９．フラワーデザイナー・・・美華


　美華の実家は古くからの花屋で、地域の冠婚葬祭は勿論、幅広く商いをしていた。
　幼い頃から数多くの花に囲まれ育った美華は、高校を卒業するとデザイン学校に進み、卒業と同時に、両親が小さな店を持たせてもらい、順風満帆の船出に思われた。
　だが、現実は厳しく、開店から半年もしないうちに支払いにも困るようになった。
「どうしよう・・・このままじゃ、何の為に店を開いたか分からないわ・・・親にも悪いし・・・」
　花屋という仕事は、表面はきれいな感じだが、朝の仕入れから始まって水仕事も大変で、手当てを忘れれば、すぐに手は荒れ、きつい仕事だった。

ほとほと困り果てていた時、ネットの情報が目に留まった。
『第10回フラワーアレンジメント競技会 応募者募集』
「これだわ〜！」
　美華はアレンジだけは小まめに勉強を続け、プレゼント用にはある程度の評判を得ていた。
「器も大事だから・・・何か考えないと・・・もし、賞が取れれば、一気に商売繁盛よ〜」
　楽天家の美華は、すぐに夢を見ては現実から遠のいていた。
「季節の花を用いてのテーマは・・・玄関を飾るアレンジ・・・か〜ふぅ〜〜ん・・・」
　早速、花を選定し、スケッチブックにデザインを描き始めた。
「やっぱり、器が問題ね・・・有名な陶芸家の器が使えれば、それだけでも高得点だけど・・・」
　街に出て陶器屋を歩いたが、美華の心を捉える器には出会わなかった。
「参ったわ・・・時間も無いのに・・・」
　歩き疲れて入った喫茶店で、窓際に置いてあったドライフラワーが目に入った。
「すみませ〜ん、ちょっとお聞きしたいんですが・・・この木は、誰が作ったのですか？」
「はい、オーナーの趣味でして・・・」
「今、オーナーはいらっしゃいますか？」
「えぇ・・・ちょっと、お待ちください」
　ウエイトレスは怪訝な顔をしてカウンターの中に入っていった。
（変だと思うわよね〜お茶を飲みに来て、何を聞くんだ・・・って、普通は思うわよね〜）
　まもなく、奥から短髪でスッキリした感じの男性が出てきた。
「何か？わたしに・・・」
（えっ？この人がオーナー・・・？若いわねぇ〜）
　美華は自分がまだ20歳の駆け出しであることを棚に上げ、20代に見えた男性を値踏みした。
「えぇ、わたし、この先で、フラワーショップを経営してるんですが・・・今度、アレンジに使う器を探していたんです」
（何だ？このガキは〜生意気な女だなぁ〜）
「それで・・・？」
「この木の器ですが・・・お貸し願いたいと思いまして・・・」
「それは、趣味で作ったもので、そういう器じゃないんですが・・・」
「そうですか・・・でも、わたし・・・ひと目で気に入っちゃったんです！お願いします！」
「困ったなぁ〜どういうものを活けるんですか？生花ですよね〜」
「デザインは・・・後で持ってきますから、是非、お願いします！」
「じゃあ、悪いけど・・・仕事中だから、閉店後に来てもらえますか？」
「あぁ、はいっ！」
　美華は嬉しくなって飛び出していった。

　その夜、美華はスケッチブックを片手に、喫茶店に向かった。
「すみませ〜ん・・・昼間の花屋ですが・・・」
「あぁ、ちょっと待ってて・・・片付けちゃうから・・・」
　ホールの灯りを落としてカウンターの片づけをしているようだった。
（喫茶店も大変よね・・・何か特徴が無いと、流行んないわね・・・）
「さて・・・えぇ〜〜と・・・お名前は？」
「失礼しました！森下 美香です」
「僕は榊 仁、それで・・・持ってきたの？」
「えぇ・・・これを活けようと思ってるんですが・・・」
　仁はデザインを見ながら考え込んだ顔をしていた。
「ふぅ〜〜ん・・・絵は上手だね〜何処に飾るのかな？」
「えぇ、テーマは玄関先・・・なんです」
「そうか・・・それで・・・ふぅ〜ん」
　美華は仁が何を考えているのか、まるで分からなかった。
「美華さんは、このデザインで、あの器で、何を出そうとしてるのかな？」
「えっ？何って・・・玄関に合うように・・・」
「君はバカか！何かも分からないままで競技会に出展するのか！？」
「・・・・・・・・・」
「止めたほうがいいな！帰りなさい〜君には無理だよ！頭の中が空洞じゃ〜仕方がないか」
「し、失礼でしょ！そこまで言われる覚えは無いわ！確かに・・・何も考えてなかったけど」
「心を活けなきゃ、花も器も可哀想だろ！詰まっているのは乳と尻だけで、頭は空っぽ・・・一度、素っ裸になって考えてみろ！」
「心を活ける・・・って〜？素人のあなたに何が分かるんですか？」
「御持て成しのこころは・・・喫茶も活花もアレンジも同じさ！玄関も・・・同じことだよ〜」
（そうか・・・それをテーマに込めていたんだ・・・わたし、何も分かってなかった・・・）
　美華は何を思ったか、いきなり衣服を脱ぎ始めた。
「お、おい！何をしてるんだ！止めろ！！」
　外からは中の様子が見えないから一安心だけど、仁は美華の行為に慌てふためいていた。
「ほら、これが、あなたの言う、詰まった身体よ！・・・お願いします〜教えてください！御持て成しのこころを・・・虚飾の身体じゃなく、真のこころを・・・」
「それで裸になったのか・・・やっぱり、バカだなぁ〜〜誰が裸になって頼めと言ったよ〜僕は、心の中を裸にして、考えろと言ったんだぞ〜」
「恥を捨ててお願いしてるんです。決意を感じてほしいんです！この競技会が勝負で・・・これで、賞を取れないと・・・お店、潰れちゃうから・・・必死なんです」
「必死だったら、その気持ちで考えてみろ！御持て成しのアレンジは・・・？」
　美華の若い身体は仁を充分刺激していたが、あえて無視して自分を保っていた。
（可愛い顔に似合わず、すげぇ〜グラマーだな・・・食べちゃうおうか・・・）
　20歳の瑞々しく輝くような肌で包まれた美華の身体は、少し赤みがさしていた。
　身体を提供して応援を得ようと思ったわけじゃないのだが、それでもいいと美華は思った。
「無心で必要以上に飾らず・・・邪魔にならない程度に存在感を出して・・・心を和ませる・・・」
「へぇ〜〜考える脳があるようだな・・・それじゃ、せっかく裸になったのなら・・・君自身を御持て成しのこころで、表現してみな〜」
　美華は椅子に座って目を閉じ、こころを鎮めて身体中を思い浮かぶ花で飾ってみた。
　仁はその様子を見ながら美香に近寄っていった。
「いいか・・・絶対に目を開けないで、言う通りにしてみろ！いいか？」
「えぇ・・・」
　仁は下半身裸になり、天井に向かって昂った肉棒を美華の両手の中に包ませた。
　美香には、それが何であるか分かったが、約束どおり、無言でジッとしていた。
「さぁ、今の気持ちで、目を閉じたまま、それを持て成してごらん〜」
　美華は仁の肉棒を優しく撫で、愛しいものを愛でる気持ちで丁寧に擦り始めた。
「うっ！・・・あぁ〜〜」
　やがて肉棒の先を口に含んで扱き始め、同時に敏感な袋を両手で揉むようにして愛撫した。
「あ、うっ、・・・・・・はぁ〜〜ぁ・・・それを、どうしたい・・・？」
「はい・・・これが悦ぶのなら・・・わたしの中に入れて、愛してあげたい・・・」
「そうか・・・それじゃあ、そうしてもらおうか・・・」
　美華は椅子から立って、代わりに仁を座らせ、突き出している肉棒の上に座るようにした。
「あぁ・・・あぁぁあああああ〜〜〜〜〜あぁ〜ぁ・・・」
　身体を上下して淫壷を締め、肉棒を扱き続けた。
「胸も・・・乳も・・・吸ってぇ〜揉んでぇ〜お願い・・・そうしたいでしょ〜だから・・・・・・」
　美華は自分が感じる為ではなく、仁が悦ぶことだと思って言った。
　仁は夢中で豊かな乳房をしゃぶり、揉みし抱き、若い美香の身体を堪能して果てた・・・。

　仁は美香の中に白濁の液を放出した後で、美香に告げた。
「どうだった？僕の目には、君が昼間とは別人のように映ったけど・・・君は？」
「えぇ・・・セックスをしたという感覚より、あなたの悦ぶ持て成しをしたと言う感じかしら」
「じゃあ、活けたい花のイメージが変わったろ〜？忘れないうちに花を持ってくるんだ」
　慌てて衣服を着け、駆け足で店を往復した。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「さぁ、息を整えて・・・気を鎮めて想いを描くんだ・・・」
　テーブルに木の根を焼いて磨きをかけた器が置かれていた。
「これは、僕が河口に出向いて持ってきた流木を、藁を燻らせて磨きをかけたんだ」
　美華はオアシスを埋め込み、邪魔にならない存在感を生花に託し、心を和ませるよう、無心に活けていた。
「ふぅ〜〜ぅ・・・これが、わたしのフラワーデザイナーとしての、プロとしての心よ！もう、賞を取れるか取れないかなんて関係ないの！ねぇ〜そうでしょ？」
「うん・・・そうだね〜素晴らしいアレンジだよ〜君の・・・美華の気持ちが見事に出てるよ」
「ありがとう・・・ねぇ〜今度は、わたしをイカせてぇ〜感じたいの！思い切り〜」
「いいよ！分かったよ〜感じて震えて、感覚を研ぎ澄ませて、自分を活けるんだ！」
　仁は美華のお尻を乱暴に剥き出しにし、バックから思い切り腰を打ちつけ肉棒を挿入した。
「あぁ〜あぁ〜あぅっ・・・はぁう、っ、あぁ・・・あぅ、あぅ、あぁっ・・・ぁああああっ・・・」
　両手をテーブルについて、美華は顔を上げて何度も吠え、身体中に快感を走らせた・・・。

　美香がアレンジの競技会で賞を取ったかどうか？
　それはともあれ、あの日以来、仁と交わった後の作品は、プロとしての出来栄えだった。
　あの日、美香が脱いで仁をその気にさせたのは・・・・・・？