その日、雪奈は朝から忙しかった。
　夫の敏文が会社の上司を家に連れてくることになっていたからだ。
　先日敏文の勤める会社が電撃的に外資に買収され、リストラの嵐が吹き荒れるらしいという話を敏文から再三にわたって聞かされていた。
　35歳の敏文は超氷河期と言われた就職事情の中、細い細いコネを辿り今の会社に何とか入社した。
　雪奈は、敏文が真面目に勤め上げていることは重々承知していたが、過酷なリストラの中、会社に残ることが難しいであろうこともまた分かっていた。
　そんな中での上司の家庭訪問である、妻として粗相の無いようにもてなさければと雪奈が意気込むのは当然であった。

　雪奈と敏文の出会いは、雪奈が学生時代に敏文の勤める会社にアルバイトをしたことに始まる。
　二人の結婚が決まった時、周囲は驚きの色を隠そうとしなかった、あまりパッとしない敏文が、アルバイト時代社内の男子社員全てが狙っていた雪奈と、しかも雪奈と敏文の間には８歳の年の差がある。
　雪奈が敏文と交際、そして結婚を決めた理由は「放っておけなかったから」というものであった。
　周囲からは色々と言われていたが、敏文は真面目で優しい男だったし、平穏なこの暮らしに雪奈は十分満足していた。

　ピンポーン

　呼び鈴がなる。
　雪奈は急いで玄関に向かった。
「おかえりなさい。」
　雪奈がドアを開けるとやや緊張気味の面持ちの敏文の横には、敏文の気持ちなどまるで知らないかのようにリラックスした表情の長身の黒人男性が立っていた。
　身長は１９０センチはあるだろうか、小柄な敏文の横に立つとその長身は更に強調される。

「ただいま。雪奈、こちらは上司のウィルさん。」

　敏文がウィルの紹介をすると、ウィルは

「こんにちは、ウィルです。突然お邪魔してすいません。」
　と流暢な日本語で挨拶をしてきた。

「主人がいつもお世話になっております。」
　雪奈は慇懃に挨拶を返した。

　１年前に購入し、引っ越して来た時はその広さに落ち着かなかった感もあるマンションのリビングもウィルがいるだけで急に狭くなって感じる。
　夕食は雪奈が朝から１日かけて準備した料理にウィルは
「デリシャス」
　を連呼し、会話の内容も二人のなりそめや、ウィルが昔日本に留学しておりその時に日本語を覚えたことなど仕事とは関係の無い話ばかりで和やかなムードで進んで行った。

　和やかなムードの中、雪奈の緊張はかなり解れていたが、相変わらず敏文だけは緊張仕切りであった。
　そんな緊張の中、強くも無い酒をウィルのペースに合わせて飲み続けた敏文の意識が朦朧としていたことから雪奈はウィルの会話がなるべく敏文の方に向かないようウィルの会話の相手を一心に勤めた。

　しかし、そんな雪奈の努力が仇となったのか、会話に加わることが無くなり敏文の意識は遂に限界に達し
「Mr.ウィル、何とか、何とかお願いします・・・」
　とどちらが外国人かわからない程、拙くろれつの回らない口調で言うと敏文はテーブルに突っ伏したまま眠ってしまった。

「オー長居しすぎてしまいましたね、そろそろ帰りマス。」

　ウィルが立ち上がり帰り支度を始めたことから、雪奈は懸命に敏文を起こそうと試みたが酔っ払って眠りこけた敏文は一向に目を覚ます気配はなく、雪奈は起こすことを諦め一人でウィルを見送ることにした。

「今日は主人が本当に申し訳有りませんでした。」
　雪奈が敏文の物に比べ倍は有ろうかと言う靴に足を通すウィルに本当に申し訳なさそうに言った。

　気にしないで下さい、本心ではどう思っているかは別にしてもウィルの口からはそんな言葉が返って来ると思っていたが、ウィルから帰って来た言葉は全く違うものだった。

「ご主人のお願い、ダメかもしれません。多分ダメネ。」
　ウィルはさっきまでの夕食の時の和やかな口調ではなく、事務的で冷徹な口調でそう言った。

「今月中にも決定すると思いマス。」
　ウィルはさらにそう続けた。

「そんな、何とか、何とかならないんですか？今月中だなんて、せめて半年、いえ３ヶ月でも良いんです！お願いします！」
　雪奈は殆ど泣きそうになりながら懇願した。

「ノー、ご主人を会社に残すメリットがありません。そんな人をリストから外したら私がリストに載ってしまいマス。」
　雪奈の懇願を突き放すようにウィルは言った。

「そこを何とかお願いします、お願いします」
　雪奈は殆ど土下座に近い状態でひたすらお願いしますを連呼していた。

「何度も言うようにメリットがありません。それともミセス、あなたが何かメリットを提供してくれますか？」

「メリットですか・・・・・でも私にはそんな能力は・・・・・・」

「良く考えて下さい、ミセス、美しく魅力的なあなたにしかできない方法でメリットを提供するんです、ご主人が会社に残るラストチャンスなんですよ。」

　美しく魅力的・・・・・・
　雪奈はその言葉にウィルは自分を女として見ていること、そしてそれが何を意味するかを理解した。
「そ。そんなことはできません。」
　雪奈は消え入りそうな声の返事に

「OK。無理にとは言わない、では。」
　ウィルはあっさりと引き下がるとノブに手をかけた。

「ま、待って下さい！」
　ウィルが帰ってしまったら敏文のリストラは決定的だ。
　雪奈はとっさにウィルを引き止めた。

「じゃあOK？」

「そ、それは・・・・・そんなこと今すぐには決められません・・・・・・」

「ノー、ビジネスはスピードが命ネ」
　そう言うや否やウィルはズボンのジッパーを引き下ろし、ズボンの中から巨大なペニスを取り出した。
　そのペニスは靴と同様に敏文のモノの倍はあろうかというサイズだった。

「ラストチャンスだ、主人が会社に残れるかどうかの。叫んで助けを求めたいならそうすれば良い、こんな程度の状態ならなんとでも言い逃れできるしな。」
　ウィルは先ほどよりもさらに冷徹に言った。

　どうすれば良いの・・・・・・
　雪奈は途方にくれ、呆然としていた。
　しかし、そんな雪奈を無視し、ウィルは土足のまま玄関に上がり込むと、その巨大で雪奈の美しい黒髪と同じくらいに黒い手で正座した状態の雪奈の頭を、鷲掴みにすると自らの股間に引き寄せた。

「ムグッ！」
　顔を股間に押し付けられるかたちになった雪奈は思わず咽び声を上げた。

「決断力の無いお前のためにお膳立てしてやってぜ、どうする？俺を訴えるか？まぁお前の主人は俺の後任にクビを切られるだけだ。でもお前がやることやりゃあお前のダメ亭主は会社に残れるんだ。」

「hurry up！Fuckするのは勘弁してやるよ、さっさとcockをしゃぶりな。」
　微動だにできずにいる雪奈に畳み掛けるようにしてウィルは先ほどまではとは打って変わり下卑た言葉使いで命令した。

　どうしてこんなことに・・・・・・でも・・・きっとこの人の言う通りなんだわ・・・・敏文さんが会社に残るためには私が・・・・・

「分かりました・・・・・でも敏文さんには敏文さんにだけは絶対にこのことは言わないで下さい・・それと、本当に敏文さんのこと約束してくれるんですね」

「OK、OK、約束するよ、当たり前じゃないですか。」
　雪奈の言葉を聞くとウィルは先ほどまでの紳士的な言葉使いに戻った、紳士でも何でも無い最低の男であるこの男のその紳士ぶる態度に雪奈はさらに悲しくなっていた。

「せめて灯りを消させて下さい・・・」
　雪奈の最後の自尊心からだった。
　今でこそ、その気持ちは薄れたが、敏文と処女で結ばれた雪奈は口でペニスをくわえると言う行為が下品に感じ、激しい嫌悪感を抱いていて敏文の再三の要求に応えたのは実に初めてのセックスから１年以上が経ってからであったし、事実、今でも敏文とのセックスの際もフェラチオする時だけは灯りを消していた。
　そんな行為を愛してもいない、ましてや不条理な取り引きを持ちかけて来た男にしなくてはならない。

「No」
　夫にも見せたことのない、そんな下品な行為を行うこの男には見られたく無い、そんな雪奈の僅かな抵抗をウィルは許さなかった。

　うぅ・・・・ごめんなさい、あなた・・・でも、こうするしか無いの・・
　雪奈は心の中で何度も何度も敏文に詫びた。
　頬には涙が伝っていた。
　愛する主人のために、煌煌と灯りの灯るこの場所でこの黒人のペニスを口にしなくてはならないのだ、雪奈は悲壮な決意を抱き、目の前のペニスにそっと口づけた。

　ウィルのペニスは雪奈の唇と接触するや、そのサイズをさらに膨らませた。
「OK、OK、そうすれば皆ハッピーね」

　雪奈はおずおずと唇の隙間から緊張でカラカラに乾いている舌を出し、ウィルのペニスに這わせた。
　もう限界だと思っていたペニスはさらにその硬度とサイズを増して行く。

　悔しさ、悲しさはあったが雪奈にとって今行われている行為はどこか現実味の無いものだった。
　夫以外の相手にフェラチオすること。
　灯りの中でフェラチオすること。
　寝室のベッド以外でフェラチオすること。
　それらの理由もあったが、一番の大きな理由は今雪奈が舌を這わせている物体が雪奈の知るペニスとはあまりに違っていたからだ、敏文のものしか知らない雪奈であったが敏文が普通よりもサイズが小さいこと、包茎だと言うことは友人との会話などから知っていた。
　しかし、今目の前にある物体はどうか、サイズは比べ物にならない、敏文の場合手で露出させないと姿を表さない亀頭は、ウィルの場合、ズボンから出した瞬間から赤子の拳程の大きさの亀頭は姿を見せており、その巨大なペニスの中においてもひと際際立った存在感を示していた、
　そんな夫のものとは全く違うペニスに対するフェラチオは生身の人間のペニスに対するものというよりは敏文が会社の忘年会のビンゴで当たったと持ち帰って来たバイブにしている感じがしていた。

「亀頭も舐めて下さい。ご主人のは包茎だからこんなんじゃ無いでしょ？ご主人ったらあんな包茎なのにサウナで隠しもせずに入って来るもんだから笑っちゃいそうになりました。」

　ウィルから発せられる夫に対する下卑た侮辱、そんな男にフェラチオをしている自分、それを聞き雪奈の涙はさらに頬を伝っていく。
　しかし、今はこの男の言うとおりにするしか無いのだ、雪奈は言われるがまま、亀頭の先端に舌を這わせる。

　ヌルリとした感触が乾いた舌に伝わる。
　ウィルの亀頭の先端部からは滴るほどのカウパー線液が染み出ていた。
　その感触に雪奈は今自分が行っている行為は生身の人間に対して行っているものだと言うことを認めざるを得なかった。
　プラスチックの固まりであるバイブはこのような反応はしない、今雪奈が舌を這わせているのはまごうことなき生身の人間のペニスなのだ。

　これがペニスであると言う情報が１つ認識された途端、雪奈の舌はこれがペニスであることの様々な情報を容赦なく雪奈自身に伝え始めた。
　まずはその温度であった、それまで呆然自失であった雪奈に気づく余裕など無かったが、ウィルのペニスからは舌を伝い確かに体温が感じられた、それも敏文のものに比べるととても熱い。
　そして激しく脈打つ鼓動が伝わって来る、敏文のペニスは雪奈がフェラチオしてやっと勃起するレベルで、雪奈の舌が鼓動を感じることなどは無かった。

「私、今フェラチオしてる・・・・・・」
　雪奈の舌だけで無く、雪奈の脳もそれを改めて認識させられ雪奈は悲壮感で死んでしまいたい気分になるのであった。
　雪奈が死んでしまい気持ちになったが、舌は驚くべき変化を見せていた。
　ウィルのカウパー線液を舐めたことにより何かの化学変化でも起こしたかのように、さっきまではカラカラに乾いていたはずの舌はウィルのカウパー線液に呼応して唾液による潤いを取り戻す。
　舌の潤いをカウパー線液が独占していたのは一瞬のことだった、カウパー線液が舌の粘膜に付着した瞬間、卵子を目指す精子のような勢いで雪奈の唾液は舌に集まって来た。

「飴でも舐めてるのかな？そんなんじゃ朝になってしまうよ？」
　ウィルはそういうとチロチロと殆ど動いていないに等しく動く雪奈の舌からペニスを引き離した。
　雪奈の舌とペニスの間にその別れを惜しむかのように唾液とカウパー線液が混ざり合った透明なねっとりとした液体が糸をひく。

「日本ではフェラチオの仕方を学校で習うと聞いていたんだがね。よろしい私がレッスンして上げますよ。」
　そういうとウィルはいきなりその巨大なペニスを強引に雪奈の口内にねじ込んだ。

「うごぉ！」
　突然のことに雪奈が咽びこむ
　しかし、その侵入を予期していなかったのは雪奈だけであった、雪奈の口内はウィルのペニスを待ち構えていたかのように唾液で溢れており、唾液が潤滑油の役割をウィルのペニスを喉の奥までスムーズに受け入れさせたのだ。

「あまり大きな声を出すとご主人が起きてしまいますよ。静かに。」
　ウィルはことさら冷静にそう言うと雪奈の口に激しく腰を打ち付け始めた。

「ごァ・・・」
　雪奈は敏文に気づかれないように必死に声を押し殺そうとするが、無駄であった。
　喉の奥まで届くサイズのペニスが凄まじい勢いでピストンするのだ、ウィルのペニスが口内に打ち込まれる度に雪奈の口から嗚咽が漏れる。
　しかし、永遠に続くかと思ったその嗚咽は程なくして止むことになる、ウィルのペニスが更にサイズを増し雪奈の口を完全に塞いでしまったからだ。

　雪奈の口からはおびただしい量の涎とカウパー線液が混ざり合った溢れ、溢れ出た液体が顎を伝い床を汚して行く。

　雪奈は呼吸もままならないまま、それでも尚、もう外には届いていない嗚咽を堪えようようと必死になっていた。
「敏文さんにだけは知られたく無い。」
　雪奈の健気な思いとは裏腹に、雪奈の口内は初めての来客であるウィルのペニスを持て成すべく盛大に涎を振る舞っていた。

　雪奈の大量の涎によりスムーズさを増し、ウィルのピストンのスピードは更に増して行く。

　そして、その時は突然に訪れた。

「cum！！」
　ウィルは雪奈が必死に守っていた静寂を打ち壊すかのように吼えると、口腔無いからペニスをずるりと引き出すと、その先端部分から大量の精液を雪奈の顔目掛けて放出した。

　ビュルルッ！！
　そんな音が聞こえてくる様な勢いでペニスから放出された大量のペニスは雪奈のその美しい顔全体をべったりと汚すに至った。
　ウィルのペニスからは名残惜しむかのように止めどなく精子が溢れ続ける。

「ふぅ、中々気持ち良かったですよ。」
　そういうと今や殆どが雪奈の涎であろう潤いを保ったままのペニスをズボンに閉まった。

　やっと終わったのね・・・・・すぐにシャワーを浴びなきゃ・・・・・
　精液まみれの顔のまま雪奈は安堵感からぼんやりとそんなことを考え、目の前の男が姿を消してくれることを祈っていた。
　しかし、その安堵感もウィルの一言で一瞬で消し飛んでしまった。

「トシフミ！！そろそろ帰るよ！！」
　先ほどの咆哮と同じく大きな声でウィルは敏文の名を呼んだのだ。

　え・・・
　呆然とする雪奈をよそに、ウィルは執拗に敏文の名を呼ぶ。

「や、止めて下さい！！主人が起きてしまいます！」

「大丈夫、大丈夫、あれだけ酔っ払ってるんだから君のその素敵なメイクには気づかないよ。」

　さらに手で精液を拭おうとする雪奈に対し、
「No、拭ったら約束は無しだ。」

「そ、そんな・・・・」
　お願い、敏文さん起きないでいて・・・・・
　しかし、その願いが敏文に届くことは無かった。

　再三のウィルの呼びかけで敏文は半分眠っている状態でありながらも、フラ付きながら玄関まで出て来た。
　フラ付きながらも雪奈の横に並ぶ、敏文。
　その視線はウィルのみに注がれており、雪奈の方を一瞥することは無かった。

「すいません、酔っ払ってしまって・・・・・」

「気にしないで下さい、それと仕事のこと心配しないで。きっと大丈夫。」

「本当ですか！？」
　その言葉に半分意識の無いはずの敏文が満面の笑みを浮かべる。

「大丈夫、大丈夫、心配無い。」
　ウィルはそう言うと更に。顔面にべったりと精液をつけたままの雪奈の方に視線を移して言った。
「奥さんも大丈夫！ほら笑って、ね？」

　雪奈は精液で顔面を汚された屈辱感、夫への裏切りなどで泣きながらうつむいていたが、ウィルのその言葉に笑うしか無くなってしまった。

　雪奈は精液にまみれた顔で無理矢理作られた笑顔。
「良かったわね、敏文さん。」

　その言葉を聞き遂げるとウィルは敏文を抱きしめた、そして次に雪奈も抱きしめ、耳元で囁いた。
「I will be back」

「それじゃあ、また。」
　ウィルが何事も無かったように玄関から出て行く。

　ドアが閉まると同時に敏文は壁にもたれかかって眠ってしまった。

　顔洗わなくちゃ・・・・・・
　雪奈はこれから幾度となくその顔を汚されるであろう確かな予感を持ったが、今は洗面所に向かうしかなかった・・・・・・・葉を聞いて、正之はおもむろにリビングにおいてある電話の子機をとり、メモに書いてある番号を押した。