２　女性ロボットの官能度

「うっうううぅぅ」
　立ったまま、腰に装填した張形（はりがた）を、リューイによってフェラチオされているルナが、情けなさそうな声を発している。
　一方、そんな馬鹿なことがあるものかと、三郎は心の中で叫んでいる。
　所詮、人為的に装填された張形（はりがた）ではないか。それなのに、大脳まで感じ、海綿体に血液が集まり、膨張、爆発という過程を経て、射精という現象につながっていくわけがないと三郎は思っているのだ。
　しかし、ルナは、立ったまま、とても気持ちが良さそうな顔をして、ぐぐーっと前の腰をリューイの顔の方に押しつけている。
　そして、リューイといえば、まるでシラウオのような、白くほっそりとした指で輪をつくり、その輪を、ルナの円筒状のものにぴったりと上から宛て嵌め、シコシコと上から下へ、下から上へと、しごきはじめている。
「あっあっあっ、たまんないわ。いやいや、そんなに強くしごいちゃ、いや〜ん」
　男役のルナの声だ。
「じゃ、やめる？」
　と、女役のリューイのいじわるそうな声が聞こえる。
「ウッフ〜ン、いやいや、気持ち、よすぎぃるぅぅぅ――」
「じゃ　やめる？」
「うん、ばかばか」
「あらっ、じゃ、もっと早くしてあげましょうね」
　指の上下動のスピードがアップし、天を仰いでいるルナの亀頭部の筋肉やその下にくっついた包皮が波打っている。
「いや〜ん、もぉー。うううっ、たまらないわ！」
　ルナがあえぐ。
「もうだめっ、もう、出る、出ちゃう、リューイ、だめだめっ！」
　ルナが天を仰ぎ、口から涎を垂らす。
　そのとき、リューイが、淫具の根元をギュッとつかんだ。
「あっ、助かった！」
　ルナの、ほっとしたような声が、アンプを通して三郎の耳に届いた。
「あっ、リューイ、ちょうど１５分、経ったわ。交代よ」
　ルナが、ちょっと笑った。

　ルナが、リューイを抱えて、ベッドに寝かせつけている。
　そして、リューイの足を開かせ、その股間に、顔をつけようとしている。
　三郎は急いで、カメラ位置を動かしていた。
　ルナが、リューイの広げた足を曲げさせている。その内腿の辺りに、ルナがくちびるを這わせていた。
「ウ〜ン、ルナのいじわるぅ――」
「さっきのお返しよ」
「はやく、はやく」
　しかし、ルナは、恥丘の草叢を手で愛撫しながら、内腿へのくちづけを止めない。
　リューイの腰がビックンと跳ね上がる。
　どうも、ルナの指先が、リューイの恥毛の生え際を触ったらしい。
　リューイの恥毛は、黒い色をしているのだが、毛の先が朝露でも降りたように光っていて、三郎はその美しさに見惚れていた。
　これはロボットではない、本物の人間の女性ではないのかと、三郎は思う。
　人間が、こうも精巧に、女陰という性感帯をつくり、女陰と大脳とをシナプス（神経細胞相互間の接続支）でつなげることができるはずがない。
　三郎は、冷静に、コントローラーを制御しようと思った。
　と、ルナのくちびるが、とうとう、リューイの大陰唇の土手を捉えていた。
　カメラを近づける。
　唇で、ルナが、リューイの大陰唇をなぞっていた。
「ハァッ　ア〜ン、いいわ、ルナ、いいわ、いいわよ」
　三郎にはよく見えない。ルナがくちびるを、大陰唇に当てていることしか。
「あっあああー、いいわ、いいわ」
　リューイの悩ましい声がする。
　たぶん、ルナが、くちびるだけでなく、舌も使いながら、リューイの土手を愛撫しているにちがいない。
　ルナが、リューイの土手（大陰唇）から顔を離した。
　そして、大きく口から舌を出し、ペロリと、リューイの土手を舐め上げた。
「アーン、バカバカ、ルナのばかァ〜ん！」
　そう言いながらも、リューイは、腰を上に持ち上げていた。
　ルナは、まだ、恥毛の生え際を指でなぞっている。そして、恥毛の下側の大陰唇を親指の腹でさすった。
　そして、ルナは、リューイの大陰唇に、再び自分のくちびるをつけた。
「ハァ、ウン、イっイーっ」
　リューイのおなかの筋肉が波打っている。
　ルナは、さらにリューイの、折り曲げた両足を広げている。
「リューイ、あなた、濡れてきたわよ」
「ばぁっ、かぁ―――」
　ルナは、大陰唇を口でなぞるのをやめて、小陰唇に、舌を這わせていた。
　どうも、このテレビに電磁波を送っているカメラアイは、優れものらしいと三郎は思う。フラッシュを焚いているわけでもなく、ライトをつけていないにもかかわらず、リューイの小陰唇の濡れ具合すら捉えているからだ。
　ルイの舌が、右側の小陰唇の内側をなぞり、上へ上へと登って行く。と、突端に辿り着く。その突端には、突起物が見られた。
　ルイの舌が、その突起物であるクリトリスを舐めはじめた。
「あっ！、アンアン、あっあああっ――――」
　リューイが喘ぐ。
　ルイは、それに構わず、今度は、左側の小陰唇の内側を、舌先でなぞっていた。
「ア〜ン、いやぁーっン！」
　何かをしているのかと、三郎は画面の方に身を乗り出す。
　ルイは、からだを横にねじまげているのだ。
　そして、ルイは、縦に裂けた小陰唇を、横から、なぞろうとしているみたいだった。
　三郎は、カメラ操作のコントローラーをいじる。
　わかった。何の事はない。ルイは、リューイの縦に割れた小陰唇を、ハーモニカに見立て、自分のくちびるではさみ、そのままくちびるを横滑りさせているのだ。
「あっあ――アッフーン、いいわ、いいわ、フンフン、ハァハァハァ」
　ルナは、リューイの片足を上げながら、リューイの股間を大きく広げつつ、自分のからだを横にして、顔を左右に振りながらハーモニカを吹き続けていた。
「アッ、アッ、だめだめ、そんなことぉぉぉ〜〜〜」
　リューイの悩ましい声に、三郎の息が止まる。
　しかし、カメラ操作の手は自然に動いていた。
　ルナは、小陰唇の内側を舌先でなぞりながら、指で、リューイの肛門を愛撫していたのだ。
　リューイの肛門（アヌス）は、ピンク色で、しかも、もみじ葉のようにきれいな形をしていた。そのきれいな紅葉の、真ン中の穴に、ルイは、小指を突っ込もうとしている。
「クニュ」とルナの小指は入り、「アン！」とリューイが声を上げた。
　そして、ルナは、今度は、リューイの小さな紅葉の中心部に、ひとさし指を差し込む。
「あれっー、フンギャ　フンギャ、いや〜ン」
　それでも、ルナは、もみじ葉の穴にひとさし指の出し入れをしていた。
　そして、ルナは、それに、飽きてきたらしい。
　ルナはさらに、顔をリューイの股間にもぐりこませていた。
「クニュクニュ、グチャグチャ」
　とても卑猥な音がして、それにつられて、三郎の遠隔操作の手が動く。
　リューイの小陰唇の谷間に、ほんの小さな穴が。たぶん、それは尿道口にちがいない。
　その尿道口に、ルナの丸めた舌先が、接近しつつある。
「アッ、ウン、漏れそう、ちびっちゃいそぉー」
　しかし、ルナは、その尿道口をチロチロと舌先で攻撃している。
　しかも、ルナは口をすぼめながら、リューイの尿道口の筋肉を吸い上げているような。
「アンアン、いじわるぅぅぅ、ハァウーン、ダメダメ」
　リューイが足を閉じ、両足で、ルナの頭を挟みつけた。
　と、ルナは、手を内腿にかけ、乱暴に、リューイの足を開かせている。
「リューイ、おとなしくしなさい！」
　そう言うと、ルナは、小陰唇の谷間にある、もうひとつの、尿道口よりは大きめの穴に、くちびるを寄せていた。
「ああああ、アン、だめだめ！」
　ルナの口がすぼめられ、その口が、リューイの膣口の肉片を、吸い込む。
「アッ、イッイーッ」
　リューイのお尻が跳ね上がる。
　そして、ついに、ルナは、舌先を、リューイの膣口に差し込んだ。
「アン、イイイーッ」
　ルナは、細めて丸くした舌を膣の中で、出し入れしている。
　三郎は、カメラを固定し、クローズアップした。
　ルナの舌先の動きが微妙なのだ。
　ルナは舌を丸め、伸び縮みをさせながら、出し入れを繰り返している。しかも、陰茎の出し入れよりそのスピードは速いように思えた。
　リューイの女陰の構造に、未来のＳＥたちは、相当の力を注いだらしい。淫水が溢れ、ルナのくちびるにまで垂れ伝っている。ルナはその淫水をすすり、ときどきはそれをぐっと飲み干しながら舌の差し入れを続ける。
「アンアン、イクイク、イッチャッうぅ―――！」
　大陰唇、小陰唇の肉の表皮が、痙攣したように波打ち、膣口からは白い淫水が、まるで泉から湯水がこんこんと湧くように、ジクジクとにじみ出ていた。
　三郎は、信じられないものでも見たように、頭をしきりに左右に振っていた。
　ルナはロボットかもしれない。しかし、リューイはロボットではないかもしれないと思う。
　確かに、リューイの女陰部のひだ肉は波打っているのだ。そのような微妙な動きを、人間がプログラミングできるのだろうか。
　もし、そんなことが可能だとしたら、人間の女性は要らなくなるのではないか？。
　人工精子、人工卵子、人工授精、人工子宮、人工出産、人工育児、そんな言葉が、三郎の頭の中を飛び交っていた。

「リューイ、イっちゃったのね」
　ルナのやさしい声がした。
　三郎は、コントローラーで、カメラアングルを上げていた。
　ルナは、横抱えに、リューイの頭を抱えている。
「ごめんなさい、ルナ。プログラムどおりじゃなくて」
「どうしたのかな？、リューイが前戯の段階だけで、イっちゃうなんて」
「でも、大丈夫よ。まだ、元気、あるから」
「そぅお〜。じゃ、プログラム通り、そろそろ本戯に移ってもいい？」
「いいわよ」

　リューイは枕に頭を置きながら、仰向けになる。
　ルナは、リューイの足を広げ、その間に下半身を入れた。
　ルナの裸身の真ン中に、腰につけた張形があって、何とも色っぽい。
　ルナは、リューイの足を膝のところで折り曲げさせ、リューイの股間に身を寄せる。
　ルナは、リューイのクリトリスを親指で揉んでいた。
　そして、中指をリューイの膣の中に押し沈めている。淫水が漏れ出でていた。
　黒光りした張形の先端から透明な液がしたたり出ている。
　たかだか、人工ペニスではないかと、三郎は思う。そこまでこだわるのか、と思うのだ。
　しかし、未来のＳＥ（システム・エンジニア）たちは、本物のペニスのように工夫を施したのかもしれない。それは、ある意味、男性と女性のＳＥたちのあくなき欲望の追求の賜物かもしれないと思った。

　ルナはゆっくりと両の手で、大きな土手（大陰唇）を押し広げる。
　そして、両の指先で、濡れに濡れそぼったリューイの小陰唇をグッと押し広げる。
　ルナは上半身を起こしつつ、スーッと立ち上げるように腰を上げ、黒光りした張形に指を添えて、リューイの割れ目に宛てる。
　ルナが腰を前に入れる。やがて、その張形が、徐々に、リューイの膣の中に埋まっていく。いや、なにやらアワビが小魚を頭から食い込むようでもあった。
「ハァ、グゥーン！」
　リューイが身をよじり、胸を反らしながら、白い咽喉元を見せてあえぐ。
　遠隔操作をしている三郎の額に汗が滲んでいる。
　ルナが、腰につけた張形で、リューイを攻めている図は、まるで、前に新年会で会社の上司のうちに行き、見せてもらった浮世絵の「本手がた」みたいだった。
　そのときの上司の解説によれば、「本手がた」とは、江戸期、お城勤めの奥女中の中・下臈たちが男役になり、腰に張形を結びつけて相手役の上臈に奉仕することを言ったらしい。
　時代を超えて、人間のやることは同じだと、三郎は思う。

「あああ、あっふーん　フンフン、アアアー、アンアン」
　三郎は、リューイのあえぎ声につられ、リューイの顔を見ていた。
　その顔は悩ましそうでもあり、そうでもないような。人間のモノマネなのか、それとも本心からなのか、それが三郎にはわからない。
「リューイ、いい？」
「アンアン、いいわ、いいわ。もっと動かして」
「よぉーし、もっといくぞ」
　ルナの、おとこみたいな言葉使いが、三郎にはちょっと可笑しかった。
　ルナが、上体を起こし、リューイの折り曲げられた両足を両脇に抱え込むようにしながら、腰を前後に動かしつつ、抜き差ししている。
　そして、時に、片手をリューイの足からはずして、リューイのクリトリスを揉んでいる。
　激しい動きにもかかわらず、ルナの腰に装填された淫具が抜け落ちることがない。
　やはり、淫具の長さなのであろうか。
　ものの本によれば、黒人男性の場合はともかく、日本人男性の勃起時の長さは、平均１２センチなのだ。それがルナの持ち物は１８センチなのだ。その長い分、激しいピストン運動を繰り返していても、膣から抜け落ちることがないのだろう。
　そして、その長い物干し竿を、まるで、佐々木小次郎のようにあやつるルナの腰には、相当に柔軟かつ強靭な筋肉人工細胞が埋め込まれているにちがいない。
「ウウウ、ハアハア、もっと、もっとよ。もっと奥に突っ込んでぇぇ」
「そらそら、どうだ、どうだ！」
　男役のルナが、男言葉を発しながら、グッと腰を押しつけ、グリグリと腰を回している。
「あああーっ、いいわいいわ、もう死んでもいいわ、アンアン」
　リューイが腰を思い切り、上に跳ね上げたような。
「ああっ、折れる、折れる、そんなにしちゃ、折れちゃうよ」
　しかし、そういいながら、ルナのものは、折れたようにも見えず、しかも抜け落ちず、しっかりと挟まったままである。ルナがしっかりと、両手で、リューイの腰を抱えている。
　リューイの下半身が、そして、上半身がわなわなと震えている。

「リューイ、気がついた？」
「あぁぁ」
「イッたの？」
「イッタみたいね」
「少し、休む？」
「ううん、大丈夫よ」
　ルナはやさしくリューイの上半身を抱き上げている。そして、座位の格好になって、ルナは膝の上にリューイを抱え込んでいる。ルナはそのままの姿勢で、反転する。
　そして、ルナは仰向けになった。
　リューイはルナのからだの上になっている。リューイは上体を起こした。女性上位の格好になっている。
　その間、ルナのものは、リューイの中にきっちりと納まったままみたいだった。ルナのものの長さが十分あるせいなのだと思われる。
　リューイが、ルナの腰に跨った格好で、まるで馬に乗った女性騎手のように、腰を上下動させている。
「あーん、気持ちがいいわ」
　リューイが髪を振り乱しながら、動いている。
　しかし、三郎は、リューイが痛くないだろうかと心配している。
　グッとリューイが腰を降ろせば、ルナの腰に装填された肉棒が子宮口に当たりすぎて痛いのではなかろうかと。
　何しろ、ルナの肉棒は、１８センチの長さがあるのだから。
　しかし、リューイの顔の表情を見るに、痛そうな感じはなかった。しっかりと上下動を繰り返している。
　日本人女性の膣の長さは平均的には８センチなのだ。１８センチの肉棒はむしろ、膣から、はみ出し、邪魔になるはずだった。
　もっとも女性ロボットは、出産という役目までは期待されていなかったであろう。とすれば、胎児を抱え込む子宮は発達していなくても構わない。だから、女性ロボットの子宮は未発達で、男性器を受け入れる膣は発達し、膣の長さは長くなっているのかもしれないと、三郎は思った。

　ルナは、仰向けになりながらも、少し、首を上げながら、手を伸ばして、リューイのおっぱいを揉んでいた。そして、ルナはその手をリューイのクリトリスにも置きつつ、そこを刺激していた。
　しかし、三郎はその様子を見ながら、なおも不思議だった。
　ルナのものが、抜けることがないのだ。
　長さがあるからだろう。
　しかし、それだけでもない。
　ルナのものが、きっちり伸ばした足面との間に、９０度の角度を保って、直立しているせいではないかと三郎には思えるのだ。
　人間の生身の場合、興奮が高まるとともに、その足を伸ばした水平面との角度が、９０度、１２０度となり、やがて１８０度となって、腹わたにぴったりとくっつくようになるのが自然だった。そうなると乗馬位では、女性が激しく腰を上下に振ると、はずれやすくなるものだ。
　しかし、ルナのものは、硬さを増しても、９０度の角度を保持しているのだから、それは不思議な現象に思えるのだった。
　見ると、ルナとリューイのからだは、一本の肉棒とひとつの穴とでつながったままだった。長い肉棒を中心にして、リューイが腰を浮かせながら、上半身をねじるように反転させる。女性上位のまま、背面位となる。
　ルナは仰向きのまま、今度はリューイの背中やお尻を手でなでている。
　そして、お尻の穴をいじり、そして、お尻の穴と膣口の間に存在する会陰部の辺りを指でなぞっていた。
　やがて、ルナは、首を起こし、上半身を起こしながら、リューイの股の上から手を伸ばし、リューイの股間に手を届かせると、指でクリトリスを愛撫していた。
「あああっ、たまらないわ、たまらないわ、気持ちいいわ、ハアハアハア」
　リューイがさもたまらなそうに、上体を逸らしている。
　ルナは、手を股間から上に移動させ、リューイの乳房を揉んでいる。
　と、リューイが上体を前かがみにした。
　そして、前かがみの姿勢で、腰を斜め方向で動かしていた。
　ルナの肉棒は、その角度を６０度にされたのだ。それは、いわば、ルナが立っていれば、垂れ下がった状態になる。そんな硬度の弱いことでは、すっぽりと、リューイの膣から抜け出るはずだった。
　しかし、ルナのものは、決して抜けない。三郎は小首を傾げながら考えた。
　６０度の角度になっても、抜け落ちないのは硬さがあるからだろう。角度が６０度、３０度になっても、一定の硬度を保てる、それがルナの肉棒の、人間の肉棒とはちがった特徴なのだろうか、と考えていた。

　リューイが、背面位で、前かがみになるにつれ、仰向けになっていたルナが上体を起こしはじめていた。
　リューイが四つんばいになる。
　ルナは、上体を起こし、立ち膝の態勢になっていた。リューイの腰を抱え込みつつ、バックから自分の肉棒を、リューイの中に押し込んでいる。
　ルナがリューイのお尻に手をかけ、腰を使い始めていた。ルナの長いものが、出たり入ったりしている。
　リューイの膣は長いのだろうと三郎は思う。
　リューイの膣の袋状の細胞に蓄えられている愛液が、細胞と細胞の隙間から、まるで汗のように、にじみ出ているのであろうか。ルナの肉棒には、びっしりとリューイの愛液がまとわりついているのが、三郎の目に捉えられていた。
「ハンハン、いいわ、いいわ。そんなにクリトリスまで揉まないで」
「いいだろぉ、いいだろぉ」
「アアッ、いいわ　いいわ」
「ウッウッ――、もう俺も限界が近い！」
「だめだめ、まだよ　まだよ、最後は、正常位に戻るって、約束でしょ」
「大丈夫かな。あっあっあーーー　もう、オレ、行きそう――」
　しかし、ルナは、そんな男言葉を吐きながらも、膝をつき、リューイの腰を抱え、上体を直立させながら、激しく腰をリューイのお尻にぶっつけているのだ。
　そして、三郎がカメラを近づけてみると、ルナの肉棒の擬似細胞からも、透明な愛液が湧出しているようだった。
　２１世紀初頭の電動バイブの表面はプラスチック製だった。あまり激しくそれを出し入れすると、女性のデリケートな肉襞を損なう恐れがあった。しかし、人間は、２２世紀初頭には、その電動バイブに人造皮膚を張り合わせ、かつその皮膚から潤滑油を湧出させる工夫をしたに違いない。女性器からも男性器からも摩擦力を弱めるため、潤滑油を湧出させる。そうでなければ、激しく繰り返されるピストン運動に、男女とも快感を持続させていくことは不可能だと三郎には思われるのだった。　　　
「アアッ、たまらんぜ、リューイ、どうにかなりそうだぁー」
　ルナの、セクシーな男言葉が聞こえる。
『ルナのものは、機械的に、腰に装填されたものなのに』という思いが三郎にはある。ルナの人工ペニスと、ルナの大脳とは直結していないのだ。
　とすれば、ルナの大脳には、視覚的に状況を把握し、人間のような『演技をする』という高度なプログラムが埋め込まれているとしか、三郎には考えられないのだった。

　三郎が思惑から、おのれを取り戻すと、リューイが、お尻を上げ、背中を、そして両肩を下げ、顔をベットに押しつけているところだった。
　そして、リューイは後ろ向きのまま、片足を大きく上げ、その足をルナの頭の上を越えさせ、からだを反転させながら、ルナの方にからだを向けさせた。
　リューイのからだのやわらかさに、三郎が目を見張っている。
　と、いつのまにか、リューイとルナは対面しつつ、キッスをし合っていた。
　リューイが、上体をあずけつつ、ルナをベッドの上に仰向けに寝かせつけている。対面女性上位であった。後向位から対面位に至るまで、リューイとルナはつながったままだった。
　そして、いつかリューイとルナはその上下の位置を変え、正常位になっていた。
　上になったルナが、リューイと胸を合わせながら、腰を使っている。
　人間の場合、上になった男が、やや上体を起こし気味にし、腕立て伏せでもしなければ、スムーズに動けるものではない。
　しかし、ルナは女と胸を合わせつつ、激しく腰を上下動させているのだ。
　ルナの肉棒が長く、しかも、適度な硬さと柔軟性と相矛盾する要素を持っているせいなのだろうか。ルナが腰を上げてもリューイはあえぎ、ルナが腰を押し込んでも、リューイは喘ぎ声を漏らす。ルナの人工ペニスは、よほど良質らしいのだ。
「すごくいい、いいわ、アン、こわれちゃうぅぅ、わたしのお○んこがこわれちゃう」
「じゃ、やめる？」
「ばかばか、お○ねも　かわいがってよ」
「それそれ、どうだ、どうだ」
「あれーっ、もう、だめ、気が変になっちゃう、アンアン―――たすけてぇぇぇー」
「アッ、俺も　だめだ、いきそう、いきそう」
「あれっ、わたしもだわ、アアア、イクイク、イクーッ！」
「イクぞぉ、イクぞォー、アアアーーアッアッ――――」
　ルナとリューイは、しっかりと抱き合い、互いに夢中で、腰を押しつけあっている……。

　三郎は、我に返っていた。
　自分のトランクスが濡れているような。
　射精まではしていないようだが、カウパー氏液が、かなり分泌されているような気がした。
　
　ルナとリューイは側位になり、向かいあったまま、ベッドに横になっていた。
「リューイ、よかったかい」
「ええ、ルナ、とってもよかったわ」
「リューイが喜んでくれて、僕も、うれしいよ」
「まぁ、そんなこと言って。そんなこと言うと、また、わたし、濡れちゃうわ」
「リューイとなら、もう一回でも二回でも、僕はできちゃうよ」
「まぁ、そんなこと！」
「リューイ、僕は、とっても君のこと愛しているよ」
「うれしいわ」

　三郎は、二人の会話をあきれながら聞いていて、しかし、なぜか赤面していた。
　女同士だからなんだろう。ロボット同士なんだから、そうなんだろう、と思う。
　人間さまじゃ、とてもそんな歯の浮くようなことを言えるわけがない。
　三郎とて、タイムスリップする前には、２１世紀初頭のキャバクラに行っていた。
　早い時間だとサービス・タイムなのだ。早めに会社を抜け出て、店に一番乗り。ビールを飲んで盛り上がって、その子が気に入れば、誘われるままに個室に行く。
　キスをさせてくれるわけでもない。おっぱいをさわろうとすると、『あと３枚、上乗せしてくれる？』とかなんとか言われ、躊躇して、大きなおっぱいに見惚れているあいだに、あっという間に、おしぼりで、白い液を受け止められている。
『よかった？』と女の子が聞く。
『ああ』とでも言った日にゃ、『じゃ、あと５枚、はずんでくれるわよね』と言われてきたのだから、『愛しているよ』もへったくれもない。

「三郎、起きて！」
　三郎は、ベッドで寝覚める。
　どこからか、声が聞こえる。
　どこからなのか？
　天井にも、壁にも、アンプ（発声器）はない。
「わたしの部屋に来て。一緒に、朝食でも、どう？」
「ああ、今、行くよ」
　三郎は、わけのわからぬまま、天井に向かって叫んで、起き上がった。
　顔を洗う。髭が伸び、ザラザラしていた。
　カミソリを探す。しかし、見当たらない。面倒くさいので、髭を剃るのはやめた。
　部屋を出て、リューイの部屋をノックする。
「あらっ、なに、その顔は？」
「あっ、これ？、なに、ちょっと、電気カミソリが見つからなくて」
「しようがないわね、まぁ、いいわ、どうぞ」
　三郎は、ロボットたちだって、髭が生えるのだろうかと思った。しかし、ともかく、昨日の女性ロボットたちには、恥毛はあったが、体毛というのは、ほとんど認識できなかった。
「何にする？」
「ああ、日本食でなくて、洋食がいいな」
　リューイは、パソコンに向かっていた。そして、キーボードを巧みに操る。
　すると、ボックスから、コーヒー、グレープフルーツ・ジュース、トースト、スクランブルエッグ、ハム、サラダ、フルーツがトレーに載って、出て来た。
「これって、宅配なの？」
「そうよ。みんな、光ファイバーに乗って、宅配されてくるの」
「じゃ、物流システムから、電子流システムになったんだね」
「そうよ」
「それじゃ、かつてのように、トラックや航空機で物を運ばなくてもいいんだね」
「あらっ、三郎って、第６世代のロボットが言うようなこと、言うのね」
「…？…」
「三郎、昨日は、おもしろかった？」
「う〜ん、おもしろかったといえば、おもしろかったかな」
「どんなところ？」
「まずは、ルナの演技力のすばらしさ」
「どうして？」
「だって、ルナは、人工のペニスを人為的に装填しているんだろ？、それなのに、『イクイク』だの『出る、出る』なんか、言っているんだもの。そりゃ、演技力以外の何ものでもないよ」
「ふ〜ん、さすがねぇー、三郎は観察力があるわ」
「いや、そんなぁ――」
「で、次は？」
「そうだね、女性用のロボットの膣の長さは、人間のそれとはちがって、もっと伸縮度がある、ってことかな？」
「それって、どういう意味なの？」
「つまり、人間の膣の長さは、身長とか子宮の大きさによって、それなりに長さには一定の限界がある。しかし、ロボットの場合は、その限界性が大きい。多分、ロボットの場合には、生殖機能がなくてもいいから、その分、快楽機能を高めるため、膣の発達性を促したのだろうね」
「まぁ、そんなこと言ってぇ〜。わたしにも、月に一回、メンスがあるわよ」
「あっ、そうなの？。人間に似ているね。すると、リューイのアクメ、あれも、人間に似て、本物なの？」
「馬鹿ねぇ−、わたしは人間じゃないわ。人間のアクメを実体験したわけでもないし。どっちが大きいか小さいかなんて、わからないわよ。でも、物の本によれば、第５世代の女性ロボットでは、人間の女性ほど強烈なアクメを感じるのは無理らしいわ」
「そうなのか…」
「でも、有能な人間と、有能な第５世代のロボットとが互いに協力し合って、ロボット女性にも、人間の女性と同じようなオルガスムスを感じれるように、大脳プログラムを開発したらしいわ。でも、そんな優秀な２３世紀の人間や、第６世代のロボットたちは、この地球を捨てて、宇宙に飛び立って行ってしまったわ」
「でも、リューイ、そうした開発の経過は、電子図書館に行けば、電子情報として残っているだろ？」
「それがね、電子図書館には、２２世紀までのものしか、残ってないのよ。２３世紀の情報は、みんな宇宙船に積み込まれてしまったの」
「どうして？」
「馬鹿ねぇー、三郎って。まるっきり、いじめられてる亀さんを助けた浦島太郎のようなんだから、ったく。そんな貴重な情報をこの地球上に残してごらんなさいな。第５世代のロボットたちが進化して、地球人たちの存在を脅かすかもしれないじゃないの」
「そんなものかね？。いい情報はみんなで共有すべきなのに…」
「ったく、三郎は、人がいいのね。そんなんじゃ、生き残れないわよ」
「しかし、リューイ、２２世紀までの情報は、この地球に残っているんだね？」
「そうよ」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）

（注）参考図書
　　　「宇宙から見る生命と文明」　松井孝典　著　ＮＨＫ出版
　　　「真理への旅人たち−物理学の２０世紀」　米沢富美子　著　ＮＨＫ出版
　　　「張形と江戸をんな」　田中優子　著　洋泉社　（新書У）