鞭を執れ
はちみつ太郎 作
９

　通常の日勤を終え、帰宅した黒田は、人気の消えた部屋に入る。いつもなら、小春の声の聞こえるダイニングにもその奥の部屋にもその声はない。

「ただいまぁ。」

　返事のない空虚な空間にはなれていたが、一月あまりがたった同居生活がその慣れを失わせていた。小春ではない誰かとの同居生活だったらどうだろうと、想像してみるが、考えがつかなかった。

『計さんへ　　捜査に進展がありましたので、今日は戻りません。冷蔵庫に晩御飯とアップルパイを置いています。チンして、食べてください。　　　小春　』

　テーブルのメモ書きを手にし、小春の文字を見つめる黒田。捜査の進展という言葉に、一抹の不安を持った自分に驚くが、空虚な空間には、それに気付くものもなかった。


「シャワー・・・６分か、・・・２０分で、踏み込むか。」
　あずさは、盗聴器の出力をあげ、浴室での二人の会話に集中する。シャワーは２０分以上入らないと前もって確認していた二人。

「小春、時計・・・気にしてるわよね。ん、・・・お湯を、止めた。」
　あずさのヘッドフォンには、ＭＡＤの声と小春の声がかすかに聞こえる。内容までは聞き取れないが、夫婦、いや、友人同士の会話のように聞こえる。



　湯桶のないホテルのバスタブ。シャワーヘッドから新たに湯をだすと、ＭＡＤに背を向けた小春の背中が湯に染まる。ＭＡＤの撫でさする手を気にしながら、湯を流され、シャワーヘッドを渡された。

　クルリとＭＡＤの胸に顔が近づく。筋肉質とまではいかないながら、贅肉の少ない体型だった。咽喉元付近に視線がいく身長差の二人は、お互いの体をまさぐりながら、唇を吸いあった。

　顎を上向きにした小春は、シャワーヘッドの水流をＭＡＤの肩口にあて、片方の手を胸板に添わせ乳首へ刺激を加える。

　下腹部の具合を見まいとして上向きに視線をあてるが、ＭＡＤの視線は、小春の乳首を越え、薄目の繁茂に視線は当てられている。

　ＭＡＤは、シャワーを止める。ヘッドをホルダーに当てなおす小春。浅めのバスタブに腰までつけると、跨いできたＭＡＤの陰茎は小春の前を掠めた。

　対面でつかる二人。ＭＡＤは足を広げ、小春はその間に三角座りで納まっている。湯の中で勃起し始めているＭＡＤの陰茎は、その時点で黒田よりは長く太い。

「・・・。」

「どうしたの？」

「ん、・・・いや、おっきい・・・ですね。」

「そう？・・・あまり比べたことないし、・・・旦那さんと比べちゃった？」

「あ、・・・はい、うちのは、そこまで・・・。」

「男の大きさは、ここだけじゃないよ。」
　湯の中の陰茎を水面に浮上さえるＭＡＤ。亀頭だけが湯の上に出てくると、小春は、指先で摘んだ。

「え？・・・まだ、大きくなる？」

「んー、８割・・・かな。」

「まじかぁ・・・大丈夫かなぁ。」

「大丈夫、いずれは子供の頭が出てくるんだよ。」
　視線を陰茎から外し、笑みを浮かべるＭＡＤにやると、小春は自然と唇を吸いにいった。安心感と包容力の混ざった感覚は、小春を捜査から遠のけた。

　バスタブに腰掛けたＭＡＤは、全貌を表した陰茎の黒光に性経験の豊富さを知った。咥えろと言葉では言わなかったＭＡＤだが、威圧感のある屹立は、吸い寄せられるように小春の唇が添えられた。

「ペロッ・・・ペロッ。」
　先端への刺激を感じ取ったＭＡＤは背を仰け反らせる。湯船の中で膝をたて、亀頭をくわえ込んだ小春は、上向く陰茎を半分ほど頬張ると、舌先で亀頭を丸め込んだ。

「グポッ・・・・グポッ。」

「あぁ・・・いいぃ。・・・こっち見て、見ながら・・・そう、あぁぁっ。」

「グポグポッ・・・・グポッ。」

　陰茎の根元は指先でさすり、先端は舌先で舐めさする。経験豊富なはずのＭＡＤも小春の舌捌きにある程度翻弄させられている。

　射精感を感じるところまではいかないが、このまま挿入すれば、数分と持たないだろうことは判っていた。よって、時間稼ぎをするために、バスタブを立ち上がると、ボディーソープを指差した。

　含んでいた陰茎を放り出し、涎を腕で拭う小春。ボディーソープのボトルを持ったＭＡＤとともにバスタブを出た。

　一分ほどのフェラチオで１０割を超える勃起をさせられたＭＡＤは、ポンプを２,３度押すと、液体を手にし、素早く泡立てた。

　向かい合った小春の乳房に泡をあてがい、残った泡を繁茂に擦り付ける。擦り付けたついでに、割れ目まで指先を添わせると、少し腰を引いた小春は、かわいらしい喘ぎを吐いた。

「あんっ・・・。」
　反撃のつもりか、乳房の泡を手に取ると、亀頭の先端を握り、少し早めにシゴイた。

「ほぉぉっ・・・。」
　二人の指先はお互いの生殖器を刺激しあい、前戯での昂ぶり方を試しあっている。

　交互に背後に回る二人は、お互いの性器への愛撫の時間を見計らいながら繰り返し交代する。小春の背筋が反りくり返り、ＭＡＤが背後に回っているとき、鍵状にした二本の指は小春の膣襞を割り開き、挿入された。

「あぁぁぁんっ・・・・はんっ・・・はぁぁぁぁんっ。」
　今まで以上に反り返りと、ＭＡＤの手首を抑える力が加わると、耳元でＭＡＤは囁いた。

「大きいの・・・欲しくなった？旦那さん以外の・・・他人棒。」

「は、いぃぃ。・・・お布団・・・で。」
　１８分ほどでシャワー室を出た小春は、あずさとの約束を確認すべく備え付けの時計を見た。
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
はちみつ太郎さんの作品群→はちみつ太郎さんの他作品
2012年11月21日掲載
Copyright (c) 2012-2020 はちみつ太郎 All rights reserved.
▲