【１】

（すぐ来てくれって、何の用だよっ）
　１２月初旬の、ある土曜日の昼時、食事している最中にクラスメイトの兵藤美樹からメールで呼び出された。つぶつぶ言いながらも、明彦は家を飛び出す。軒下に止めてある自転車に跨り、一目散に美樹の自宅へと走らせる。
　美樹と付き合いはじめてから、まだ２ヶ月ほどだ。
　同じ中学に通っていた時から成績優秀で、生徒会長もしていた彼女は、顔立ちがよく、多くの男子にいつも囲まれていた。それを遠巻きにして眺めていたのが明彦だった。
　以前から彼女に好意を寄せていた明彦だが、会話すらまともにできないほど内気な性格だったため、美樹からもあまり相手にされていないように想っていた。
　高校でもクラスメイトになったが、二学期に入るまではほとんど会話することもなかった。二学期の中間試験でたまたま勉強を見てもらったとき、美樹の方から、実は積極的な男子より物静かな人がタイプで、前からずーっと明彦のことが気になっていたと告白されたのである。
　美樹の家は、自転車で１０分ほどのところにある駅前の高層マンションの１２階。
　その道すがら街路樹のイチョウやモミジの鮮やかな色が見頃を迎え、冷たい青空に映えていた。晩秋の風を切って自転車が落ち葉を踏むカサカサと音を立てながら、美樹のところへ急ぐ。地球温暖化現象の影響だろうか、都会の紅葉は年々遅くなってきているというが、師走の空気は冷たく、上着を羽織らずに出てきてしまった体にはこたえる。
　マンションの駐輪場に自転車をおき、エントランスの前で呼び出しをしようとした時、ちょうどタイミングよく人が出てきたので、明彦はそのままエントランスの中に入ってしまった。エレベーターで上がり、通路の中ほどにある美樹のうちの前に来るとインターフォンを鳴らした。
　誰の返事も返ってこない。
　再度鳴らしてみるが、何の応答もない。
「あれー、アイツ、いないのかなぁ」
　明彦は首を傾げた。呼び出した美樹の本人が出てきていいのに、声もしない。
　よく晴れた午後、吹き抜ける北風が明彦の体により寒さを感じさせる。
「ほんとに、誰もいないのかなぁ」
　人気のない通路で、明彦はかじかむ手をこすりつつ、何の気なしにドアノブへ手をかけた。どうやら鍵はかけられていないようだ。
（あっ）
　おそるおそる引いてみる。少しホンワカとした空気が流れてきた。確かに誰かいる。
「こんにちは、明彦です」
　扉の間から顔を突っ込んで声をかけてみるが、何も聞こえてこない。
　その沈黙がどこか無機質に感じられた。しかし、快適さを想像させる暖かさが、冷たい外気にさらしている明彦の気持ちを室内へといざなっていく。
　一度、通路の様子を気にするように辺りを見回してから、明彦は身を隠すごとく玄関の中にすっと入ってしまった。
「こんにちは」
　エアコンの暖かさに包み込まれた。上がり口にはパンプスが２足あるだけで、室内は依然、人の気配を感じさせないぐらいシーンとしている。
　美樹には父親がいなかった。彼女がまだ小学生の時に両親は離婚して、それ以来、このマンションで母親と暮らしていた。
「お邪魔します」
　母と娘、女二人だけのマンションに無断で入り込むことにちょっと気が引けたが、遠慮がちに上がり込むと、明彦は勝手が分かっているように奧の美樹の部屋へ向かう。
　ところが、廊下を挟んで両側にある扉の前を通り過ぎようとした時、左の側からシャワーの音がかすかに聞こえてきた。
（美樹のやつ……）
　フッと美樹の姿が脳裏に浮かんだ。彼女の母親は保険の外交をしていたので、昼間はほとんど美樹しかいなかった。
　彼女をちょっと驚かしてやろうと、明彦は扉を開けた。
　ドアか閉まっているバスルームの中からしぶきが弾け飛ぶ音がしている。誰かがシャワーを浴びているようだ。
　心を躍らせるようにして、脱衣所に足を踏み入れた。
「あっ」
　次の瞬間、てっきり美樹だと思い込んでいた明彦は、脱ぎ捨てられた服を見て仰天し、息を呑む。
　それは明らかに大人の女性が着る黒のタイトスカートと白いブラウス。いまシャワーを浴びているのは美樹でなく、彼女の母親、彩乃だったのだ。
（お、おばさん）
　彩乃の美しい姿態を想い出すなり、美樹への悪戯に弾ませていた心は妖しいときめきにたちまち支配された。
　彩乃との出会いはほんの１ヶ月前、美樹に連れられて初めてマンションを訪れた時だ。たまたま帰宅したばかりの彩乃と居合わせた明彦は、モスグリーンのスーツを着ていた美麗なその姿に、いっぺんに心奪われてしまったのである。
　校内一のスレンダー美人の美樹は、明彦自身も自慢するほどだったが、３９歳になる熟女の色香にはかなわなかった。
　洗練されたスーツに身を包み込んだ彩乃。ジャケットからでも豊満と分かるほどの胸に対して、ウエストラインは深く括れ、熟れきった肉感豊かな腰つきに沿って描く妖美な曲線は、大学時代にミス・キャンパスをしていた頃を想像させるに十分なスタイルだった。
　タイトスカートの裾から艶やかなブラウンに彩られたストッキング脚が美しく伸び、シルキーなナイロン生地の輝きと魅惑的な陰影に富んでいた。
　歩を進めるたびに、シュッシュッと、太股あたりでストッキング生地のすれ合う悩ましい音をさせながら、大きくもキュッと締まった形のいいヒップがプリンプリンと揺れる後ろ姿。そのタイトの上からくっきりと浮かびあがった尻肉を包んだパンティライン。彩乃の姿、動作の一切がフェロモンを振り撒いているかのように思えたのだ。
　オナニーが日課になっていた明彦にとって、それ以来、美樹の母、彩乃の存在が性欲の対象となり、オナニーのオカズとして欠かせなくなったのは言うまでもない。
（はぁ、おばさん）
　瞼の裏に焼きついた上品にして妖艶な姿態と、扉の向こうに全裸の彩乃がいるのだという思いだけで、全身が異常に火照ってくる。唾液の分泌が激しくなり、ジーンズがきつく感じられるほど股間への血流が増す。
　耐えがたく衝き上げてくる胸のざわめきを抑えつつ、ランドリーボックスを隠すように置かれていたタイトスカートをそっとどかしてみる。
「あっ」
　心臓をつかみ取られるほどドキッとし、瞬時にして極度の緊張感と昂奮に見舞われる。
　ライトグレーのパンストと一緒に、大人の女性が身に着ける白いブラジャーとガードルが潜んでいた。けっこう着古しているようにも見えるが、それでも補正下着らしく、緻密なストレッチ素材の生地はマーブルな光沢感を放っていた。
　ガードルをよく穿いていた母親の姿を幼い頃から見ていたせいか、明彦はランジェリーと呼ばれるパンティやＴバックのセクシーなものよりも、ボディラインを締めつけるご婦人御用達の補正下着に不思議なエロティシズムを感じていた。それだけに、無垢なペニスをジーンズの中で一気に激しく硬化させる。
　息は上がり、胸の鼓動は耳に聞こえるまでに鳴り響き、理性も思考力も急激にわけが分からなくなり、どうしようもない状況に追い込まれていく。
　彩乃がバスルームから出てきやしないかと気が気でなかったが、込み上げてくる欲望に矢も楯もたまらなくなった明彦は、ついに震える手をガードルに伸ばした。
「おばさん」
　触れたとたん、切ない声を洩らす。
　ざわめく動悸は激しくなり、クラクラする濃密な昂揚に意識もさらわれそうになりながらも、ポリエステルのすべすべした手触りだけはしっかり認識する。
　さっきまで彩乃の豊満なヒップを包み込んでいたガードルを、ランドリーボックスからつまみあげる。
　目の前に広げられたガードルはとくに飾り気のないブルマー型であった。細密なネット素材で、下腹部をしっかり押さえるための菱形模様のステッチが縫いこまれている。
　おもむろにガードルのウエストをサイドにグッと広げた。
（母さんのと、同じだ……おばさんのお尻に、穿くんだ……）
　ガードル特有の強い張力で押し戻されてしまうほどの抵抗感、あまり伸縮性のないハードな素材感覚に、母親のガードルを悪戯した時の記憶が脳裏に浮かぶ。しかも一見してサイズも小さい。
　タイトスカート姿を見た時の、布に刻まれたあのパンティラインがきついガードルの線と分かるや否や、少年はますますたまらなくなる。
「あっ、おばさん」
　欲望に衝き動かされるままガードルを頬に近づけると、脱ぎたての汗臭さと混じって、フェロモンがたっぷり詰まった熟女の牝臭が鼻孔を刺激した。
　わずかに残っていた理性をも壊されそうな激情がにわかに沸き起こり、欲望を貪るままに顔を彩乃のガードルに埋める。
「おばさん、ぼ、ぼくっ……」
　その瞬間、我慢の限界を越え、射精の予兆を訴えてきた。しかし、ここで熱い剛直物を取り出すわけにはいかない。
　無性にオナニーがしたい欲情を一寸の理性で踏みとどめると、明彦は心臓をバクバクさせ鼻息も荒げながら、タイトスカートを元のランドリーボックスの上に戻す。そしてガードルを手に慌てて脱衣所を出て、向かい側のトイレに飛び込んだ。
「わぁ〜」
　カギをかけた途端、明彦は身を震わせながら、こらえていた喜びを爆発させる。
　せわしなくジーンズをブリーフごと膝まで引き降ろす。野太いウインナーのようなペニスが飛び出てくる。プ〜ンと精液の匂いがした。
（やっぱり……）
　下腹に貼りつくほどギンギンに反り返り、亀頭もすでにヌレヌレ状態だ。
　便座に腰掛けるなり、明彦は硬直しきったジュニアを握りしめ、彩乃の白いガードルを鼻と口に押しつけた。
「すぅはぁ、すぅはぁ、すぅはぁ……」
　熟女のフェロモンと体臭が充満したガードルの中で、激しく呼吸を繰り返す。
（す、すごい……）
　濃厚な牝のフェロモンはたやすく少年の理性を破壊し、彩乃への熱い感情の発露とともに、肉茎を明彦自身もびっくりするぐらいコチコチに強張らせた。
　ゆっくりと手の中から男根の出し入れを開始すれば、彩乃の切れ長の瞳、肉厚の唇、誇らしげに見せつける濃艶な胸、ふくよかなヒップ、あでやかなスーツ姿が、くっきりと脳裏に映像を結ぶ。
　美樹の母、彩乃への憧憬が日増しに強くなっていただけに、明彦にとって、この状況は夢のようだった。
（おばさんのような人に、男にしてもらえたら……）
　童貞の妄想を膨らませると、いきり立った中で快楽の精液が急激にグツグツとひしめき合ってくる。
　あと数回しごきあげれば、確実に噴火してしまうところまできた。
「ぼ、ぼく、おばさんが、おばさんがぁ……」
　とっさに肉茎から手を離し、荒げる呼吸を整える。束縛から解放された肉棒は快感に耐えているようにピクピクといなないている。
　たまらぬ思いで、ガードルを高々とそり返っている肉茎にかぶせた。
「あぁ〜っ」
　敏感な亀頭がクロッチの裏地に柔らかく包まれるや、射精してしまうほど大きく跳ね、全身がブルブルッとした。
　ガードルの上から絡みつけるように握る。すべすべしたポリエステル生地と肉柱の包皮とのこすれ具合がたまらない。
　獣のような息継ぎでしこった肉茎に大きなストロークを加えると、鮮烈な刺激にけたたましく律動し、こらえにこらえていた快液が戸口に向かって一挙に押し寄せてきた。
　目の前はピンク色に染まり、鼻息もいっそう荒々しく、すべての感覚はめくるめく倒錯の世界へと埋没する。しかし、性感だけはますます明晰になっていく感じがした。
「おっ、お、おばさん……」
　最後ははっきりと彩乃のとびきり美しい姿態を脳裏に描き出しながら、何かにとり憑かれたかの勢いで、ガードルの中でブチ切れるほど怒張しきった海綿体をしごきたてた。
「あ〜、お、おばさ〜ん……ぼく、出る……あぁ、出るぅ……」
　喚きをあげ、脳髄に白いフラッシュがたかれる。いつになく烈しい性感に貫かれた瞬間、天を仰いだ明彦は体を跳ね上げ、彩乃に向けた欲望のすべてを咆哮させた。
　ドク、ドク、ドク……。
　熱湯みたいに熱く新鮮な精液が、彩乃の白いガードルを突き破るかの勢いで噴射する。あたかも彩乃の体内へ射精したかの快感が全身を駆け抜けた。
「くぅ〜っ……」
　そのめまいを起こしそうな絶頂感、生々しい脈動が伴う射精感に、少年の身体は稲妻にでも打たれたように痙攣する。
　股間の筋肉がキュッと収縮し、凄まじいばかりの熱い迸りが、穿き古しのガードルを犯していく。
　最後の一滴まで搾り取るようにしごいていた手が止まったとき、全身からすべての力が解き放たれたように抜け、がっくりと肩を落とす。
　便座に腰掛けたまま、両手でガードルをそっと広げてみる。シルキーな光沢のポリエステル地の中に、生臭さが鼻につく黄色味がかった白濁液が大量に溜まっていた。
　オナペットと化した彩乃の下着に付着した自分の牡の証を、虚ろな目で見つめる。
　精液まみれの牡肉はにぶく光り、萎えきらない形状で性感の余震にピクピクとひきつらせていた。尖端からはまだ出きらない白濁液が流れている。
「あ〜っ、おばさん……」
　深い溜め息とともに切なく呟く。美樹の家のトイレで、美樹の美しい母親の下着によって、ついに強烈な快楽を味わってしまった。
　まだ女性の肌すらも触れたことがないのに、まるで彩乃とセックスをしたかの充足感に満たされた。美樹のことも忘れ、彩乃に対する思い入れをますます深くする。
　ペニスの根元から肛門までの筋がジーンと痺れる感覚を残したまま、しばし身動きできなかった。異常なまでの昂奮は、完全に紅潮しきった顔と、額からしたたり落ちる大粒の汗が何よりも物語っていた。