６．

「すると、あの本の持ち主ではなく、本自体に何かの『仕掛け』があったとでも？」
「いえ、『仕掛け』という言い方が適切かどうかは分かりませんし、断定もできません」
　そのころ氷室裕は、弥栄真夜から預かった本を影村警部に手渡していた。何度も多発した『人間が突然ミイラ化する』という事件は、町中を震撼させたのである。そのため、警察は一刻も早くこの事件を解決しなければならなかった。
「しかし、いかにも曰ありそうな本だな…」
「そうですね。この本を持っていた彼女…弥栄真夜が、歩道橋から落ちて無傷だった、というのがなんだか信じられてくる気がしますよ」
「しかしねぇ。まさか、本が人を助けたとでも？」
　影村警部がもっともなことを言う。氷室がそう思っていても、警察の人間である影村はあくまでも非科学的なことを信じることはできなかった。
「世の中、非科学的なことはいくらでもありますよ。私の妻も、ある意味で、ね」

「それで、何かわかったんですか？」
「いや、これといって何にも」
　事務所に帰った氷室は、妻であり助手である彼方にそう言った。あの本からは特に分かることはない。少なくとも今は。
「そういえば、あの本をどこかで見たことがある気がするんですよね、わたし…」
「ん？それは本当かい？」
　氷室に聞き返されて、彼方が考え込む。が、答えは出なかったようで、やがて
「…自信ありません」
　と答えた。

「不純異性交遊よ、これ…」
　やがて一週間が経過し、脩平と真夜の仲はさらに深まった。元々ただ単に素直になれない二人だったものの、魅夜の一押しが見事に功を奏してしまったのである。この点だけに関しては、真夜も感謝せずにはいられなかった。
「バレなきゃ大丈夫さ」
「それはそうだけど…ん、まだ、早いよ」
　『形だけ』の抵抗をする真夜に、脩平は容赦なく指を這わせてくる。
「今のところ、俺が弥栄にがっついてる…というと変態みたいだな…え〜と、弥栄をリードしているけど、弥栄が俺に『したい』って言ってくれれば、俺は別に拒んだりしないからな」
「いえるわけないでしょ、そんなこと！」
　妙に力説する脩平に真夜が言った。
「なんていうか、でもさ、最近、妙に…色っぽくなってないか。妙に、っていうか急にっていうか…」
「ん・・・そんなことないと思うけど」
　そう言ってみたものの、魅夜と命を分け合ったことの影響も多少あるのかもしれない。夢の中でさえ男を魅了する夢魔が、今は真夜の半身なのだ。ということは、現実世界でも無意識に色気を振りまいてしまっているのかもしれなかった。

「そういう脩平も…前と比べて、何か、いい…ッ…！」
　指を這わされているうちに快感を抑えられなくなった真夜が脩平に訴える。
「バカ、自分だけ『よかった』って思っても仕方ないだろ」
　真夜の両乳首を二本の指でつまむように刺激してやりながら、脩平が言う。
「そんなの、ただ『ヤりたい』って思ってる男が、まったく知らない女を強姦するのと同じじゃないか」
「…脩平は、違うってこと？」
　意地悪く、真夜が聞いた。が、次の瞬間下着の上から雌蘂を刺激され言葉が途切れた。
「くううぅっ！」
『いまどき珍しいくらい、いいコね。大事にしなさいよ、冗談でもなんでもなく』
　魅夜が話し掛けてくるが、真夜はそれどころではない。激しさを増した指の動きが、快感を刺激して止まない。
「ほら、どんどん濡れてるぞ」
　下着を濡らし始めた愛液を見て、脩平が真夜に呼びかける。
「だ、だめぇ、そんなにしないで、見ないで…」
「ダメ、やめてやらない」
　脩平はそう言うと、今度は真夜の下着の中に手を入れてしまった。
「ひっ」
　と真夜が声を上げたのを聞いてから、再び指を動かしはじめる。恥毛をなぞってやり、やがて亀裂へ。そこから少し上へ指を伸ばして、肉芽へ…。
　くちゅ、くちゅ、と愛液の擦れる音をわざと立ててやって、真夜の官能を煽ってやる。
「あん…ッ」
　顔を横に向かせ、激しく体を震わせると、豊かな乳房がぷるん、と激しく揺れた。
『案外肉感的な体してるじゃない。若いくせに。こりゃ、このコ以外にも人気高いでしょ、真夜』
『そんなこと分かんない。でも、脩平はこう見えていい人だと思うわ。人間的に』
　やっと休む暇が与えられたところで、初めて胸のうちで返事をする真夜。が、次の瞬間、脩平の指が直接入ってきた。
　ぐちゅっ、と音がした。
「ひいいぃっ！」
　突然の異物の挿入に対し、真夜の体はあまりにも敏感だった。大きく背中をのけぞらせ、足を精一杯内股にして侵入者を食い止めようとする。が、すでに遅く脩平の指はすでに奥まで入ろうとしていた。
「やっ、痛っ…んっ」
　前後されるたびに、痛みと快感が入り混じる。
「気持ちいいだろ？弥栄」
「だめ、ダメなの…っ」
　目尻に涙を溜めて快感を訴える真夜に対して、脩平はさらに指の動きを早める。激しく、小刻みに、中で間接をまげてやって内側から刺激してやる。
「あああっ！」
　やがて達した真夜が激しくのけぞった。体中に走った汗が飛び散り、まるで天女のような美しさだった。

『あ〜、いいわ、すごく、イイのぉ…』
　真夜の中で、魅夜もご満悦のようだった。

　スルリと下着を下ろされ、真夜は素っ裸にされた。脩平の手が優しく肩を掴み、仰向けから四つんばいへと体位を変える。
「…入れるぞ」
「…ん、優しくね」
　言われなくても、脩平は自分をどこまでも気遣ってくれる人間だということを真夜は知っている。
　あくまでも、言葉は通過儀礼に過ぎない。
　先端が入り、激痛が走った。が、真夜は声を上げそうになりつつも耐える。唇を噛んで。痛みを訴えたりして脩平を遠慮させるのが悪い気がするのだ。
（や、やだっ、痛いけど、・・気持ちいいよぉ…っ！）
　しっかりと腰を支えられ、ようやく奥まで密着した。真夜の中一杯に脩平が広がった。
「はあああぁ…っ」
「弥栄、お前、何で、こんなに狭いんだよッ！」
「し、知らないよぉ…」
　ぐしゅ、ぐしゅ、といやらしい音が響く中で、真夜は声を上げて脩平の突き上げを受け入れる。そのまま、少しずつ激しくなる腰の動きに合わせ、真夜も自ら腰を微動させていた。
「真夜、ダメだ、出る！」
「えっ？」
　言うが早いか、真夜の快感が膨らみ、同時に膣内に熱が走る。ねっとりとした液体が注ぎ込まれてくる。
「きゃああああぁ…っ」
　悲鳴の混じった嬌声が脩平の耳を突いた。やがて力尽きた真夜は、ぺたん、とベッドに倒れてしまった。

「…あ、あああっ！」
「…ああーーー！」
　しばらくして、二人が同時に声を上げた。
「ど、どうしよう、俺、中、出しちゃったよ！」
「出しちゃった、って、出されちゃったわよ！」
　二人して裸のままベッドの上で慌てる二人。が、やがて真夜がばっ、と立ち上がると
「洗ってくる！まだ間に合うわ！」
　と風呂場へ駆け出した…が、コードに足を引っ掛けて派手に床に転がった。
「あーあ、なんていうか、その…」
　足を大またに広げて投げ出して、仰向けで倒れた真夜を見て、脩平がやれやれ、と顔を覆った。
「…もう、お嫁にいけない…」
　泣きそうな顔になりながら、真夜は再び風呂場へ駆け出した…。