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【 プロポーズ・前編 】
～ 昭和に散り、平成に甦った永遠の純愛 ～
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～あらすじ～
(二話完結)
昭和40年代の終わりごろ、京都府宮●市のある高校を出会いの舞台として、青春を全力で生きた仲良し四人組がいた。男子二人同士親友、女子二人同士親友という仲間である。当然、男女二組の恋人という展開に発展して、四人は強い絆で繋がっていた。大学も四人揃って、京都市内の大学に進んだ。そして、大いに青春を謳歌していた。
だが、そのうちの一人の娘の父親が経営する会社がオイルショックのあおりを受けて、多額の負債を背負い、その娘は父の会社を助ける形で望まない結婚をすることになった…。
大人の経済社会の犠牲となって、この美しい娘の純愛は昭和の時代に虚しく散ったのだ…。
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１．プロローグ（４人の親密な間がら）
温泉旅館の寝巻きを着る本庄弘美の、腰のあたりをしきりにまさぐる手があった。手つきが慣れているし、弘美はてっきり、恋人の厚かと思い"まさぐり"をそのまま許した。まさぐりの手は、弘美のショーツを膝まで降ろして、態勢を入れてペニスを弘美の膣に突き立ててきた。ペニスの主は泥酔しているのか、中々、弘美の膣口に正確に当らない…。しかし、何度かの挑戦の後、ようやくペニスは弘美の膣の中に収まった。弘美もかなり酔っているので、相手の動きに任せることにした。しかし、何かが違う…、と感じた弘美は枕もとのスタンドの豆電球を入れた。挿れてる男は、弘美の彼の厚でなくて、（弘美の親友）世良仁美の彼、高橋龍二であった…。弘美は驚いた。
「ちょっ、ちょっとおぉ～！」
挿れられたまま、弘美は叫んだ。叫びを聞いて、厚と仁美が目をコスリながら同時に起きた。
「はぁ？龍二！お前、何やってんねん！相手、間違うとるぞ、ボケが、ハハハ…」
厚は、泥酔から事の事態が理解できず、後頭部から布団に倒れて、再び眠った。
弘美は、今度は仁美に訴えた。
「仁美！ええんか？龍二にこんなことさしても！なぁ！なぁてっなぁ！」
「はあ？あんたはんやら何遊んでんのん！？あはははは…」
泥酔の仁美も状況が飲みこめず、笑って、やはり後頭部から倒れて、眠った…。
龍二は酔いながらも、したたかに弘美に抽送を続けた。友達甲斐がないというか泥酔の二人はほっておいて、弘美は龍二の相手をしなければならない。実は、弘美もまんざらではないのだ…、龍二に対しては。
「ちょっ、ちょとお～、龍二！私、仁美とちゃんうねんで！かまへんのんか？それでも？…」
龍二が初めて口を開いた。しかし、ロレツがまわっていない。
「かめへん、かめへん！かまへんやん！シロミちゃん」
「私、シロミちゃうよ！ひろみよ！弘美！この酔っぱらいが！」
既に龍二は、弘美の左の乳房を右手で揉み、右の乳首に吸いついていた。
「う～、気持ちええ、シロミちゃん！オッパイも張りあんやん！あははは…」
「ちょっ、ちょとお～、龍二！もう挿れられたから、かまへんけど、中に出さんといてや！なぁ、分かってるか？出して、妊娠したら仁美と分かれて結婚してもらうからな。なぁ、聞いてんのんか？」
「う、うん。聞いてるやん。気持ちええやん！えへへへ…」
弘美の話など理解できる脳の龍二ではなかった。射精感が高まると、腰のピッチを早めた。
「あっ、あかんよ龍二。あかんてぇ！龍二！中に出したら、絶対にあ…」
「うっ、シロミちぁ～ん、っっっ…」
龍二はＭ字開脚正上位の弘美の膣内で生で果てて、そのまま弘美に体重かけた。
弘美は、龍二をはらいどけて、テッシュペーパーで股間から滴る龍二の大量の精液を拭き取った。
「ったく！龍二のアホ！できたら(妊娠したら)責任取らすさかいな！」
ブツブツ言いながら、睡魔の限界がきて、泥酔の弘美も前頭部から布団に倒れ込んだ。
が、倒れこんだ場所が悪かった。弘美の彼、厚のミゾオチに、したたかに頭突きを食らわせて倒れこんだのだ。呼吸困難と激痛で飛び起きた厚は、腹の上で眠る弘美をはらいどけて、
「こらっ、弘美！痛いやないけ、カスが！っー痛っ…」「こらっ、弘美！」。
が、弘美は既に爆眠していた(笑)。
厚がふと、室内に目を配ると、龍二の彼女・仁美の寝巻きの内股がはだけていた…。仁美の内股が月明かりで妖艶に輝いていた。厚も、理性で考える前に、本能で無意識に、ショーツを脱がし、ペニスを挿入した。仁美はビックリして目をさました。
「ちょっと！厚！何やってんねん勝手にぃ！誰が、あんたに挿れてええ言うたぁ！アホ！あつかましいぃ！」
厚は、仁美に２０回程抽送して仁美にはらいどけられた。厚は、はらいどけ捨てられた格好でまたもや、眠りに入った。それから、３時頃まで全員爆睡していたが、誰となく起き始めて今度は間違えないで(笑)、それぞれの正規のパートナーと結合した…。そして、陽が昇り始める午前６時過ぎまで、お互いのパートナーと励んだ。いや、励んだのではなくて、本能のまんまにヤリまくったのだ(笑)。
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以上が、４人が大学受験を終えて、"Ｍ高校大親友の会"と勝手に命名して、親に内緒で、隣り県の城之崎温泉の旅館に一泊旅行した時の、食事～酒宴後の「笑える醜態」である。
あの時代の、大学受験は特定の学生を除いては推薦制度などない。高校の内申書もほぼ関係無い"筆記試験一発勝負"の、受験生にとっては、恐ろしく重圧のかかる世界だった。今の時代のように、受験の前年の夏頃には推薦がほぼ決まる生易しい世界では無かったのだ。
かくして、高校時代から愛し合い、かつ、男同士、女同士の親友の四人グループが形成されると、大学受験終了時には、こういう醜態が日本全国で展開された時代が、昭和４０年代の終わり頃であった。
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２．違う道を歩き始めた四人
四月から、四人は大学生だ。
この物語の主人公の一人、高橋龍二は、●命館大学。
もう一人の主人公、世良仁美は、京●女子大学。
松本厚は、京都●業大学。本庄弘美も、●命館大学。
実は、仁美も、厚も、●命館大学を受けたが落ちた。今の時代となっては、他の２校とも名門といわれているが、当時の京都●業大学、京●女子大学は大したことはなかった。４人はリーダー格である高橋龍二の音頭で、意味も無く●命館大学を選んだだけで、そこを落ちようが、他の大学の偏差値がどうあろうが、この物語には一切関係ない。要するに、高校生を持つ各家庭が色々経済状態、諸問題があるにも関わらず、四人とも同じ大学を目指した！というところに意義があり、この四人の深い々々真密度を表現できるだ…。
大学が違えども、龍二と仁美、厚と弘美の蜜月は余裕で一年を終えた。二年目の夏までも続いた。最初に陰りがみえたのは、厚と弘美。４人が４人とも同世代の同性よりルックスが優れていたから、弘美にしても、厚にしても、他の異性が放っておくわけがない。当人同士がそうでなくても、周りの意識が違うのである…。デートでなくても、お茶くらいは断われなくなる。お茶に付き合うと、食事やコンパが断われなくなる。世の中そういうふうにできているのだ。
「お互い、別れましょう」
こう宣言するのが、怖い二人は、自然消滅に近いような選択肢を自然と選ぶことになる。とうとう、厚と弘美は、その自然消滅というスタイルとなった。厚は、同じ大学の同級生と恋仲になり、肉体関係も持った。弘美も恋人ができたが、こちらは肉体関係は保留していた…。
が、龍二と仁美の蜜月は続いた。女子大とはいえ仁美ほどの美貌ならば、随分と他校の男が言い寄って来る。大学生だけではない。社会人のサラリーマンや妾探しの禿げオヤジまで言い寄ってきたのだ。龍二も、野性味あふれる肉体と性格、リーダーシップあふれる魅力が●命館大学の女子学生のみならず他校の女子学生や、ＯＬまで言い寄ってきたのだ。
それでも、龍二と仁美は、他の異性には目もくれなかった。
同棲には非常に厳しい時代だったから、住いは分けたが、●命館大学と京●女子大学のほぼ真中に位置する京都市の賀茂大橋あたりに、お互いが歩いて２分程のところにアパートを借りていた。昼といわず夜といわず、二人はデートを重ねた。このカップルの偉いところは、いや、これは龍二のリードであるが、極力昼間にセックスするのは避けた。「お天と様が出てはんのに他にもっとオモロイことあるやんか！」が(仁美の前での)龍二の口癖だ。
いや、龍二自身の本音は、若くて魅力的な仁美とのセックス以外に何がオモロイもんあるねん！である(笑)。だが、若い女をセックス漬けにしてしまうと人間的成長が止まる、というのも龍二の持論なのである。いずれにせよ、他のカップルが昼間っから、（どちらかの）アパートでヤリまくってる時に、龍二と仁美は社寺仏閣めぐりをしたり食べ歩きをしたり、日帰り小旅行に行ったりと、非常に情熱的かつ繊細に龍二は仁美をエスコートした。
仁美は学友とお茶をしていて、彼氏の話になると、他の女は口を揃えて「彼氏はセックスばっかり求めてくるねん」という。仁美の(龍二の)話をすると他の学友には本気で羨ましがれた。「仁美。ホンマのホンマに大切にされてるんやなあ…」と。それを聞くたんびに、仁美の龍二に対する尊敬と愛情のボルテージは高まった。
昼のセックスは敬遠する二人だったが、そのぶん、夜が当然のように濃厚となる。
龍二は、仁美を気遣って殆どコンドームを装着した。仁美に、
「龍二さん、仁美、今日大丈夫な日やから、中で出してもええのんよ」
とＯＫされても、膣内で射精する時は、龍二は自分の意志で必ずゴムを装着した。この時点までで龍二が仁美に膣内射精したのは、仁美の処女を奪った時と、前述の城之崎温泉のヤリまくり旅行くらいだ。勿論、龍二に膣内射精させたがる女は他にもいたが、相手が相当手馴れた年上のＯＬくらいでないと、大学に入ってからの龍二は経験がない。
「仁美。早く社会人になって甲斐性つけて、結婚して、いっぱいいっぱい仁美の中に出したるさかいな！今は、お互い我慢や！」
その分、仁美はフェラチオが巧くなった。いくら口に出されて飲んでも妊娠しないからだ。
龍二も仁美の膣に挿れる前に、仁美の口奉仕を毎回せがんだ…。ゴム装着の挿入前に、仁美のフェラチオで出して、飲ませるのが、二人のセックスの定番となった。
～～ある日の喫茶店～～
「なあ、弘美。厚はどうなん、セックス。上手なん？」
「そんなん、基準が分からんやん！笑。"した"ん、厚と龍二だけやし、今んとこ。仁美はどうなんよ、龍二」
弘美に聞かれると、前述のこどく、ありままを弘美に打ち明けた。
「龍二は、ちゃんと避妊してくれてるんや…」
「あははは・・、城之崎の時は大変やったね！私も三回ほど生で犯やられたし(笑)」
「あんたは、自分の彼氏やからかまへんやん！私は大変やってんから！笑」
「次の生理が来るまで生きた心地せんかったんやから！笑」
「そういえば、城之崎の時、厚も私の乗っかってきたのよ！モロ生で厚が腰振ってる時に目が覚めたんよ。あれ、私、起きんかったら、確実に中に出されてたよ！笑」
「今の厚はね、私がコンドームして！って頼まんと着けてくれへん。それに、生でしてても私が黙ってるとそのまま中で出しよるし。私のカラダのこと、なんとも、ちょっとも心配してへんと思うと時々悲しくなるんよ…」
高校時代から大学、社会人まで継続して付き合うカップルは十人十色なのだ。
つまり、二人の蜜月を継続させているのは、高校時代の"誓い"の呪縛でしているのではなく、現在進行形の"二人の努力"がそうさせているのだ…。現に、特段の努力もアイデアもない厚と弘美は自然消滅というコースを選択しつつある…。
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３．ああ無情・・・
大学三年に入ると、厚と弘美は、完全に別の道を歩み始めた。弘美もとうとう今の彼に肉体を許した。厚は、二人目の彼女と半同棲のような生活を始めた。
「ふ～ん、そうなんや…。なんや、寂しいなぁ。しゃーない話やけど…」
「今の彼ね、四回生で、けっこうイケてるねん♪」
「何が？」
「な、何がって…、イケズ！」
「笑！…俺は、何も言うてへんのに、イケズっちゅーことは…、巧いのんかセックスが？笑」
「アホめ！あんたみたいな鈍感な男と、よう続いとるわ。仁美は！」
「図星かよ！笑」
「まあ、なんでもええけど、妊娠だけは気いつけや！弘美の田舎のご両親が…」
「ド・アホ！妊娠気ぃ付けちゅー本人が、城之崎温泉で、どこぞの別嬪のお嬢様に、平気で中出ししたんや！？まさか、忘れてへんやろな！おいっ、中出し魔！」
「もう～、それを言うなってぇ。ただでさえ、何かの時には仁美に突っ付かれるんやから…」
「何がやのん？」
「弘美は、龍二と同じ大学で羨ましい。また、城之崎の時のようにムラムラして一発やったら承知せえへんからね！龍二は、弘美のこと好きなんやろ？タイプなんやろ？って」
「アハハハ…。笑っちゃたやん！じゃあ、仁美に今晩言うといてよ。龍二より数段イカシタ先輩と交際中！ってね！笑」
「へえへえ。わかりやした。だって、弘美。何で今晩、仁美と会うって分かるねん、え？」
「まあ、ええわ。あんたらが、いつ"会って"いつ"やって"も(笑)。私の知ったこっちゃないし！笑」
「アッタマくる、こと言う奴やなぁ(笑)。まあ、ええわ。せいぜい、イケテル先輩とセックス楽しんでくんなはれ！笑」
「ったく…、どっちがよ！アッタマくる！…そうそう。龍二。アンタこそ気を付けなよ、避妊！。私、おなかの大きいウエディングドレス姿の仁美なんか見たくないからね！」
「…」
「あっ、そうそう龍二っ！」
「な、なんやねん？まだなんかあんのんか？？」
「文学部文学科二回生Ｋ組の、ちょっとキュートでバストの大きな娘、知ってる？村田美帆っての」
「知らんけど、なんやねん？」
「龍二の事、好き、みたいやで。どーするぅ？」
「ど、どうもせんわえ！」
「はいよっ！そういうと思ったから断わっといたわ、先に。アハハ～だ！」
「お前、なんて言って、断わったんだよ？おいっ、弘美！」
「あいつ。セックスしたら避妊しないで、おかまいなしに勝手に中出ししよるから気い付けや、って(笑)」
「殺すゾ、弘美、待てぇ、こらっ！」
場所は、●命館大学の学食で、龍二と弘美の会話であった。
漫才のような二人の会話は双方のステディののろけ話に終始した。本当にのどかな時代だったのだ。ちなみに、この時代は性行為のことを、今の時代のようにＨ(エッチ)とは言わず、セックスと表現していた。
この四人の新しい幸福の、最初の綻びがまさか、一番蜜月だった龍二と仁美にやって来るとは四人とも夢にも思わなかっただろう。
ことの発端は、昨夏、夏休みに仁美が帰郷した時に起こった。
宮●市は、市の西方に日本三景の天●橋立を擁する。その天●橋立の地元観光協会は、毎年の夏祭りで、ミス天●橋立一名、準ミス天●橋立三名を選出する。その、地元では最高に栄誉ある"ミス天●橋立"になんと！、仁美が選ばれた！のだ。
余談ながら、本庄弘美も"準ミス"の次点まで入った美人だ。協会の規約で"ミス天●橋立"は栄誉と引換えに、地元の行事に半強制的に協力しなければならない。（日当は支給されるが）
仁美は、そんな"タイトル(冠)"なんて全然欲しいとも思わない。辞退したら、地元行事には協力しなくて良いからせめて"準ミス"として残ってくれ、と協会に頼まれて"準ミス天●橋立"として残った。（準ミスの最高得点者が繰り上げて、"ミス"になった）
そして…。
その年の四人の夏休みに入る直前、
仁美の父が経営する、世良化学工業が、オイルショックのあおりを受けて多額の負債を背負った。黙って資金手当てをしないで放置していては、１０月には不渡り手形を出して世良化学工業は倒産するハメになる…。
だが、なんと、その時にちょうど、提携先の(資金潤沢な)会社の社長が、自分の息子に、"準ミス天●橋立"である仁美の嫁入りを条件に、(負債額以上の)無償資金援助を申し出てきたのだ…。仁美の美貌を見込んだ結婚話だったわけである。
仁美の父・良雄は「とんでもない！断わる」と一蹴したが、先方の会社社長の秘書が、仁美に直接この話を持ってきたのだ…。「お父上と、㈱世良化学工業を救ってください」と。
先方の秘書から話を聞いた仁美は、龍二を拒絶して自分のアパートに鍵をかけ、弘美の部屋に夢遊病者のように力なく座っていた。そして、三日三晩泣きじゃくった。事情を聞いた弘美もつられて泣きに泣いた。
四日目の朝、弘美から尋ねた…。
「聞きにくいんねんけどな、仁美。どうすんのん…」
仁美は、カラ元気ながら、小声で笑顔で答えた。
「うん。先方の会社の息子の嫁になるわ。それで、父が助かるんやったら…。龍二さんほどの人やったら、私なんかおらんでも、なんぼでもええ人見つかる筈やし。なんせ、まだお互い学生やしね…。しゃーないわ…」
弘美は泣き出したい心を堪えて、笑顔で答えた。
「仁美、偉い女やな！あんたはんわ！龍二さんもきっと分かってくれはる筈やで…」
龍二が分かってくれる"筈が無い"のは、弘美も十分承知の上で、仁美に同調した。
仁美には、もう笑顔も出す元気も無かった。またもや、涙が溢れていた。
「弘美、あんた、わたしの一番の親友やろ？頼まれて欲しいねん…」
「ええよ、かまへんで。なんでも、なんぼでも頼まれたげるで…」
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「わたし、龍二さんに会って話す勇気ない。会ったら、三日三晩泣いてやっとのことでした決心が、龍二さんの顔を見た瞬間に粉々に砕け散って、二人でどこかへ逃亡してしまうと思うの…」
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それを聞いた弘美は、泣き崩れる仁美を抱きしめて、肩と頭を撫でて、弘美も泣きながら「わかった、わかった、大丈夫やで」と何度も返事した…。
仁美は、先方の会社社長が用意した車の後部座席に座って宮津に一人帰った。
（アパートの荷物は後日、家族のものが整理に来る）
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弘美は、こんな話を先延ばしできる性格ではない。
その日のうちに、弘美のアパートに龍二を呼んだ。
弘美から、詳細を聞き終えると、意外にも龍二は笑顔だった。
「弘美、ウイスキー買うて来てくれ！安いのんでええさかい、二瓶。残った金でビールもな」
弘美は黙って酒屋に向った。酒を買って部屋に戻ると、龍二は大の字に寝て天井を見上げて、大泣きに泣いていた…。涙は、龍二の頬を伝って畳を濡らしていた。それを見て、呆然と立つ弘美に気付いた龍二は、弘美を一喝した！
「こらっ、弘美、気ぃー利かんやっちゃのお！さっさと、ロック作って乾杯の仕度せいや！」
「…、な・な・何に？…」
「仲良し四人組の、最初の既婚者誕生のお祝い、に決まっとるやないけ！アホ」
「そ、そやね！そういうことやね！じゃあ乾杯しよ…」
「乾杯！」
「あんな、龍二。私を一喝したのは格好良かったけど、せめて泣きやんでからにして～な(笑)」
「うるさい、バカ(笑)」
（弘美から）電話連絡を受けた厚も現れた。ウイスキーを二瓶持って…。
三人とものロックグラスには一晩中、それぞれの涙が滴り続けた…。
大人の経済社会に翻弄される形で、昭和の終わりの頃、龍二と仁美の純愛は無惨にも散った…。
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５．飛躍の人達と終幕の人
時は早く流れ、龍二、弘美、厚はそれぞれの希望の企業に進みそれなりに活躍していた。仲良し仲間の仁美は一足早く、しかも、望まぬ結婚をして社会で揉まれているのだ。
そのぶんを、のこりの三人で励まし合って、成長した。
２８歳の春に、厚が結婚した。職場結婚で５歳年下の妻である。
龍二も、弘美も小さなレベルの恋愛をしては別れ、とうとう２８歳になっていた。
厚の結婚披露宴で、席隣りになった龍二と弘美は、こそこそ話を始めた…。
「弘美。厚、あんなに誉められとるけど、そんなえぇ男やったんか？笑」
「まあね。こういう場ではしゃーないやん、誉められんのんわ(笑)」
「で、どうやってん？厚とのセックスは？笑」
「アホっ！不謹慎な！笑」
「で。弘美、今、彼氏おるのんか？」
「龍二はどないやのん？おるのんかいな？」
「ああ。今、俺の隣りに座っとる美女に交際、申し込も、思うとるねん」
「ちぇっ！いつも、自分だけカッコ付けやがって…！素直に言え、謙虚に言え！」
龍二は爆笑しそうなのを堪えた。
「弘美！いや、弘美さん。あなたが大好きです。僕と結婚を前提に付き合って下さい」
声が大きいので、周りが注目した。
「アホ！そないな大きい声で言う奴がおるか！ホンマにアホやなぁ～」
二人に注目した招待客らからクスクス笑いが漏れた…。
弘美も、龍二も猫背になって顔を下に向けて、笑顔で「大好き」と語りかけていた…。
その夜、もう大人の二人は、当然ホテルへ向った。
「あい変らずええカラダしてるね！弘美は…」
「ありがとう…。龍二、お願いがあるの。ベッドの中ではお互い、今日は茶化すのはや
めましょう！せっかくやから、感じ合いたいやん？ね」
「わかった。承知」
「それにしても、城之崎で弘美を抱いてから10年か…、感無量やな…」
「わたしも…」
龍二は前戯なしに弘美に挿入した。勿論、生で。ほどなく龍二に射精感がやって来た…。
「ええのんよな？弘美の中に出して」
「うん、龍二のいっぱいちょうだい」
このパターンを朝までに５回続けた二人であった。
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それから、更に５年の月日が流れて、昭和天皇が崩御され平成の時代になっていた。
龍二と弘美は正式に婚約して結納も済ませた。
もうお互い３３歳だ。３４歳になる前に披露宴をしようと四ケ月後の１１月に、京都三条蹴上前の有名なホテルを披露宴会場に選んだ。
今度は、仁美を弘美の友人として招待できる…。
弘美も、龍二も、厚も、仁美との再会を楽しみにしていた。
弘美は、電話や手紙で仁美との交流を欠かせたことが無い。が、この三ヶ月程は自分の多忙もあって、連絡はしてなかった。勿論、披露宴の招待状は一番に出した。ところが招待状の返事が仁美だけ返ってこないのだ…。
おかしいと思った弘美は、仁美の家（神戸の芦屋の豪邸）を一人で訪ねた。
仁美はいなかった。
一年前、弘美が遊びにに来た時も仁美は不在だった。だが、それは執事の高橋に「若奥様は只今、お買い物中です」と言われなくても、家中に、仁美が直ぐにでも帰ってくる"気配""空気"があった。仁美が物理的に今、不在でも仁美の明るく華やいだ"気配"、"空気"が家中に満ちていたのだ。
だが、弘美は今日、それを感じ取ることができない…。
高橋が説明を始めた…。
「若奥様は、半年程前に体調を崩されて、一度、入院なさいました。精密検査の結果、末期の肝臓癌であることが分かりました…」
「は、はあ？仁美はまだ３３歳よ！まだ若いでしょう…、そ、そんな病気なる筈ないやん」
「き、きっと何かの間違いよ…！」
動転した弘美は、目上の高橋に対してタメ語で喋っていた。
執事は続けた。
「その時点で余命三ヶ月なのですから、いま元気でいらっしゃるのは、日本一の名医のオペ(執刀)によるものだとの、評判です」
「あっ、えっ、じゃあ、仁美は元気なのね？回復してるのね？治ったのね？」
「い、いいえ。その段階からは９ケ月の余命ということです。ですから、現段階で、あと余命３ケ月ということです…」
ここまで言うと、執事は眼鏡の下にハンカチ指し入れて涙を拭いた。
「そ、そんなぁ、惨い…、惨過ぎるわぁ～！仁美が可哀想そ過ぎる、なんであの子ばっかり、不幸になるのぉ…！」
「仁美ぃーーー！」
弘美は、応接室のテーブルに泣き崩れた。執事は、弘美の言う不幸の意味(寺崎家への嫁入り)を知っていた。知っていたからこそ、仁美を大切にしてきた。今、仁美の親友という弘美にも同情を禁じえない…。執事は２度目の涙を拭って、弘美に話かけた。
「本庄様。今から、神戸市内の若奥様がいらっしゃる病院へお見舞いに行きます。本庄様さえ、お宜しければ、ご一緒してくださいますか？」
「も、勿論です。会わせて下さい。お見舞いさせて下さい」
～病院への車中で執事は色々話した～
仁美奥様は、ことあるごとに、本庄様のお話をされていました。
学生時代の４人の仲間は最高だった。
高校時代の初恋の人（龍二のこと）の顔がみたい。
その初恋の人を本庄様に獲られやしないか、と(学生時代は)毎日ハラハラされてました。
全て、本当に楽しそうに、お話をされるんです…。
聞かされていた弘美の涙を拭くハンカチは、もう水分の吸収力は無かった。汗取り用のハンドタオルを目と鼻にあてて、話を聞いた。
弘美は、色々考えて耐えられなくなった。
余命３ケ月の人間にどうして、４ケ月後の披露宴、しかも、これから幸せになる二人の宴の話ができようか…。しかも、仁美は龍二のことを今だに愛しているのだ…。望まぬ結婚に耐えての龍二への愛なのだから、今まで独身でちゃらちゃらしていた自分の龍二への愛が薄っぺらに感じてきて仕方無かった…。
自分が着るウェディングドレスは仁美が着るべきではないか…。
時間が有り余る人間と、確実に分単位で消滅する人間。
幸せになる人間と、死を待つ人間。
どれもこれも、仲良し４人組のうちの出来事なのだ…。
弘美の頭は混乱を極めた・・・。
「高橋さん。ここで、止めて下さい。私、今日のところは仁美に会う勇気がありません。近々、必ず、高橋さんを訪ねてまいりますので、その時はどうぞ宜しくお願いします…」
ルームミラー越しの高橋は笑顔だった、
「ええ。そうおっしゃると思いました。若奥様は今、余命を全力でまっとうされてます。本庄様やあと二人のお仲間が気合を入れなおして頂かないと、困ります。それに…」
「それに、なんですか？」
「そんな、泣き虫女に、私の大切な大切な初恋の人はあげれへん！て怒ってらっしゃるかも、ですよ(笑)」
「はい。反省します。次は涙を絶対にみせません。仁美に、笑顔で、龍二さんを下さいと挨拶に行きます…」
弘美は、阪急神戸駅で、龍二と厚に、「大変な話があるの、私のアパートに来て」と電話を入れた。酒はいるか？と両名とも弘美に尋ねた。「アルコールがないと辛い話かもよ」と話して公衆電話を切った。奇遇にも、仁美が結婚のために帰った７月の同じ日で、あのウイスキーを三人で飲んで泣き明かした日から丸１１年の歳月が流れていた…。
前回の場合は、それでも、まだイチルの希望もあった。仁美の夫が仁美を幸福にしてくれて、龍二も素敵な新しいパートナーを見つけるかも知れないという…。
だが、今回の話には、希望の光は何も無かった。
絶望的に、情け容赦なく、残された仁美の時間は削り取られていくのだ。
ここで、三人が、３３歳までどういう人生を生きてきたか、人間的成長度合いが、、この悲しい現実にどう対処するかが試されるのである。三人は、３時間程泣いて、後は涙を堪えて、仁美の為に何ができるであろうか？を飲酒も程々にして、徹夜で話しあったのだ…。
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