最終話

　その頃、絵里子、寛子、哲也の３人はプールで泳ぎながら、痴態を繰り広げていた。
　寛子と哲也はすっかり意気投合し、水面下でお互いの身体を弄り合っていた。哲也の下半身に向けて手を伸ばしている寛子の腕が激しく上下動するのを見て、寛子が水面下で哲也に対して何をしているのか、絵里子は容易に悟っていた。
（寛子ったら、結構やるわね。廻りに大勢の人がいるのに。哲也さんもうっとりしちゃってるし……。ちょっぴり妬けるわ）
　絵里子は、２人にジェラシーすら感じ、自分も早く俊之といちゃつきたいと感じていた。
（私も、俊之さんのモノを手でシコシコして、出してあげたい！それにしても、俊之さん、まだかしら……）。
　俊之の戻りが遅いのに痺れを切らした絵里子は、「俊之さんを呼んでくる」と言い残すと、急いで俊之を呼びに戻っていった。

「俊之さーん、まだいるの？……。いい加減に、引き上げましょうよ！」
　そう呼びかけながら、VIPルームに足を踏み入れた瞬間、絵里子は呆然と立ちすくんでしまった。
　絵里子がそこで目にしたものは！……。
「俊之さん！……」そこには、床にうつ伏せに倒れている俊之の姿があった。そして、身体の下から赤い液体が流れ出ているではないか。
「どうしたの？！」
　絵里子は、急いで俊之のもとに駆け寄り、身体を助け起こした。が、次の瞬間、
「きゃあー！」思わず、悲鳴をあげた。
　何と、脇腹が真っ赤に染まっているではないか。しかも、すでに俊之の息はなかった。
「どうして、こんなことに？！……。一体、誰に？……、まさか、ヒトミに？！……」

「絵里子！」
　そのとき、背後から聞こえたその言葉に、絵里子は一瞬、全身が凍りついた。驚いて、振り向くと、憎悪に満ちた眼差しで見下ろしているヒトミがいた。血に染まったナイフを両手で握り締め、絵里子の喉元に突きつけながら……。
「ヒトミ！……、あんたが、俊之さんを刺したのね！」
「そうよ、でも、あれは事故だわ。私のせいじゃない、天罰よ！」

　そう、あのとき……、
　身も心もズタズタにされ、絶望感に打ちひしがれる中、ヒトミは、俊之のサバイバルナイフを偶然手にして、本気で死ぬ気でいたのだった。
（このナイフでいっそ喉を突き刺して、死んでしまおう……）
　そう思ったヒトミは、ナイフを握り締める両手に力を込めると、発作的に自分の喉を突こうと、思い切り勢いよく突き上げた……

　次の瞬間、ヒトミは、ナイフの刃が何かにずぶりとのめり込む感触を得た。続いて、握り締めたナイフの柄を伝わってヒトミの両手に生暖かいどろりとした液体が止め処なく大量に溢れてくるのが感じられた。

「うっ！……」呻き声を上げたのは、なんと俊之の方だった！
　スペルマが目に沁みて目をつぶったままのヒトミには、一体何が起こったのか全くわからなかった。ヒトミが恐る恐る薄目を開けると、目の前に、苦痛にゆがんだ俊之の顔があった。そして、自分の両手の握り拳が真っ赤に染まった哲也の脇腹にぴったりめり込むように密着していた。
　このとき、初めてヒトミは気付いたのだった。自分の喉を突き刺すつもりで勢いよく下から突き上げたナイフが、ちょうど、ヒトミの手錠を外してやろうと覆いかぶさるように前かがみになった俊之の脇腹に刺さってしまったことに。それも、刃の部分がずっぽり彼の腹の中に埋まってしまうほどに深々と……。
　ヒトミは、思いもかけなかった事態にパニックに陥りながらも、これも天の思し召しだと感じざるを得なかった。
（私のせいじゃない、私が悪いんじゃないわ！……。罰が当ったのよ、俊之さん！……）

　ヒトミは、絵里子の喉下にナイフの刃を突きつけて威嚇した。
「ま、ま、待って……、お願い、無茶はやめて！」
　さすがの絵里子もパニックに陥り、腰を抜かしながら、懇願した。
「おとなしく、言うとおりにすれば、傷つけるようなことはしないわ！……」
「わ、分かったわ。何でも、言うとおりにするから……」
「じゃあ、そこに落ちている鍵を拾って、私の手錠を外して頂戴！」
　絵里子は、恐怖に震えながら、素直に従った。
　ヒトミは、絵里子の喉元にナイフの刃を突きつけながら、用心深く、絵里子が手錠を外すまで、警戒の姿勢を崩さなかった。
　手錠が外れ、床に落ちる音を聞き、ヒトミはほっと胸を撫で下ろした。
　しかし、その一瞬の隙をとらえて、絵里子はヒトミの手を払いのけようと抵抗し、反撃を開始した。
「何するのよ、危ないマネはやめて！」
「あんたこそ！、そんな物騒なものは似合わないわよ、ヒトミ！。おとなしくナイフをこっちに渡しなさい！さもないと大怪我するよ！」
「いやー！」
「あんたなんかにやられて、たまるもんですか！」
　２人は、ナイフを奪い合いながら、無我夢中でもみ合い、争い続けた……。

　そして……、どれ位時が経っただろうか。それは恐ろしく長くも、また短くも感じられた。

「ヒトミ……」
　絵里子は、そう呟き、ヒトミの喉元に喰い込ませていた両手を離した。すると、首を絞められて息絶えたヒトミが、ずるずると崩れ落ちていった。
「バカな娘……。腕ずくで、私に……勝てると……、思ってたの？……。それに、これは……、正当防衛……だからね。私は……、ちっとも……悪く……ないわ！……」
　絵里子は、深くため息をつくと、シャワールームに向かった。だが、２歩、３歩進んだところで、身体が大きく左に傾き、そのまま、スローモーションのようにゆっくりと前のめりに、倒れていった。そして、脇腹に深々と突き刺さったナイフの刃を伝わって流れ出た深紅の液体が見る見る間に床を染めていった……。

　一方、寛子と哲也は、プールで楽しげにいちゃつきながら泳ぎまわっていた。相変わらず混雑している中を掻き分けながら、ついさっきまでのヒトミへの恐ろしいまでのサディスティックな仕打ちなど忘れたかのように、二人ははしゃぎ、水面下でお互いの身体を弄り合っていた。人目を憚ることなく、哲也は寛子の胸や尻を撫で回し、寛子は哲也のスイミングトランクスの前の盛り上がりを激しく擦っていた。
　人目を憚らぬ2人の痴態に、周りの女性客がいやらしいものを見るかのように顔をしかめながら通り過ぎるのにも気にかけず、大胆に自分たちの世界に没頭していた。
「３回も出したっていうのに、ずいぶん元気ね、凄いわ！」
「いや、まだ２回だぜ」
「あら、最初に、ヒトミに海パンの上から扱かれて、出しちゃったくせに！」
「ばれてたか……」
「もち、なんでもお見通しなんだから！よっぽど溜まってたのね」
「参ったな。それにしても寛子ちゃんが、こんなに大胆でスケベエな娘だとは思わなかったよ！」
「あら、今どきの女子中学生なら、これくらい当たり前よ」
「廻りの人たちに見られてるかも知れないのに……」
「大丈夫、分からないわ、水の中まで誰も見てないわよ」
　ヒトミほどではないが、並の中学生とは思えない寛子のフィンガーテクは、哲也を４度目のフィニッシュに導こうとしていた。
「ヒトミと、どっちが上手？」
「そりゃあ……、」
　哲也は、答えるのがしどろもどろになるほど、快感に打ち震えていた。
「だんだん我慢できなくなってきたよ……」
「このまま出しちゃいなよ！。そうだ、お口で受け止めてあげる！」
「えっ！」
「水中おフェラしてあげるわ」
「本当！」
「そのままゴックンしてあげるから、お口にいっぱい出してね！」
　そう言うと、寛子は、笑みを浮かべながら、スイミングトランクスの脇からペニスを取り出し、直に扱きながら、大きく息を吸い込むと、一気に水中に潜り、哲也の前に跪いた。
　そして両手で哲也の腰をしっかり掴みながら、素早く大きく口を開けて巨大な一物を一息に咥え込んだ。
　寛子の頭が二度三度前後したかと思うと、次の瞬間、哲也は、あまりの快感に、寛子の頭を鷲掴みにしながら、思わず腰を思い切りグイっと力強く突き出した。と、その拍子に、昂奮しきったペニスが勢い余って、無理やり寛子の喉の奥深くずっぽりとはまり込んでしまった。
（うっ！、く、苦しい……）
　思ってもみなかった突然のハプニングに、寛子は慌てた。完全に喉を塞がれて、息ができないのだ。もだえ苦しみながら、何とかペニスから口を離そうと試みたが、根本まではまってしまっていて、ぴくりともせず、もはや、どうすることもできなかった。
　射精してしまえば、徐々に萎えて気道から外れたであろうが、あいにく射精には至らず、長大で硬いまま気道にはまりこんでしまったペニスは、このまま寛子を窒息死させるのには十二分な凶器と化した。
　寛子は、目を白黒させながら、哲也の腰を両手でしっかり掴んだまま、とうとう後ろ向きにプールの底に倒れこんでしまった。慌てたのは、哲也も同じだった。不意を衝かれて急に水中に引きずり込まれたのだからたまらない。しかも、寛子にしがみつかれて、両手でがっちり下半身を押さえられているので、身動きできないでいた。何とか、寛子の頭を掴んで下半身から突き放そうとしたが、びくともしなかった。
（うっ、息ができない！……）
　哲也も、顔を水面に上げられないまま、ゴボゴボと泡を吐き出しながら、喉を掻きむしっていた。

　息ができない２人は、プールの底に沈んだままお互いにもがき苦しんでいたが、やがて動かなくなった。

　しばらくして、２人の身体が水面に浮き上がってきた。男の股間に少女の顔が密着したままの、奇妙で卑猥な格好のまま、ぷかぷか浮いているだけの２人に、誰も気が付かなかった……。

（完）