５.未練

　博多は祇園山笠の祭りの真っ只中だった。
　山車が駆け抜け通りから水がかけられ、男たちは身体中から湯気を立てていた。
「すごいなぁ〜勇壮って言葉がピッタリだなぁ〜」
　翔は道端で引き込まれるように見入っていた。
　観光客が賑わう中に、２色の捩り鉢巻に半被、さらしを胸まで巻いた若者がいた。
「やけにカッコいい野郎だなぁ・・・・・う〜ん？オンナか〜？」
　翔はなんとなく傍まで寄っていった。
（何をいきり立ってんだ？このオンナは？・・・女だろ〜？）
「ちくしょう〜なんでやれんとかねぇ〜女やからちゅうてん、おかしいやなかね」
（何を言ってんのか、さっぱり分からない・・・まるで、外国語だ〜）
　それでも、なぜかこの男オンナから目が離せなかった。
（どうして、あんなに祭りに拘るんだろう？）

　翔はバイトを探すために街をウロウロしていた。
　アーケードの一角にある喫茶店の募集張り紙が目に留まった。
　商売はまだやっていないようだった。
（喫茶店か〜なんとかなるだろう・・・）
「すみません、バイトの張り紙を見たんですが・・・」
「バイト〜お〜ぃ、バイトだって〜」
「裏に回ってもらって〜」
「そこの横から入って、ドアがあるから、そこだよ」
　業者のような人に案内されて、事務室のようなところに入っていった。
「すみませ〜ん・・・」
「あぁ、そこに座って〜経験はあるの？」
「いえ、食堂ならあるんですが・・・」
「ふ〜ん・・・ちょっと、待っちょって」
（女主人かな？・・・なんか不安だなぁ〜）
　やっと、顔を出した女性を見て、翔はビックリした。
（あの男オンナだ・・・へぇ〜女主人か・・・）
「若いわねぇ〜いくつ？」
「19歳です」
「そう・・・土地のもんじゃなかね〜どこから来たん？」
「はぁ、東京から流れてる途中です」
「じゃあ、長くはおらんとやね・・・どんくらいおられるん？」
「・・・・？？？」
「ハ、ハハハ〜、あぁ、そうね、えぇ〜と、どのくらい働けるの？」
「南に行く資金が貯まるまで・・・です」
「それで、住むところは？・・・あるわけないか〜」
「はぁ、はい・・・ダメなら他をあたります」
「まぁ、待ちなよ！まだ、何も言ってないだろ」
「・・・・・・・・・？」
「分かった、悪い人間じゃなさそうだから・・・雇うよ」
「本当ですか？ありがとうございます」
「そんなに固くならないでいいよ、わたしも19歳だし、店は親父の遺産だから」
「そうですか、大人っぽいですね」
「男っぽいの間違いじゃないの？」
　翔の目には男ぽくしているようにしか見えなかった。
　インド人のような異国的な顔立ち、短髪でボーイッシュにしてるが、それがなおさら顔立ちの良さを際立たせていた。
「いや、・・・あのぉ〜住むところは？」
「ここは店だから・・・かと言って、家じゃマズイなぁ〜やっぱ、オンナだし・・・」
「ここでいいですよ、閉店後の番人で・・・」
「そう・・・風呂は、近くに銭湯があるから・・・」
　なんとか話しがまとまり、翌日から働くことになり、今晩、基本を教わることになった。

「はい、大体分かりました。・・・ひとつ、いいですか？」
「なぁに？」
「あなたのお店としてリニューアルするのでしたら、何か特徴を出したいですね？」
「例えば・・・？」
「どうでしょう？クレープのバリエーションを売りにして、テイクアウトもやっては？」
「ふぅ〜ん・・・若者受けを狙ってか・・・面白いけど〜」
　店主のオンナは考え込んでいた。
「何かあるんですか？」
「亡くなった父は、男の子が欲しかったの。九州男児に育てたくて・・・ だけど、産まれたのがわたしで、すぐに母親も病気で他界して・・・父はわたしだけになって、わたしの中に九州男児を夢見てね〜」
「だって、あなたは女性じゃないですか、それなのに・・・？」
「店の名前の『アユム』は、わたしの名前の歩・・・あゆみ、なんだ〜意図が明確だね」
「だからって、呪縛のように縛られていたんじゃ、あなたの人生じゃなくなるよ」
「・・・・・・そうなんだよな〜言うとおりだけど、もう、手遅れかな？」
「何言ってるんだい、まだまだ、今からだよ〜丁度、いい機会じゃないか？ この店のリニューアルは、あなた自身のリニューアルにするんだよ」
「翔・・・って言ったけ、何でそんなにむきになるんだ？通りすがりだろうが？」
「いや、別に、むきになってるわけじゃなくて・・・あなたのことが気になって・・・」
「わたしが〜？ハハハ・・・誰も見向きもしない、この男みたいなわたしの何が気になるんだ・・・？南に行くんだろ〜」
「そうだけど・・・イヤ、南に行かなくてもいい！あなたが気になって行けない・・・」
「逢ったばかりで、よく言えるな〜東京モンが・・・口から出まかせだろ〜」
「違う！！そんなことない！あなたのことは、街でずっと見ていた・・・ここの経営者だとは知らなかったけど・・・その時から、気になっていたんだ！」
　翔は歩の肩を掴んで真剣な眼差しでクッキリとした大きな瞳を見つめた。
「よ、よせよ〜わたしは男オンナなんだ！」
「それは・・・親父さんが生きていた時で・・・いつまで引き摺ってるんだ！ いい加減に自分の人生を生きなきゃダメだよ！あなたは僕の目には女にしか見えない」
「へぇ〜〜〜それは珍しい・・・おかしなヤツもいたもんだ〜」
　歩は茶化すようにして翔から逃れようとしていた。
　翔は思い切って歩を抱きしめた。
　歩は翔の腕の中から逃れようとするが、力強く抱きしめられ身動きが出来ない。
「大声を出して助けを呼べばいい・・・それで、今までどおりになる・・・」
　翔の言葉に歩の身体から力が抜けていった。
　翔は歩に優しく口づけをして、再度、抱きしめた・・・。
　歩は歯がガチガチして、キスが不慣れだと翔に感じさせていた。
「わたし・・・本当に変わってもいいの？お父さん・・・怒らないかな？」
「当たり前じゃないか！きっと、素敵な女性になることを望んでるよ〜」
　歩は翔の優しさを信頼しようと思った。

　翌日から、準備は急ピッチに進み、リニューアルオープンになった。
　思惑通りにヤング層が集まり、テイクアウトも好評だった。
　店内では、ヤング層と昔からの常連客が上手く融合していた。
　定食も好評で、翔のアイディアはことごとく成功に結びついた。
「すごい〜翔！大成功よ〜」
「まだまだ、これからだよ！」
　クレープは、アントレ用とデザート用を用意したが、やはりアントレはボリューム不足で定食の方が人気があった。
　しかし、デザートは種類を数多く揃え、フルーツとの組み合わせやアイスなども、ヤングを中心に、店内でも好評だった。
「キャァ〜翔〜翔く〜ん・・・バナナチョコクレープと翔もテイクアウトした〜い」
　通りに面したレジの横をテイクアウト用に開けたら、若い女の子たちが翔を目当てに、いつも集まるようになっていた。
「翔って、人気あるんだね〜」
「歩さん、関係ないですよ！歩さんの方が遥かに素敵だと思ってますから・・・」
　朝の８時から夜の８時まで、ふたりで休憩もなく頑張っていた。
「ふぅ〜・・・やっと、閉店ね〜」
「はい、やっぱり、ふたりじゃ無理みたいですね〜」
「そうね、バイトの女の子でも入れようか？でも・・・翔に見とれて仕事になるかな？」
「何をつまんないことを・・・それより、夕食にしませんか？」
「そうねぇ〜それじゃあ、今日は、わたしが作ってあげようか？」
「えぇ〜っ！大丈夫かな〜？」
「あぁ〜失礼しちゃうな〜・・・でも、もし、手伝いたかったら、手伝わせてあげる〜」
「まったくぅ〜変わらないなぁ〜歩さんは・・・ハハハ〜」
　ふたりは片づけを済ませると、スーパーで買い物をして歩の家に向かった。

「初めてね、ここに来るのは・・・」
「うん、広い家だね・・・今、ここにひとりで暮らしてんの？」
「そうよ、掃除が大変よ〜フフフ」
　商店街から少し外れた所に歩の家があった。
　一軒家で庭も広く、ひとりだと危ない気もすると、翔は感じていた。
「そこの材料、切っててくれる？わたし、お風呂入れてくるから〜入るでしょ？」
「あぁ、ありがたいなぁ〜もう、クタクタだから・・・」
　９時も過ぎて、やっと夕食を終え、ふたりとも疲れ果てて寝ちゃいそうだった。
「部屋はいっぱいあるから、お風呂入ったら泊まっていけば〜？」
「いいんですか？僕がオオカミになっちゃても〜」
「そんな元気もないくせに・・・それに、男オンナを襲うのか〜？」
　11時近くになって、やっと眠れる時間になった。
　湯上りの歩は、一段と魅力的に見えた。
「今日もご苦労様でした。明日も７時には店に行かないとね、よろしく〜」
「ねぇ〜歩さん、僕、ここで寝泊りしてもいいかな？」
「な、何？どうして〜？」
「誤解しないで・・・ここは、歩さんひとりじゃ危ないよ〜心配だから・・・用心棒！」
「いいわよ、どうせ空いてるんだし、翔もお店じゃ窮屈で疲れも取れないし・・・」
　意外にも歩はすぐに承諾した。
「それと、もうひとつ・・・ふたりの時は、オンナでいてほしいなぁ〜」
「えぇ〜っ、無理よ、長い間、こうしてきたんだから・・・」
「毎日、結構、無理してるように見えるよ、お店ではそれでいいけど・・・ずっと、そうだと、歩さん・・・疲れちゃうよ〜僕の前では、本当の歩でいてほしい」
「・・・・・・。翔はいいわね〜毎日、女の子にモテテ・・・選り取りみどりね〜」
「あゆみ・・・何を怖がってるんだい？」
「別に〜翔は、いつかは出て行く人だから・・・関係ないでしょ！」
「そうか・・・それが不安なんだ・・・・・そうだね、僕は旅人だからね・・・自分探しの・・・」
「もう、寝ましょう〜明日も早いんだし・・・」
　そう言って、歩は翔を部屋に案内した。
「わたしは隣に寝てるから・・・」
（襖一枚で別々に寝るのか・・・なんか、やるせないなぁ〜）
　疲れてるのに、なかなか寝付けない翔だった。
「歩さん、もう、寝ました〜？」
　翔は隣の歩に声をかけてみたが、返事が無かった。
（寝ちゃったのか・・そうだよな、疲れてるもんな、あぁ〜あ、眠れそうにないなぁ〜）
　翔は何度も寝返りを打ち、意を決して隣との境界の襖を開けて歩の寝床に目を遣った。
　そぉ〜と歩の傍まで寄ってみた。
「本当に寝てるんだ・・あゆみ・・・君をオンナにしてあげたい・・こんなに素敵なのに・・・」
　翔は寝ている歩の口唇に軽くキスをして、髪を優しく撫で掛け布団を静かに剥がした。
　小さな白地のパンティ、素肌に着たＴシャツの寝姿が翔の目に映った。
「Ｔシャツから透けて見える歩の乳房・・・少し浅黒い肌・・・引き締まった太股・・・はぁ〜すべて、いいオンナだよ、歩・・・僕を受け容れてほしいなぁ〜」
　翔は素肌の太股に触れ、優しく撫でた。
　歩の身体がピクッと反応したように感じたが、寝息を立てていた。
「疲れて深く眠ってるんだね・・・こんな痴漢みたいな真似、しちゃいけないよね・・・」
　そう言いながらも、翔はＴシャツの上から乳房を撫で、乳首を手のひらで転がした。
「しなやかな引き締まった肢体・・・肌を合わせると気持ち良さそう・・・」
　小さな布で隠された歩の秘部は、上付きなのだろう・・・かなり上の方が膨らんでいた。
　翔は手のひらで上下に撫で、続いて指で中央を擦るように上下に動かした。
「うん？・・・歩、濡れてるよ・・・寝ていても身体は勝手に感じてるんだね〜」
　恥毛の感触は無く、ふっくらしたオマ××コの感触に心地良さを感じた。
　Ｔシャツを捲り上げ、露わになった乳房を両手で揉みながら乳首を吸った。
「うぅ、ぅ〜ん・・・」
　歩が小さく声をあげた。
　翔は構わずに歩の小さなパンティを両脚から抜いて、その間に割って入った。
「すごぃ・・・こんなにきれいなオマ××コ、見たことが無い・・・歩、素敵だよ〜」
　翔は自分の下着を脱ぎ全裸で歩の両脚の間に身を置きなおした。
　上付きのオマ××コと淡い恥毛を撫でながら、薄っすら蜜を滲ませてるワレメを舐めた。
「あぅっ・・・っ、っぁああ〜はぁ〜〜」
　歩の喘ぎ声が聞こえたが翔はさらにワレメ全体を舐め、続けて指で中を開いた。
　きれいなピンク色の全容が見え、翔はクリトリスを中心に舐め続けた。
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜・・・あっ、あぅ・・あぁ〜ん・・あぅっ・・っぁあああ〜〜〜」
「歩・・・このまま続けるよ〜いいんだね」
「はぁ〜ぅ・・・っ、あぁ〜翔・・・好きよ〜・・・あぁぁああああ〜〜〜」
「僕も・・・好きだよ〜あゆみ・・・きれいな僕の歩〜」
「あぁ〜そうよ、あなたのあゆみよ〜〜愛してぇ〜優しく・・・して・・・・・・」
　指を蜜の壷に入れ中を弄くろうとした翔は、歩が処女だと気づいた。
「あゆみ・・・いいのかい？初めての男が僕で・・・」
「翔・・・が、いいの・・・」
　翔は歩を抱きしめる格好で、ゆっくり上から己の肉棒を挿入し始めた。
（うっ・・・キツイ・・・すごい締め付けだ〜無理に入れると歩が可哀想だな・・・）
　入り口付近を何度も肉棒の先で押し広げるように解す動きを繰り返した。
「あぁ、あぁ、あぁ、あっつぅ・・・いっ・・っ、つ・・・あぅぅうううぅ〜〜っ・・・」
　痛さと快感が入り混じって感じられ、歩は少しずつ翔を受け容れ始めていた。
「ふぅ〜〜やっと、歩の中に入れた・・・あゆみ、ひとつになったよ〜痛いかい？」
「うぅ〜ん、大丈夫・・・ふぅ〜、これで・・・男オンナと・・・サヨナラ、ね・・・」
　翔の肉棒は歩にキュゥ〜キュゥ〜と締め付けられ、早く動かすことは出来なかった。
「あゆみ・・・きみのオマ××コは、すごく気持ちがいいよ〜あゆみも感じて・・・」
　翔はゆっくりと挿入を繰り返し、指でクリトリスも愛撫して歩に快感を促した。
「あぁん、あん、あん〜あぅっ、あっ、うっ・・・っ・・ぁああっ、なんか・・・変・・・」
　痛みより快感が大きくなってきたようだ。
　プリプリとゼリーのような乳房を揉んだり舐めたりしながら、翔は腰を送り続けた。
「あぁぁああああああ〜〜〜〜〜うっわぁあっ・・・あぅ・・いっ・・あっああああ〜〜」
　頭を左右に激しく振り、両脚を突っ張り、身体を弓なりにさせて歩は昇りつめた。
「あぁ〜・・・はぁ〜・・・はぁ〜はぁ〜ぁぁ・・・・・・」
　歩は翔にしがみつくようにして口唇を求め、むしゃぶるようにキスをした。
「ねぇ・・・わたしね・・・何も分からなくなったの・・・身体中が痺れるような感じがして」
「そう、良かったね〜あゆみはオンナだよ〜今日からは、僕の前ではいつも・・・・・」
「えぇ・・・もう、突っ張らないわ〜もっと、もっと、いいオンナになりたいわ〜」
「いいよ、僕が北九州一番の魅力的な女性にしてあげるよ！」
「えっ？北九州一番なの〜？違うでしょう〜日本一でしょ！」
「ハハハ、そうだった。歩はその要素に溢れてるよ〜ホントに・・・楽しみだね〜」
　続けて、その夜は、もう一度、深く交わり一緒に眠りに着いた。

　翌日からの歩は、明らかに前日とは大きく変わっていた。
　周囲の人たちは、何があったのかと心配してしまうほど、歩は別人のようだった。
「ダメだよ、歩・・・。もっと普通にしなきゃ〜。皆が変に思うだろ」
「そう・・・普通にしてるつもりだけど・・・」
「ふたりの時だけにしないと・・・」
「ウフッ・・・分かったわ〜」
　それでも、歩の変貌振りは周囲に評判が良く、翔は少し安心した。
　日々、女性として魅力が増し、お客も若い男性客で賑わうようになってきた。
　新しい従業員も雇い、３ヶ月も過ぎた頃には評判の店になっていた。
「良かったね！もう立派な経営者になったね。しかも、素晴らしい女性に・・・」
「翔のおかげよ、みんな翔の言うとおりにしただけ・・・クレープハウスも作りたいわ〜、・・・女らしく見えるのは、毎日、優しく抱いてくれたからよ〜フフッ・・・」
「歩は自分を見つけただけだよ・・・僕は少しだけ手助けしただけ」
「翔・・・あなた・・・もしかして・・・・・・イヤッ！イヤよ！」
「僕だって感情的には歩と一緒にいたい・・・君のような素敵な女性は滅多にいない・・・」
「だったら・・・ねぇ〜わたし、もっと色っぽくなって翔を悦ばせるから・・・ネッ！？」
「もう充分に色っぽいよ、歩は・・・毎晩の僕へのサービスも上手になったし・・・離れるのは僕も辛いけど・・・僕の旅は、まだ、途中だから・・・」
「じゃぁ、きっと帰ってくるって約束して！でないと・・・わたし、生きていけないわ〜」
「確約は出来ないけど、帰ってきたいとは思ってるよ」
「ホント？わたしに飽きた訳でも、キライになったからじゃないのね？」
「当たり前だろ！歩は最高のオンナさ、僕にとって・・・」

　多くの未練を残しながら翔は南に旅立った・・・。