４．シンガーソングライター・・・未垢( miku )

　mikuは17歳でデビューして、瞬く間にスターになったシンデレラガールだった。
　透明感のある歌声で、一躍「歌の妖精」と呼ばれた。
　細く長い髪が透けるように風に流れ、白い透明感のある肌が細い身体とマッチして、まるで妖精のようだと人は言っていた。
　しかし、デビューから３ヵ月後、突如としてmikuの姿は消えてしまったのだ。
　あの透明感のある妖精の歌声が出なくなった・・・と言うのが真相らしい。

　しかし、ここにmikuに惚れ込んでいた男がいた。
　弓野 浩二、ギタリストであり、プロダクションマネージャーである。
　弓野は、デビュー前にmikuの歌声を聴いた瞬間に、虜になっていた。
「僕は 諦め切れない・・・絶対に捜し出して、もう一度、あの歌声を世の中に出すんだ」
　全国中、噂を聞けば、何処でも捜しに行く。
　その執念は凄まじいものがあった。

　そんなある日、伊豆の別荘地でmikuを見かけたと言う情報が入った。
　弓野は、すぐに新幹線と踊り子を乗り継ぎ、情報のあった別荘地に向かった。
　ペンションや小さな湖がある一角の奥の別荘にmikuはいた。
「miku・・・どうしたんだ？大丈夫か？声が出なくなったと言うのは、本当なのか？」
　矢継ぎ早に質問をする弓野を見て、mikuは、驚くばかりだった。
「あぁ、ゴメン・・・良かったぁ〜mikuに逢えて・・・無事でなによりだ・・・」
　目を潤ませて話しをする弓野を、mikuは無言で別荘に迎え入れた。

　mikuは、どうやら、ひとりでここにいるようだった。
　紅茶を持って奥から出てきたmikuは、以前と変わらぬ容姿で弓野は少し安堵していた。
　歌声同様mikuの容姿は、透明感を感じさせた。
　透き通るような細い毛髪・・・肌・・・瞳・・・、すべてに透明感を感じさせていた。
（変わらない・・・穢れの無い美しさとは、mikuのことを言うんだな・・・でも・・・どうして声が出なくなったんだろう・・・もう、二度と出ないのか・・・）
　垢が未だ無い・・・だから、未垢（miku）・・・この名は、弓野が付けたものだった。
　何の垢も感じさせない美しさ、透明さが、mikuにはあったのだ。
「miku・・・僕には、話してくれるよね〜どうして、僕にも何も言わず姿を消したんだい？」
「・・・・・・・・・」
「本当に声が出なくなったのか・・・可哀想に・・・君は、ただ、歌うのが好きだったのに・・・」
　外は静かに夕暮れ色に染まりつつあった。
　窓ガラスはオレンジ色に染まり、遠い遥かな空は紺碧に覆われていた。
「miku、食事に行こう〜」
　mikuは首を横に振り嫌がった。
「外に出るのが嫌なのか？人に会いたくないんだね？そうか・・・じゃぁ、僕が作るか」
　mikuは自分を指差し、弓野には座っているように身振りで伝えた。
「そうか・・・mikuの料理って、初めてだね・・・うん、じゃぁ、頼むね！楽しみだ・・・」
　mikuも嬉しそうにキッチンに向かった。
　しばらくすると、トレーに食器を載せて料理を運んできた。
　イタリア料理のようだが、弓野には名前は分からなかった。
「美味しそうだな〜mikuが全部作ったの？」
　mikuは少し照れて頷いた。
「そうか、いただきま〜す」
　ふたりは静かに料理を食べた。
　弓野は話しをしようと思ったが、mikuに負担をかけるので止めにした。
　食事を終え、弓野はコーヒーを淹れた。
「美味しかった・・・mikuは、いいお嫁さんになれるね〜」
　mikuの顔に陰りを感じた。
　弓野は今は問い質すような真似はしない方がいいと思い、荷物の中からギターを出した。
　12弦のギターだった。
　ラテンを弾かせれば、弓野の演奏は最高だった。
　弓野は静かな落ち着く曲を弾いた。
　12弦の調べは森閑とした別荘に心地良く響き、すべてのものが澄んでいる様な気がした。
　mikuも同様で、弓野の12弦の調べにmikuは涙を流していた。
「miku・・・辛い時は、その辛さを僕に分けてくれれば、いいんだよ〜いつもそうだよ。話しをするだけで、哀しみも半分になるし・・・いや、僕が全部、吸い取ってあげるよ〜でも、一番いいのは・・・mikuが歌を歌うことかな・・・mikuの歌声は心を癒すから・・・」
　そう言いながら、涙するmikuを優しい目で見遣りながら、16弦を引き続けた。

　♪〜あぁ あなたに 巡り逢えた わたし
　何の 言葉もいらない
　あぁ あなたが 傍にいて わたし
　心の 調べを奏でます 〜♪

　弓野の12弦に併せるように、mikuは歌い始めていた。
「miku・・・良かった〜声が、歌が・・・あぁ、本当に良かったぁ〜〜」
　弓野はmikuを抱きしめて涙した。
「泣かないで・・・わたしの為に涙を流さないで・・・あなたを哀しませたくないの・・・」
「ち、違うよ〜miku・・・嬉しくて涙が止まらないんだ・・・君の歌声が聴けて嬉しいんだ」
「そうなの〜そうなら・・・わたしも嬉しいわ〜」
　抱き合ったまま、ふたりの時間は止まっていた。

　少し、落ち着いた弓野は、mikuの肩を抱いて座り、話しを切り出した。
「それで・・・どうして声が出なくなり姿を隠したんだい？僕ならいいだろ〜話してごらん」
「あれは・・・デビューして３ヶ月ぐらい経った日だった。
　わたし、あなたと別れてマンションに戻り、寝ようとしていたら・・・・・・
『ピンポ〜ン・・・』
『はぁ〜ぃ・・・、マネージャー？忘れ物〜？』
『あれっ？石田さん・・・何か〜？』
　石田は同じ事務所の所属タレントで、とかく女の噂の絶えないプレイボーイだった。
　mikuは、そんなことなど知らないほど無垢だったので、部屋に入れてしまった。
『今、ひとり？・・・弓野君は？』
『はい、先ほど帰られました。それで、どんなご用ですか？』
『あれぇ〜mikuちゃん、寝るところだったのかい？』
『えぇ、今、お風呂から出て・・・』
『湯上りの美少女か・・・いやぁ〜実にいいねぇ〜』
　石田は舐め回すようなイヤらしい目つきでmikuの頭から足の先まで見ていた。
　薄いネグリジェの上からでも、素肌が透けて見えるようだった。
　石田はわざとフラッとして、気分が悪いフリをした。
『大丈夫ですか？』
『さっきまで近くで撮影していたんだが、気分が悪くなって・・・それで、ちょっと、休ませてもらおうと思って来たんだけど・・・弓野君が居ると思ったんだが・・・あぁ〜』
　石田はヨロヨロとして、ソファーに倒れ込んだ。
『だ、大丈夫ですか？すぐにお医者様を呼びますから・・・』
　無垢なmikuは、石田の下手な演技に気づかず、本気で心配したのだ。
（可愛い女だね・・・こういう無垢な処女は、滅多にいないね〜）
『いや、大丈夫だ・・・薬は持ってるから・・・水をもらえるかな？』
　石田はビタミン剤を取り出して、mikuから水を受け取って飲んだ。
『あぁ〜〜ぁ・・・少し、横にならせてくれる？mikuちゃん、明日、早いんだろ？
僕に構わず、早く寝て・・・僕は、ここで、少し休むから・・・はぁ〜ぁ・・・』
　そのまま、石田は眠ったフリをした。
　mikuは、何の疑念も持たず、戸締りをしてベッドに入った。
　弓野も忙しい時は、よくソファーで寝ていたし、父親ほど年の離れた石田にも、何ら疑う気持ちなど持たなかったのだ。
　mikuはハードなスケジュールで疲れていて、すぐに眠りについた。
『よく寝てるね・・・僕を警戒しない芸能人がいたとは・・・有り難い話しだね、フフフッ』
　mikuの掛け布団を剥ぎ、ネグリジェ姿のmikuを眺めた。
『評判どおり、透明感のある美少女だな・・・グラマーな肉の化け物女と違い、触れると壊れてしまいそうな華奢な身体・・・透き通った白い肌・・・あどけない口唇・・・』
　石田はmikuのネグリジェの裾を捲り、起こさないように脱がせた。
『ふぅ〜っ、よく寝てる・・・しかし、きれいな身体だな・・・』
　全裸のmikuを眺めて石田は興奮していた。
『珍しいね・・・オレがこんなに興奮するなんて・・・腕も脚も腰も細くて折れそうなのに、乳房はボリューム感あるなぁ・・・アソコは・・・まだ生えそろってないよ・・・幼い・・・妙な身体だな・・・少女と大人が混在しているような感じだ・・・はぁ、はぁ、はぁ〜』
　次第に呼吸が荒くなり、石田は自分の着ているものを脱ぎ捨て、mikuの両脚を割って、覆いかぶさるように乳房に吸い付いた。
『あっ、ぁああああ〜〜〜〜何、何してるの〜？！』
　石田は手でmikuの口を塞ぎ、脅すような口調で言い放った。
『騒ぐな！miku！オレは弓野に頼まれたんだ・・・お前を大人の女にしてくれ、と・・・』
『ど、どう言うこと？どうして、弓野さんが・・・？』
『簡単に言うと、mikuの処女を破って、オンナにしろ〜と言うことさ』
『ウソ！そんなこと・・・言うはずが無いわぁ〜』
『うるさい！黙れっ！声を出すと、そのきれいな顔をズタズタに切り裂くぞ！』
　mikuは石田の血が滲んだように赤くギラギラした目を見て、恐ろしくて声が出なくなった。
　石田は開いた無垢なワレメをしゃぶり、自分の昂ぶった肉棒を突き刺して思いを果たした。
『美味いな・・・こんな美味いのは、初めてだ〜うっおぉ〜〜〜締まるぅ〜〜〜・・・・・・』
『・・・・・・・・・』
『miku・・・これで、もう大人のオンナだ、フフフッ・・・窮屈で良かったぞ〜さすが処女だ。これからは、オレが感じるように調教してやるからな・・・今日は泣くだけ泣けばいい。透き通るような白い肌が濁ったかな〜？ハハハハ〜そうだ！もう、やっちまったから言うけど・・・弓野は何も知らないよ〜考えてみろ！あいつは、本当にオマエを大事にしてたから・・・このことを知ったら自殺するかもな〜』
　石田は自分の卑劣な行為を別の問題にすり替えてmikuを追い詰め、部屋を出て行った。
　mikuは枕に顔を埋め、声にならない声を出して泣き続けた。
　・・・・・・わたし、あなたに言うと本当にどうなるか分からないと思って・・・それで・・・」
「そうか・・・そうだったのか・・・ゴメンよ、miku・・・余計な心配させて・・・でも、身体は大丈夫か？・・・mikuのきれいな歌声が聴けて、それだけで僕は嬉しいよ」
「弓野さんの12弦の音色を聴いていたら・・・自然と声が出て・・・ありがとうございます」
「そうだ、miku！これからは、僕がいつもmikuのバックで12弦を弾くようにするから・・・そうすれば、いつも、守ってあげられる・・・だから、カンバックしよう！mikuもプロになったんだから・・・待ってるファンに聴かせてあげる義務があるよ〜」
「うん・・・弓野さんの言う通りにする。わたしも、みんなに聴いてほしかった・・・でも・・・石田さん・・・また・・・」
「大丈夫！帰ったら・・・僕が始末をつけるから・・・安心して！」
「わたし・・・本当は、弓野さん、あなたに・・・あげたかった・・・・・・」

　ふたりの息のあった12弦の音色と妖精の歌声は、伝説となった・・・。