性欲

性欲

とうもろこし作

①

　朝から蝉がうるさく、ひどく蒸し暑い日だった。
　そんな朝でも目覚めは良かった。
　昨日の出来事が、俺の心を優しく包んでいたからに違いない。

　俺が住んでいるＫ町から電車で２駅のＯ町にある全国区の塾。
　その塾で同じ授業を受けていた女性に俺は惹かれていた。

　その女性はＮ女学院の制服を身に纏い、赤い縁の眼鏡を掛けた派手さはないが、しかし地味でもない端麗な女性だった。
　お嬢様とは違った何とも言えない雰囲気を持っていた。

　そんな女性に俺は一目惚れしていた。

　塾が終わり、駅に向かった。
　駅のホームに上がると、その女性が一人立って電車を待っていた。
　俺は女性に近づき声を掛けた。緊張と暑さで汗が滲んでいた。
　女性も塾での俺の存在に気づいていたようだった。

　ショウコ ― 女性は自分の名前をそう言った。

　ほぼ毎日ある塾も、帰りの電車を待つ時間でのショウコとの会話が楽しみで仕方なかった。
　ショウコは俺の話に笑顔で応えてくれ、俺もその笑顔を見ると心が躍った。

　お盆が過ぎて間もなく、俺はショウコに告白した。
　ショウコはコクンと頷いてくれた。

　その日からは電車を待つ時間以外にも、図書館での勉強など可能な限り会っていた。

　夏休みも終わりに近づいた頃、Ｔ町で花火大会があった。
　２人は最初で最後と決め、塾をサボり花火大会に行った。
　暗闇の中、花火で照らされるショウコの横顔は一層綺麗に見えた。
　いや、妖艶に見えたのだろう。

　俺はなぜか興奮に襲われた。この興奮は経験したことがある。
　友人から借りたアダルトビデオを見た時と同じような興奮である。
　俺は股間が熱く、窮屈になったのを感じていた。
　ショウコの手を握った。ショウコも握り返してきた。

　満員電車を避けるため、花火が終わってもしばらくその場にいた。
　手は繋いだままだった。
　周りに人の気配は無くなっていた。
　灯りは遠くの屋台のみのため、薄暗い。

　俺はショウコと唇を重ねた。
　そのまま、ショウコを抱き寄せた。
　心臓が激しく鼓動した。同様にショウコの鼓動も激しかった。
　俺の股間はズボンを突き破るかのごとく張っていた。

　花火会場から少し離れた静まった公園のベンチ。
　俺とショウコは一つになっていた。
　お互い初めてだったためか、下着をおろし性器同士を擦りつけ、そのまま俺の性器をショウコの性器にねじ込むというだけのセックスだった。

　それでも俺はショウコと一つになった幸福感で包まれた。
　アダルトビデオの見様見真似で腰を振った。
　ショウコは何かを我慢するかのように目を閉じ、吐息を漏らしていた。
　数分後、俺はショウコの性器の中で果てた。

　俺とショウコは塾帰りの時と同じように駅のホームで電車を待っていた。
　ショウコが乗るべく電車が近づいてきた。
「大好きだよ。」
　そう言ってショウコは電車に乗り込んだ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　俺の名前は、タケル。１８歳。

　第１志望だったＷ大学に現役で合格した。
　Ｗ大学は住んでいるＫ町から離れているため、一人暮らしすることになった。

　恋人のショウコも当然のようにＷ大学に合格した。
　ショウコも一人暮らしをスタートさせる。
　俺とショウコが借りたアパートは大学を中心にして正反対の２ｋｍほど離れていた。

　入学してから俺はサッカー部に、ショウコは写真部に入部した。
　お互い学部もサークル活動も別となり、会うのは夜だけだった。
　しかし、その夜でお互い十分に満足だった。

　晩ご飯を食べ終わり、片付け、テレビを見るのも束の間である。
　俺とショウコはすぐに体を重ねるのだ。

　ショウコの潤った唇、形の整った乳房、桃色の乳首だけでなく、腋や臍、背中など十二分に舐め回す。
　整った顔立ちとは裏腹に、ショウコの股間は黒く生い茂っている。
　股を開き、ショウコの陰部を優しく愛撫する。
「アァッ、ンンッ。」ショウコは喘ぎ声を発する。
　俺の指はショウコの愛液でふやけている。

　ショウコは、御礼と言わんばかりに俺への奉仕を忘れない。
　俺の乳首を指でなぞり、舌で舐め、吸い付いてくる。
　俺のペニスは血管が浮き出し、脈打っている。
　そんなペニスをショウコは口いっぱいに頬張る。
　歯が当たらぬよう丁寧に唾液で包み込み、舌を上手く這わせる。
　亀頭のカリ部分や裏筋の辺りを舌先で巧みに刺激を与えてくる。
　俺のペニスは先ほど以上に赤く膨れ上がっている。
　そんな俺の顔とペニスを交互に見ながらショウコは微笑んでいる。
「タケル君、気持ちいい？」ショウコは俺のペニスを優しく握ったまま問う。
　俺は頷き、ショウコを仰向けに寝かせた。

　ショウコの陰部に俺はペニスを押しつけた。
　ショウコの愛液が潤滑油となり、ペニスはショウコの膣へと包み込まれていく。
　生温かく、独特の肉感が俺のペニスを刺激する。
　それに呼応してショウコも声が漏れるのを我慢するかの如く、喘いでいる。
　前後に振る腰のスピードに緩急をつける。
「アァン、アァッン、ンンッ」
　ショウコは覆い被さる俺を抱きしめ、膣を収縮させる。
　そんな刺激に俺は射精感を感じずにはいられない。
　こみ上げる射精感をギリギリまで我慢し、ショウコの膣に激しくペニスを突く。
　ショウコは一層喘ぎ声のトーンを上げた。

　睾丸から亀頭にかけて凄まじい快感に襲われる。
　それと同時に俺は大量の精液をショウコの腹の上に放出した。

　ティッシュを２、３枚抜き取りショウコに渡す。
　ショウコは自らの陰部を拭き取ったあと、俺のペニスを咥える。
　俺のペニスはショウコの愛液と精液が混じりあい、白濁した液体がこびりついている。
　そんな液体を舌で綺麗に舐めとり、俺とショウコは抱き合いながら眠りにつく。
　そんな日々を繰り返していた。
　これからもずっとこれが続くと思っていた。
　続けばいいと思っていた「はず」だった。

　雨の降るある休日。梅雨入り宣言されたと朝の情報番組が放送されている。
　この日は前日にサッカー部の試合があったため、部活もない。
　試合に出場し、多少の疲労感が襲う。今日一日何をしようか考えていた。
　ショウコは写真部での活動があるようだ。

　ダラダラと過ごしていたが、昼前にはアパートを出ていた。
　向かった先は、同じ学部の友人であるコータの家。
　お互い暇だからと街に繰り出すことにした。

　目的もなく街を練り歩き、道ばたで缶コーヒーを飲みながら、他愛もない会話をしていた。
　すると、コータは通りがかった女性２人に声を掛け始めた。
　女性２人も暇をしていたのか、足を止め、コータとの会話を楽しんでいる。
　コータは俺を指さした。２対２で遊ぼうとでも言ったのだろう。
　俺は何となくついて行き、４人でカラオケＢＯＸに入った。

　特に誰が歌う訳でもなく、たまたま隣に座った女性と会話をした。
　女性の名前はミホ。年は俺と同じだった。
　ミホは決してスタイルが良いとは言えないが、愛嬌のある可愛い女性だった。
　ミホの明るい性格のおかげか、話は盛り上がった。

　カラオケＢＯＸを出ると、辺りは暗くなっていた。
　コータはもう１人の女性と共に去っていった。
　残された俺とミホは、去っていく２人の背中を見ていた。
　俺は帰ろうかと考えていた。
　ミホは黙ったまま俺の隣に立っていた。

　その場で解散するのを躊躇った俺はミホを誘い近くの飲食店に入った。
　２人きりになったからなのか、場の雰囲気が変わったからなのか、ミホは先ほどよりもやや大人しく感じられた。
　食事を終えて帰路につこうとした。
「タケル君、時間あるなら私の家に来ない？」そうミホは言ってきた。
　正直、食事をしている最中から誘っている雰囲気を察していた。
　俺から誘うのを待っていたのだろうか？
　俺はそんなミホの誘いには乗らず、適当に言い訳を残し今日のところは帰ると告げた。
　ミホは「そっか・・・。」と呟いた。
　駅までミホを送り届けた後、俺は家に帰った。

　ミホと名乗る女性と出会った今日という日。
　この日が全ての始まりだったと気づくには遅すぎた。

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【次】

2014.11.1掲載