３．

　市井の一般人はチョットやそっとで、こんなスパイ事件や暴力団抗争の様な常識外な話しを信じる事はない。
　現実に自分に降り掛かるまでは『日常の常識的な思いが外れる事は無いだろう。』と信じ切っているだろう。
　それが常識人というものだ。その常識が如何に怪しげであるとしても・・・。

　・『君子危うきに近付かず。』だと、チョット意味が違ってしまうが、そんなに特別な危険なんて物は、そこいら辺に転がっているものではない。と思うからだろう。
　それに、映画やドラマの様なスリルを本当に味わってしまったら、その恐怖は想像にあまりある。・とっても一般人の出る幕ではない・。

　だが実際は、この国にも影の部分がそこかしこにある。
　マスコミの報じる事だけが全てではない。
　拉致問題なんて明るみに出てしまったが、この国で暗躍しているのは彼らだけではない。
　規則だとか前例だとか、本当の処を認めようとしない役人制度によって、国際的にはスパイ天国とさえ迄云われている現実がある。

　だからミィコのおかしな態度が直接危険に晒されたモノではないとしても、もしもの時の怖さがあるから、用心だけは欠かせない。
　とは云え、全面的には信じてはいないから、いい加減な処もあるんだ。

　予定通り、カーテン付で、中が見えない様になっているガレージの、出来るだけ奥に目立たない様に車を停めた。
　昔は良くミィコとこんな処を利用したものだった。
　今日みたいな状況では普通の都市ホテルの利用は避けた方が良い。駐車場は大概通りから見る事が出来るし、男が何人も連んでいても不審には思われ難いからだ。・帰り掛けの待ち伏せも簡単に出来るだろう。
　モーテルだと出入りを見られていれば別だが、車を確かめになんて入って来られない。

　それにしても、連れ込みも昔とは随分変わったモンだ！
　カラーコルトンのルームピクチャーを見ながら空室を捜すなんて・。
　従業員も出来る限り姿を隠している。

　ベッドのヘッドボードには、これでもかっ！って位のスウィッチが並び、ベッドからは浴室の中が丸見えになっていた！
　随分変わったなぁ・。これじゃぁ、情緒も何もないだろうなぁ？
　あから様な見せ付けは、ロマンも情緒も打ち消してしまうじゃないか！・なんて、今昔の変遷を考えている内に、ミィコの奴、さっとその視界に入って来たかと思ったら、湯船に湯を張りだした
　ロビーで部屋を選んでいた時にも不審な人影は感じなかったから、不審者がいきなり部屋に飛び込んでくる様な事は無いだろう。

　まずは一安心だ。
　それでも非常用の出口の確認だけはしておいた。
　ミィコの云う事の何処までが信じて良いのか？俺には確証が持てないから、この位は、当然だった。　

　内心、俺はビクビクだ。　ミィコの奴は俺が用心している分、落ち着いて来ている感じだった。・本当に何も無いのか？
　『怖い物見たさ。』って云うんだろうなぁ・、こんな俺の事は・。
　もう、心を決めてしまったのだから、俺はサッサと服を脱ぎ、バスに向かった。
　脱衣場で、スラックスにいつも隠し持っている口臭消臭剤を口に含んでから透明アクリルでベッドルームと仕切られたバスに行く。
　４１度にセットされたお湯は、俺には飛び込める温度ではない。冷えた身体を少しずつ温めながら湯に沈めていく。
　・ジ〜ンと痺れに似た感覚が爪先から徐々に這い上がって来る。

　電話から車への乗り込みも異常だったミィコ。
　いつも裏の世界の陰を曳き吊っているのだが、この小柄なポッチャリな身体の何処で、そんな世界に入っていく気が起きるのだろう？・大胆不敵とは、こいつのための言葉だ。

　俺の身体が温まった頃、タオルで胸を隠して入ってきた。
　洋服のまま見た感じでは、殆ど昔と変わらない感じだった。
　小まっちい癖に、充分なボリュームを備えていて、柔軟な身体だった筈だった。

　だが、裸になったミィコは『ジムに通っている。』を裏付けるように筋肉が増していた。
　女の癖に腹筋が割れているなんて、コマーシャルか映画の中でしか見た事も無かった様に思うのに、ミィコの腹筋は見事に分けられていた。
　改めて見直して見ざるを得なかった。
「何か・ゴツゴツしたなぁ！」全身に筋肉の隆起が見えるようになったミィコの身体を見ての偽らざる処だった。
　筋肉に力が入っている処が明確に分かる女なんて滅多にいない。
「格好良いでしょう！？」
　ミィコは筋肉が着いたのを誉められたと思っているようだ。
「シガニー・ウィーパー並だね！・ちっちゃい癖に・。」女性は柔らかさが会ってこそと思っていた俺だが、ふざけて筋肉ポーズを取るミィコに皮肉のつもりだった。

　湯の中で、背中から身体を預けてきたミィコを両手を前に出して抱えて遣った。
　俺の二の腕の内側に触れたミィコの両腕にも筋肉の張りはあった。
　だが、胸に張り出した二つの膨らみは、充分なボリュームを保っており、また充分に官能的な柔らかさもあった。
　二つの膨らみを覆った俺の両手がそれを伝えて来ていた。
　それの双方の手はそれぞれにボリュウムを受け止めて、筋肉の固さとの対比を楽しんでいた。
　手の平に吸い付いて来る様な感触。・この感触は湿とりとしたマシュマロだ。
　お湯のお陰で手の平を滑らす事は出来るが、まるで目にも見えない細かな吸盤が無数にあり、俺の手を吸い付けているのではないかとさえ思える。
　それでいて、腰のある感じが手の平を圧し戻し、柔らかさを強調している。
　柔らかいだけでスゥッと何処までも柔らかいだけでは、魅力ではない。
　腰のあるところが反発力を示し、手応えを作るからその存在が魅力になるんだ。

　それはヒップにもあった。
　お湯で浮力が加わったとは云え、ミィコの体重の殆どを受け止めた俺に、骨の感触は無く、生の女体が背中向けだが、俺に密着しているんだ。
　こう云う時に俺の男の部分は、ダイレクトな反応を示してしまう！
　半勃起状態の俺自身が折り曲げられているのに痛さがあった。
「おぉい！痛いよぉ。」
「ごめん！・もう勃っていたんだ！」
　胸の膨らみに比べれば遙かに柔肉の厚みが少ないとは云え、しっかりとしたボリュウムのヒップを俺の半勃ちした物が突き上げていた。
　正直、ウチの奴相手ではこんな場面は想像もできない。
　ミィコの屈託無い悪戯心があって始めて、俺も屈託無く対応できる。
「女体がくっ付けば、反応しちゃうよ。・ミィコを女と認めているからな。」
「もう若さが無くなってるでしょ？・」
「あの頃のミィコは、取り柄が少なかったモンな。」
「どんな取り柄があった？」
「そんなこと知りたいのか？」
「当然知りたいわよ。・アナタがわたしの何を気に入っていたのかは・。」
「・・・ん、云い憎いなァ、・逝く時に腰が痙攣するだろう。ミィコは・。・・・アレは溜まらないんだよねぇ。」
「なぁんだ、セックスのことかぁ・。」
　ミィコはがっかりした声を出した。
「当ったり前だよ！今のシチュエーションを考えろよ。・・・ミィコが得意な分野は、俺にはあんまり興味が沸かないし・。」
「そっか！ビリヤード、下手だったものね。」
「俺は一般人レベルなの！・関東大会３位には敵いませんよ。・興味が沸くところが違うんだよなぁ。」
「車やバイクに乗るのはわたしも好きよ！」
「遊びはなぁ・、仕事とかライフワークとかなると、いつもアッチとコッチだろぅ。」
「それなのに、こんな処へ引っ張り込むの？」
「だから、捨て難い味があるのは確かなんだよ。・ミィコのセックスには・。」

　こんな話しになって、俺の半勃ちは軟らかく戻ってしまった。
　それでも俺の右手の中にはミィコの乳房が留まっていた。
　弾力のあるプリン！とした柔らかさ・。
　手の平一杯に吸い付くような肌理が何とも心地良い。
　ボリュウムも俺好みだし、こいつの身体は本当に俺好みに出来ている。
「ねぇ。・わたしのこと、想い出すことあった？」
「そりゃ、何度もあったさ！」
「どうせセックスだけだろうけど・。」
「そんな事もないさ。・雨の第三京浜を二人乗りのバイクで帰ってきたのは、強烈な思い出だしなぁ・。」
「遠出は出来なかったものねぇ・。」
「店を手伝っていたものなぁ。」
「・・ンッ！」
　片目を顰めたミィコ。俺の右の小指がバスト下のポイントを抑えたんだ。
　まだ、攻めるよりこの手触りを楽しみたかったんだが、懐かしくも楽しい手触りに、つい指を動かしてしまった。
　小柄ながらメリハリのあるボディーが跳ねるように向きを変えた。
　俺の膝の上で膝を立てる様に脚を引いたかと思ったら、身体を捻りながらスッスッと脚を入れ替えていた。
　身体の向きを変える動きの中で、右手が弾かれてしまった。
　楽しい手触りもここでおしまいだ。
　向き合った形になっていた。
　ミィコの両手が俺の両肩を捕まえ、前身を晒したんだ。
　改めて正対した両胸は昔とそんなに変わっていない。
　心持ち下がったのかも知れないが、お湯の中ではそんな事は分かり様も無い。

　俺の目を見詰めたまま、顔を近付けて来た。
　鼻と鼻が当たりそうだ！
「直ぐに悪戯するのね。」
「この手触りは大好きなんだよ。丁度良い大きさで、こんなに手応えのあるボインは少ないからね！」
「それじゃ、わたしの外側だけじゃないの！？」
「・・ンン、・遣ると決まった事には意欲的に向かって行くからなぁ・。そんなとこは好ましく思っているよ。・・バイタリティーも見せ付けられたしなぁ！・優しさはあんまり無いしぃ・。直ぐに暴力的になるし・、でも、俺以外に目を移さなかったのが可愛かったけどな・。」
「フ〜ン・・・。？・・・でも、アンタじゃなくユースケと一緒になったわよ。」
「愛せたのかい？」
「それを聞くのは野暮よ。・一緒になったのよ！」
「その割にはご発展だった。って、この間云わなかったっけ？・あれは何か物足りなさでもあったのかぃ？」
「マーちゃんがそう云う癖を置いて行ったんでしょ！・・・『沢山経験しろ！』って！」
「・その上で俺が選ばれたんなら、俺も違っていただろうなぁ。・・・大勢の中から選ばれた事になるんだから。・ミィコが何も知らないまま俺を選んだって、大して重みも無い。」
「それで？・沢山の男の人を経験しても、マーちゃんの処へ戻ると思っていたの？」
「・多分ね。・・・離れては行かないと思っていたよ。」
「そうでしょうね。・だから離れることにしたのよ。・・・云われた様に、色んな人を経験してみたけど面白くはなかったわよ！・みんな、それぞれの遣り方でわたしは抱かれたけど、わたしは虚しさしか感じなかったわよ。」
　ミィコは面白そうに話していた。・『虚しかった』と云う割には、話し方がそれぞれ、楽しかった事を物語っている。

「ホントにそんなに経験出来たのかぃ？」俺は眉唾だった。
「ユースケの大きさはマーちゃんも知ってたわよね？・・・アレよりもズゥッと大きいのも・。」
「そんな奴が居たのか！？」
「男の人って、『大きい』って聞くと、どうしてそんななの？・わたしは痛い丈だったわよ！・その人コッチまで追って来たけどね！」
「どうして一緒にならなかったんだよ？」
「わたしには、あいつの習慣が許せなかったのよ。」
「あそこが大きすぎたんじゃないのか？」
「そうね！・始めはわたしの中が破られると思ったわ！・頭ン中ガンガンしてさぁ、気持ち良いドコロじゃなかったわ！でも、何回もするとわたしの中も変わっちゃうのね！・終わりの頃は淫悦に翻弄される感じだったわ。」
「簡単に大丈夫になったんだ？」
「簡単じゃなかったわよ！・・・二週間くらい向こうに居て、やっと普通によ。」
「毎日味わったのかぁ！？」
「まぁね・。・・・帰って来て始めての時なんて、『太平洋』だなんて云われちゃったモン。・ユースケによ。」
「身体がちっちゃいのに異様だったろうなぁ！・ユースケ。」
「冗談じゃぁなかったわよ！・わたしの方だってあんまり感じられなかったんだから！」
「そいつがコッチへ追いかけて来てね。・ユースケが怒っちゃってさぁ・。」
「人妻だって云わなかったんだ！」
「云ったわよっ！それでも・・・。って、求められちゃったのよ！」
　これは自慢話だなぁ・。
「で、大きい方が良くなったのかぃ？」
「そんな事無かったわ！・そんなに良かったら、アイツに付いて行ってたでしょ。だけどやっぱり、好きな人とが一番感じるわぁ。・それに人間、セックスだけじゃないのよ！」
「だけど、強く感じる方が良いんだろう？」
「だから、好きな人とが一番だって！・・・アイツだって、２週間目には普通になってたんだもの。・女のアソコ、相手の人に合って行くのよ！・自然とね。」
　ミィコの言い方は昔の悪戯っ娘の頃その侭だ！・・・だけど、ユースケの大きさを想い出させて置いて、大きさが関係ないと言い張るのは、俺としたいからか？？？

　俺が小悪魔みたいな女性を好きになるのは、ミィコの悪戯好きが多分に影響している気がする。・ミィコの悪戯は殆どが自分に主導権を取り戻す為のものなのだが、不思議と腹が立って来ない様にされてしまうのだ。
　心動かされた女性がする悪戯は、生きるか死ぬかの様な大きな影響がでない限りは、大目に見ることが出きるぐらいの器量がなければ『俺は男』と言い張ることは出来ない。

　それはもしかしたら、俺が多少へそを曲げても声を荒げても、ミィコは俺が決して心の底からは怒っていないことを見抜いていたようだった。
　俺は『武人でありたい。』と常々思っていたので、ミィコは当然『わたしが何をしたって小さな事にしか感じないはずだわ。』との考え方を持っていたのかも知れない？

　女のする事なんて、結局は可愛いもんさ！・それが俺の思いだった。
　しかも人類の半分は女なんだ。・３１億人を超える女が居るんだ。
　その中で、俺が出会ったことのある女が何人いるだろう？・・・通学のすれ違いから、街場での行き違いなどを含めて一万人出会ったか？・二万人も出会ったか？・・・十万人も出会ったとしても、三万分の一以下だ・！
　俺が出会っている女達なんて、ホンの僅かも僅か・、全く知らないのに等しいじゃないか！・・・肌に触れた女となったら、何百分の一だものなぁ・。
　まだまだ女は分からないなぁ・・・。　

　かつての記憶を辿って考え込んでしまった俺を後目に、ミィコはサッサとシャワーを浴びて出て行ってしまった。

　俺の青春時代は、セックスは結構勝手に、不自由無くやっていた。
　俺自身、お世辞にもハンサムだとは云えなかったが、高校時代から知識と行動には自信を持っていた。
　女性に接する姿勢は、アメリカ軍の将校達に教わった。
　・映画やドラマの中でも、日本人男優の格好の付け方が、コメディアンか取って付けた見栄の張りにしか見えなかった・。
　グレゴリーペックやフレッド・アスティアーの仕草がとてもスマートに見え、トニー・カーチスの二枚目半の演技に素直に笑い転げた。

　ＧＩ達と共にいる時間は高校の級友達と遊ぶ時間を遙かに超えていた。
　日本人の中ではハンサムだとは云えないと思った俺は『見栄えで女性に持てる事は無いだろう。』と自覚していた。
　だから、ターゲットを日本人以外に向けていた。『西洋人ならエキゾティックなイメージを持つだろう？』と考えたのだが、これが図に当たった！
　一番手っ取り早いのは、基地の中の住宅にいた娘達・。
　なんと云っても口説き落とし方を教えてくれるのが、当の娘達の事を良く知っているのだ！・・・もちろんセックスなんてトコまで進んだら、あのＧＩの太い腕で相当痛い思いをさせられただろう！・それでも、『女性を前にしたら誉めろ！・・・誉めないのは、お前は全然魅力が無い！と、云っているのと同義だ。』と教わったのが一番印象に残っている。
　その為に俺はハーレーのサイドカー付を乗り回していた。幾ら時代が違うとは云っても、ハーレーなんて単なる高校生なら、とっても手が出ないが、退役する将校が乗っていたのを格安で譲り受けたんだ。これはあらゆる場面で強力な助っ人になった。
　片言の英語しか喋れない高校生が、歳の近いＧＩの娘さん達だけでなく、外国の航空会社のスッチーを簡単にナンパ出来たのだ。
　普通のハーレーだって珍しい時代だったが、サイドカーまで付いていたんだ。
「これで日本の面白いところを教えてあげるよ。」と云えば、デートに誘うのは結構簡単だった。
　気を良くした俺は、国際線のスッチー達を狙いだした。
　殆どの西欧人は東洋人の歳を読めなかった。そこに付け込んだんだ。学ランを脱いでしまえば、高校生か大学生かも分からないんだ！・白ワイシャツにネクタイを足して、ジャケットを羽織っていれば社会人だとさえ思って貰うことが出来た。・コッチはお姉様ばっかりだから、遊びは結構非合法な事もあった。
　何回か呼び出してくれたスッチーが急に音沙汰になって、６年もしてから可愛い女の子を『アナタの娘よ。』なんて云われたこともあった・！
　そんな時代・・・も、あった。
　大学に入った秋に、ミィコと出会ったんだった。セミレーシングカートを楽しんでいたミィコと、・。俺はミィコだけに絞る様な事はしなかったし、お互いにあまり拘束しなかったように記憶している。
　それから、屈付いたり離れたりが、ユースケに譲るまで続いたんだった。

　バスタオルを豊かな胸から巻き付ける様にして留めて、ベッドに入って行った。
　ボ〜ッとしていた俺は、ただ見ているだけだった。
　脱衣場から出てベッドまでのミィコの歩き方が、何処か優雅さを感じた。
　俺を誘ってゆっくり歩いた所為か？
　ミィコ自身が優雅になっているのか？
　俺には判断が付かなかった。

　優雅さって云うのはセクシーに見えるものだ。
　かつて俺の腕の中で、何回も何回も身体を震わせたミィコがダブって見えた。
　可愛かった！
　シャワーを浴び、スラックスにいつも隠し持っている口臭消臭剤を口に含んでから出て行った。

　悪戯っぽい眼で俺はミィコの脇に横たわると、ミィコは直ぐに俺に被さってきた。
　まだタオルを巻いたままだった。
　シチュエーションが出来てしまうと、直ぐに全裸に羞恥心の欠片も無くなってしまう女が多い昨今、ミィコのこんな羞恥心の現れは奥ゆかしさを思わせ、可愛らしく感じるんだ。
　何たって、俺の好みを殆ど知り尽くした女だから、小悪魔ぶりを発揮して俺を擽っているのかも知れない。
　が、それならそれで、俺を喜ばせてくれているのだ。余計に可愛らしく思う。
　ミィコの両手が俺の両手を掴んで頭の上に押さえ付けた。

　顔と顔が屈付きそうだ。
「わたし変わった・？」
「自分勝手で何を考えているのか分からないトコは昔の侭だよ。」
　チョット微笑んだ様にも思えたが、ミィコは全体重を俺の全身に委ね、両腕が頭の上に抑えられた侭だ。
　顔が傾いて唇が触れた。上唇の頂点が軽く吸われ、ミィコの唇から僅かに出た舌が俺の唇を舐めて廻る。
　悪戯っぽく上唇を左に進み、口角で下唇に移って右に舐め続ける。
　右の口角で上唇に移り、上唇の頂点へ戻ってくると顔を傾けて押し付けて来た！
　・強く吸われた！
　これじゃぁ女王様キャラだよ！
　・このままは不味い。・俺にＭッ気は無いんだぞ。
　ミィコに主導権を持たせる気はなかった。