９

　ようやく俊之の身体から顔を離すことができると、ヒトミは勝ち誇ったように叫んだ。
「やったわ！３分以内に俊之さんをイカセたから、私の勝ちね！」
　と、同時に制限時間到来を告げるアラームが鳴り響いた。
　ギャラリーは、信じられないといった表情で互いに顔を見合わせた。まさか、俊之が、所詮中学生の拙いと思っていた口による奉仕で、こんなにも早く射精させられるとは誰も思ってもみなかったのだ。
（まずいわね、これは。このままじゃ、お楽しみがなくなってしまう……）
　絵里子は、困惑の表情を隠せずにいた。寛子も心配そうに囁く。
「まさか、本当に出しちゃったんじゃないよね？俊之さん……」
　しかし、俊之は快感の余韻に浸りきり、もはや言葉を発する気力すら残っていなかった。
　４人の間に重苦しい沈黙が続いた。
　そんな中、絵里子が沈黙を破って反攻した。
「ちょっと待って！俊之さんが射精しちゃったという証拠があるの？」
　ヒトミの喉の動きから、スペルマを全て飲み干したものと察した絵里子の賭けだった。
　実際のところ、俊之のペニスはまだ硬いまま濡れてはいたが、ヒトミに白いマグマの全てを吸い尽くされてしまったため、スペルマの雫すら、ほとんど残されてはいなかった。
「もし、本当に俊之さんが出してしまったのなら、口の中に俊之さんのスペルマが残っているはずでしょ？口を開けて見せてみなさいよ！」
　絵里子の意を受けた寛子が、意地悪く言い放った。
　ヒトミは、その言葉を聞いて顔を歪めた。口中のスペルマを一滴残らず飲み干してしまったばかりのうえ、まだむせっているため、抗議しようにも言葉を発することができなかった。
　ヒトミは、絵里子に無理やり口の中をこじ開けられた。
「何だ、空っぽじゃん。射精させたなんて、嘘ついたのね！」
「ひどーい！私たちを騙そうとするなんて、何て悪い小娘なんでしょ！うんとお仕置きをしてあげなきゃ！」
　絵里子と寛子が強い口調でなじった。
「ちゃんと射精させたわよ！ただ、スペルマを全部飲み込んでしまったから、口の中には残ってないけど……。それに、この人も確かに手で出してあげたたんだから！」と、哲也を指差して、抗議した。
「冗談じゃあないぜ、この俺がそう簡単にイクわけないだろ？」
「じゃあ、海パンの中を見せてもらうわ！」
　ヒトミは、素早く哲也のスイミングトランクスに手をかけ、ずり下ろそうとした。
「何するんだ、このスケベ娘が！第一、今の勝負に、俺は関係ないだろ！」
　哲也は慌てて後ずさりしながら、ヒトミの手を払いのけた。
　俊之もバツの悪そうな顔をしながらも、開き直った。
「勿論俺だって、まだ出していないさ！中学生の小娘にそう簡単にイカされるはずがないだろ？」
「そうよね。いくらヒトミがテクニシャンだって、大人の男性をこんなに早く射精させられるはずがないわ！」
　寛子も精一杯加勢する。

「今の勝負はヒトミの負けね！可哀相だけど、初めのルール通り、次は哲也さんにご奉仕してもらうわ。３分以内でイカせたら、ヒトミの勝ち、イカせられなかったら、罰ゲームだからね！」
　絵里子は、これ以上口答えを許さないという強い口調で、断言した。こうなると、もはや多勢に無勢だった。これ以上、反論しても無駄なことをヒトミは悟った。
「……分かったわ……」
　結局、ヒトミは泣く泣く従わざるを得なかった。それでも思ったよりは冷静でいられた。とにかくも、フェラチオ初体験ながら、大人の男性を３分以内に射精させられたことに、改めて自分の天性とも思えるテクニックに自信を持ったのだ。
　ところが、ヒトミにとって思いもかけない、冷酷なルールが付け加えられた。
「ただし、今度は海パンの上からフェラチオするのよ！」
「えっ！？」
　しかも、手を使わずに口だけで射精させなければならないというものだ。さっき哲也と俊之が揃って３分足らずでイカされたのを見て、これは侮れないと察した絵里子は咄嗟に姑息な手段を考え出したのだ。
「そんなの、あり？……」
「あら、文句を言える立場にあるのかしら？あのいやらしい写真をばら撒かれてもいい……のね！」
　絵里子が冷たく言い放つ。しかも３分経って、哲也を射精させられなかったら、次は罰ゲームとしていよいよ「本番」が待ち受ける、というルールを押し付けられた。事実上、もう何でもあり、ということになってしまった。
「そんなのいやよ！」
「そう、それじゃあ仕方ないわね。綺麗なお顔がズタズタになってもいいのかしら？……」
　絵里子は、どこから持ってきたのか、ナイフを取り出して、ヒトミの頬に刃を当てた。
「い、いやー……、やめて！」
　それは、俊之が持ってきたサバイバルナイフだった。
「絵里子……、あなたっていう人は！」
　このとき初めて、ヒトミに、絵里子たちへの怒りと憎しみが芽生えたのだった。

「じゃあ、そろそろ本日のメインイベントとやらを、やってもらおーぜ」
　待ちくたびれたように、哲也が声をかける。
　その宣告を聞き、ヒトミの体がビクッと震えた。一体どこまで自分を辱めれば気が済むというのか……？
　さっきは、運よく制限時間内に射精させることができたが、２人とも溜まりに溜まっていたせいかもしれない。今度は哲也も２回目だから、さっきよりは長持ちするだろう。しかもスイミングトランクス越しに咥えて刺激を与え続け、満足させなければならないのだ。
（海パンの上からのフェラチオなんて……、どう攻め立てればいいの？……、さっきも直にフェラしてぎりぎり３分近くかかったのに、今度も３分以内に射精させるなんて、そんなのとても無理だわ。……）
　それが分かっていながらも、強制されたヒトミは、結局従うしかなかった。
　そんなヒトミの思いとは関係なく、スクール水着姿で正座をしているヒトミの前に、哲也が密着しそうになりながら仁王立ちしている。
　可憐なヒトミがこれから見せるであろう痴態を想像して、ギャラリーは皆生唾を飲み込んだ。
「わかったわ……。そのかわり、イカせた後、すぐに海パンを下ろして、出したスペルマを確かめられるように海パンの紐をゆるてもらうわ！」
　ヒトミは、皆を睨みながら、そのつぶらな瞳には情念の怪しい輝きを放っていた。
　哲也は、さっき陥落させられたばかりというのに、噂どおりのヒトミのフェラへの期待にすぐに回復し、スイミングトランクスの上からでもはっきり形が分かるほど前を膨らませていた。
（さっきは、溜まってたから、思わず暴発してしまったけど、今度は２回目だから、たっぷり楽しませてもらうぜ、その艶めかしい唇で……）

「じゃあ、よーい、スタート！」
　絵里子がいつもながらの無邪気な声で、改めてスタートを告げた。
　もはや、ヒトミは破れかぶれだった。なんとしてもゲームを終わらせなければ、どうなるか分からないのだ。勇気を出して哲也のモノをスイミングトランクス越しに咥えようとした。とたんにスペルマの臭いがつーんと鼻についた。さっき射精させたばかりのスペルマがまだ乾かずに、スイミングトランクスの中にたくさん残っているのだ。 しかし、躊躇している暇などない。
　ヒトミの唇が哲也のスイミングトランクスの盛り上がりに襲い掛かろうとした。だがその前に、哲也がヒトミの後頭部を両手で掴んで股間に押しつけた。
「あなたのペニスを私の口に入れてってか？ホントにスケベなお嬢ちゃんだなあ、ヒトミちゃんは。よしよし、ほーら、好きなだけおしゃぶりしていいよ、ただし海パンの上からだけどな」
　哲也は、まんざらでもない顔でそう言うと、自分のモノを、顔を横に傾けてトランクス越しに咥えたヒトミの後頭部を掴んだまま、強引に前後左右に振り立てた。ヒトミは、（あまり乱暴しないで！）と言いたいが、口を塞がれていてはそれもできない。
　哲也が手を離した後、ヒトミがスイミングトランクスの強張りを咥えて一生懸命扱き始めると、ちゃぽちゃぽ音がする。
「おうー、たまんねえーぜ。下着のトランクス越しにおフェラさせるビデオを見たことがあるけど、実際にこうして海パンの上からしてもらうとは……、もう、最高。ホント、直にしゃぶってもらってるみたいだぜ！」
（そうだわ、ママがパパをイカせた時みたいにすればいいんだわ！……。さっきもそうだったけど、どうやらこの人は早漏のようね。いいわ、速攻でイかせてあげる！）
　気を取り直したヒトミは、哲也を陥落すべく、口の動きを早めた。
「おお！」
「すっごーい。噂以上のテクね！」
「うう、たまんねえよ。すぐにでもイキそうだぜ！……」
　予想以上の巧みなテクニックに、ギャラリーの３人も思わず喚声をあげてしまった。すかさず絵里子と寛子が叱咤激励する。
「だめよ、哲也さん、我慢しなきゃ！」
「ふだん、ヘルスやピンクサロンで鍛えてるんでしょ！」
「ああ。だけど、本当に気持ちいいんだ！」
　もっとも、ファッションヘルスやピンクサロンでは時間内発射無制限サービスの店が多いから、限られた短時間にどれだけ射精の回数をこなすかが高い料金の元をとるためのセオリーともなっている。つまり、いかに早く出すか、そしてすぐに回復して何度でも出せるように自らをコントロールするのがポイントなのだ。だから風俗店に通い慣れた男性は、習慣的に早漏気味になってしまうともいわれている。
「何、大丈夫さ。いや、我慢、我慢……」
　そう、自分に言い聞かせる哲也ではあったが、しかし、それが痩せ我慢でしかないことを思い知らされるまで、さほど時間はかからないのだった。