇るほど胸がドギマギし、喉仏を大きく上下させた。
　そこには、ブラジャーやガードル、ボディスーツ、ウエストニッパーなどといった、ボディラインを美しいシルエットに整えるための下着、ファンデーション類がきちっと並べられていたのである。
　パンティほどカラフルではないにしても、その時の気分で選ぶのか、白、黒、ベージュ系、ピンク系といろいろある。
　何気なく手にしたベージュの下着がハラリと広がった。
「……」
　目をむいた。
　セパレーツ・タイプの水着のような形で、レースや目の細かい生地を縫い合わしたボディスーツだ。複雑なステッチラインと豪華で美しいデザインに魅せられる。
　筒状に畳まれたガードルを取り上げてみる。
（はぁ、これは……）
　いっぺんに目を丸くする。そう、先日のランジェリーショップで、拓哉を悩殺させた純白のロングガードルだった。
「あぁ、ママ……」
　胸の鼓動は耳に聞こえるほど高ぶり、如何わしい情火がざわめく。
　ボディスーツを放し、ガードルの表面を軽く撫でる。いくぶんザラつきぎみの、パンティとは違う手触りから、左右に引っ張らなくも、あまり伸縮性がないのがわかる。
　繊細にして豪華な刺繍や足裾のレース、ガードルらしい菱型模様が、男の下着には決してない、エレガントな熟女の下着を演出していた。
　ライトピンクのショートタイプのガードルも取り出す。真ん中には下腹部を押さえるための菱形模様で施されたパワーネットがあり、ブルマように丈の短い可愛らしいデザインだが、生地は同じくしっかりと堅い。
　ウエストから股ぐりにかけて手首まですっぽり入れ、サイドをグッと広げてみた。
（こんなにきついの……。だから、穿くのが大変なんだ）
　予想通りに、これもかなりのハードタイプで、思うように広がらない。それどころか、ガードルらしい強い張力で押し戻されてしまうほどの抵抗感があった。
　窮屈そうに穿く母の姿が脳裏をかすめた。
　スクッと立ち上がり、ジーンズの上からガードルをあてがって姿見に映し出す。ブルマ型は拓哉の腰にもやや小さい。
　ついでに、いつも麗香の豊かな乳房を包み込んでいる、細かいレースで覆われたなめらかな曲線のブラジャーも胸にあててみた。
　ガードルとブラジャーに締めつけている麗香を想像するまでもなく、洗濯のほのかな香りに誘われて、あられもない劣情がフツフツと込みあがってくる。
　ボディスーツとロングガードルとともに、拓哉はブラジャー、ショートガードルに、レースが施されたスケスケのパンティと、ナイロン独特のテカリのあるゲージの細かいグレーのストッキングを取り出した。
　ベッドの上に彼女が横たわっているみたいに並べて、下着遊びをはじめる。
　ブラジャー、パンティを上下に丁寧に置いてから、麗香がつける順にグレーのパンストとライトピンクのショートガードルを重ねていく。
　そして、すぐ隣にボディスーツとロングガードル、ガーターベルトを並べた。
　ベッドに気品と魅惑をたたえたゴージャスなデザインの下着を広げていくにしたがって、あたかも武装するかのように着用している麗香の豊熟した肉体が、まざまざと浮かんでくるような気がした。
　母親の官能的な下着を眺めているうち、拓哉にたまらない欲情がジワジワとみなぎってきて、いやが上にもジーンズの中はきつくなってくる。
（着けてみたい）
　またもや、異常ともいえる欲望が彼の心を占領した。
（パンティ、ブラジャー、ストッキング、そして、きついガードル……、ママ、いつも着ている下着。着けてみたい、ママを感じたい）
　可憐な花たちは容赦なく拓哉を惑溺させ、危ない下着遊びをエスカレートさせていく。
「マ、ママぁ……」
　つい声に出してしまう。
　これから愛する母親の下着をつけられると思った途端、エロチックな衝動と息詰まるほどの度しがたい興奮に、居ても立ってもいられなくなる。牡肉がブリーフを突き破るぐらいに狂おしく高ぶる。
　着ているものを脱ぎはじめるが、焦りのあまり、手足が意のままにならない。
　それでも、Ｔシャツ、ジーンズをどうにか脱ぎ、ブリーフもなんのためらいなく脱ぎ捨てる。ブリーフの狭い空間から、閉じ込められていたイチモツが解放されたように躍り出て、肉柱の猛々しい威容をあらわした。
（もし、ママが戻ってきたら……）
　全裸になった途端、心が迷う。
　だが我慢できない。どうなろうとも構わない。魔性のごとき下着の魅力にとり憑かれた以上、正常な感情をとり戻すことは、もはや不可能であった。
　意を決するように、パンストの下に敷いてあるパンティへと手を伸ばす。
「ママ……」
　胸は早鐘を打つ。身体が上気するにつれて、理性は瓦解していく。
　レースの黒いスケスケのパンティを両手で広げたとき、喉を鳴らした。身体の底から鋭い込みあげる欲望に、熱き肉塊もピクンピクンと大きく脈動する。
　細く伸びたパンティの股ぐりに足をゆっくりと入れる。目いっぱいに広げられた柔らかな布が少年の足の上を通って、麗香ほど豊かではない尻まであげられた。
　敏感なペニスは、パンティを穿きあげる間に下腹に貼りつかんばかりにビンビンに反り返り、手で押えようとしても、パンティに収まりきれないほどになる。
　案の定、パンティの上から、今にも破けそうなほどに膨れた亀頭が露出していた。
（こんなに……）
　チェストの隣のドレッサーに映る卑猥な自分の姿を見ながら、黒の股布に覆われて大きく隆起している股間を軽く撫でた。
　そのツルツルした感触に、思わず大きく脈動し反応する。太く膨れた亀頭の鈴口から、真珠のように輝く快楽の雫を覗かせていた。
（はっ、このままじゃあ……）
　あわてて股間から手を離す。息は乱れ、火照った全身が汗ばむほど高揚していたが、できるだけ興奮と官能を引き延ばそうとした。
　しかし、少年の心はそうはさせなかった。感情の赴くままに、透けるほど極薄のストッキングを広げる。
　脂の乗った麗香の美脚を包んだナイロンのパンティストッキングを目の前にして、パンティとはひと味違う一種独特の感触に武者震いを起こす。
　不器用な手つきで手繰ったパンストを右足の爪先にかぶせ、傷をつけないようにこわごわ膝の上まで伸していく。グレーに透けるストッキングに包み込まれていく足はシャイニングラインの淫靡な輝きを放つ。
（ママはこうやって……）
　左足も同様に包み込むと、麗香の色っぽい振る舞いを想い出しながら、閉じていた股を広げ、パンストをヒップ、ウエストまでグイッと引きあげた。
（女の人って、これで、脚をきれいに見せてるのか）
　真綿にくるまれたようなパンストの感触を味わいながら、姿見に映し出した。
　イチモツはパンストにすっぽり隠れたが、女物のパンストに包み込むゆとりなどない。きつく締めつけられて、腹を剥き出しにしたペニスの形がくっきりと露呈していた。
　勃起の鈴口から湧きあがる歓喜の露がパンストの薄布に滲んで、変質者的な趣向を見せつけていた。
　しかし、グロテスクなまでの毒々しさはなく、ナイロンストッキングが照明に反射して浮かび上がるマーブル状の模様が、淫靡なアウラと美しさを漂わせている。
　麗香の寝室には、理性も、自制心も、不安感もない、下着という魔力にもてあそばれている拓哉が存在するだけだった。麗香の下着と蟻地獄のような倒錯の世界に溺れ、だんだん恍惚とした目色に変わっていく。
　尿道の奥から衝きあげる、どうしようもない欲望のエネルギーは限界にきていた。
（ああ、も、もう……出そうだ）
　パンストにくるまれた膝をこすり合わせて、拓哉は歯をくいしばるように迫りくる射精感をこらえた。そして、母親の下着の中で一番好きなガードルに手をかける。
（これだ……これが穿きたかったんだ）
　胸のうちで、ひそかにそう叫んだ。
　あまりの感激に心拍数は高まり、胸が張り裂けるばかりに鳴り響く。
　早く穿きたいという気持ちから呼吸は乱れ、手が震える。欲望に満ちたエネルギッシュな精液は一気呵成に外界の戸口へとひしめき合ってくる。
　両手で広げられたライトピンクのガードルの股ぐりに、グレーのストッキングにくるまれた足をやおら運び入れ、膝上まであげた。
（うっ、きつい……強力なゴムみたいだ）
　ブルマ型のショートタイプでも、まったく違う手ごたえに驚いた。自分にも小さいせいか、堅めのポリエステル地が太ももをキリキリと締めつけてくる。
　しかし、麗香のようにゆっくりと穿こうとはしなかった。
　足を少しつぼめただけで、パンストの上をググーッと引きずりあげるようにして、ハードなガードルを穿いていく。
（ママって……、いつもこんなの、穿いてるんだぁ……）
　瞼に焼きついた美母の穿き込む姿と相まって、適度にきつく締めつける伸縮性のないガードル特有の質感に、マゾスティックな心地よささえ覚えた。
　すると、ペニスがビクンビクンッと躍り上がり、根元でグツグツとせわしなく惷動するエネルギー放出の予兆を感じた。
「……」
　息詰まる興奮から、熱く火照らせる全身から玉の汗が噴き出て、心拍も激しさを増した。エアコンが効いて涼しいのに、拓哉はむせ返るような暑さに包まれた。
　キツキツのガードルを力任せに華奢な尻肉まで引きずりあげ、最後は股間に食いこませるほどグーッと引っぱって、下腹を圧迫した。
　姿見に目をやれば、パンストの中の玉袋が割れそうにショートガードルで激しく押し上げられ、太ももの付け根の股ぐりもつらく食いこんでいる。中央のパワーネット部が一触即発の危機を呈していた肉茎で盛り上がった、一見すると下半身だけがピンクと黒のレオタード姿に見える。
「きっつい……！」
　ピチピチの拘束感と異様な興奮に、拓哉はとうとうこらえられなくなり、ついに煮えたぎる血潮を噴きあげてしまった。
「うっ〜……あぁ〜、ママ……」
　情けない声をあげ、頭の中で無数に発光した。ほぼ同時に、努張がピクピクッと痙攣し、欲望に満ちた快液を下着の中にまき散らして、ジワーッとぬくもりが広がる。
　ガードルのきつい締めつけ。あたかも爛熟した麗香の肉体と結合し、麗香の体内で弾けてしまった感覚だ。
「うぁ〜、マ、ママぁ……」
　ドクン、ドクンと脈を立てて駆け抜ける強烈な射精感。身震いし、めまいするほどの絶頂感に達した拓哉は、下腹を押えたまま座り込む。
（はぁ〜、やってしまった）
　しばらくして、姿見に映るガードル姿の自分を茫然と見つめながら、熱い欲望の塊を吐き出している勃起を撫でた。
　独特の青臭さとともに、菱形模様のところまで精液のシミが浮き出てきて、生暖かく粘っこいものが伝わってくる。
　女性の柔肌を鋼鉄のように固くし、脱がせるのに一苦労する存在で、男からさして歓迎されないガードルに愉悦の光芒に浸った拓哉は、しばし身動きできなかった。
　数分後、圧倒的な快感はようやく陰をひそめ、痙攣も鎮まってくると、少年に本来の理性が少しずつ取り戻してきた。
　ガードルに指をかけ、パンティ、パンストと一緒くたに膝まで引き下げる。裏地に目をやれば、白濁した快液がべっとりと付着し、濃厚な刺激臭が鼻をつく。
　ひきつりを残す肉茎もベトベトになり、秘毛まで淫らな鈍い光にテカっていた。
　人心地がついてきたとはいえ、大粒の汗がしたたり落ちるほどの興奮状態で頭はボーッとなり、耳鳴りがガンガンしていた。ペニスの根元から肛門にかけての筋もジンジンと痺れ、鼻孔からは冷たいものがツーッと流れてくるのがわかった。
（鼻水じゃない）
　上唇をちょっと舐めてみたら、懐かしい味がした。鼻血だ。