第5話　革命男子


　晴人の「種付け男子」デビューは華々しい幕開けで始まった。
　あのビデオ撮影会の効果は絶大で、当日の見学者からも申し込みが複数あるほどであり、晴人は翌週から大忙しであった。
　優子との数週間は、１９歳の晴人をあっという間に絶倫男に育てたのだ。
　毎日、毎晩毎朝と複数回におよぶ優子とのセックスは、若さで迸るような精力を解放した。
　少年から青年への成長期真っ直中の若い男の身体は、パートナーに恵まれれば、それに見合った活力、精力を獲得するべく、日々成長遂げるパワーがあるのだ。

　連続した射精に耐えられるように、睾丸はそれまでの数倍の速度で精子を量産し始める。
　それに比例して蓄える能力も飛躍的に増えていき、数週間経った頃には陰嚢袋は１．５倍ほどに膨らんでいった。
　これには優子の隠れた工夫が隠されていた。
　優子自身も晴人とのセックスに溺れていたが、晴人の精力がこれからの成功に不可欠だと認識していた。
　そのために晴人の精力増強のために、看護師の知識をフルに活用して食生活の面から強化していたのだ。
　計算し尽くされた栄養バランスに加えて、マカ、亜鉛など効果的に摂れるように配慮していた。
　優子にしてみれば、晴人が仕事で疲れてしまっては、その後になる自身との性生活が危うい。
　それには晴人が例え数人とセックスしても、当日の夜には優子を求めるほどギラギラさせるほかない。

　結果、仕事が始まる前日の日曜日は、優子は晴人に一日中抱かれて立って歩けないほどに逝かされまくることになってしまうのだが、晴人はそれでも余裕であった。
　その凄まじさに優子は悲鳴を上げるが、晴人は優子を離さなかった。
　まさに身から出たサビであった。
　優子は「絶倫男」を作りだしてしまった。

　最初の１人目は３７歳の長く不妊に悩む奥様、角田恵子であった。
　容姿は、芳香剤グレードＣＭで有名なファッションモデル「五○祐子」似の美人で、「倶楽部」関東地区では必ずベスト１０に挙げられる人気の美人奥様であった。
　彼女は既に３人の「種付け男子」を試した経験があり、半ば失意の中での出会いであった。
　不妊治療は続けていたが、夫の方まで不妊資質があった為に困難を極めていた。
　晴人が近年稀な濃厚種を持っているという話に一途の望みをかけて申し込んできたのだった。
　角田夫婦の「倶楽部」歴は長く、結婚当初からで既に１５年を越える。
　もともと夫がハイソサエティの実家出身で、生まれながらの「倶楽部」の一員であり、恵子は結婚と同時に入会させられてしまったのだ。
　しばらくは夫婦間のセックス、そして「倶楽部」での色んな乱交を通して、セックスを満喫した角田夫婦であったが、いざ子供を欲しいと思っても出来ないという地獄が待っていた。

　角田夫婦は養子も考えるが、自身の身体的問題を詫びる夫は、せめて妻の実子である子が欲しいと恵子に「種付け男子」制度の活用を勧めたのだった。
　それ以来、恵子は数年にわたって「種付け男子」を試すが、良い結果は得られなかった。
　そろそろ年齢的限界が近づきつつある恵子は、濃厚種を持つという晴人に望みをかけていたのだ。
　とはいえ恵子の胸の内は、それだけでなかった。
　あの鑑賞ルームで目撃した激しいファックシーンは、セックス経験豊富の恵子ですら衝撃であった。
　経験豊富であるからこそ、その濃厚さが見ているだけ子宮を熱くさせられてしまったのだった。
　数え切れないほどの男性とセックスしてきた恵子ですら、あの魔棒の良さが羨ましかったのだ。

　晴人とシティホテルのスイートルームで待ち合わせた恵子は、晴人の若々しい肢体と自然体の優しさに圧倒された。
　そして夢で実在しないと思っていた「白馬の王子様」が実在して、目の前に現れたことに気がついた時には１８歳も年下の男の子に恋している自分自身の気持ちに困惑していた。
　年上の人妻としての余裕もプライドも、木っ端微塵に打ち砕かれて、一方的に責められて為す術もなく肢体の全てを明け渡した。
　気がついた時には、恥ずかしい体位で一方的に極上のクンニを受けて、大きな喘ぎ声を漏らすことしか出来ない有様であった。
「ひぃ　うますぎるぅ　あん　逝っちゃう」

　そのクンニの繊細さ、テクニックは、「倶楽部」の上級者と優劣つけがたいレベルであり、抗うことは一切許されないものであった。
　それをまだ２０歳にも満たない若者が駆使するということが信じられなかった。
　舌使いだけではなく、手が巧みに蠢いて恵子の弱いところを的確に愛撫してくる。
　女の悦びを知り尽くしている肢体は、歓喜の声をあげて全ての窓を開け放していった。
　まだ挿入もされていないのに、初対面の若者に恵子は心の鍵を外して、その身を委ねてしまった。
　前儀の素晴らしさに、「倶楽部」関東地区幹部に輪姦された時の経験がフラッシュバックする。
　あの時は自身が女なのだということを思い知らされた経験であったが、それは経験豊かな老人５人かがりで責められた結果であり、今回はイケメンの若者１人である。
　陵辱されているという屈辱感もなく、むしろ愛されているという悦びが大きかった。

　晴人は「種付け男子」の仕事で出会う相手の女性に期待感はなかった。
　大半が３０歳代後半から４０歳前後の熟女であることは明白であり、若く美しい優子を得た今となってはお金のためという意識が強かった。
　もちろん最近、特に強くなってきた肉欲が日に日に膨れあがっており、セックスをする相手は１人でも多く欲しいという欲望も芽生えていた。
　そういう意味でも「種付け男子」という仕事は趣味と実益を兼ねているし、妊娠可能ということであれば極端に高齢な人はいないはずであり、経験豊富な熟女ということは奥の深いセックスが楽しめると期待感があったのだ。
　なにより結婚を約束した優子公認というのが実に都合が良い。

　そんな気持ちでいたところに、初対面した角田恵子に驚いた。
　美人で、美味しそうな色香を漂わせる奥様であった。
　晴人は一目で恵子が好きになってしまい、種付けだけの関係に終わらせたくないと考えていた。
　そう自分のものにしたいと画策し始めていたのだ。
　だからこそ「あゆ」に指南されたテクニック、その全てを駆使して恵子を堕としにかかった。
　恵子の肢体は素晴らしかった。
　優子も将来はこのような熟した肢体になるんだろうと思ってしまう、素晴らしい完成形の女体像がそこにあった。
　恵子を堕としたのはテクニックだけではない、晴人の中に芽生えた恵子への愛情と欲望が伝わった結果だということを２人が互いに知ったのは数十年後のことであった。

　快楽の海を漂っていた恵子を下腹部に感じた圧迫感が引き戻した。
　気がついた時には魔棒が恵子自身に押し入ろうとしていたのだ。
　既に濡れそぼった秘部は魔棒のノックに応えて、パックリと口を開いて魔棒を飲み込んでいった。
　その魔棒の熱さ、硬さ、太さにたじろいだ。
　そして経験したことのないカリ高の段差が秘襞を掻き分けた瞬間、恵子の身体に痙攣が走った。
「ぬっふぅ　あっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
　恵子が初めて味わう１０代男性の肉棒は、まさに魔棒であった。
　いきなり反り返った形状で、恵子の秘肉をえぐるように押し入るとＧスポットを直撃し、恵子が経験したことのない熱いものがＧスポットに突き刺さった。
　そしてそのままカリ高がＧスポットを擦りあげていく。
　感電したよう肢体を痙攣させている恵子の口元からは、既に泡のような涎が垂れてしまっていた。

　そんな恵子をあざ笑うかのように、晴人は魔棒を浅めに前後させて弄んだ。
　「あゆ」仕込みの女体征服テクニック第一章のお披露目だ。
　指南した「あゆ」さえも悶絶してしまう、女性をアクメ目前の絶壁に追い詰めて、それでいて越えさせないという焦らし地獄であった。
　女の悦びを知り尽くした肢体では抗うことなど不可能であり、「あゆ」ですら淫らにも自ら腰を押しつけて絶頂を迎えたがるほどであった。
　晴人自身は、その破壊力をまだ認識していたわけではないので、容赦なく恵子を責めたてた。
　既に恵子は晴人の性技、精力の前に、屈服しており、美しい両手両脚を晴人の身体に巻き付けて、無意識に恭順の意志を示していた。

　「あゆ」が晴人との別れを決断したのは、大人の女としての親心だけではなかった。
　仮にもセックスのプロである「あゆ」自身が晴人の魔棒の魅力に溺れることに恐怖したのだ。
　晴人とのセックスは「あゆ」の封印していた女としての業を目覚めさせてしまいそうな破壊力を秘めていて、「あゆ」のギリギリの決断であった。
　もし目覚めてしまったら、「あゆ」は仕事を続けることは不可能だと自覚していた。
　「あゆ」は、生涯をソープ嬢として生きていかなければならない事情があって、自身の保身のために泣く泣く身を退いたのだった。
　「あゆ」の最大の失敗は、愛する晴人に魔棒の破壊力を彼自身に伝え忘れたことであった。
　優子を得てから、貪欲に愛あるセックスを謳歌している晴人には、「あゆ」を彷彿とさせる成熟した女体の魅力が新鮮であった。

　底なしの若いエネルギーで、女体の深部の果てまで突き上げ、溶かすように掻き混ぜていった。
　Ｇスポットを絶妙の加減で擦りあげたかと思うと、開発され尽くしているポルチオ性感帯をこれまた絶妙なチカラ加減で突き上げてくるのだ。
　恵子の肢体に小刻みな痙攣が起こり、アクメへの渇望が狂おしいほど駆け巡っていった。
　経験豊富な恵子ですら、ここまでの渇望は初めてであり、自ら腰を振るって絶頂を迎えようと必死で抗った。
　そんな女の試みは虚しく魔棒の杭によって阻止され、信じられない圧迫感で子宮口を押し上げられて悶絶してしまう。
　その瞬間、恵子は初めての経験を迎えた。
「溶けちゃう・・・・・・」

　とても細いはずの子宮口に、極太の亀頭がニュルッと入り込んできたのだ。
　まさに子宮口が溶けてしまうような感覚が恵子を圧倒した瞬間、真っ白な空間が広がっていった。
　恵子は絶頂の最果てに跳んでしまっていたのだった。
　そんな恵子を魔棒は容赦なく引き戻し、子宮を目指して突き進んでいく。
　晴人は突如として腰を小刻みに揺らし始めて、恵子の子宮すら溶かし尽くそうと襲いかかった。
　「あゆ」仕込みの女体征服テクニック第ニ章のお披露目だ。
　「あゆ」は、これを「子宮溶かし」と名付けていて、これを晴人に振るわれることを極度に恐れていた。
　これが晴人の肉棒を魔棒と評する理由でもあり、安全日であったはずの優子を一晩で妊娠させた最大の理由であった。

　この「子宮溶かし」は、「あゆ」すら知らない効用、効果を秘めていたのだった。
　子宮を中から揺り動かす官能の刺激は、女性ホルモンを活性化させて子宮の機能をすら活発化させるという医師ですら驚愕する不妊治療効果を発揮するものであった。
　恵子の不妊は子宮機能が不安定で、うまく受精卵が着床できないというものであった。
　偶然であるが、「子宮溶かし」は実に効果的に恵子の子宮を活性化させていった。
　孕む性である女の身体は敏感に反応して、医学の意図的な人為的治療では困難であった受精機能の安定化を果たしていたのだ。

　一度火がついた女の肢体は一気に燃え上がっていく。
　恵子を経験したことのないような快感の津波が呑み込んでいった。
　最高の絶頂を感じた瞬間、恵子は待望の新しい命を宿した。
　その日を境に、恵子は別人のような変貌を遂げていった。
　周囲は妊婦となったことの影響だと思い込んでいたが、すっかり晴人に心酔する女に変わってしまっていたのだった。
　第２子も晴人の子供産んだ恵子は、いつしか政財界における晴人の後ろ盾なっていくのだった。

　晴人の初仕事は、斡旋した谷村ですら想像していない成果を挙げたのだ。
　恵子の妊娠は「倶楽部」の話題を独占して、「種付け男子　晴人」の名は妊娠を望む「倶楽部」の女性陣では知らない者はいないほどであった。
　恵子だけでなく、医師が妊娠を絶望視していた女性を続けて妊娠させた事実が伝説となった。
　コーディネーターである谷村の元には、連日のように申し込みが殺到し、その切り回しの忙しさに悲鳴を上げる有様であったが、谷村の妻となった綾が見事な手際で対応していた。
　綾は初めからそうなることを予想していた為、金の成る木「晴人」が効果的に成果を挙げるように、日程的に負担が掛からぬのように調整した。
　もともと相場など目安でしかない種付け男子の対価は需要と供給の関係で変動するものであったが、「晴人」の場合は高騰の一途で天井知らずであった。
　綾の巧みなスケジュール調整が、その高騰に拍車をかけた。
　そして１年もしないうちに、「種付け男子　晴人」の対価は一千万円超えを果たしたのだった。

　優子と恵子が出産した同時期に、ハイソサエティ社会において晴人のベビーラッシュが開幕した。
　毎月のように十数人の晴人ベビーが誕生し続けていくのだ。
　この時点で、倶楽部も、ハイソサエティ社会も、将来的に深刻な事態をまねくとは考える者は誰１人いなかった。
　いつの間にか、優子と綾は姉妹のような友情関係を構築していて、その取り巻きとして恵子を中心としたオンナ達が集まりだした時点でも、誰１人問題にしなかった。
　晴人と関係を持ったオンナ達は晴人に対して盲目的な愛を捧げるようになっていたのにも関わらず、オンナ達の家庭での立場が強い日本社会が男達の異論を封じたのかもしれない。
　このように、倶楽部も、ハイソサエティ社会も、オンナ達の変化が、のちに深刻な事態を招くとは全く予期していなかった。

　晴人の存在は規格外であり、「倶楽部」では想定できない事態を招いていた。
　オンナ達は夫達を子の親として扱わず、タブーとされている「種付け男子　晴人」を父親として扱い、更に子達に実父として伝えてしまうのだ。
　この重大なルール違反が十数年後になにを引き起こすかなどという洞察力が「倶楽部」には欠いていた。
　「種付け男子　晴人」はまだ一介の学生に過ぎにないという侮りが、倶楽部、ハイソサエティ社会にあったことも災いを拡大させた。
　この恐るべき将来像を認識して着々と準備を怠らなかったのは、優子と綾の２人のオンナだけであった。
　晴人本人すら、この時点では「お金」と「女遊び」、「学業」に邁進するのみで、将来像など考えもしなかった。
　谷村も、晴人のもたらす巨万の富を背景に、倶楽部の最上幹部に登り詰めて有頂天で、オンナ達の野望など気にも留めていなかった。

　まさに金の成る木となった晴人は、コーディネーター谷村夫妻に巨万の富をもたらした。
　谷村夫妻が大金を手にするのと併行して、晴人と優子も同様に大金とステイタスを獲得していった。
　気がつけば、まだ晴人が大学在学中にもかかわらず、既に億万長者の仲間入りしていて、なに不自由ない生活を満喫していた。
　まだ一介の学生に過ぎない晴人には有名企業のサポートが莫大に入っていた。
　国立大学でありながら豊富な研究資金をもたらす晴人の争奪戦が学内で発生する状態であった。
　慢性的に研究資金不足に悩む大学研究室にとって、晴人はまさに金の成る木であった。
　そんな中で、冷静に事態の推移を一番把握していたのは綾１人だけだったのかもしれない。
　綾は優子との友人関係を通して、実に効果的に晴人夫妻をコントロールし、優位な立場を構築することに余念がなかった。

　十数年後の晴人の子達がゾクゾクと成人し始めた時に、序章と言うべき異変が勃発した。
　晴人の子を宿した、出産したオンナ達の十数人が、突如として夫を捨てて晴人の元に走ったのだ。
　騒然としたハイソサエティ社会であったが、妻達に去られた夫達に同情はすれど、誰も有効な対策をとらずにそのまま放置したのだ。
　既に晴人は大学そして大学院を首席で卒業して経済産業省のエリート官僚になっていた。
　気がつけば、ハイソサエティ社会の名だたる家の次期当主は晴人の子がほとんど占めていて、ハイソサエティ社会は次世代で晴人チルドレンが占める目前であった。

　更に十数年間は表面上何事も起こらなかったが、晴人は一転して、衆院議員選挙に与党から出馬して衆院議員となった。
　それに続けとばかり、晴人チルドレンがゾクゾクと議員選挙に出馬当選していった。
　この頃のハイソサエティ社会は既に晴人チルドレンが掌握しており、もはや誰も将来起きる危険を予測して対応することは出来なくなっていた。
　名だたるマスコミの編集者も既に晴人チルドレンが占めつつあった。

　混迷する日本政治、混迷する経済環境、外交環境により、国民が新たな指導者を求めた時代背景が追い風になった。
　与党内で既に過半数を占めた晴人チルドレン、そして晴人チルドレンを中心とした圧倒的な経済界の支援を背景に、若干４０歳半ばで党首、内閣総理大臣に晴人は登り詰めた。
　既に野党第一党も過半数を晴人チルドレンが占めている中での遂に革命が勃発した。
　国民はなにが発生したか分からないうちに、憲法改正、大統領制への移行が行われて、日本という国は一変した。
　そもそも晴人は衆院議員になるまでは野心とか全くなかったのだが、気がつけば世の中の権力機構は全て我が子供達となり、彼らが自分の意のままとなると知ってからは別人のような野心を芽生えさせたのだ。

　晴人の方針は、科学技術を前面に押し出した軍事国家建設であった。
　徴兵制、軍隊の復活、人権第一主義の見直しが短期間のうちに成し遂げられ、国民はなにが起こったのか分からないまま国の変化を受け入れるしかなかった。
　それは全ては１人の男、晴人が設けた子供達がハイソサエティ社会を中心に数え切れないほど存在していたことに由来するなど、誰１人知らなかった。
　全ては婚姻関係を無視した、安易な代理出産、人工授精の果てにハイソサエティ社会が安易に行った「種付け男子」制度が原因であった。


--------------------　美味しい契約　〜　完　〜　--------------------