【７】

「ただいま……」
　仕事が思いのほか遅くなり、１０時を過ぎてしまった。
「ごめんね、拓哉」
　帰宅した麗香は拓哉の部屋に行く。
　拓哉はすでに寝る支度をしていた。
「お帰りなさい、ママ……」
「早く帰るつもりが、こんなに遅くなっちゃったぁ……」
「ううん、気にしてないよ」
　あっさりとした返答に、麗香はホッとする。
「あっ、拓哉……」
「何、ママ」
「お風呂、入ってきちゃうから、ママのお部屋で、待ってて……」
「……ううん」
　意味ありげにウインクすると、少々はにかんだ表情で返してきた。
「じゃあね」
　息子の部屋を後にして、麗香は寝室に寄った。そして、ネット状の袋を持ってバスルームへ向かう。
　脱衣所の扉を閉め、夏らしい薄手のジャケットから脱ぎはじめた。
　黒いタイトスカート、白のブラウスに続き、後ろのホックと、肩からストラップをはずしてブラジャーを取る。形のよいふくよかな胸の双丘が姿をあらわす。
　ウエストに指をかけ、下半身をしっかり包んでいる黒のロングガードルを引き剥がしにかかる。ややきつそうにヒップを振りながらめくり降ろしていく。
　途中で一緒に降ろしかけたパンティの股布に目をやってみれば、股間に貼りついたその裏地が、白く輝く淫欲に満ちた糸を引きながら剥がされていた。
（わたしって……こんなに）
　パンティの二重になっている股布に付いた自分の肉汁の沁みと、ほどよく濡らして卑猥なテカリを放つ繁みを見て、昼間の拓哉との出来事を思い出す。
（拓哉ったら……）
　あらわになった熟女ならではの痴情の痕跡に恥辱を覚えつつ、ガードルとパンストともにヒップから太もも、膝下までゆっくり引き下げる。足首から抜き取ったものを脱衣かごに入れると、バスルームに入る。
　ノズルをひねるなり、心地よく降りそそぐシャワーが麗香にさわやかな気持ちよさを与える。艶やかに熟れた裸体の上を玉のように弾ける。
　飛び散る細かなしぶきと霧のような湯気がベールのごとく、麗香の美しい肢体を一気に包み込んでいく。疲れを癒すこのひとときが一番好きで、何物にも代えがたい至福の喜びに感じられた。
　拓哉との甘美な行為に刺激されてか、なぜか、いつになく、バスト、ヒップ、太ももにハリと潤いがあり、身体全体がなまめいて見えてくる。
　いつもよりデリケートになっている素肌には、心なしかシャワーの水圧が強すぎた。
　ことに、若さをとり戻したようにピンッと張った乳房や過敏な花唇に、チクチクするほどのシャワーを浴びせると、切ないまでの甘美な刺激となって全身に広がり、女体を快く疼かせた。
「はぁ〜、体が熱くなる」
　官能的な紅い唇から、快美感に桃色吐息を洩らす。
　ボディソープを塗りつけ、泡まみれになった手を内股に這わせるだけで、下半身にゾクッと戦慄が走る。
「あぁ〜、いいっ〜〜」
　狭い浴室に女の嬌声が生々しく反響する。
（拓哉の手が……）
　いっぱいに広げた手を、左右の太ももでギュッと締めつけてしまう。
　昼間に味わった拓哉の手の感触がよみがえると、もどかしいまでの快感が太ももから妖しげに子宮の深部へ貫く。
（あっ、太ももから……上に）
　上に滑らせた指の腹でボディソープの泡にまみれてヌルッとした股間を撫であげたら、淫らな感触に躯がピクンと跳ねた。指先にソープとは異なる愛液の温かいヌメリが伝わってくる。
　明らかに欲情にぬめった肉汁だった。奥から泉のようにあふれ出て、麗香の２枚の花びらをしとどに濡らしている粘液が、指に疎ましく絡みついてくるのだ。
「ああぁっ〜、いいわ〜、拓哉」
　注がれる息子の真剣な眼差しとともに、いたいけな手に濡れた陰唇をさわられていく幻想ともうつつともつかない中で、麗香は強引に犯されるような生々しい実感に溺れた。
　柔らかな肉襞を人差し指と中指でゆっくりと押し広げる。
　熱い愛液が挿入を催促するようにあふれ出し、その中心に指先を伸ばした。中指の腹で秘唇、淫裂の合わせ目からクリトリスを探る。
「ううん、あっ〜、ああ〜ん……」
　悩ましい女のいななきが洩れる。肉芽はすでに硬く充血し、指の愛撫を待ち受けていた。
　クリトリスに押し当てた指を小さな円を描くように動かすと、これまで味わったことのない不思議な快感が、断続的に背筋を這いのぼってくる。
（すごいわ……、わたしって、こんなに……）
　自分の思いもよらぬ淫らな反応に驚きながらも、指の動きを加速させる。
（いけないわ、こういうことしちゃ……でも、あの子のオチンチン、たまんない……あ、あっ、あぁぁっ、拓哉の、硬いオチンチンが欲しい……）
　ばゆいばかりに精力が満ちた、拓哉の硬い若竹を瞼に鮮明に描きなが中指を埋めた。
　淫らな抽送に合わせて、しこったクリトリスにも親指で器用になぶり回すと、耐えがたい劣情が肉体を貪り尽くし、めくるめく世界に浮遊していく。
（あぁぁっ、きて、拓哉……、大きくなったオチンチンで、ママを……）
　豊艶な下半身を振り立てて、無意識に拓哉を求めた。
　２本目の人差し指を熱い源泉へ侵入させ、白い豊満なヒップを激しく揺すれば、潤滑油の愛蜜がどっと流れ、タイルの床にツツーッと糸を引くようにしたたっていく。
「あっ、あぁ〜〜、あっ、う〜ん」
　そして、悦楽の嗚咽を響かせた麗香は、しなやかなボディをブリッジさせて、オルガスムスを迎えた。
（ああ、わたし、イッたんだわ……）
　奥底から鋭く突き上げられる痺れに、ピクン、ピクン、ピクンと痙攣させたままタイルの上にへたり込み、意識も薄らぐほどの快楽に身を委ねた。


（拓哉……）
　バスルームから上がった麗香はタオルで拭きながら、深いため息をつく。
　もう一歩炎えつきない虚しさからなのか、熟れざかりの女体に、どことなくもの淋しさが残っていた。
　ネット編みのバッグから真新しい黒い下着を取り出す。
　黒のパンティ、ガーターベルトに黒のストッキング。それまで着けたことのない上質のシルクでできた、総レースのとてもセクシーなランジェリーセット。
　拓哉が退院したら悦ばせようと、この日のためにひそかに買い揃えておいたものだ。
まず、黒のガーターベルトを熟女ならではの豊艶な尻つきに装着する。ガーターベルトなんて着け慣れていないからか、何となくぎこちない。
　ガーターベルトを着けてみると、自分で見ても、白い肌には実に悩殺的である。
　つぎに、丁重に手繰り寄せた黒いストッキングを右の爪先にかぶせる。かかとの切り返し部分は、ややもするとわずかなシワも男心を興醒めさせてしまうところ。
　よじれがないようぴったり合わせ、注意深く足首から黒いナイロンのシワを伸ばすように、白い太ももの半ばまでスススーッと滑り上げていく。
　極薄のデリケートな肌ざわりが太ももに伝わるだけで、全身がピクッと震えた。
「ああ、拓哉……」
　人知れず声を出して、息子の名を呼んでしまう。
　妖艶な黒に彩られた美脚に纏綿と絡みつけてくる息子のあどけない視線がちらつく。それだけで、くすぶっていた疼きが再燃しそうである。
　麗香はガーターベルトから伸びたサスペンダーを引っぱり、慣れない手つきで太ももを包んだストッキングに留めていく。
　左脚も同様にストッキングを着けて、その姿を映しだす。なんだか映画に出てくる娼婦のように思える。
　そして、手にしたパンティを広げる。
　見るからに小さく、エロチックなムードを漂わせるレースにたっぷりあしらわれた、普段なら絶対穿かないスケスケのセクシーな黒いＴバック。
（こんなエッチなのは、新婚以来だわ）
　少々ためらいがちに、その股ぐりに脚を挿し入れた。ハリのある太ももとガーターの上に総レースの黒いパンティをスルスルッと滑らせ、腰骨まで引きあげる。
　ボリュームのある豊麗なヒップにぴったりとフィットした。かろうじて濃密な恥毛が隠せたが、そればかりでなく、ウエストの部分もＶの字に切り込まれて、下腹部は丸見えだ。
「わたしも、満更捨てたもんじゃないわ」
　手前味噌だが、鏡に映るボディソープの香り漂う恰好のいいヒップを見て、つい自画自賛してしまう。
　２０代前半の時のようにはいかなくとも、双丘の裂け目にＴバックの細い股布がぴっちりと食いこんだ肌理細かなヒップはしっかり上を向いて、肉厚のみずみずしい白桃を思わせた。身の引き締まったマグロのような太ももにかけてのフォルムは、量感きわまる肉感と人妻の色気がしたたっている。
　下着を着け終えた麗香は、美しいナイトドレスを下から脚に通す。
　ナイトドレスもランジェリーと揃えたもので、胸もとがシースルーのボディラインを強調したタイトなロングタイプの黒いナイティである。間違いなく拓哉の心をとらえて離さなくなるデザインだ。
　ナイトドレスの薄布をメロウなボディにまとっていくだけで、麗香は淫靡な情感が忍び寄ってくるような気がした。
　軽く薄化粧したあと、最後に魅惑的な唇に色鮮やかな赤いルージュをつけた。黒ずくめの、まるで新婚初夜を迎える新妻の装いになる。
　そして拓哉が待つ寝室へ向かった。
「拓哉」
　ブリーフだけの格好で待っていた拓哉に後ろから声をかけた。
「あっ……」
　振り向きざまに美母を見るなり、そのドレッシーにしてセクシーなロングナイティに、拓哉は目をしばたたかせる。
　ゆさゆさと揺れてはち切れそうな乳房の稜線と深い谷間が透けて、シルキーな光沢のあるなめらかな布に覆われた姿態。
　とりわけ、より艶っぽい黒のストッキング脚をたおやかに運ばせるたびに、深く切れ込んだスリットからムチッとした太ももの奥までチラチラと見え隠れする際どさや、太ももの素肌まで透けるほど極薄の黒いストッキングの妖しいテカリは、タイトスカートよりも気後れするぐらいまぶしい。
　拓哉から純真な心を奪いにかかる。
「ほら、見て……、似合う？」
　麗香はおもむろにナイティの裾を持ち、そのまま捲りあげて、セクシーな黒い下着姿をさらけ出した。
「あっ」
　拓哉は息を呑んだ。
　昼間に着けていた補正下着とはまったく異なり、レースをふんだんにあしらわれた黒のパンティに、ガーターベルトとストッキングという鮮烈すぎるほど魅惑的な下着は、拓哉の心にさらなる欲望を駆り立てる。
　動揺を隠しきれない拓哉の熱い眼差しがいちばん恥ずかしいところに突き刺さる。
（ダメよ、拓哉……、お願い、そんな目で、見つめないで……）
　息子に視姦されて、麗香はあわてて太ももをすり合わせるほど、子宮が妖しげにズンズンと疼きだす。
「うん……と、とても、素敵だよ、ママ……」
　口角に緊張が走る。
　ストッキングの上端から、たっぷりとした量感をたたえた白い太ももが露出し、ガーターベルトのサスペンダーがストッキングを吊りあげている。
　申し訳ない程度しか隠れていないハイレグのパンティ。熟しきった肉体をより艶めかしくするレースのガーターベルトと黒いナイロンストッキング。
「拓哉に、見てほしかったの」
　息子の前にさらした白い柔肌に映える黒い下着など、何もかもが免疫力のない拓哉には煽情的な刺激に満ちていた。
　いや、ただのセクシーだの、エロチシズムだのという表現で語れるものではない。絵画に出てくる裸婦のような、究極的な美、エロスの美の極地とまで拓哉に思わせた。
　しかし、ここまでセクシーな姿を見せつけられては、男は誰でも牡になるしかない。
「ねェ、拓哉……。ママの代わりに、ストッキングを脱がせてくれない？」
　黒い下着姿に茫然と見とれていた拓哉に、麗香は誘惑を仕掛けてくる。
「えっ……、ぼ、ぼくが……」
　意表をつく言葉にハッとし、拓哉の心臓はたちちまバクンバクンと激しく打ち鳴らし、思考力を失いかけそうになる。
「そうよ、拓哉に、脱がせてもらたいの」
　以前、イタリア映画で、年上の美しい女性が少年にストッキングを脱がせるシーンを見たとき、胸を躍らせたことがある。それとまったく同じシチュエーションが、いま目の前で起きているのだ。
「で、でも……ぼく……」
「大丈夫よ、できるわ」
　モジモジしている拓哉に、麗香はかかとをあげて、裾を降ろしたナイディのスリットの間から、黒いストッキングに包まれた長くしなやかな脚をヌッと差し出す。
「ほら、脱がせて……」
　少年を促しながら、太ももにあるガーターのクリップをはずしにかかる。
　気後れするばかりのしどけない黒い薄布に覆われた太もも。熟女ならではの豊潤さとみずみずしさをたたえた。あまりの艶っぽさに、心臓が口から飛び出るほど緊張する。生唾がしきりに出てきて仕方がない。
　目の前に迫るストッキング脚の細かな網目１つ１つが拓哉を狂わしていくようだ。
「あっ……」
　指先が麗香の太ももにふれた瞬間、拓哉は目をつぶった。震える指先をストッキングの上端にかけ、そろりそろりと極薄のナイロンを降ろしはじめる。
「そうよ、拓哉……、うまいわ」
　指先の微妙なタッチに、麗香はうっとりする。
　ナイロンの薄布を丸めるようにして引き下げていく途中、必然的にふれてしまう太ももの感触は、スベスベした肌ざわりで、ゴムまりのような弾力があった。
　麗香が床から爪先を浮かしていくのに合わせて、拓哉はゆっくりとした手つきでストッキングの感触を味わいながら引き下げていき、爪先から抜き取った。
　もう片方も同様に、拓哉が脱がすと、麗香は妖艶に頬笑んだ。
「ねェ、パンティも、脱がせて……」
　そっと耳打ちしてきた。
「あっ……」
　拓哉は言葉が出ない。心臓が最高潮に高鳴る。
　あまりの緊張で何度も喉を鳴らしながらも、美母の前にひざまずき、手をおずおずとナイトドレスのスリットから分け入った。
　ドレスの中の生温かなぬくもりと、牝のフェロモンともいえる甘酸っぱい臭気が、さらに拓哉の心を崩壊寸前まで追い詰める。
　このまま麗香を押し倒したいという衝動が、拓哉の理性をなぎ倒そうとする。苛酷なまでの葛藤は、挿し入れていく震える手と熱い息づかいにあらわれ、ブリーフの中ではペニスが猛烈な勢いで勃起してきていた。
「大丈夫よ……」
　麗香にもその気持ちは十分わかっていた。いつ襲いかかってきても拒む気持ちはない。
　だが、拓哉にはそこまでの勇気はなかった。せいぜい脱がすのが精一杯で、ガーターベルトの上に穿いたパンティを腰骨から皮を剥がすようにめくり降ろしていく。
　洗い清められた麗香の尻肉や局部から、裏返りながら黒い薄布をはずしていく行為を、自分の手でしているのだと自覚するだけで、鼻息がドレスを揺らすほど熱くなる。
「……」
　拓哉は湿り気のあるパンティを膝まで引き下げていく。
　それに応じるように、麗香も自ら総レースの黒いパンティから脚を片方ずつ抜いた。
「やっぱり、好き……。ママが、ママが、好き、大好き……」
　パンティを脱がすやいなや、拓哉はスクッと立ち上がった。
　一瞬の沈黙のあと、心の底から噴出するような麗香への感情を、もうこれ以上こらえきれないという迫力で抱きついてきた。涙をいっぱい溜めた目はうろついていた。
「あ〜ん、拓哉……」
　どこまでも純真な気持ちで、自分のことをこよなく愛してくれた愛情の深さと、身体を震わして告白する息子を見て、麗香も思わず目頭が熱くなる。
「わかったわ……ママを、愛して」
　身体が浮くかの高揚感に包まれて、拓哉のことがこれまでになく愛おしく思う。
「ママ……」
　拓哉が言いかける口を塞ぐように、麗香は口づけした。
　込みあがる愛の情火を抑えきれなくなった拓哉と麗香は、二人を待ち受けているベッドに、怒涛の欲望に翻弄されていくように絡み合って倒れ込んだ。
　拓哉が覆いかぶさったとき、豊艶なる美母の乳房は弾むようにつぶれた。今にも破裂しそうなほど高鳴っている拓哉の心臓が、麗香の胸を叩く。