その３　餓鬼の群れ

　さくらはビニールシートで囲われた小屋で目を覚ました。
　なにか薬を飲まされたらしく、手足の自由が効かない。頭はボーとしている。
　すでに上着とスカートは脱がされていて、タンクトップにパンティの姿になっている。

「ハッ、ハァ、あぁ・・すげぇ、ハァ、ハァ、んんぅ・・うぅ・・たまらねぇ」
　浮浪者がさくらの顔を一心不乱に舐めている。
　ふー、ふーという浮浪者の荒い鼻息が、さくらの顔にあたる。
　仰向けに横たわったさくらの上に、覆いかぶさるように浮浪者が抱きつき、キスをしながら身体中を撫でまわしていた。
　凄い匂いが鼻をつく。
　髪からはカビの臭い、服からはどぶの臭い、口と舌からは食べ物の腐った臭いがする。
　今にも吐きそうになるのを、目をつぶり、息を止めて必死にこらえる。
　さくらの鼻は悪臭のために赤く染まり、眼からは涙が流れていた。

　浮浪者の股間がさくらの太ももにあたっていた。
　何十年も女に触れたことがなかったペニスが、若い女の刺激に堪えられずに、もうズボンの中へ射精している。
　垢と脂で黒く変色したベトベトの指が、さくらの引き締まったウェストラインから、たくし上げられたタンクトップの下の、ピンク色の乳首の辺りを撫でまわしている。

　数時間前、さくらは初対面の男数人と合コンをしていた。
　酒を数杯飲んだところまでは覚えているが、その後の記憶が無い。
　記憶を辿ってみると、途中トイレに立ったところまでは覚えている。
　その後、席に戻り酒を一杯飲んだ。その後のことが思い出せない。

　さくらは、男たちに薬を盛られ、イタズラをされたあげく、裏の路地に放置されたのだった。
　それから、そこを通りかかった浮浪者に金品を奪われ、この小屋に連れ込まれた。

「お願い・・助けて。」渇いた喉で絞り出すようにさくらが言った。
「悪い人じゃないんでしょう？・・お願い。」
　さくらのこの言葉に、さくらの胸に顔を埋めていた浮浪者の動きが一瞬止る。
「人のいるところへ運んでくれるだけでいいんです。お願いします。」
　浮浪者が顔を上げ、さくらの顔を見る。
「後で、お礼はさせていただきます。どうか助けてください。」と、続けてさくらが哀願する。
「ほんとうか？」浮浪者がはじめて口をひらいた。
「ええ、道に倒れていた私を助けてくれて、ほんとうにありがとうございます。家に帰ったら、必ずお礼をさせていただきます。」
　なんとかここを抜け出したいさくらは、言葉を選び、必死になって頼んだ。
「わかった。ちょっと待ってろ。」
　意外と簡単に意思を変えた浮浪者は、名残惜しそうにさくらの身体を離れると、小屋の奥からさくらの上着と靴を持ってきた。
　ほっと胸を撫でおろす、さくら。
　心の中では、（「よかった。うまくいった。」）と思っていた。

　と、そこに、突然何人もの男が欲望に眼をギラつかせながら、小屋の中に入ってきた。
　近くにたむろする浮浪者たちが、若い女の話し声と、その誘うような甘い匂いを嗅ぎつけたのだ。
　半裸になった、さくらの美しい肢体をみつけた男たちは、口々に「うおおぉーーっ！」と奇声を発しながらさくらに突進する。
　そのまま最初の男を突き飛ばし、各々がさくらの口、手、股間へ殺到した。
「きゃあぁーーーっ！、いやぁーーっ！、むぐうんっ、うぐんっ、んぐぐっ、んんーーっ！」
　さくらの着ていた服が、切れ切れの小片となって宙を舞う。
　すぐに、さくらの悲鳴は聞こえなくなり、その身体は、ピラニアに食い荒らされる肉塊の様に、群がる男たちの体に隠れて見えなくなった。
　時々、先を丸めたさくらのつま先が、蠢き合う男たちの身体の間から、上向きに飛び出す。
　その後も、男たちの歓声を聞きつけた他の浮浪者が、次々に小屋に入ってくる。
　今や、足の踏み場も無くなった小屋の中で、餓鬼と化した無数の男たちが、夢にまで見た若い女の体を求めて蠢いていた。

　服を脱ぎ、垢だらけの肌をさくらの白い素肌に重ねた男たちは、興奮のあまり、それだけで射精してしまう。
　男たちの「ハァ、ハァ、うっ！、うぉおっーーーっ」という射精の時の雄叫びと、「おおぉ・・ああ・・気持ちいい・・死にそうだ。」という歓喜の声は小屋の外まで響いていた。
　さくらの身体は、抱きついた男たちのペニスから噴出す精液で、瞬く間にベトベトになり、薄暗い小屋の中には、男たちの生臭い精液の匂いが充満してゆく。

　しばらくすると、さくらは無理やり口を開けさせられ、何年も洗ったことがない、恥垢まみれのペニスを同時に何本も口の中へ押し込まれた。
　頬の内側を使って快感を得ようと、汚れたペニスが口の中を暴れ回る。
　胸や腋の下を使って射精をしようと、ペニスを挟み、必死に腰を振っている男もいる。
　男たちは、もう見ることが無いと思っていた女の性器を見たことで異常に興奮し、膣やアナルへの挿入と射精を、狂ったように繰り返していた。
　もう、さくらの下半身は、溢れ出た黄色い精液でどろどろになってる。
　どの男も溜まりに溜まった精液を、女の身体に射精する快感に体を痙攣させ、雄叫びをあげていた。

　男たちの精液が出し尽くされ、そのペニスが勃たなくなるまで、この地獄は後何時間も続くだろう。