≪洗濯≫


　私の手の中に一枚のパンティが握られている。
　ついさっき、彼女が脱いでいったものである。
　考えてみれば、ここで脱いでいくということは、このパンティを洗うのは私ということになる。
　正直そのことに気づいていなかった。浅はかだった。
　今更やめるわけにはいかない。それに毎日彼女を来させるためである。それぐらいの負担はやもえまい。
　しかし、ここには洗濯機はない。手洗いするしかないだろう。
　ホームセンターで、バケツと洗剤、それと柔軟剤を買ってきた。
　パンティをよく見ると、意外と汚れていない。
　壁に飾ったパンティも、さほど汚れていない。生理はあるはずなのだが・・・。
　お行儀がいいのか、汚れが少ない子なのか、やっぱり少女は違うなぁと思った。
　よく汚れた下着を好む男たちがいるが、その神経が理解できない。
　匂いを嗅ぐやつもいるが、バカかと思う。残念ながら私にはその趣味はない。
　やっぱり下着は清潔で清純なのがいい。
　この裏稼業を始めてから、特にそう思うようになった。
　色は、やはり白ベース。
　原色一色なのは、いまいち好まない。まして黒はいかん。
　豹柄なんてはいていようものなら、張り倒してやりたくなる。
　形も、Tバックは好まない。あれはパンティじゃない。ただの紐と変わらない。
　もちろん、おばさんが履くようなものも、幻滅である。
　意外と、パンティにはこだわりがあるのである。
　そんな、おじさんの気持ちを知ってか、この子のパンティは、ほとんどが私好みである。
　壁に飾ったパンティを見てるだけでも楽しい。
（新しいのも買ってきてやろう。）そう思った。
（この先、彼女には自分でパンティを買うことをさせないでおこう。）そう思った。
　バケツで手洗いを始める。
　やさしく、繊維を壊さないように、揉むような感じで洗う。
　他人が見たら、異様な光景なのかも知れない。
　中年男が、少女の下着を洗っている。
　薄笑でもしていようなら、まさしく変態オヤジなんだろうか。
　濯いだあと、柔軟剤に付けてやる。やわらかくしておかないと彼女がかわいそうだ。
　それに、見た目もその方がいい。
　洗い終わったはいいが、乾すところがない。
　ここは暗室にもなっているので窓がないのである。
　いくらなんでも、一度は日光に当ててやりたい。
　仕方がないので、３階の窓側に乾すことにした。ここなら下から見えないだろう。
（後に、遊びに来た、息子に見つけられるのだが・・・。）
　今日から、これが私の毎日の日課となるのだ。
　乾いた後、裏地に名前を書いてやろう。
「池畑中　福永美香」そう書いてやろう。


≪運動会≫


　10月のある日曜日。
　今日は、年に一度の、町内運動会だ。
　数年前までは、一度も参加したことはなかった。
　オヤジが死んでから、いろいろと役をやらされ、やむなく参加している。
　不思議なことに、これまで雨で中止になったことがない。
　今日も素晴らし秋晴れだ。
　長年の不摂生がたたり、腰を痛めている私は、残念ながらほとんど競技には参加できない。
　せいぜい、敬老会のじいさんばあさんと一緒に玉入れをする程度だ。
　何とも、情けない限りである。
　そのかわりと言ってはなんだが、我が息子に活躍してもらっている。
　彼は、陸上部で、そこそこ活躍しているようだ。
　運動会では、常にリレーに参加している。
　例年、中学１年生は、運動会の手伝いをさせられる。
　彼も、手伝いと選手と二足の草鞋で、大忙しのようだ。
　彼女、美香ちゃんも器具係りの手伝いをしているようだ。
　競技が終わると、器具を仕舞ったり、次の競技の器具を出したり、彼女もほとんど運動場に出っぱなしのようだ。
　初めて、彼女の運動服姿を見た。
　制服姿とは違い、新鮮な感じがした。
　ただ、残念なのは、ブルマーじゃないことだ。
　いつの頃からか、心ない教育者たちが、ブルマーを禁止してしまったからだ。
　今は、短パンである。
　何とも、趣がない。私は好きではない。
　やはり、体操着はブルマーが良い。
　ブルマーのゴムが食い込んだ、白い太もも。
　はっきりと形が確認できる可愛いお尻。どうかすると下着が見えたり、半ケツが見えたりした。
　たまには、食い込みも確認できた。食い込みを直そうとする仕草が良かった。
（昔はよかったなぁ。）つくづくそう思う。
　暇つぶしに、各町内のテントを見て歩き、知り合いに声をかけたりする。
　大沼町のテントに行くと、彼女のおじいさんが区長としてはりきっていた。
「ご苦労様です。たいへんですねぇ」
「天気が良くてよかったよ。うちの町内は若いもんが少ないから、大変でねぇ。」
「ひとりでいくつも参加せなあかんからねぇ。うちの息子も、朝から出っぱなしやはね。」
　テントの中を見ると、彼女の父親が、ぐったりした感で座っていた。
（若いんだから、がんばりなさい。娘のことは私に任せておけばいいから。）
（毎日、清潔な下着をはかせてやるから、安心しなさい。）
（娘の成長は、私がちゃんと見届けてやるから。）
　そう心の中で声をかけてやった。
　一日中、運動場の彼女の姿を追いかけた。
　お友達と、会話を交わし、笑っている笑顔が何とも可愛らしい。
　私の前では、あんな笑顔は見せていない。いつも緊張した顔つきでいる。
　パンティを脱がされるのだから緊張した顔でも仕方がない。
　逆に、笑いながら脱がされるような子であれば、こんなに執心しないだろう。
　昔、撮影会に出演させた子で、パンティを脱がされながら、ケラケラと笑っていた子がいた。
　脱がす方としては、なんだか興奮度が半減したものだ。
　恥ずかしそうに緊張していてくれた方がいいのだ。
　とにかく、普段の彼女が見れたようで、嬉しかった。
　私も頼まれた仕事をしなければいけなかった。
　写真屋の宿命なのだが・・みんなの写真を撮るように言われていた。
　できるだけたくさんの人を撮ってほしいと言われていた。
　もちろん、無償である。仕方がない。報酬をくれとは言えなかった。
　運動場に出て、何枚も撮った。
　しかし、意識的にカメラのレンズは彼女に向いていた。
　後で確認したら、3分の１くらいは彼女が写っていた。
　さりげなく、彼女に近寄り、後で店に寄るように告げた。