�A仁科 冴子（医学部）

　薬のテストと資金の調達を兼ね、銀行の金庫を数箇所襲った。
　襲ったと言っても、元々資金は瞬間移動でいつでも手に入るので、二の次だった。
　透明になって人のそばに行った時、気配は感じるのかどうか、テストしたかった。
　街を歩いてすれ違う人の反応を見たり、傍に座って反応を確かめたりした。
（完璧な薬だ･･･人ひとり抹殺した甲斐があったな）
　遊び心で、街で見かけた一番いい女の家に透明になって瞬間移動した。
　全く僕の存在には気付かず、部屋で素っ裸になってオナニーをしたり、シャワーを浴びたりして、平気で過ごす女を見て、具体的な活用方法を考えていた。

　医学、理工、電子工学、文学、芸術･･･などの各分野からターゲットをピックアップした。
　これらのヘッドに弥生をつけ、統括させようと考えた。
　先ずは、医学部の「仁科 冴子」だ。
　彼女の才覚は周知の事実で、外科が専門だが精神科までカバーできる技量と知識があった。
（冴子は難しい･･･彼女を洗脳に近い形で僕に心服させるのは至難だろう）
　僕は彼女をしばらく観察することにした。
　大学で自宅で、何か困ったことや悩みが無いか、注意深く観察を続けた。
　チャンスは意外と早く訪れた。
　冴子にも原因が掴めない患者がいたのだ。
　その患者は何の前触れも無く意識を失くすということだが、検査を繰り返しても何もでない。
（ＣＴにも何も出てこない･･･このままじゃ、わたしは無能呼ばわりされかねない･･･）
「仁科冴子さんですか？僕は、法学部の芥川です」
　冴子は急な問いかけに目を丸くして僕を見ていた。
「すみません、驚かせまして･･･、実は僕も多少ですが医学の心得がありまして、あの湯川さんという患者さんのことで、ちょっと･･･」
「何ですか？いきなり、失礼でしょ！」
「えぇ、失礼なのは承知の上で、急ぎお知らせしたほうがお役に立てると思いまして･･･」
　今の冴子は藁にもすがりたい心境だったので、真剣な表情で正対した。
「依然見た患者の特徴と良く似ているので･･･、ひょっとしたら同様の原因が考えられるかと･･･、その患者も通常検査では原因が掴めなかったのですが、端的に申し上げますと、前頭葉の下床部分のＣＴでは映らない箇所に腫瘍がありまして、それが圧迫して意識障害を」
「そ、それで、その患者は？」
「勿論、手術で腫瘍を取り除き、今では普通にしていますよ」
「そう･･･そうかもしれないわ･･･」
「それと、余計なことかもしれませんが、今日はいつものコンビニに行かないほうが･･･」
「どうして？」
「いえ、ただ、なんとなく、危ない目に遭いそうな気がして･･･」
「そう、ありがとう、参考にさせていただくわ･･･、芥川さんでしたか、不思議な人ですね」
「えぇ、よく言われます、それより、くれぐれも気をつけてくださいね」
「･･････」

　数日後、大学近くの喫茶店で再会した。
「おひとりですか？」
「えっ？あぁ、どうも･･･よろしければ、掛けませんか？」
「どうも･･･、先日は本当にありがとうございました。正直、助かりました」
「湯川さん、でしたか･･･、いかがでした？」
「えぇ、あなたの仰った通りでしたわ。おかげで、わたしも何とか･･･」
「そうですか、それは何よりでした。それと･･･、例のコンビニは？」
「えぇ、そちらも、びっくりしました････いつも通りに帰宅前に寄ってたら、強盗騒ぎに巻き込まれていたかも、そう思うと、鳥肌が立ちましたわ」
「それはそれは･･･良かったです」
「それにしても、どうして、お分かりになったんですか？」
「いえ、あなたのことを考えていたら、急にそんな気がしまして･･･虫の知らせですかね」
「そうなんですか･･････？ところで、今度、遺伝子の･･･」
「いや、話しの腰を折って申し訳ありませんが、僕が思うに、あなたは大学病院のレベルで終わる方では無いと思いますよ。もっと、世界のために貢献できる才能と技量を持ってらっしゃる。ご自分を真に生かすことをお考えになったほうがいいと思いますが･･･」
「それは･･･具体的にはどう言うことなのですか？」
「簡単に申しますと、僕と一緒に世界を舞台にしたらどうかと･･･」
「よく分からないわ･･･どうして、わたしがあなたと一緒に活動できるの？確かに、あなたは人にない魅力があります。でも、だからと言って、即、一緒に･･･とは」
「そうですね･･･それでは、もうひとつ、予言めいたことをしましょうか、それで、もしも、実証されれば、僕の言うことに真実味が増すと思いますが･･･」
「そうね、何もかもが、あなたの言うとおりならば、そうかもしれませんね」
「ここ２〜３日中に、あなたの傍に僕が居てほしい時に僕が現れる･･･そう予言しましょう」
「そんなこと･･･有り得ないと思いますよ、いいんですか、言い切っちゃって」
「えぇ、では、今日は･･･、楽しみにしてます」
　そう言って、僕はレシートを手に席を立った。
（ホント･･･不思議と言うか、変と言うか･･･、妙に惹かれる人ね、彼って･･･）

　それから２日後、冴子は例の湯川さんの腫瘍摘出手術に立ち会っていた、
「あ〜ぁ、お疲れさまで〜すっ･････」
（良かったわ、無事に済んで･･･これも彼のお陰かしら･･･、それにしても、いつものことだけど、手術の日はストレス溜るわ〜、早く帰って休みたいわ･･････）
　冴子は自分のマンションの近くで軽く一杯飲んでから部屋に戻った。
　２ＬＤＫの部屋に灯りを点け、郵便をチェックした後、シャワーを浴びた。
「ふぅぅ･････いぃ〜気持ち･･･やっと落ち着いたわ･･･、でも･･･こういう日は誰か居てくれれば」
　髪をバスタオルで拭きながらベッドルームに入った。
　三面鏡の前で髪を乾かしブラッシングして肌に化粧水をつけた。
「こうして鏡に映る自分のヌードって、何か侘しい感じがするわね･･･どうしてひとりなのかしら？顔もスタイルも悪くないと思うけど･･･、最近、医学ばっかり･･･、さぁ！もう、寝よう！」
　そう独り言を呟いて窓のカギを確認してベッドに入った。
「あっ、あぁ〜ぁ、あぁぁぁ･･････」
　裸で寝るのが習慣なのだが、今日は、イライラするせいか、指が自然と濡れた淫裂をなぞり、乳房を揉みながら悶々とした夜を過ごしているうちに寝入っていた。
「ほぉ〜･･･よく寝てるなぁ、先ずは薬を･･･」
　僕は冴子の寝てる部屋に移動してきた。
　今日用意した薬は媚薬なのだが、即効性が強い漢方の処方で、飲み薬だった。
　僕は傍に行かず、手のひらの丸薬を冴子の口に念じて運び飲み込ませた。
　まもなく、ベッドの上の冴子の様子に異変が起きていた。
　眠ったまま肢体を捩り、指を淫壷に挿入して悶え始めた。
「あぁ･･ん････うっ、あっ･･･あぁ･････ダメ･･もっと、もっとぉ〜あぁぁあああ･･･」
　欲求が満たされない状況が続いていた。
（もう、いい頃かな･･･？）
　僕は満を持して冴子が欲情して悶えるベッドに向かった。
「大丈夫ですか･･･？冴子さん･･･」
　冴子の耳元で囁くと、二重の大きな瞳で僕を見た。
「キャァ〜ッ、どうして？どうして、ここにいるの？」
　冴子は裸の身体を手で隠しながら僕に言った。
「えっ？だって、言ったでしょ、あなたが僕を必要とした時に現れるって･･･」
「どうして、今、あなたが必要なの？」
「必要だって、あなたが念じたから、僕は来たんですよ」
「そんなぁ･･････、それより、どこから入ったの？ここは１２階よ」
「だから･･あなたが悶々として、自分だけでは満足できないって思ったから･･･、あなたの想いが強かったから、僕をここに引き寄せたんですよ」
「じゃぁ、わたしの想いが産んだ幻･･･なの？」
「幻かどうか、試してみればいいんじゃないのかな〜」
「････････」
　冴子は躊躇っていたが、身体の奥の強い欲求が、その躊躇いを打ち消した。
「あぁ･･･今日は、どうしようもなく疼くわ･･･、一体どうしたのかしら？」
　僕はそのままの姿勢で、ベッドの傍に立っていた。
　冴子の手が僕のズボンに伸び、無言のまま、下半身を裸にした。
「うっわぁぁあ〜〜すご〜ぃ！もう、堅くて太くて･･･、ねぇ、頂戴･･････」
「････････････」
「もう･･･我慢できないわ」
　冴子の手は僕のそそり立った肉棒を掴み、間髪入れずに口の中に含んでしゃぶり始めた。
　チュバチュバ･･ジュルジュル････
　しばらくして立ち上がると、僕の上半身も裸にして、胸を擦り口唇を這わせた。
「ねぇ、オネガイ･･･、してぇ･･ねぇ〜イレテッ！」
　ご希望通り、前戯も無く、冴子の太股の中心から脳天まで貫くように、肉棒を挿入した。
「うわぁぁ〜いいわ〜太〜ぃ･･擦るぅ〜あぅっ････あっ、ふぅぅぅ･･･」
　冴子は夢中で腰を動かし、肉棒から快感を貪ろうと、形振り構わず喘ぎ悶えた。
「いぃいぃ、もっと突いてぇ〜強くぅ〜〜あぁぁあああ･･い、いぃ〜壊れるぅぅぅ････」
　僕は肉棒を入れたまま、冴子の身体を反転させ、続けてバックから激しく突いた。
「うわわわ、ああぁぁぁあ････、す、すっご〜ぃ･･チ××ン、ぶっとぉ〜ぃ･･チ××ン」
　冴子の後ろから突かれる姿は、仰け反り吠え、淫らな言葉を吐き、まるで雌獣だった。
「いいのぉ〜いいのぉぉぉ〜〜〜今日はいっぱい感じるぅのぉぉおおお〜〜〜」
　冴子は休まず求め、僕も力強く負けじと応えた。
「うわっっ･･･うっ、あああっ･･、あうっ、うぅわああああっ･･･っ･･いぃ、い、く、ぅ〜〜〜」
　蓄積されていたものが堰を切ったように一気に噴き出し、冴子の身体の隅々まで快感が浸透した。
「はぁ、はぁ･･はぁ････、ごめんなさい･･･わたしだけひとりで乱れて･･昇り詰めちゃって･･･、ふぅうぅぅ･･･やっぱり･･あなたの･･言うとおりに･･･なったわね･････」
「だから、言ったでしょ、そうなるって･･･、約束ですよ、僕と一緒に世界に出ましょう〜」
「わ、分かったわ･･･、今度、ゆっくり聞かせて･･･、でも、今日は･･･もう･･だめぇ･･････」
　そのまま冴子は、深い眠りについてしまった。
　僕は全裸の冴子を鑑賞しながらキスをし、羽毛布団を掛けて、その場から去った。

　次の日の日中、僕と冴子は大学病院の手術台の上で淫交し、その次の日は、同じく病室の個室で、朝まで休まずに快感を貪りあった。
　やっと、僕の構想を話して了解を得たのは、１週間も経ってからだった。
「あなたのオ×××ンって、どうしてあんなに太くて堅いまま長時間できるの？　まぁ、その虜になってるわたしが言うのも変だけど･･･」
　そんな可愛いセリフを残して、全国各地に旅立った。
（これで･･･ひとり、獲得！）