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あの事件から月日が流れ、そろそろ梅雨が明けてもいい頃になった。
もちろん、現在も不倫といわれる関係は続いている。あの事件以来、二人の関係は急速に進展した。何年も交際している恋人たちのように互いのことを理解しあった。
それにしても、今月は忙しい。土日も出勤している始末だ。季子と甘いひと時を過ごしたいと願ってもできない。こんな状態が二週間も続いた。
だが、この企画書をしあげたら、やっと一息つけそうだ。
ＰＭ５時半、終業を知らせるチャイムが鳴った。
数人の部下たちた仕事を切りやめ、帰宅していく。
特に今日は給料日後の金曜日だ。皆、早く退社したい。独身連中は繁華街へ既婚者は家に向かう。
外回りに出ている連中たちから、直帰するとの連絡があった。
季子がここにいるおかげで、誰一人として落ちこぼれはいない。よって、定時で帰っても誰も文句は言わない。俊介は次から次へと来る電話を快く受け入れた。
そして、全ての部下たちがそれぞれ思うところに向かった。もう、ここには誰も戻ってこない。
俊介と季子の二人だけしかいない。
今すぐ、傍に寄り添い抱しめたいが、仕事が優先だ。今日中にこの企画書を仕上げなければならない。
終わった後に焼肉を食べにいく約束を交わしている。
二週間ぶりのプライベートの時間が楽しみだ。
午後六時四十分、俊介の仕事に目処がついた。
「これで、最後」
季子に最後の企画を手渡した。
「もお、遅いですよぉ。早くしなくちゃ、焼肉屋さんしまっちゃいますよ」
「ごめん、特上カルビで勘弁してくれ。それと、もう誰も来ないから敬語はいいよ」
社内で２人だけの時でも、敬語を使う季子に俊介はなれることができなかった。よって、１月ほど前から２人きりのときは普段の言葉で話すようになっている。
「一番、高いのだからね」
「わかった、わかった。ついでに極上のフランクフルトも進呈するよ」
「ばか」
季子は笑みを浮かべ、手書きの書類に目を通しだした。
邪魔をしてはいけない。
俊介は席に戻り、タバコに炎を灯した。
タバコを煙らせながら、小気味よくキーボードをたたく季子を見つめながら、今までのことに思いをめぐらせた。
季子、ほんとに不思議な女だ。
この半年間、何度も身体を重ねてきたが一度だって同じセックスはない。毎回が新鮮だった。
また、季子によって開発されたのか、それとも、己の潜在意識の奥底に眠っていたのであろうか、自分の中にこんな嗜好があったのかと驚くほどの発見があった。
目隠しから始まり、手枷、足枷、ビニールテープ、縄、ボールギグなど使った拘束する悦び、野外での露出プレイなど、今まで自分とは縁のない行為だとおもっていたプレイにこの上ない悦びを感じている。
また、肉体だけではない。季子は精神的にも安らぎをもたらしてくれる。彼女の前では子供のように純真に己を曝け出せる。
男にとって、いや俊介にとっては極上の女性である。
こんな女性に巡り合わせてくれた神に感謝したいくらいだ。
陳腐な表現だが、たとえ、世界を敵に回しても、彼女だけは手放したくない。それほど季子の虜になっていた。
企画を作成し終えた俊介には余裕があった。昼間購入したスポーツ新聞に目を通していた。興味のないギャンブル以外の記事は全て読み終えた。新聞を閉じた。
さて、何をして待とうか？
季子は変わらず、黙々とキーボードとマウスを駆使しながらパワーポイントで企画書を構成している。
そっと、席から立ち上がって、季子の背後に移動した。彼女の背中越しにパソコンのディスプレイを覗き込む。
相変わらず、画とイラストに文章を上手く構成している。いわゆる訴求効果に優れた企画書というものだ。こういうのをセンスがあるというのであろう。
アナログ的であると自負する俊介には到底真似ができそうにない。
「どお、終わりそう？」
背中越しに声をかけた。
「うん、もう少し……」
「ごめんな。本当なら、今ごろ焼肉食べているのに」
「いいよ。特上チューハイもご馳走してもらうから」
季子は画面を眺め手の動きも止めることなく、悪戯ぽく言った。
「うん」
俊介は季子に微笑んで背を向けた。
邪魔をしてはいけない。
窓の傍へ行った。開いた窓から時折入り込む夜風が気持ちいい。
夜空を見あげた。満月である。
丸い月を見上げながら思った。
こじつけも知れないが、満月の夜は殺人事件や交通事故が増えるとの統計結果がある。
満月の光にうたれた人は狂う。
満月の月光を浴びた男が狼男に変身し美女を襲うという伝説。
月の明かりの下で季子を襲う。
機会があったら、自然の中、月明かりを浴びながら季子と交わってみるのもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、欲情してきた。隠された陰茎がザワザワと蠢きだす。
窓にうつる季子を見た。彼女は変わることなく黙々とキーボードを叩いている。
密室の中での二人だけの残業。今日が初めてではない。何度もあった。
オフィスプレイ、何度も夢想した。この場で抱けたらどんな刺激があるのかと何度も勃起させた。もう誰もこの部屋に戻ってくることはないとわかっていても、行動には移さなかった。理性が勝った。
しかし、今は躯が疼いて仕方がない。陰茎ははちきれんばかり勃起している。やはり闇夜に浮かんだ丸い月のせいなのか？
（おい、何を考えている。もう少しで終わりそうなんだ。これが終われば今日は帰れる。それからでいいじゃないか）
俊介は心の中で己を諌め、両手を高く上に挙げ、躯を伸ばしながら深呼吸をした。
いつもなら、そうすることで毒を抜くことができる。だが、ダメだ。悶々とした欲望のうねりは消えない。
俊介は踵を返し、季子に視線を移した。
季子に引き寄せられるように歩が進む。室内を流れる空気が季子の長い髪の甘い香りを鼻腔に運んでくる。
その香りがいっそう欲情を刺激し、陰茎をざわつかせる。
喉を鳴らし、そっと季子の肩に右手を乗せた。
「どうしたの？」
キーボードを打つ指を休めることなく季子はいう。
それには応えず、右手を首筋にずらし、触れるか触れないかの微妙なタッチで指先を軽く滑らした。季子の指の動きが止まった。
「課長！ だめだよ」
季子は身を捩じらせ、いやらしい動きをする手から逃れ、きっぱりといった。
（課長か……）
不倫、このような関係になった当初、季子の口から放たれる課長という言葉には抵抗を覚えていた。また、それだけではなく、二人だけで逢う時とは違う言葉づかいにもしっくりとこなかった。
たが、不倫の関係にある二人。しかも、直属の上司と部下である。周囲の人間に知られる訳には絶対にいかない。誰かに知られたらせっかく季子を説得してここに残ってもらった意味が無くなる。部下たちの士気はたちまち落ちていくことだろう。
およそ七ヶ月が過ぎた今になってようやく公と私の二つの顔を使い分ける季子に順応することができるようになった。
「……わかっている」
俊介は呟き、言葉とは裏腹に甘い香りを放つ長い後ろ髪へ指を絡ませた。
「もぉ、だめだって……集中できないよ」
季子が首を振った。指に絡んだ髪がサラリと滑り落ちた。
季子は椅子を回転させ、俊介を見上げた。
「俊介……会社ではダメだって約束したでしょ」
季子は頬を膨らませたが、真剣に怒っているようではないことが表情から読み取れる。
「わかっている……わかっているけど……自分でも変だと思う……」
俊介はスラックス越しでもはっきりとわかる陰茎の膨らみに視線を落とした。
俊介の視線の先に季子も視線を移した。
「もう、悪い息子さんねぇ。後でたっぷりと可愛がってあげるから、我慢してね」
季子は膨らみに向かって諭すように言い、それを人差し指ではじき俊介に視線をあげた。
「我慢できない……満月の夜は血が騒ぐ」
「ぶっ……」
季子はその言葉に吹き出した。
「おい、笑うなよ」
「だって、可笑しいんだもん。そんな真顔の俊介久しぶりなんだもん……」
「臭い台詞だった？」
「うん、ものすごく」
「でも、本当に変なんだ。もちろん、季子とずっとＨしてなかったせいもあると思うけど……普段の俺なら自制できる。いや、自制してきた。だけど、さっきからここが一向に大人しくならないんだ」
季子の手をとり膨らみに導いた。
「あっ、だめよ」
と季子は言ったが、その手に抵抗の力を感じない。
「なっ、熱くなっているだろう」
陰茎は生きの良い魚のようにピクピクと蠢いている。
「ほんと、すごいね。なんか、いつもより硬いみたい、あん、そんなに動かさないで」
スラックス越しに陰茎を摘み、その形、硬さを確かめるよう季子は言った。
「俺の意思で動かしているんじゃないよ。勝手に動いてんるんだ。なっ、いいだろっ」
「だめだよ。ここは会社なんだし、約束がちが……むっ……」
俊介は腰を曲げ、唇で季子の言葉を遮った。
重ねあった唇の中で舌と舌が絡み合う。欲情に溢れる唾液が互いの舌を交互する。
「……ううっ……やっぱり、だめっ」
季子は俊介の胸を両手で押し唇から逃れた。
「俺だってダメだよ……はぁ、ふぅー」
俊介の息は軽いジョギングをした後のように荒くなっている。
「もう少しで、終わるから、ねっ……」
俊介は襲いたくなる気持ちをグッと堪え、大きく呼吸をした。思考が戻ってくる。だが、夢にまで見たオフィスプレイの千歳一隅のチャンスである。簡単には諦められない。かといって季子の意思を無視して無理やり思いを遂げることは避けたい。
「……じゃあ、一つだけゲームをさせてくれないかな？ 俺が負けたら季子のいうとおりにする」
「ゲームって？」
「季子のおま○こ……が濡れていればＨする。濡れてなければ、潔く諦めると約束する。どうだい、いい提案だと思わないか？」
「ばか……強引なんだから……いいわ……でも、わたしからも提案があるの」
「何かな？」
「私が勝った時は奥さんと別れてくれる？」
俊介は動揺を隠せなかった。陰茎から急速に力が抜けていく。
季子の口から放たれた言葉に忘れていた不倫という行為を思い出した。付き合い始めた当初は、もし、離婚したらどうなるだろうとか真剣に考えていた。だが、交際し半年も経つとこの関係に慣れたのか妻との離婚、不倫ということに対し考えることを忘れていた。 いや、違う。意識的に頭の片隅に追いやっていたのかもしれない。
季子は強い眼差しで見つめている。その視線から逃れることができない。
「……わかった。約束する」
その言葉が、嬉しかったのであろうか季子の口もとが緩んだ。
俊介は季子の足元に跪き膝頭に手を乗せた。ストッキングの滑らかな感触が心地良い。
「力を抜いて」
膝を左右に押し開く。外へ開くに連れてスカートがずり上がり股の中心部が見えた。
股の中心部に伸びるパンストの一本の縦線がいやらしさを醸しだす。ナイロン繊維の奥にピンクのレースのパンティが覗いている。
 
たちまち、口の中が唾液に満たされる。それをゴクリと飲み込み、膝に置いた手を太腿へと滑らせた。軽いタッチで５本の指先で内股を擽る。季子の下半身がピクッと反応した。
「あん、だめよ。それは、反則よ。余計なことはしちゃだめ」
季子は太腿を閉じ意地悪な腕をはさみ込んだ。
「わかったよ。わかったから、力を抜いて」
「絶対、だめだからね」
季子は真顔で言い、太腿から力を抜いた。
もっと、腿を責めて、彼女の反応を楽しみたいが仕方が無い。スカートの奥へ膣が触れている中心部へと手を滑らせ、触れた。湿っているような気もするし、そうでないような気もする。ストッキング越しではよくわからない。
「どう、濡れてないでしょ？」
「わからないなあ……」
言いながら指を押し込んだ。
「あん。ずるい、また」
季子は腰を引いた。
「それは、反則よ」
季子が続けて言った。
「ごめん。パンストの上からだと、よくわからなくて……、やっぱり、直接触らないと」
俊介はスカートの中から一旦手を引いた。
「だめぇ、ゲームは終わりよ。私の勝ちってことでね。約束どおり、奥さんと別れてね」
季子はいい、股を閉じた。
「いや、まだ勝負はついていないって」
「ほんとに、濡れてなんかないから、ここでおしまいだよ」
「だめだ」
と俊介はいい、再び股を左右に開いた。季子に抵抗は無かった。
「やっぱり、直に確かめてみないと、ゲームにならない」
俊介は上ずった声をあげながら、両手を股の間に挿入し、パンストを掴み、力強く左右に引っ張った。
「あん、だめだよ……」
思ったより強度がある。なかなか引き裂くことができない。もう一度、がっしりとバンストの中心部に指を食い込ませて、左右に引っ張った。裂けた。少しでも裂ければ後は簡単だ。更に左右へと引っ張った。裂け目が広がりレースのパンティが露になった。
透けて見える黒々とした陰毛が卑猥だ。
喉を鳴らし、手のひらをそっとパンティの中心部にあてた。明らかに湿り気を帯びている。だが、それが汗なのか淫らな汁であるのかは、はっきりとしない。
「もう、おしまい。わたしの勝ち」
右腕が季子の柔らかい腿に挟まれた。
「まだ、まだ。もっと確かめてみないと負けを認めるわけにはいかないよ」
中心部に密着した指を押し込んだ。
「あん、だめだったら」
季子の言葉を無視して、指先の感覚をたよりにクロッチの内側へと人差し指を滑り込ませた。濡れている。明らかに汗とは違うネットリとした淫らな汁を感じる。
「ほら、濡れている……ということは俺の勝ちだね」
季子を見上げて言い、指先をぐっと押し込んだ。濡れた膣は難無く指を受け入れる。
「あん、ずるい……」
季子は頬を桜色に染め、うっとりとした表情で俊介を見下ろした。
指を前後に動かした。生暖かい淫らな汁が指の付け根まで流れてくる。季子の両腿から力が抜けていく。両肘を使って膝を開いた。暖かい膣に飲み込まれた指で膣壁をなぞるように回転させる。クチュ、クニュ……と淫らな水音が膣から漏れる。
「だめよ。だめぇ……」
季子は身を捩り、指から逃れた。
「そんなに、いやかい？ こんなに濡れているのに」
俊介は透明な粘液で濡れた中指をかざした。
「あん。もう、いじわる。私だって我慢してたのよ。本当に、どうなったって知らないから」
「どうなったっていいよ。思い切り乱れてごらん」
俊介はその言葉に奮い立ち、季子の閉ざされた太腿を力強く左右に開いた。ねじれたクロッチから薄い大陰唇がはみ出している。
クロッチをずらし、女唇を曝け出した。その狭間からは淫水が滲み出ている。
濡れ輝くサーモンピンクの女唇に美さえ感じる。
両の親指を大陰唇にあて、ゆっくりと左右に開くと、水をせき止める箍が外れたかのようにジュワっと淫水があふれ、皺深い菊の穴に向かって一本の筋が流れた。
濡れた女唇へ顔を鎮めていく。芳醇な女の香りが興奮を引き立てる。頭がクラクラする。唇を窄め、ぷっくらと膨らんだクリトリスに息を吹きかけると
「あん」
季子は小さく呻き下半身を振るわせる。
「すごいな。季子のイヤラシイお汁、何もしてないのにどんどん出てくるよ」
「やぁぁん。また、そんなこといって……あぅっん」
舌を突き出し、菊の門まで流れている汁を掬い取るように舐めあげた。そして、押し開いた陰唇の割れ目に舌の先を押し込んだ。
「ふぅぅん」
くぐもった声を季子があげた。
親指でクリトリスを撫でながら、ぺロリ、ペロリと舐めつづける。口の中に満たされた唾液と淫水が混ざったものに何度も喉を鳴らす。
季子の荒い吐息を感じる。
舌先でクリトリスを突いた。
季子は短く呻き、肌に鳥肌を立てた。
クリトリスへの愛撫を舌の腹でねっとりと続ける。季子の躯がピクピクと反応する。
「くぅっ、だめぇぇ……」
弱弱しい声を季子はあげ、両手を俊介の頭部に添え躯を脈打たせた。
クリトリスから唇を離し季子を見上げた。虚ろな瞳で俊介を見つめている。
「どうした？ いっちゃった？」
ベトベトに濡れた口の周りを右手の甲で拭いながら言った。
「……もぉ、意地悪なんだから」
「でも、まだまだ、もう一度いかせてあげる。今度はこいつでね」
俊介は立ちあがり、季子の手をとってスラックスの膨らみへ導いた。
「ほんと、元気なのね」
季子はクスッと笑い、目の前にある膨らみを一撫でし、器用な手つきでスラックスのジッパーをおろしてトランクスの窓から勃起を取り出した。
ようやく外気に晒された陰茎は反り返り、ピクリ、ピクリと脈動している。赤黒い亀頭は尿道口から滲み出していた透明な液でテカテカに光っている。
「ああん、すごい。やらしい。こんなに濡らして……いやらしい」
季子は甘い声で言い、人差指の腹で透明な液を亀頭全体に広げる。そして、右手で竿を支え、雁の裏側をペロリと舐めた。
「ううっ」
久しぶりのフェラチオにたまらずに声が出る。
季子の舌が丁寧に裏筋を滑っていく。背筋に震えが走る。尖った舌が陰嚢をつつく。
唾液が口の中にたまり、油断すると唇の隅からこぼれそうになる。唾液を飲み込み季子を見下ろす。うっとりとした顔で丁寧に舌を這わしている。裏筋を舌が這い上がる。
季子は俊介を見上げ、薄い唇を開き亀頭をくわえ込んだ。亀頭にを這い回る舌が心地よい。先端の小さな切れ込みを突かれる。擽ったさと気持ちよい感触が交互がする。滑らかな舌の動きに鼻息が荒くなる。
空いている手で季子のブラースのボタンをはずしていく。パンティとお揃いのブラジャーが現れた。胸の谷間がイヤラシイ。ブラジャーの下に指をかけて上へずらした。薄茶色の乳首は尖っている。
尖った乳首を親指とひとさし指でつまみ、コリコリと左右に回転させた。季子は眉を顰めて舌の動きを止めた。
「あん、だめよ。集中できないじゃない」
季子は俊介の手を払いのけ再び陰茎をくわえこんだ。
季子の視線が絡んでくる。イヤラシイ女の顔にゾクッとした。まるで、娼婦のようだ。 二週間も溜め込まれた精液。いつもより、陰茎は敏感になっている。また、夢にまで見たこの部屋での淫らな行為がより興奮を高めていた。限界が近づいている。
「もう、だめだ。それ以上されたら、口の中でいってしまう」
「いいよ。出して。口の中に一杯だして」
季子は一旦陰茎から口を外し言って、亀頭に唇をかぶせた。頬を窄め、頭を前後へ振った。柔らかい茶色がかった髪が揺れている。鼻から呻く音と共に唇と陰茎の隙間からジュポ、チュパと淫らな水音が漏れている。
視覚・聴覚・嗅覚・触覚が快楽の追求へ向け集中する。急速に射精感が込みあがってきた。
「ううっ、いく、いくよ」
上ずった声をあげると同時に竿が脈うちだした。どくん、どくんと筋が膨らみ、亀頭の割れ目から勢いよく白濁液が噴出するのを感じる。わずか、数秒の出来事が数分に感じる。頭の中が白くはじけそうだ。
 ようやく脈動がおさまると、季子は管に残った最後の一滴までを吸いだすように頬をへこました。
そして、ゆっくりと陰茎から唇をはずした。思っていた以上に濃く大量の白濁液が口の中に注がれたらしい。口の中に収まりきれずに唇の隅からトロリと流れだした。顎を伝い糸を引きポタンと床に垂れ落ちた。
季子は口をあんぐりと開き、これ以上白濁液をこぼさぬように顔を上に向けた。
「飲んで」
俊介の言葉に意を決したのか、季子は瞼を閉じて唇を閉ざし喉を鳴らした。
「これで、満足？」
季子は机の上にあるテッシュを２枚抜き取り、顎から首筋に流れた白濁液を拭いながら言った。
「ああ、最高だったよ。だけど、まだ満足はしてない。次は季子の中で果てたい」
普段なら欲望の液を一度放つとだらりと垂れ下がる陰茎だが、今宵は全く硬さを失わない。バイアグラを飲むとこんな状態になるという。勃起障害のない俊介には無用のものではあるが。
「どうしちゃったの？ 今日の俊介、いつもと違う」
「だろっ、自分でもわからないけど、こいつが疼いて仕方がないんだ。立って」
季子の手をつかみ、席から立たせた。
「あん、ほんとに誰か来ちゃうかも」
「誰もこないって。季子だってあれだけで満足なのかい？」
「うん。わたしは、満足よ」
「本当かな？」
俊介は妖しく微笑み、スカートをまくって女唇に触れた。口でイカセタ時より潤いが増しているような気がする。中指を狭間へ押し込んだ。
「あぁん」
「正直な躯だ。季子もこいつが欲しいんだろ」
まだ、季子の唾液が乾かぬ亀頭の先端部を季子の腹部に押し付けながら、中に入れた指を回す。そこからは淫らな水音が聞こえてくる。
「やっ、やだっ。だめだってば、そんなにされると……やっ」
腹部を突く先端から逃れるように腰を引いた。だが、膣の中にすっぽりと挿入した指は外れない。
細い腰に左手をまわし、ぐいっと引き寄せた。再び、硬いものが季子の腹部に密着する。人差し指を追加した。２本の指で膣をかき回す。どくどくと淫らな汁が溢れ、たちまち手のひらを濡らす。
「こんなに濡れているのに……どうしても、いやかい？」
「もう。知らない」
季子は頬を赤く染め、そっぽを向いた。
こういう羞恥心が好きだ。普通、何度も躯を重ねあえば、恥ずかしいという心も薄れてくるだろう。だが、季子は違った。いつも、頬を染める。そんな季子に対して軽い被虐心が芽生え、彼女を縛りあげたり、野外で裸にしたりと様々な行為にも興奮を覚えはじめた。
膣の中から指を抜き、季子のくびれた腰に手を当て躯を反転させた。
「なに、するの？」
か細い声で季子は尋ねた。
「そこに手をついて」
「こう？」
言われるままに、季子は壁に手をついた。
「もっと、お尻を突き出して」
季子の腰をつかみ、グイッと持ち上げた。その時、季子のスカートが円錐形の染みを作っていたことに気づいた。スカートを腰までまくった。裏地は大きな染みで濡れていた。
「スカートまでビショビショに濡れてるよ」
「やあぁん」
更にストッキングを破り、パンティを擦り下ろした。
丸い尻肉に指をくいこませ、淫裂を広げ、照準を定め、腰を前に突き出した。
亀頭の先端が濡れた陰唇をまくり、膣の中に沈んでいく。陰茎がゆっくりと膣壁を押し開きながら飲み込まる。
「あぁぁん」
季子は悩ましい声をあげた。
口とは違う、肉襞の感触が意思を持ったかのように陰茎全体に絡みつく。久しぶりに味わう季子の体内、しかも今日は膣壁と陰茎を隔てる薄いゴムを装着していない。直接、陰茎に絡みつくヌルヌルとした生暖かい淫らな汁。やはり、生は最高だ。
一応、今日は安全日であると確認している。だが、妊娠の可能性は否定できない。そして、リスクもある。でも、そんなことはもうどうでもよかった。子供が生まれたら、それでもよい。というよりも、季子との間に子供ができたら、妻と別れる決心がつくのではとの思いもあった。
「ああっん。なんか、今日の俊介、いつもと違う」
「何が違うんだい」
「いつもより、大きいみたい」
確かに自分でもそう感じていた。いつもより、一回りほど亀頭が膨らんでるような気がした。
括れた腰をつかみ、腰を振り出した。前後する腰の動きに合わせ、季子は短く呻く。
結合部がくっきりと見える。肉の襞が揺れている。白い粘着液が竿の根元にまとわりつく。菊の穴が開閉を繰り返す。
亀頭が外れるほど腰を引き、元に戻す。深いところまで陰茎が飲み込まれる。
潤滑油は余分なほど大量に流れ出ている。注意しなければ、スルリと陰茎は抜けてしまう。
「あぁぁん、すごぉぉぃ、気持ちいぃ、それいぃ、あっ、そこ、そこ、奥まで……あん、そう……奥まで、あたるのぉぉ……」
季子は羞恥の箍が外れたように切ない声を張り上げた。左右に割れた髪からのぞく首が真っ赤に染まっている。
吸い付くように膣壁がぴったりと密着している。時折できる竿と膣の隙間から淫らな汁が水のたっぷりと詰まった風船に針を指したようにプシューと噴き出す。
「もっと……もっと、激しく、あっ……そぉ、そこ、そこぉぉ……」
季子の要求に応じ、大きく腰を前後に振った。子宮の壁に先端があたる。
結合部から生々しい性臭が漂い、鼻腔にはいる。
額から汗が垂れ落ち丸い尻を汚す。ワイシャツも汗でびっしょりだ。
クチャ、グショという淫水の湿った音とパーンパンという恥骨と尻肉がぶつかりあう音が協和する。
「はぁぁん……だめぇ、もぉ、だめぇ……いくっ、いちゃうよぅ……」
「うぐっ、うっ、おっ……俺も……いきそうだぁ……」
膣壁が鋭く収縮し、竿全体を締め付ける。
「ああん、一緒に……一緒にいってぇ」
季子は甲高い声をあげた。
同時に果てることを願い、狭い膣中を突いた。
「あっ、いくっ、いくぅ」
季子が頭をのけぞらすと同時に、膣壁が更に深く強烈に陰茎を締め付けた。
「うっ……うっ、いくっ」
俊介は短く呻いた。と同時に再び竿が脈動し、亀頭が膨れ上がり、白濁液が放たれるのを感じた。
 脈動が止まった。淫水とは違うねっとりとした生暖かい白濁液が亀頭にまとわりつくのを感じる。
季子はソファに手をつき、呼吸を整えている。膝ががくがくと震えている。
季子の腰を支えながらそっと、腰を引いた。
白濁液と女の淫らな汁が混じりあったヌルヌルとした液が、まだ衰えぬ陰茎にまとわりついている。
陰唇からとろりとした薄白いが流れ、床に落ちた。
優しく、季子の髪を撫でようと手を伸ばしたとき、内線電話が鳴った。
季子はその音にハットとしスカートを下ろし机の上の受話器に手をかけた。
俊介はすかさず、季子の手の上に自分の手を乗せ、受話器を持ち上げることを制した。
「俺がでるよ」
季子の手をはがし、深呼吸をし荒い息を整え、受話器をとった。陰茎をしまう暇もなかった。
「はい」
「うちの部署帰るんですけど、鍵閉めておきますから、後は宜しくお願いしますね」
「ええ、わかりました」
受話器を置いた。
総務部所属の女性の声だった。退社する際に他の部署が残ってる場合、残る部署に連絡することになっている。そんな、電話だった。
時計の針は九時を回っていた。
季子と俊介は慌てて、淫らな行為の痕跡を始末し衣類を整えた。
そして、無事に仕事を終えたときは１０時をまわっていた。
もう、こんな時間なのでほとんどの焼肉屋は看板を下ろしていた。また、空いていてもラストオーダーの時間だ。仕方がない。焼肉はこの次だ。
ということで、二十四時間営業のファミレスへいった。
遅い夕食を済まし、季子を送り届け帰宅すると十二時をまわっていた。
熱いシャワーで体液をあらいながし、たっぷりと氷を詰め込んだアイスボックスとロックグラスを手に書斎にはいった。
棚からワイルドターキーを取り、ロックグラスへ注ぎ飲み込んだ。ほぼ、ストレートに近いアルコールが一気に胃まで流れるを感じる。
パソコンチェアーの椅子にもたれ、グラスを揺らしながら、俊介は別れ際に車の中で言った季子の言葉を思い出した。
『でも、今日は残念だった』
『特上焼肉が？』
『違うよ。それは次回にご馳走してくれるでしょ』
『じゃあ、なにかな？』
『……賭けに負けたこと』
季子は寂しそうな表情を浮かべ車から降りた。
パワーウィンドーを下ろし、季子に声をかけた。
『部屋まで送っていくよ』
『いいよ。部屋まで来たら帰したくなくちゃうから』
季子はそう言って俊介に背を向けて、小走りで階段を駆け上った。
俊介は季子が部屋に入るのを見届け、車を発進した。
そうだった。あの時、季子が濡れてなければ、俊介の負けだった。
氷が程よく解け、まろやかになったバーボンを一口飲んだ。
『離婚してくれる……』
離婚、初めて彼女の口から出た言葉。
結果的には賭けに勝ち、離婚から避けることができた。
だが、彼女が愛しい。
”不倫”男女が人の道にそむくと辞書には書かれている。
人の道？ 人の道ってなんだろう？
誰がどういう基準で決めたんだ？
結婚しているというだけで他の異性を愛することが許されない。どうしようもなく心臓を揺るがす感情の高まりをむりやり、塞ぎこむことが大人、結婚しているものの務めなのか？
果たして、それでいいのだろうか？
たった、一度しかない人生である。もしかしたら、結婚自体が間違いではないのか？
ほんとに出会うべき異性は彼女だったのでは？
妻も”不倫”に薄々と感ずいてるようだ。だからこそ、冷えた夫婦の関係は更に冷え込みを増している。
今では、ほとんど会話することもない。一日に話すことといえば、朝の挨拶ぐらいだ。完全に夫婦関係は終わっている。
そろそろ、決断してもいいかもしれない。もう、こんな二重生活はよそう。偽りの夫婦はごめんだ。完全に愛情は季子へ注がれている。彼女と共に人生を過ごしたい。生涯、己の気持ちを騙していくことは耐えられない。子供たちの今後を考えると心は痛むが仕方がない。
彼女と一緒にいる時間に至福の時を感じている。
「離婚するか……」
俊介は一人呟き、グラスに残ったバーボンを一気に飲み干した。
おわり
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