私"my"と彼"hi"とは仕事を通じて知り合った。
　お互いに惹かれあい、実が熟して木から落ちるように、自然に恋愛に落ちた。二人は恋人だが、不適切な関係の恋人。
　そう婚外恋愛。別の世界で愛し合っている。

(1)

　彼からの携帯が鳴る。
「もしもし？」
「おう！」
"おう！"？今までこんな挨拶無かった。
「こんにちは。お時間決まりました？」
　逢う事にはなっていたが、時間だけは決まっていなかった。
「早く帰してあげたいから、早めに時間つくるよ。こっちは大丈夫だからさ。」
「・・・ありがとう。」
　素直に早く逢いたいって言えばいいのに。
　声の調子で・・・わかっているわ。

　彼とお付き合いを始めて4ヶ月が経った。
　彼の時間の作り方が違ってきている。
　以前は忙しい時間の中、どうにかこうにか調整できそうだからその合間に。
　という感じだったが、最近は少し違う。
　依然として、急なアポで流れることはあるが、焦ってとにかく時間を・・・というのではなく、二人だけの時間を丁寧に作ってくれている。
　二人の関係が安定し始めている。

　二人共家庭を持っている。仕事も順調にこなしている。
　でもそれは日常の世界。
　二人だけで逢うと、そこから先は非日常の世界に入る。
　どこの誰ではなく、私と彼。
　打算も掛け値もなく心とカラダを愛し合う恋人同士に。

　待ち合わせの場所には彼の方が早く着いていた。
　助手席のドアを開ける。
「おう！」
　また・・・。随分フランクになっている。
「お待たせいたしました。」

「何処行きたい？」
　いつものこれ。
「お好きなように。」
　そうそうストレートには言えないわ。
「それ、やろめよー。ほら、いつも床にはいるだけじゃ・・・あれだろ。ワインでも飲みながら食事をゆっくりしたいわとか。どっかないの？」
「札幌にカニ食べに行きたい。」
「現実的に言えよ。」
「○○さんはどうしたいの？」
「俺はどっちでもいいんだ。」

　私もどちらでもいい。一緒にいられたら。
　ゆっくりお食事もいいわ。彼を見つめられるのなら。

　彼はいつもそう。分かっているくせに、私に言わせる。
　私も彼にストレートに言ってもらいたいけど・・・。
　絶対に彼は言わない。
　まぁいいわ。言葉の端々でわかるもの。ふぅ〜。

「食事もできて二人だけになれるところに行きたいわ。」
「わかった。じゃぁそうしよう。」
　そうなると、いく所は決まっている。
　食事もできて二人だけになれるLoveHotelに車は向かう。

　お部屋に入り、彼が上着を脱ぐ。
「あっ着てくれたのね。」
　私がバースデープレゼントに贈ったドレスシャツ。
　何度がデートの予定がある時着てくれていたたらしいが、流れてしまって、お披露目してもらえなかった。
「今日は確実に逢えるから、ちゃんと着てきたよ。着心地がいいよ。」
「よかったわ。サイズもぴったりね。」
　身に付けるものにこだわりを持つ彼。

　このような関係の私達。
　守らなければならないルールはある。
　休日は連絡を取り合わない、ログは残さない、身につけるものは贈らない。

　でもどうしても贈りたくて年に一度だから・・・と、職人仕立てのドレスシャツを送った。
「この貝ボタンとか・・・切り替えの部分とか・・・カフスもさ、いいよ。」
　よかった。分かってくれて。合格点かしら。
「ステキよ。」
　彼に抱きつく。
「逢いたかったのよ。我慢してたのよ。」
「んふふ。」
　言葉の代わりに強く抱きしめてくれた。
　背中にまわした手の平から彼の思いが伝わる。

　スパークリングワインを開け軽く食事をする。
　食事中彼は絶句するような昔の話をする。
「最低。」「信じられない。」「何ソレ？」
　私の返事はこればかり。若気のいたりというやんちゃな話。女性遍歴。
　今、出会えて本当によかった。
　イロイロな意味で・・・。

「お風呂入ろうか。」
「ええ。蕩々のお風呂にする？」
「いや、それもいいんだけどね。・・・今日はマットがあるお風呂なんだ。」
　彼がいたずらっ子のような顔をした。
　お得意の技の・・・ね。

　泡だらけのジャグジーに入る。
　私の肩にアゴをのせ、彼が後から抱きしめる。
「綺麗な肌だ・・・。」
　水面の泡を寄せ集め、首筋からデコルテ、胸を包み込むように撫でる。
　あなたの為に磨いているんですもの。
　あなたがこう言ってくれるから磨いているんですもの。
　特別な私をあなたに差し出したい。

　薄いトロミのあるお湯の中を彼の手のひらは私のカラダの線を確かめるように動く。
「んふん・・・。」
　心地よさに私の吐息もトロミががる。

　右脇から彼の腕が入り、蜜壺にスーっと流れるように中指が入る。
「あぁぁん。・・・もういきなりね。」
「入っちゃうんだ。」
「あぅっ・・・。」
　左の指が乳首をつまみ、コリコリとスイッチを入れた。

　ゆっくりとした指の動き。
　蜜壺の中に深く指が入り、壁に沿ってぐるりぐるりこね回しながら指を抜く。
　抜いた指は、ほんの少し上へ移動しクリトリスの周りで円を描き、終点のクリトリスで弾く。
　そして、また指は蜜壺のなかにもぐりこむ。
　ぐるりぐるりとゆっくりと蜜壺をこね回す。
　その繰り返し。
「はふぅ〜ん・・・。」
　全身蕩け、骨抜きになってしまう。
「溶けちゃう・・・。」

「俺達、10年前に会ってたらどうなってたかな。」
「10年前？」
　自分の10年前を想像するよりも何故こんな事を訊くのかしらといぶかしむ。
「10年前もっとエッチだったろ。」
「えっ？そんな事ないわ。hiは？」
「エッチしまくりだな。今よりもっと。どう思う？」
　私は公私共に全く心に余裕のなかった時期を思い出した。
　エッチどころの話ではなかった。
　その時に彼に出会ってなくてよかった。でも、それは言わない。
「大変な事になっちゃってたかしら。」

「こんなゆっくりしたのじゃなくてさ、激しいだけのかも・・・。」
　そう言って彼はズブズブと蜜壺の中に入っている指の抜き差しを激しくした。
　乳房をわしづかみにし、わざと荒く動かす。
「あ〜ん。今の方がバリエーションがあっていいかも・・・。」
「んふふ。やっばりmyはエッチだ。

(2)

「久々にぬるぬるしようっと。」
　彼は、バスタブから出て手際よくマットの準備をする。
　マットに熱いお湯をかけて流す。
　お風呂専用ローションをマットの上に振り掛ける。
　フェイスタオルを傍らに備える。
「ハイ、おいで。」
　お任せ状態でバスタブに浸かったままの私を彼が招く。

「今日は原液そのまま。濃いよ。」
「ホント。キャーっ」
　マットに腰を下ろした状態の私を彼が端から端へ滑らせる。

　近松の"女殺油地獄"を思い出した。
　それも、歌舞伎ではなく、文楽の方。
　"与兵衛"と"お吉"のからみでもなく、人形遣いに操られスーッと滑る人形"お吉"のよう。
　そのまま、彼の手で操られるように、ローション地獄の中で身をくねらせ愛撫に悶える。

　私をうつ伏せにさせ、彼は高い位置からローションを全身にたらす。
「冷たくて気持ちいいわ。」
　ほてったカラダにローションの冷たい感触が丁度いい。
「すごくいやらしいカラダみたいだ。」
ローションをまぶすように彼は優しい手で、首筋、肩、背中、ウエスト、お尻、太もも、ふくらはぎ、足首、つま先、親指の爪と撫で付ける。
「あぁ・・・触っているだけで気持ちいいよ。」
「触れられている私は、もっともっとよ・・・。ステキ。」
　ローションまみれの私のカラダは淫乱に変わっていく。

　つま先にある手が今度は上に上がり、お尻で止まる。
　両側のお尻の頬っぺをゆっくりと外側に撫で回す。
「お尻の穴が丸見えだ。」
「恥ずかしいこと言わないで・・・・・・。あぅ・・・ん。」
　アナルに指がスっーと入ってくる。

　もうそこは、禁断の入り口ではなくなってきている。
　ごく自然に解放されている入り口。
　最初の頃はどうしても許せなかった場所。
　でも、彼によって牙城が崩されてきている。

　アナルに入っている指の動きと背中を撫で回している手の動きが連動している。
「あふぅ〜ん・・・。はぁ〜ん・・・。」
　彼の指の動きに操られているように、声が漏れる。
「すべすべしていて、すごくイイ・・・。」

　背中で徘徊している手が蜜壺へ流れ移り、にゅるりと入り込む。
「あぁ・・・ここもぬるぬるだ・・・。」
　蜜壺の奥まで指が入る。
　子宮口付近が指で突かれている感じがする。
　蜜壺の中の壁伝いに指が前後に動く。
「はぁぁぁぁ・・・・ん。」
　蜜壺から愛液がジュンジュンと溢れ出す。

　ぐちゅ、ぐちゅと音を立ててかき回されている蜜壺と、前後に指を出し入れされているアナル・・・。
　ジュブジュブ・・・くちゅくちゅ・・・。

　一緒に弄られていると、まるで二つの入り口が一つになっているような感覚になる。
「あぁ・・・ん。わけがわからなくなっちゃう・・・。もう・・・どうにでもして下さい・・・って感じよ。」
「ん〜。ここすごくいいよ。・・・指が気持ちいい・・・。でも・・・ちょっとだけ入れさせて。」

　蕩けている私を仰向けに返し、に
「いやらしいカラダだ。」
「だって・・・いやらしくされているんですもの・・・。」
「んふふ。」

　彼が突いてくる。
　でもぬるぬる状態で、どこにも抵抗がないカラダは彼の動きの反動で彼を捉えきれない。
「あ〜ん。抜けちゃう・・・。」
「滑ってつかまえられないな・・・。足のばして・・・。そう・・・俺の足に捕まってごらん。」
　松葉崩し・・・。いやらしい体位。動物はこんな体位しないけど・・・。
　何か動物的・・・。
「あぁ、はぁ・・・。奥に・・・奥に来ているぅ・・・。」
　ぬるぬる状態だと動きがいつもよりすこしぎこちなく、クイっクイっと動く。それもイイ。

　彼はサッと体勢を変え、私を四つん這いにさせる。
　そしてアナルにローションをたっぷりとたらした。
　アナルのまわりをやさしく撫でる。筋肉をほぐすように。

　アナルの入り口で指の動きが止まる。
「小指・・・薬指・・・中指・・・人差し指・・・・。」
　そう言いながら彼は指を入れ替え挿入してきた。
　指を入れたまま、入り口を開くように回す。

　指が抜かれた・・・。

　彼のモノが入り口に押し当てられた。
「入れるよ・・・。」
「ウン。」
　ジワリ、ジワリと入ってくる。
　初めて全面的に許す背徳の場所・・・。

「ああぁぁぁぁ・・・・・。」
　一瞬抵抗感を感じたが、ズブっと頭が入ったよう・・・。
　そして彼のモノがアナルの中をゆっくりと前進してくる。
「はぁぁぁぁぁ・・・・・ん〜〜〜。全部・・・入ったの？」
「ああ、全部入ったよ。最高に気持ちいいよ。」
　彼はそのままの状態で、私をくるむように上から抱きつく。
　興奮を抑えるように私と頬を重ね、耳たぶを噛む。

「動いて平気？」
「ウン。」
　少しだけ彼は抜きローションを追加してまた入ってきた。
　ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり少しずつ加速を上げて動く。
「あっう〜ん。あぅん、あぅん・・・・・・んく〜ん・・・。」
　圧迫感はあるけれど、何か言い表せられない快感が少しずつ湧いてくる。

「hiだけのトコロよ・・・。」
「ああ、そうだよ。」
　彼が私を後から強く抱きしめる。
　私の背中と彼の胸をローションのヌルヌルがピタリとくっつき合わせ、二人のカラダを一体化させる。

「中で・・・イキたい。出させて。」
「えっ・・・？大丈夫かしら。」
「大丈夫さ。」
「ウン。」
　ゆっくりと前後に動き、アナルの中に彼は液体を出した。
「うぅ・・・はぁ・・・。続きはベッドだ！」