２

　俺は興奮する気持ちを押し殺してインターホンのボタンを押した。
　 ピーボーンピンポーン。
「はーい」
「こんにちは。役所のほうからきたんですけど」
「今、行きますからお待ちください」
　もっと、問答があると思ったが、あっさりと彼女は言った。
　心臓が凄い勢いで漠々と鼓動している。この瞬間がたまらない。チェーンを外す音がし鉄の扉がゆっくりと開かれた。
　奥さんは公園で見た時と同じ服装だ。香水の甘い香りが鼻腔にはいりこみ再び欲情を刺激する。ここではまだ我を失うわけにはいかない。俺は
「突然、すみません」
　と言いながら奥さんに名刺を手渡した。俺はこのような事を期待していくつかの架空の名刺を持ち歩いている。お役所関係、教師、弁護士、配達人…。
「どのような、ご用件ですか？」
「実は、奥さんもご存知だとは思いますが、このところ手抜き工事が問題になっていますよね。今日はこの公団マンションの建築調査にお伺いしたんですよ。建築課の○△の方から連絡ありませんでしたか？」
「はぁ、なんの、連絡もありませんが」
「あれ、おかしいな？連絡してあると思ったんですが、一寸確認してみますね」
　携帯電話をジャケットのポケットからとり、自宅の番号をおした。
「もしもし、吉田ですけど。今、○○団地を調査しているんだけど。高木さんの家に今日伺うことを連絡したよな？…まったく、しっかりしてくれよな」
　電話を切った。
「なんだか、手違いがあったみたいで、高木さんの家だけが漏れていたみたいです」
　 彼女の目をしかりと見ながら言った。
「はあ、そんなんですか？」
「簡単な調査ですので、ご協力宜しくお願いします」
「はい、いいですよ」
　奥さんは信用してくれたようだ。俺は玄関のドアを閉め、奥さんに続きリビングルームに入った。
　ソファーに座り奥さんと対面した。カバンの中からノートとボールペンを取り出した。
「すみませんが、お水一杯もらえます。高木さんの家で１０件目でのどが渇いちゃって」
「いいですよ。コーヒーでよかったですか」
　彼女は立ちあがりコーヒーを注ぎ、二つのカップを持ってきた。
「すみません。頂きます」
　コーヒーを一口飲んだ。
「なんか、おかしなところはありませんか」
「特にないですが」
「何でもいいんです。一寸でも気づいたところがあれば」
「えー、そうですね…」
　 彼女は考え込んだ。
「それじゃ、私の方から質問させていただきますのでそれにお答えください」
「はい」
　俺は適当な質問を続けた。
「なるほど、もしかしてあれかもいれないなあー。ちょっと、この部屋の図面ありますか」
「一寸、待ってください」
　彼女は立ち上がり別の部屋へと消えていった。
　チャンスだ。俺はカバンの中から強力な催淫剤を取り出し、奥さんの飲みかけのコーヒーカップの中へそれを10滴ほど垂らした。この薬は飲んで10分ほどで効果があるという代物だ。あるルートで手に入れたばかりで効き目の程はまだわからないが、長年付き合いのあるアダルトショップのオーナーのお勧め商品だ。
　奥さんが封筒をもち戻ってきた。
「これでいいですか」
　彼女はテーブルの上に封をおいた。
　俺は封の中から図面をだし、開いた。そして、図面を一通りチェックするふりをした。
「ううん。そうか、ここは問題あるかもしれないな」
　一人呟きながら、彼女がカップを手にするのを伺った。
(早くコーヒーを飲めよ)
　なかなか彼女がコーヒーに手をつけないことに苛立たしさを覚えた。
「少し時間がかかりますから、私の方はお構いなくコーヒーでも飲んでいて下さい。美味しいコーヒーだからもったいないですよ」
「じゃあ、お言葉甘えて、いただきます」
　彼女は苦笑しながらコーヒーを口にした。
「あっ、すみません。ここは奥様の家でしたね」
　慌てて言った俺にうけたのか、彼女は微笑んだ。

　そして、適当な会話をかわしながら、10分ほど時間が経った。彼女は少し前から足を何度も組替えている。そろそろ効果が現れられたのだろうか。
「有難うございました」
　図面を元に戻した。
「いいえ。なにか問題ありました？」
「うーん、図面的には特に問題はないようですね。ところで、ここにお住まいになられてどのくらいになります？」
「えー、今月で半年らいかな」
「もしかして、新婚さんですか？」
「えー、そうですが。それが、なにか関係あるんですか？」
　 不思議そうな顔でたずねてきた。
「はい、世帯調査の方も頼まれていますから、答えにくい質問もあるとは思いますが、最後ですのでご協力お願いします」
「はぁ」
「ご主人はどんなお仕事をされているのですか？」
「商社に働いておりますけど…」
「へー、商社マンですか。それなら、出張ばかりで奥様も寂しいでしょう？」
「えー、仕事ですからしかたありませんけど」
「一月にどれ位ご不在の日があります？」
「…」
「おかしな質問だとは思いますが。規程で決められているものですから」
「そうなんですか…月の半分くらいは出張です」
「今日は、帰って来られるのですか？　ご主人にもお話をお聞きしたいものですから」
「金曜日まで出張で戻ってきません」
「それでは、金曜日の夜にでもまた、連絡させていただきます」
「そうしてください。すみませんが用事があるのでそろそろよろしいですか」
　彼女は眉間に皺を寄せていった。苛々しているようだ。
(早く、1人になってオナニーをしたいだろう)
「わかりました。これで殆どの質問は終わりましたので、ご協力ありがとうございました」
　俺は会釈をし立ち上がった。
「すみません、トイレ拝借してよろしいですか？」
「どっ、どうぞ。そこを出て右手ですから…」
　声音が上ずっている。
「どうしたんですか、なんか顔色が悪いようですか」
　催淫剤が完全に効いているようだ。
「な…なんでもありません」
　彼女は頬は紅潮させ、もぞもぞと腰を動かしながら言った。
「そうですか。じゃあ、すみませんが、トイレお借りします」
　トイレに入った。ジッパーをおろし、まだ、半立ちの肉棒をとりだし尿を放ちだした。
(そろそろ、効いてきたみたいだな)
　これから奥さんを犯すことを頭に浮かべると肉棒がむくむくと雁首を持ち上げてくる。
　しっかりと支えていないと、おしっこは便座を飛び越えてしまうだろう。おしっこを出し切り、残った雫を飛ばすため竿を振った。
　さあ、いよいよだ。
　俺は小便を流さずにトイレから静かに出た。そして、玄関へ向かい鍵を閉めチェーンをかけ、リビングルームへ通じるドアをこっそりと開いた。隙間から彼女が虚ろな瞳でジーンズの上から陰部に指をあてていた。
(よし、完璧だ)
　そのことを確信した俺は、スラックスとブリーフをその場で脱ぎ、下半身だけを露にした。