今まで数々の女たちを犯してきたがどの女にもトキメキは感じることはなかった。皆、短に性欲の捌け口としての物体にかすぎない。しかし、美穂子は違った。何年も前に押し殺していたドキドキ感を見事に蘇らせてくれた。俺としたことが恋をしてしまったのだ。普通なら食事でも誘い、少しずつ恋愛を実らせていくところだが、そんな行為は当の昔に忘れてしまった。まずは美穂子の肉体を征服することだ。交際するのはその後でいい。

　さて、どうやって美穂子を俺のものにしようか？いつもなら、強引にでも部屋にあがりこみ躊躇無く犯すのであるが、それはどの女もはじめて出会うからこそできたのかもしれない。美穂子の場合は違う。毎日のように会社で顔を合わすし、しかも美穂子に恋をしている。いつもの様に冷静な状態で思考することができない。

　よくよく考えると俺は会社以外の美穂子を知らなかった。まずは美穂子の全てをしらなければならない。そうして、美穂子のプライベートについて調べることにした。

　最初の一週間は彼女の後をつけて行動パターンを調べた。月曜から木曜日までは会社を出た後、近所のスーパーにより夕食の材料を買い帰宅するといったものであった。
　金曜日は違っていた。いつもと違う方向に美穂子は向かう。昼は静かだが夜は賑わう方向へ。誰かと会うのか？人ごみの中の彼女を見失わないように注意しながら後を追った。
　美穂子はどんどんと奥のほうへ歩いていく。そっちは別名、抜き通りといわれている性風俗店が集中しているところである。美穂子は細い路地へと曲がった。俺は小走りで追おうとした。ピンサロの呼び込みの男が俺に声をかけてる。
「社長！いい子いますよ」
　俺は無視をし男の側を通り過ぎた。チッと舌打ちする音が背後に聞こえた。細い路地に入ると美穂子の姿は無かった。十メートルほど行くと行き止まりだ。建物と建物に挟まれた路地には２つ入り口がある。どちらかに入ったはずだ。再び抜き通りに戻り、左右のお店を確認した。右はイメクラ、左はピンサロだ。俺は呆然とした。美穂子は風俗嬢である。俺が勝手に描いていた美穂子のイメージが音も無く崩れ去った。なぜか解らぬが、怒りが立ち込めてくる。不潔だ。社内では清純そうな雰囲気をしているくせに、裏では見知らぬ男の肉棒をしゃぶっている。一日に何本抜くのであろう。

　さっきの呼び込みの男が再び俺に寄り添ってきた。
「へへっ、社長、今なら待ち時間なしですよ」
「一つ聞いてもいいかな。今、ここの路地に入っていった女の子に興味があるんだが」
「いやぁっ、社長もお目が高い。彼女なら内の店ですよ」
　俺は男に案内され、イメクラへ入った。お願いしまーすと男は一言残し、店外へ出て行った。受付の店員が愛想笑いをしながら待合室に案内してくれた。さっきの男が言ったとおりに待合室には誰もいなかった。店員が女の子の顔写真が多数並んでいるものをよこした。写真の中に化粧は濃いが明らかに美穂子の顔があった。その下にはナミとカタカナで名前が書かれている。迷うことなくナミを指名しコースを選び、料金を払った。

　部屋に入ると小さなベッドが左側の壁の隅にあり、正面には事務用の机、右の壁には棚があり、中には書類を整理するバインダーが何冊か並べられていた。ベッドがあることを除いては小さなオフィスといった雰囲気を存分にだしていた。すぐに扉をノックする音がしてＯＬ風の服装をしている美穂子が入室してきた。スカートの丈はショーツをギリギリ隠しているといった短さである。
「いらっしゃいませ…」
　美穂子は軽く頭を下げ挨拶をして、顔をあげた。美穂子は俺の顔を見て大きな瞳を丸くしている。突然の知り合いの訪問に言葉を失っているようだ。
「あれ、君は…山田さん…」
　俺は初めて気づいたようにとぼけた声で言った。
　美穂子は視線を下にずらした。頬はたちまち赤く染まていた。
「写真を見て君に似ている子がいると思ったら、まさか、本人だったとは…」
　俺はベッドに腰掛け俯いている美穂子の全身を目で舐めまわしながら言った。ミニスカートから見える足首がキュッと締まった綺麗な生足が俺の性欲を刺激する。
「お願い。誰にも言わないで下さい」
　美穂子はすがるような声で俺に訴えてきた。
「俺がそんな男にみえるかい？」
「…」
　美穂子は黙っている。
「田中さん。俺を信じてくれ。このことは誰にも言わないよ。だから、たっぷりとサービスしてくれ」
「上村さんを信じます」
　美穂子は意を決したように俺に視線を合わせながら近づいてきた。
「実は、俺、イメクラってはじめてなんだ。どうしらいい？」
「上村さんのやりたいように演技していいんですよ。例えば、ＯＬにセクハラする上司とか…」
「じゃあ。早速、始めようか。俺が君の上司で田中さん、いや、ナミさんが部下という設定で…」
「ナミじゃなくても、いいですよ」
　美穂子は照れくさそうに言った。
「わかった。田中さん。そこの資料とってくれる？」
　俺はデスクの椅子に腰掛けて腕組みをしながら言った
「はい」
　美穂子は棚のガラス戸を開き資料をさがすふりをしている。俺はすかさずに美穂子の背後に回りこみ、お尻を掴んだ。
「きゃ、やめて下さい」
「いいだろっ。美穂子…」
　美穂子は構わずに棚に向かっている。俺は美穂子の脇の下から両手をいれ、双の乳房をグッと掴んだ。
「あっ、やめてください…」
「いつも腰を振りながら俺を誘惑していたくせに。よく言うよ。本当はこうして欲しかったんだろ」
　白いワイシャツの上から乳房を揉み始めた。
「やっ、上村さん。怖い…」
　俺の迫真の演技に美穂子は引いた。当然であろう。本当に同じ会社に勤めている人間なのだから。

つづく