その３．　パーティ会場で

　３度目は、静香が所属する業界の、親睦パーティでの再会だった。
　その日静香は、業界団体が主催する、相互交流のためのパーティに出席していた。
　出席者は皆、家族連れで、パーティ会場のある大型ホテルに宿泊していた。
　その地域の代表として、近くの地域の担当者に紹介された静香は、その人の家族と挨拶をする。
　それまでに、沢山の人と挨拶をしていた静香は、最初、その子に気がつかなかった。

（「すごく色っぽい・・」）
　浩一は、一目見た時からその女性の服装に、見蕩れてしまっていた。
　仕事関係の場所に相応しい、控えめなフォーマルウェア。
　だが、隠しても隠しきれない、女の妖艶さがそこから滲み出していた。
　浩一は再び、あの女性と再会していた。
　だが、相手の女性はまだ自分に気がついていない。
　以前の出会いを思い出した浩一は、知らず知らずのうちに、その女性の顔を凝視してしまっていた。

　挨拶の後、相手の男性と話をしていた静香は、その人の子供が、いつまでも自分の顔を見詰めている事に気がつく。
（「なに？、どうしたの・・えっ？！、まさか・・」）
　その子の困った表情に、見覚えがある。それは、あの電車の中学生だった。
（「うそ・・信じられない・・」）
　あまりの偶然に、静香の心に動揺が走る。あれから半年が経っていた。
　一瞬、顔色を変えた静香だったが、すぐに普段の表情を取り戻し、ごく普通に、その子に話しかける。
「初めまして・・中学生ですって？、ウチにも高校生の娘がいるのよ。」
「浩一です。どうぞよろしく。」少し硬い表情で、返事をする男の子。
（「まさか同業者の子供だなんて・・私のこと、どう思ってるのかしら・・」）
　人には話せない出会い方をしている静香と浩一は、お互いに不安を抱えながら、相手の出方を探っていた。

　電車の中で静香と再会してからの浩一は、まるで性欲の塊だった。
　女子高生の脚。雑誌のグラビア。風俗店の看板。主婦のお尻。
　何を見ても勃起してしまう。
　そこから、静香の身体の一部分を連想して、あの気絶するような快感を思い出してしまうのだ。
　以前は週に一度程度だったオナニーが、最近は、一日に何度も射精するようになっていた。
　この日も人の集まる場所で、沢山の女性の脚や胸を目撃した浩一は、とても我慢が出来なくなって、人の来ないホテル内のトイレで、興奮を治めてきたばかりだった。

「香織っていうの。いい機会だから、友達になってくれない？」平静を装い、笑顔で話しかける静香。
「はい・・」
「香織・・・こちら、浩一君。○○中学の２年生ですって。」
　娘の香織を紹介する彼女の胸のうちは、なんとかこの場を無事に済ませたい、その一心だった。
「こんにちは。」「あ、はい・・」
　笑顔で挨拶をする香織に対して、浩一の方は、香織の顔を一目見るなり、頬を真っ赤に染めたまま俯いてしまう。
「こら、失礼だぞ。ちゃんと挨拶をしないか。」
　父親にそう叱咤された浩一は、やっと面を上げ、恥ずかしそうに挨拶をした。

　透き通るような声で、その子が浩一に挨拶をしてくる。
（「わぁ〜〜可愛い・・」）
　浩一は女性と付合うには若過ぎたせいか、彼女の透き通るように白い、肌理細やかな素肌や、それと好対照の漆黒の長い髪には、それほど魅力は感じなかった。
　だが、母親譲りの美しい顔だちと、とても細いウェストや、すらっとした魅力的な脚には、下半身が勝手に反応してしまう。
（「超清楚・・なんて素敵なんだろう。うっ！、痛ッ・・」）
　気づかれないように、そっと腰を引いた浩一は、この美少女と友達になりたいと思った。
　香織の話し方から、静香が浩一の事をなにも娘に喋っていない、そう確信した浩一は、安心して口を開いていた。

　その後、社交的な性格の香織が、積極的に浩一に話しかけ、やがて二人は親しく話をするようになった。
（「よかった・・」）
　あの出会いを、親に話されるのではないか、それを心配していた静香は、二人の様子を見て、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「よかったら今度、ウチにも遊びに来て頂戴。」ごく自然に別れの挨拶をする静香。
「はい、ぜひ伺います。」浩一は、打ち解けた様子で、明るく返事をしていた。

　二つの家族と、静香と浩一の二人は笑顔のうちに別れた。
　だがこの時、二人の心の中には、安心と共により深い欲望が芽生えていた。


その４．　静香の自宅で

　その後、浩一と香織は、暇を見付けては二人だけで会って、デートをした。
　デートを重ねるにしたがって、浩一は徐々に年上の美少女に夢中になり、香織の方も、人目を引く美少年とのデートを、毎回楽しみにするようになっていた。

　ある日、こんな事があった。
　近くの公園で待ち合わせをして、食事をする場所に向かっていた二人は、仲良く並んで歩道を歩いていた。
「浩一君・・・あの子たちを見て。」
　いきなり香織が、浩一に目配せをする。その眼は道の反対側を通る、少女たちを指し示していた。
「えっ、なに？」
　浩一が、中学生と思われるその子たちに顔を向けると、浩一の視線に気がついた女の子たちは、一斉にキャーキャーと騒ぎ始める。
「さっきからずっと、浩一君に見蕩れてたのよ・・ねえ、どんな気分？」
「どうって、言われても・・」返事に困って、あらぬ方向に目をそらす浩一。
「私はとても誇らしい気持ちよ。宝物を独り占めしてる気分。」香織は浩一の横顔を見つめながら、嬉しそうにそう呟いた。
「香織さん・・」浩一が香織の方に顔を向けた瞬間、いきなり彼女が彼に口づけをした。
「きやぁーー」道の反対側から、女の子のかん高い悲鳴が湧きあがる。
　香織は、顔を真っ赤にして、ぼーっとしている浩一を抱き締めながら「大好き・・」と、彼の耳元で囁きかけていた。

　その日の夜、香織は静香と二人で食事を摂りながら、その日あった出来事を母に報告していた。
「へぇ〜、浩一君、モテるのね。」
「うん・・私、なんだか嬉しくなっちゃって。」
「可愛いペットと一緒の時みたいに？」
「いやだ・・そんなんじゃないもん。」
「冗談よ。・・ねえ、香織、あの子を抱きたいんじゃない？」
「えっ？・・」
　いきなり核心部分に触れる静香。だが、母の性格をよく知る娘は、それほど驚かなかった。
「あの子、あなたのことが好きみたいよ。あなたも好きでしょう・・あの子のこと。」
「うん・・」
「思ったとおり。なら、話は簡単ね。」
「どうするの？」
「何もしないわよ。ちょっと手伝ってあげるだけ。」
　静香は含みのありそうな笑いを浮かべながら、頭の中で端正な浩一の顔を思い出していた。

　次に浩一が静香の家に連絡をして来た時、静香は娘には内緒で、浩一を自宅に呼び寄せた。
「時間は大丈夫なんでしょう？、今日は食事をしていって。」
　ラウンドネックのサマーニットに、膝下までのブリーツスカートを着ている静香が、浩一に背を向けたまま、話しかける。
「いいんですか？、嬉しいです・・でも、香織さんは？」
　飲み物を用意してもらっている浩一は、静香の白のニットの背中にうっすらと浮かぶ、ブラのラインに目を奪われながら、そう答える。
「もう、浩一君たら・・私だけじゃ不満なの？」
　静香は飲み物をテーブルに置くと、悪戯っぽい微笑みを浮かべながら、浩一と向かい合った。
「まさか・・ただ、いつ帰るのかな、て思ったから・・」
（「静香さん、綺麗過ぎ・・どうみても３０才ぐらいにしか見えないし・・」）
　浩一は目のやり場に困りながら、静香の首元から覗く、美しい鎖骨の線をチラチラと盗み見ていた。
「香織も浩一君の事が好きみたいよ。いつもあなたの事ばかり、話してるもの。」
「・・・本当ですか？」思わず目を輝かせながら、頬を染める浩一。
「嬉しい？」静香は、揶揄うような口調でそう言うと、浩一の顔を覗き込む。
「なんだ・・嘘なんですね。揶揄わないでくださいよ。」怒った顔でむくれる浩一。
「嘘じゃないわよ。あなたとセックスをしたいって、真剣に思ってるはず・・」
「えっ！・・」予期しない静香の発言に、浩一は言葉を失った。
「ああ見えても、香織は経験があるのよ。年上の男の子から誘われることが多かったから。」
「・・・」どう答えたらいいのか解らない浩一は、黙ったまま、ただ静香の顔を見詰めている。
「浩一君は、まだなんでしょう？、初体験・・」
「えっ・・ええ・・まだです。」自分の事を訊かれた浩一は、恥ずかしそうに目を伏せた。
　椅子に斜めに座った静香は、浩一の顔を見詰めたまま、ゆっくりとその美しい脚を組んだ。
「浩一君と香織、お似合いのカップルよね。二人とも可愛いし・・」
　浩一は話を聞きながら、静香が香織との交際を認めてくれている事に、喜びを感じていた。
「でもその前に、練習をしないと・・」不意に静香が、独り言のように呟く。
「えっ？、なんのことですか？」
「セックスのことよ。したいんでしょう？、浩一君も・・香織と。」
「それは・・もちろん、でも・・あの・・」もう浩一は、あまりの事に頭が混乱して、うまく返事が出来ない。
「いきなりは無理よ。だって全然経験のない男の子としても、嫌な思い出になるだけだもの。」
「そ、そんな・・だって・・」
「勢いに任せてしたら、嫌いになるかもしれないわよ。それに、妊娠するかもしれないし・・」
「・・・」困った顔で黙りこくる浩一。
「ねえ、浩一君・・私でよかったら、初めての相手をしてあげる。」なんの前ぶれもなく、静香は、明るい声でこう切り出した。
「えっ！？・・」びっくりした顔で、相手の顔を見詰める浩一。
「私じゃ嫌？」心配そうな顔を装い、浩一の顔を覗き込む静香。
「と、とんでもない。凄く嬉しいです。でも・・」浩一は、混乱したまま口籠ってしまう。
「誤解しないでね、そんな事したことがないのよ。でも、浩一君が相手なら、優しく教えてあげる・・どうかしら？」静香は言い聞かせるような静かな声で、さらにそう誘った。
　穏やかな表情で浩一の顔を見詰めている静香の、さり気なく組んだ左足の太股が、スカートの下から覗いている。
　いつしか浩一は、その真っ白な太股から目が離せなくなっていた。
「それは・・僕は・・前から静香さんに憧れてたから・・でも、そんな事をしたら香織さんが・・」
「それは大丈夫。私から、香織に話すから。本当に好きなのは、香織だけだって説明するわ。」
「本当ですか・・それって、なんか夢みたいだ・・」
　夢のような展開に、心ここにあらずの浩一の表情を見て、静香は心の中で”しめた”と思っていた。
「私と練習して、上手くできそうだったら、あの子と二人きりで一晩過ごさせてあげる。それでいい？」
「ええ、でも・・それ、香織さんは納得するかな？」
「もちろん、香織も大喜びするわよ。浩一君としたくて、仕方がないんだもの。・・あなたのことが好きで、あなたのことをもっとよく知りたいって、言ってるの。」
　静香は、細く白い浩一の首の小さな喉仏が下から上に動き、ごくりと生唾を飲み込むのを見逃さなかった。
「本当に？・・香織さんがそんなこと考えてるなんて、信じられない・・」
「本当よ。・・信じないの？」
「だって・・」
「・・そうよね・・あなたぐらいの歳の男の子って、綺麗な女の子はそんな事はしない、って思い込んでるから・・」
「・・・」
「わかった・・じゃあ、証拠を見せてあげる。」
「えっ！？、証拠って・・どうゆうことですか？」
「いいから、ついて来て。」
　静香は浩一を促して、居間から家の奥に向かった。
「シッ・・静かにして・・」長い廊下の突き当たり、ひとつの部屋の手前で立ち止まった静香は、浩一に向かってそう囁く。
　そして、ゆっくりとそのドアに身を寄せる。
「・・・・あぁ・・はぁ・・あんっ・・んっ・・」
　ドアの内側から、微かに女の子の喘ぎ声が聞こえてくる。
　浩一は思わずドアにすり寄り、静香と並んで部屋の中の物音に耳を欹てた。
「あんっ・・はあぁ〜〜、あぁ・・気持ちイィ・・あぁ・・」
　聞こえる。確かに香織の声だ。
（「家に居たんだ・・」）浩一の目が大きくなり、頬が赤く染まってゆく。
「どう？、聞こえるでしょう？」
　静香はうっすらと微笑みを浮かべながら浩一の耳元でそう囁くと、彼の顔を覗き込んだ。
　それから、思ってもみない事を話し始める。
「さっきあの子に、中学生の男の子が、電車の中で射精しちゃった時のことを、話してきかせたの。」
「えっ・・それって、もしかして・・」驚いたような表情で、静香の顔を見詰める浩一。
「そう、あなたの事よ。名前は言わなかったけど・・でも、きっと香織は、浩一君の事を思い浮かべたはず・・」
（「そんな・・」）
　浩一は、香織があの出来事をどう思ったのか、すごく不安になっていたが、それと同時に、美しい女の子がそれを知ったことに、とても興奮していた。
「今あの子は、あなたが逝くところを想像しながら自分を歓ばせてるのよ。・・あそこを指で弄りながら。」
　浩一の唇が半開きになり、息が荒くなってゆくのが判る。
　その時だった。部屋の中から・・「あっんっ！、んっ、きて・・浩一！・・あっあぁ〜〜」と、一層かん高い歓声が聞こえた。
（「えぇ〜っ！？・・うそ・・」）放心状態でドアを見つめる浩一。
　浩一の股間が急速に膨らんでゆくのを確認した静香は、その反応に満足して、浩一の手を引くと素早く部屋の前から離れる。
　そして、静かに廊下の壁に浩一の身体を押し付けると、息がかかるほどにその顔を彼に近づけながら、
「ね・・わかったでしょう、あなたに夢中なのよ。」と、悪魔のように浩一に囁きかけた。
（「あの香織さんが・・一体どんな顔で、あんな声を・・」）浩一は、何がなんだか判らなくなっていた。
　ただ、夢中になって静香に抱きつき、その胸に顔を埋めようとする。
「ふふ・・いいのね。よかった・・じゃあ、今度、あらためて家に来て頂戴。約束よ。」
　放心状態の浩一の唇を、優しく指先で押さえながらそう囁いた静香は、潤んだ眼で浩一の瞳を覗き込む。
　それからゾクッとするほど低く艶っぽい声で、
「ねぇ、浩一君・・押しつけてみて。あの時みたいに・・」と、彼の欲望に油を注いだ。
　浩一の方は、言われなくてもそうしたかった。先程からもう、股間はカチカチになっている。
　腰を前に突き出す様にしながら、静香のウェストを手前に抱き寄せた。
　既にスボンの中で目一杯に勃起して、裏側を向けてそそり勃っている浩一のペニスが、柔らかい静香の腹部に強く押しつけられる。
　それはすぐに、ドクンドクンという力強い鼓動と、燃える様な熱さを静香の身体に伝え始めた。
「あ・・はぁ〜・・」
　思わず浩一の首に両腕を回し、その細い身体に抱きつく静香。
　浩一の肩に頬を埋める彼女の息は乱れ、その意識は、完全に若い生殖器官に占領されていた。
　すぐに静香の下腹部は、あの日の様に波打ち始める。
　忽ち浩一の表情が歓びに輝き、その口元がだらしなく緩んだ。
（「あぁ、この子の精液の匂いを嗅ぎたい・・震えながら射精するところを見たい・・跳ね回るペニスの感触を味わいたい。」）
　静香の脳の奥深く、本能を司る部分から、大量の性欲が溢れ出していた。
「ハァ、ハァ・・いいわ・・特別に、またしてあげる。」
　とても我慢が出来なくなった静香は、スカートの前を捲りあげ、相手の身体を壁に押しつけるようにして、激しく腰をくねらせ始める。
　そして、気持ちがよ過ぎて声も出せずにいる、震える少年の唇を、自分の濡れた唇で完全に塞いでしまう・・

「ねえ、浩一君。射精してる間は、何を考えてるの？」
　白い顔を赤く上気させた静香が、射精後の脱力感でボーッとしている浩一に、そう問いかける。
「それは・・」
　壁に背を凭れかけたまま、恥ずかしそうに口淀む浩一。
「教えてよ。ねえ・・」
　下から見上げるように浩一の顔を覗き込んでいる静香は、悪戯っぽい微笑みを浮かべながら二人の間に手を差し込み、まだ固いままの浩一のペニスの裏側を、服の上からそっと撫で上げた。
「あんっ！、だめ・・」
　敏感になっている部分を、繊細な指先で撫でられた浩一は、思わずかん高い悲鳴を上げながら、飛び上がった。
　それから、くるくると忙しなく眼を動かしながら、「静香さんがしてるところ・・」と、小さな声で返事をする。
「えっ！？、私？・・私がセックスしてるところを、想像してたの？」驚いたように聞き返す静香。
　てっきり、香織の事を考えていると思ったのだ。
「うん・・こんな知的な人がセックスをしたら、どうなっちゃうのかな？、て・・」
　浩一は、意外そうな表情をしている静香の顔を、真っ直ぐに見据えながら、はっきりとした声でそう答えた。
　それから暫く、無言のまま浩一の顔を眺めていた静香だったが、やがて決断したように口を開く。
「いいわ。見せてあげる。」
「えっ！？」
「見たいんでしょう？、私がしてるところ・・」
「あ・・は、はい・・それは・・もちろん、すごく見たいです。」
「それなら、見せてあげる。」
「本当に！？・・本気で言ってるんですか？」びっくりした顔で静香を見詰め返す浩一。
「もちろん本気よ。今度、その機会があった時に、事前に浩一君に連絡をするから、指定した時間に家に来て。」
　天にも昇る気持ちの浩一は、言葉もなく、ただ頷くだけだった。