15．高木 涼子（37歳）

　秋が近づいた昼下がり・・・
　まだ夏の太陽が眩く、身体中の汗を呼んでいるかのようだった。

　涼を得るためと、予てから調べてみたかった本を読もうと、図書館へ足を運んだ。
　常緑の樹木に囲まれた一角は、木陰になるとヒンヤリするような空気にホッとした。
「気持ちがいいなぁ〜ここを歩くだけでも来た甲斐があった・・・」
　自動ドアが開くと、すぐに多くの書籍の匂いに包まれた。

　まっすぐに日本文学の収納コーナーに行き、目的の本を探し始めた。
　中原中也・・・詩集ではなく、彼を評した本を幾つか読みたかったのだ。
　同時代の文学者や近代の評論と自分の洞察を比較してみようと、少々生意気な発想だった。
　小林秀雄の書いた本に手を伸ばした。
「アッ！」
　同じ本に２本の手が同時に伸びていた。
「あっ、すみません！」
「あ、いや、こちらこそ」
　ふたりは同じように片手に何冊かの本を抱え、顔を見合わせた。
　どこか幼さの残る小作りな顔をした女性が会釈をして手を引っ込めた。
　同様にこちらも素早く手を引いてペコリと頭を下げた。
「どうぞ〜まだ同じ本はあると思いますので・・・」
「そうですか、それじゃぁ遠慮なく・・・」
　とりあえず、今抱えている本を持って読書コーナーに向かった。

　テーマ別に各作家の観点を比較してみる。
　それぞれの接点の違いか、発想の起点の違いか、とにかく面白くて、時間が経つのも忘れた。
（あとは家に帰ってからにするか・・・）
　数冊の本を抱え、貸し出しカウンターに向かった。
「すみません〜」
　係りの女性に声を掛けた。
　すると、同時に声を掛けた女性がいた。
　あの女性だった・・・。
　小林秀雄の本で一緒になった華奢な女性とまたまた出くわせた。
「あれっ？また、あなたですか？」
「あら？ホント、よくぶつかりますねぇ〜」
「今度はあなたがお先にどうぞ・・・」
　図書館司書の女性がふたりを見て声を出さずに笑っていた。
　とにかく貸し出しの手続きを終え、外に出ようとした。
「先ほどのお礼にお茶でもいかがですか？」
「いえ、わたしのほうこそ、譲っていただいて・・・」
　カウンターのそばでやりとりをしている姿を見て、司書の女性が何やら意味ありげな笑みを向けていた。
　美的な顔立ちで冷たい感じのする女性だったが、目の表情が気になった。

　ふたりはそのまま図書館の傍を流れる川のそばにある喫茶店に入った。
　ゆったりとした造りの静かなお店で、ふたりはお客のいない中二階の奥の席に座った。
「なんか不思議なご縁ですね」
「そうですね、波長が重なっていたと言うか・・・なんと言うか・・・」
　ふたりはウェイトレスにそれぞれ飲み物を注文した。
「わたしは抹茶を・・・」
「僕はコーヒーを・・・」
　喉が妙にカラカラしていた。
「抹茶ですか・・・？イメージ合いますねぇ〜」
「そうですか・・・いつもの習慣で・・・」
「ところで、もしかすると学校の先生ですか？」
「えぇ・・・わたしは高木 涼子、中学校で国語の教師をしてます。あなたも同じなんですか？」
「僕は上杉 達也、普通のサラリーマンです」
（いくつぐらいかな？３０代半ば？独身じゃないよな〜）
（４０代かしら・・・結構、趣味が合いそうだわ・・・）
　涼子はスラリとした肢体を斜めにして、細くて白い足を組んで座っていた。
　達也は涼子の華奢で小さなわりには肉付きのいいヒップラインに、目を奪われがちだった。
　達也は中肉中背であまり特徴のない感じだったが、なぜか興味を引いた涼子だった。

「それじゃぁ、中原中也は？」
「高校時代から傾倒していて、この年になってもまだ凝っていて・・・」
「そうなんですか、でも、いいですよねぇ〜中也の詩は・・・」
「えぇ〜何点かに曲をつけて歌ったりして・・・」
「そうなんですかぁ〜聞いてみたいですね〜」
「ところで教師って大変そうですね・・・ストレスが溜りませんか？」
「そうね・・・いろいろあって、毎日がストレスって感じかしら・・・」
「今日も資料探しですか？小林秀雄の評論・・・」
「いえ、あれは・・・泰子の生き方に興味があって、それでチョット・・・」
「へぇ〜泰子ですか・・・ん〜何とも言えないな〜男の立場では・・・」
　時間が経つのも忘れ会話に夢中になっていた。
「あっ、すみません。あなたとの会話に時間を忘れてしまい・・・。お帰りにならなくていいんですか？もう、夕食の支度の時間では・・・」
「いぇ、いいんです。ひとり暮らしですから・・・」
「独身なんですか？」
「いぇ、主人は単身赴任で、１ヶ月に１日帰ってくるかどうかで・・・」
「それは気楽なようで・・・やっぱり寂しいですよね〜それじゃぁ、帰ってきた時は、ご主人のお相手で大変ですね？」
「えっ？」
「だって、たまに会えば新鮮な感じがして・・・いいんじゃないですか？」
　達也は目の前の涼子が、たまに会う亭主と乱れあう姿を一瞬想像した。
「そんなこと〜ありませんよ！上杉さんのほうこそ、早く帰らないと奥さんに叱られますよ！」
　涼子は少し顔を赤らめながら否定した。
「それがまた不思議なことで・・・実は〜僕も単身赴任でして・・・」
「えぇ〜っ！そうなんですか・・・なんか不思議なご縁を感じますねぇ〜」
「だから、いつも不自由してまして・・・」
「でも、たまにはお帰りになるんでしょ？そうしたら奥さんが離さないんじゃないですか？」
「女房は子供のことで頭がいっぱいで・・・だから、なまじ帰らないほうが、女房にとってはいいんですよ」
（そうかも・・・でも、それじゃぁ、本当に不自由してるのかも・・・）
「今日の夕食は、コンビニ弁当で済まそうと思っていたんですが・・・」
「えっ、それじゃぁ身体に良くありませんよ！ちゃんとバランスを考えないと・・・ご自分では作らないんですか？」
「ん・・・・やっぱり侘しいですよねぇ〜いつもだと・・・」
「そうですねぇ・・・」
　涼子は本当に気の毒そうな視線を達也に向けていた。
「あのぉ〜・・・・もしも・・・できたらでいいんですが・・・僕が材料を買いますので・・・本当に、できればでいいんですが・・・一面識で失礼ですが・・・奥さん、作っていただけませんか・・・？」
「えっ？・・・そうねぇ・・・・・・今日、初めてお会いしただけで・・・」
「そうですよね・・・やっぱり、無理ですよね・・・いいんです。すみません！初めてお会いした方に、趣味が合うというだけで・・・厚かましくて失礼しました。不審な感じがしますよね？」
「いえ、上杉さんは真面目そうな方だと思いますよ。いいわ！それでは今日は、わたしが夕食を作ってさしあげましょう〜」
　涼子はしばらく考えていたようだが、達也に同情したのか、同じ趣味同士ということで同調したのか、達也の提案を受け入れた。
　予想外の涼子の回答に達也は喜んだ。
「えぇっ！本当ですか？ホントにいいんですか？」
「えぇ・・・でも、お口に合うかどうか、責任は負いませんよ〜」
「勿論！最近家庭料理を食べてなかったので・・・嬉しいなぁ〜〜」
　達也の無邪気に喜ぶ顔を見て、涼子はチャメッケたっぷりな口調で応え、早速、材料の買出しに出かけた。

　ふたりを乗せた車は、新興住宅地のほうに向かった。
「この辺は、まだ新しい建物ばかりですね・・・」
　まだ全ての区画に建物が建っていない新しい住宅地で、その一角にある２階建ての家の前で車は止まった。
　涼子は車を降りて少し歩きながら達也に説明し始めた。
「この辺はまだ、うち１軒だけで、隣は道路の向こうなんですよ」
「ホントだ、ちょっと寂しいですね・・・夜なんか怖そうですね〜？」
「そうなの・・・だから、ひとり暮らしだと分からないように、いつも主人の下着なんかを干しておくようにしてるの・・・」
「そうですよね〜ここだと何があっても、なかなか気づかれないかな〜」
　そんな会話をしながら玄関を入り居間に通された。
　明るい感じの色調でまとめられた部屋はキチンと整理され、涼子はキッチンに荷物を運び、達也はソファに浅く座った。
「ゆったりなさってて・・・今、準備しますから〜くつろいでくださいね・・・。上杉さん、ビールでもお飲みになりますか？」
「あぁ、はい・・・すみません・・・お手伝いしましょうか？」
「いいですよ・・・わたしも久しぶりに自分以外の人のために作るのが、結構、楽しいなぁ〜って、思っているのですから・・・」
　涼子はビールを片手にやってきて、それを達也に手渡しながらテレビのリモコンを入れた。
　野球中継が流れ始め、なんとなくマイホームな感じがしてきた。
　何とも奇妙な感じである。
「おまたせしました〜こちらへどうぞ〜」
　涼子の明るい声がして、達也は料理の並んでいるテーブルについた。
「すごいご馳走ですね！なんか、とっても嬉しいなぁ〜」
「さぁ〜それはどうかしら・・・お口に合うかどうか？」

　ふたりは他愛もない会話をしながら楽しい食事をした。
「コーヒーを淹れますね〜ブラックですか？」
「えぇ、ありがとうございます」
　食後のコーヒーを居間で飲み始め、ふたりは旧知の関係のようだった。
「本当にご馳走様でした、奥さんはお料理が上手ですね〜」
　涼子は達也の屈託のない誉め言葉に嬉しくなった。
「そんなぁ〜上杉さんが美味しく食べてくれたことが嬉しいわ〜」
　ふたりとも日頃のひとりの生活の淋しさを忘れ、中原中也の話や文学全般の話しに花が咲き、時間が経つのも忘れていた。
「上杉さん、明日はお仕事ですか？」
（わたしは何を聞いているんだろう・・・？）
「いえ、土日は休みなので・・・」
「あっ、そうか、曜日感覚がなくて・・・フッ・・・馬鹿ですね、わたし・・・」
　涼子の話す仕草が可愛くて、達也は妙な気がしてきていた。
（今日、このまま、ここで・・・・・・人妻か・・・あぁ・・・これ以上は・・・）
　しばらく無言の時間が続いた。
　ふたりとも何かを言いあぐねているような雰囲気が流れた。

「あぁ・・・あのぉ〜水割りか何かお飲みになりますか？」
「そうですね・・・」
　まもなく涼子はクラシックをかけて、ウィスキーとミネラル、氷を持ってきて支度をした。
「ゆっくりしてくださいね・・・上杉さんとお知り合いになれて良かったわ！」
「僕のほうこそ嬉しいですよ、好きな詩人の話ができる方と知り合えて・・・」
　不自然な感じのする空気の中、ぎこちない会話が続いた。
「その上、お料理までしていただいて・・・本当に、今日はラッキーです。なんか、こうしているのが自然な感じで・・・不思議です」
「そうですねぇ、今日が初めてとは思えないですね、本当に不思議・・・」
　ふたりともアルコールが進み饒舌になっていた。
　特に達也は緊張していた分、ピッチが早くいい気分になっていた。
　先ほどまでの不自然な雰囲気はなく、妙な気負いのような堅苦しさも解けていた。
「これからはいつでも来てください。どうせわたしひとりですし・・・・男の方がいると心強いし・・・」
「でも、本当にこの辺は静かですね・・・奥さんのような魅力的な方のひとり暮らしは危険ですね・・・」
「またぁ〜上杉さんって、結構、お上手ですね・・・酔ってます？わたしのどこか魅力的なのかしら・・・？」
　アルコールで仄かに桜色に頬を染め、潤んだ瞳で達也を見つめた。
　その表情に達也はドキッとし、身体中が熱くなっていた。
「理知的な顔立ちに引き締まったプロポーション・・・優しい気配りに料理上手・・・もう言うことなしじゃないですか〜」
「あらあら、上杉さん、酔ってらっしゃるのね・・・こんな面白みのないおばさんなのに・・・どこを見てるんでしょう？」
「そんなことありません、素敵ですよ。僕なんか、もう・・・」
　達也は酔いのせいか、本音が出そうになるのをかろうじて抑えた。
「引き締まっているかどうか・・・分かりませんよ〜お腹がたるんでブヨブヨしているかも・・・上杉さんたら〜酔っちゃって」
　達也は頭がボォ〜として眠くなってきていた。
「上杉さん！大丈夫ですか？」
「・・・はい。奥さんは・・・素敵な方・・・です〜」
　そう言うと、スヤスヤと寝息を立て始めた。
「あらまぁ〜・・・本当に寝ちゃったわ・・・どうしようかしら・・・」
　涼子はソファーで寝息を立てている達也にタオルケットを掛け、どうしようかと考えあぐねていた。
（仕方ないわ、起こすのも可哀想だし・・・この間にお風呂に入っちゃおかな）
　グラスやウィスキーなどを片付け終わると、もう一度、達也が寝ているのを確認し、バスルームに向かった。

　涼子がバスルームに向かってから10分ぐらい経った。
　達也は窓から入ってくる夜風に目を覚まし、周りを見渡した。
（あれ？何だ、寝ちゃったんだ・・・あ〜ぁ、奥さんは何処に行ったのかな？）
「あのぉ〜すみませ〜ん・・・」
　何処からも返事がなかった。
（まいったなぁ〜どこに行っちゃたんだろ？バカだな・・・オレって）
　達也はフロアーをうろうろし、バスルームの前に立っていた。
　ドアの曇りガラスを透して涼子が身体を洗っている姿が浮かんで見えた。
（えっ！お風呂に入ってるの！あぁ〜〜〜、まいるな〜想像しちゃうよ〜）
　涼子は達也がドアの前にいることに気づいたが、今更、どうにも出来ず、声をかけようとはしなかった。
（上杉さん、目が覚めたんだわ。困ったなぁ〜・・・どうしよう・・・）
　声をかけたら・・・どうなるか・・・
　それを考えると自分が軽率だったことに初めて気づいたが、どうにもしようがなかった。
（彼って良識のありそうな人だけど・・・、単身赴任で奥さんとも・・・まさか、わたしに・・・なんて考えてもみなかったけど、やっぱり・・・そうよね・・・どうしよう）
　涼子は自問自答しながら、自分の軽率さを反省していた。
（どうしよう・・・？何かマズイよね、これって・・・いい人だけど・・・）
　達也もどうしようもなかった。
（声をかけて変に思われても困るし・・・向こうに戻ってたほうがいいかな・・・）
　そう思いながらも、ガラスに映る涼子のおぼろげな裸体から目が離せず、股間が熱くなって昂ってきていた。
（何してるのかしら・・・？変に意識しないで普通にしてないと・・・）
　涼子は高鳴る鼓動を抑えながら、スポンジで熟れ盛りの身体を丹念に洗い始めた。
　洗いながら、自分の身体の変化に気づいた。
（エッ？うそぉ〜・・・）
　自分の大事なところを洗っているとき、そこが潤っているのに驚いた。
（そんなぁ〜・・・まさか・・・わたしに限って・・・）
　教師という立場もあり、常に模範であるべきと言い聞かせてきた涼子には、それは青天の霹靂とも言うべき現象だった。
（わたし・・・何なの、これ？もしかして興奮してるってことぉ〜？）
　信じられない気がしながらも、現実に達也がすぐドアの前に居ること、自分が裸であること、そういう状況に自分が異常に反応していることなど、次から次へと状況分析していた。
　日頃、夫とのセックスにもあまり執着心を抱いてなかった涼子には、単身赴任で夫と離れても、さほど疼くなどということもなく、淡々とした生活に結構満足していた。
　実際、涼子の性生活は淡白なものだった。
　結婚するまで処女だった涼子は、夫だけが唯一の男だった。
　夫のモノを受け入れても、世間で言うような快感もなく、多分、世間が大袈裟に言ってるんだと思っていて、他の男性に性的興味など抱くはずもなかった。
（これは異常な状況に異常に反応しているだけで・・・決して自分が何かを感じているわけではないわ・・・）
　涼子が泡立った身体に湯をかけ洗い流した頃には、ドアの向こうに達也の気配はなかった。
　達也はとりあえず涼子がバスルームから出てくるのを待とうと思い、リビングに戻って昂った肉棒を鎮めようとしていた。
　涼子はホッとする気持ちと、何か落胆に似た気持ちが入り混じった心境だった。
（とにかく早く出なければ・・・）

　涼子はラフな服装に着替え、洗い髪が乾かないままリビングに戻った。
「あら？上杉さん、起きてらっしゃったの？」
「えぇ・・・」
　少々、達也はバツが悪かった。
　こっそり涼子の入浴を覗き見したような自分や、さっきまで股間を盛り上げていた自分が恥ずかしく、視線を落としていた。
「お話しの最中に上杉さんったら寝ちゃうんだもの・・・起こすのもなんだから、お風呂、先にいただいちゃいましたよ！」
「いやぁ〜すみません。ちょっと飲みすぎちゃって・・・」
「どうします？もう酔いは覚めました？」
「えぇ、もう、すっかり」
　涼子は冷蔵庫から取り出した冷たいミネラルウォーターで喉を潤していた。
（艶っぽいな・・・奥さん・・・湯上りのシャンプーの匂いが・・・）
　達也は入浴で火照った涼子の色づいた肌や、まだ濡れている髪の毛に、成熟した女の色気を感じていた。
　スカートからのぞく桜色に染まった太股はしっとりとしていて、吸い付きたくなるような衝動に駆られた。
「でも、汗をかいたんじゃない？やっぱりシャワーだけでも使いますか？」
「そうですね、そうさせてもらいます」
　なんとなくべとついたような感じがしていたので、とにかく汗を流してから帰ろうと思った。
（さっきまでここで奥さんが洗っていたんだよな〜・・・）
　そんなことを考えながらシャワーを頭から浴びていた達也の股間は、今までに経験したことのない興奮に再び昂っていた。
（奥さんは僕のことをどう思ってるんだろう？あまり意識してないから、親切心しかないんだろうな・・・）
　達也はもう長い間夫婦関係のない妻のことなど、頭から一切消えていた。
　それより今は涼子のことだけでいっぱいになり、どうしていいのか分からなくなっていた。

　バスルームを出ると、新しいシャツとパンツが置かれていた。
　涼子が夫の為に買っておいた新品の下着だった。
　パンツはボクサータイプのトランクスで、穿くと男のモノが強調されるような感じだった。
　達也は少し躊躇ったが着替えると、リビングに入った。
「なにもかもすみませんね、奥さん。お世話をおかけして・・・」
「あぁ、別に・・・それは買い置きがあったから・・・」
　そう答えた涼子の視線の先には達也のトランクス姿があった。
　トランクスの前は達也の昂りの象徴がこんもりとして、息づいているように見え、涼子は夫以外の膨らみにドキドキしていた。
「あのぉ〜ズボンはどうしたのですか？」
「あぁ、すみません、いつもの習慣で・・・風呂上りは少し冷ます為に、いつもトランクスだけで・・・」
「そ、そうですか・・・」
　涼子は夫以外の男の盛り上がった下着姿など今まで見たことがなく、口の中の渇きに舌で口唇を舐めていた。
（ふぅ〜・・・何をドキドキしてるの、みんな同じじゃない。旦那のはいつも見てたでしょ！）
　涼子は自分に言い聞かせながら平静を装っていた。
　それでもバスルームで潤っていたオンナのことを思い出し、自分の知らないオンナの感覚に息を荒くしていた。
（さて、これからどうしよう・・・？もう帰らないと、いくらなんでも涼子さんも怒るよな・・・）
　達也はソファに腰を下ろすと、いつ帰るか迷っていた。
　涼子はお風呂上りの水を用意し達也に手渡した。
「アッ！」
「ウヮッ！」
　手渡そうとした涼子の手が達也の手に触れ、思わず持っていたコップを落としてしまった。
「ごめんなさい・・・」
　達也のトランクスは水浸しになってしまい、慌てて立ち上がった。
　涼子はすぐにタオルを取り達也のトランクスを拭こうとした。
「いやぁ〜僕は平気ですから・・・ただ、せっかく用意していただいた新品のトランクスが・・・」
　達也の肉棒が水に濡れ、形が浮き彫りになって見えた。
　涼子はそれを目にすると胸が高鳴り、慌ててその場を立った。
（うわぁ・・・大きくなってるわ〜どうしよう・・・）、
「い、今、着替えを持ってきます」
　バタバタと涼子は買い置きをしまってあるタンスに向かったが、すぐに戻ってきた。
「すみません・・・もう買い置きがなくて・・・」
「大丈夫ですよ奥さん、でも・・・このままじゃあ・・・」
「そうですね・・・どうしましょう・・・時間が益々遅くなってしまうわ〜」
　涼子は掛時計を見遣りながら困惑顔で告げた。
「車もないし・・・タクシーを呼んで帰るとしますか」
「近所の目がありますから・・・あまり遅い時間に男性が出て行くのは・・・」
「それでは、明日の朝、早くにここを出るとしましょう・・・それまでは、いいですか？」
「えぇ・・・せっかく楽しい夕食だったのに・・・すみませんね〜」
「いえ、こちらこそ、ご迷惑をお掛けして・・・」
　しばらく談笑していたふたりだが、いつまでも一緒にいるわけにもいかず、涼子は達也が仮眠できるようにしようと思った。
「遅くなりましたね・・・それじゃぁ、そちらに寝床を用意しますから・・・眠くなったら休んでください。わたしは、自分の部屋にいますので・・・」
「ありがとうございます・・・」
　達也は腰にバスタオルを巻き、別室に案内された。
「わたしの部屋は二階ですので・・・何かありましたら起こしてください・・・」

　涼子にとっては何がなんだか分からないような時間が過ぎた。
　今までにない経験をして、自分でもどう対処していいのか分からなかった。
　自分の部屋に入り、ひとりになってしばらくすると、やっと落ち着きを取り戻した。
（どうして泊めたりしたんだろう・・・？こんなことが近所や夫に知れたら・・・）
　何もないとしても、男を泊めたことが知れれば問題になる。
　涼子は慌しく過ぎた時間を振り返りながら、善後策を考えていた。
（とりあえず一段落着いたから・・・あとは明日の朝早く帰ってもらって・・・）
　そうそう・・・それがいい・・・などと涼子は独り言を言いながら、眠りについた。
　いろんなことがあった一日が終わり、疲れていた涼子はすぐに深い眠りについた。

　何時なんだろう？涼子は妙な音に目を覚ました。
　ミシッ、ミシッ、ミシッ、・・・・・・。
（階段を上がってくる足音？・・・誰？・・・上杉さんしかいないわよね・・・）
　廊下を行き来する気配が涼子の部屋の前で止まった。
（外からなら一階の上杉さんが先に気づくから・・・上杉さん・・・？まさか・・・）
　涼子はベッドの中で息を殺して耳を澄ませ、ドキドキしながら全身を固くしていた。
　部屋のドアが開く音がした・・・。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
　達也の荒い息が部屋に響いていた。
（やっぱり・・・上杉さん、息を荒くして・・・わたしを・・・あぁ〜どうしよう・・・）
　抑え気味に呼吸する音が静かな暗闇の中では大きく聞こえた。
　寝床に入ったが、どうにも寝付けず、思い切って涼子の部屋に向かったのだった。
　布団に入って寝ようとしたのだが、どうしても股間のモノが鎮まらず、イライラしていたのだ。
　暗闇に目を凝らし、涼子の寝ているベッドに足を進めた。
　涼子はもう何もすることが出来ず、ただじっとしていた。
（お願い・・・やめて！上杉さん・・・）
　涼子は目を固く閉じ身を頑なにして息を殺していた。
　達也はベッドの足元に回ると、ようやく暗闇に目が慣れ、涼子の寝姿がしっかり見えた。
「こんな気持ちになったのは初めてなんだ・・・奥さん・・・僕の想いを受け止めてほしい・・・」
　寝ているであろうと思っている涼子に、達也は小声で呟いた。
「奥さんと一緒の時間を過ごしているうちに、どんどん奥さんへの気持ちが募ってきて・・・どうしてこの気持ちを伝えればいいのか分からないまま時間が過ぎて・・・」
　達也の呟きを聞きながら涼子は次第に全身から力が抜けていった。
（上杉さん、そんな風にわたしを想ってくれてたなんて・・・だからあのときもバスルームに入ってこなかったのね、・・・なんか嬉しい・・・こんな気持ち・・・不思議な気持ち・・・わたしも惹かれていたのかも・・・）
　達也はそぉ〜と羽根布団を取ると、涼子の浴衣姿が目に入った。
（浴衣だ・・・）
　達也の胸の鼓動は限界に達しようとしていた。
　ドックン・・・ドックン・・・
（鎮まれ！俺の鼓動・・・これ以上、・・・）
　涼子はあくまでも眠ったフリを続けた。
　夫以外の男と関係のなかった涼子は、どうしていいのか分からないと言うのが本音だった。
　それでも、達也を受け容れようという気持ちで待っていた。
　達也は涼子の浴衣の帯を優しい手つきで解いた。
　浴衣の下は何もなく、涼子の華奢な身体に不釣合いな形の良い乳房が現れた。
　目線を落とすと白い小さな布が涼子の大事な部分を覆っていた。
（落ち着け・・・静かに引き下ろすんだ・・・）
　達也は飛びつきたい衝動を抑えながら自分に言い聞かせ、両脇から少しずつ引き下ろした。
　涼子の裸身が目に映った。
「素敵だ、奥さん・・・どうしても奥さんに僕を重ね合わせたい・・・いいですか？」
　反応のない涼子に向かって達也は優しい声で囁いた。
　達也にしてみれば精一杯、想いの告白だった。
　そんな気持ちが涼子に通じたのか、涼子は達也の為すがままに身を任せようと思った。
（わたし・・・ひとりの女として、あなたを受け止めたい・・・）
　達也はしばらく涼子の裸体を眺めていたが、涼子に寄り添うように横になり、右手で張りのある乳房をそぉ〜と包んだ。
（手のひらが吸い付くようだ・・・）
「奥さんの乳房、素敵です。キスさせてください」
　達也は片手で乳房を優しく揉みながら、もう一方の乳房に口づけした。
　乳首を口に含むと舌先で転がしながら、乳房全体を壊れ物でも扱うかのように、指先で円を描きながらゆっくりゆっくり撫で始めた。
「あぁ〜〜・・・」
　涼子の口から我慢できなくなった快感の声が漏れた。
「お、奥さん・・・気づいていたんですか？」
「シ〜ッ、このまま続けて・・・静かに・・・おねがい・・・」
「いいんですね？奥さん！」
「奥さんはやめて・・・涼子って呼んで・・・達也さん・・・」
　達也はこれで吹っ切れたように意気を高め、涼子の身体に自分を重ねていった。
　達也の愛撫は乳房からきれいにくびれた腰に達し、肉付きのいい下肢におよんだ。
　優しく撫でながら舌先を這わし、足の指先まで丁寧に舐めていった。
　涼子の息は荒くなり、執拗な愛撫に自分で太股を擦り合わせ、身を捩った。
「あぁぁぁ〜もう・・・いぃ〜〜・・・こんな感じ初めて・・・」
　夫とのセックスしか経験のなかった涼子には何もかもが新鮮で、まるで生娘に戻ったような気さえしていた。
　達也はあえて涼子の秘密の場所には触れず、ゆっくりと身体をうつ伏せにした。
　首筋から背筋、ふくらはぎから太股へ、ゆっくり優しく撫で回しながら舐めた。
「きれいな肌ですね、涼子さん・・・僕の気持ちを感じてください」
「あぁ〜・・・いぃ〜〜達也、さん・・・」
　そう言うのが精一杯で、後は、荒い呻き声のような息を吐くばかりだった。
「素敵なお尻だ・・・柔らかくて張りがあって・・・」
　達也は両方の丘を指先でなぞりながら強く揉みしだき、張りのある豊かな感触を味わった。
　さらに両手で双つの丘を開き、舌先で涼子の菊の蕾を舐め上げた。
「うゎっ、あぁぁ・・・いぃ〜〜〜あぁ〜もっとぉ〜〜〜」
　涼子は初めて愛撫された新鮮で衝撃的な感覚に全身を震わせながら、心地よい快感に神経を集中させていた。
「どうして・・・そんなとこ・・・あぁ・・・気持ちがいいわ・・・・・・」
　恥ずかしさと快感が入り乱れ、涼子は自分が何を言っているのか分からなかった。
　ましてや忌み嫌う菊の蕾など舐められたこともなく、不浄な場所への達也の優しい行為だけで震えてしまった。
　達也はたっぷり涼子の菊の味を賞味し、また仰向けに返した。
　涼子の両脚を大きく開き、その間に自分の身体を置いて、涼子の大腿の付け根に顔を近づけた。
「フゥ〜・・・」
　達也は涼子の敏感な部分にそぉ〜と息を吹きかけ、愛液に濡れて光っている淡い恥毛を撫でた。
「あぁ〜〜〜〜・・・・そこ・・・はぁ〜〜・・・」
　涼子の表情を見ながら達也の興奮は次第に高まっていった。
　恥毛に覆われた涼子の淫唇は少し浅黒い印象を受けた。
　厚いその両襞を押し開けると、ヒラヒラした肉襞がくっつくように閉じて、その細った先には小さく薄い桃色をしたクリトリスがピクピクしていた。
　達也は優しい手つきでその小さな芽を指先で撫で、涼子の反応を待った。
「あっ、・・・・」
　小さく喘いだ声を耳にし、続けて唾液をいっぱいにした舌で目の周囲から先まで、時間をかけて丹念に舐めた。
　涼子の喘ぎは次第に激しくなり、お尻を浮かせたり捩ったりしながら、淫らな愛液を溢れさせていった。
「涼子さんの小さな芽、可愛いくて美味しいですよ」
「えっ、はぁ〜・・・い、ぃ〜・・・・」
　涼子は達也の頭を自分の股間に押しつけながら、身体の奥底から湧き上がりくる快感に足の指先まで痺れていた。
　いよいよ達也は涼子の淫壷の入り口を指先で両側に開いた。
　明るいピンク色の入り口は、まるで呼吸をしているように息づいていた。
　ゆっくり両サイドの壁を撫でながら息づく淫口の淵を丁寧になぞった。
「あぁ〜〜〜あ、あ・・・わたし・・・あぁ〜〜おかしくなりそう・・・」
「いいですよ、涼子さん・・・気持ち良く、おかしくなってください・・・」
　涼子の夫との性生活の中では考えられない快感が、次から次へと波のように押し寄せ、何がなんだか分からない状態だった。
　夫とのセックスでは、夫が射精すれば終わりって感じで、自分が感じることなど皆無だった。
　だから今日の体験は全てが未知の世界で、どうしていいのか分からないでいた。
　達也は舌先を尖らせ淫口の淵を突いたり舐めたり吸ったりして、涼子を絶頂へと導こうとした。
「涼子さん・・・今からあなたの奥に指を入れます・・・」
　達也は涼子の耳元に息を吹きかけるように呟くと、グッショリと濡れて溢れんばかりの膣に、ゆっくりと中指を差し込んでみた。
（お、おぉ〜・・・奥から押し返すように締めてくるよ・・・凄い・・・入り口も締まってきた・・・何なんだ、これは・・・名器だよ！）
　達也の経験の中でこれほどの器に出会ったことはない。
（この中に僕のモノを入れたらどうなるのかな？）
　達也はすぐにでも自分の分身を挿入したい衝動をかろうじて抑えた。
　差し込んだ指を奥まで入れると壁が押し返すように圧力を強くする。
　それでも押し返すと一瞬元に戻り、再び押し返されるという繰り返しだった。
「涼子さん、すごいですね！素晴らしいですよ、ここ・・・」
「えっ・・・？あぁ〜もぅ・・・変な感じ・・・あぁぁぁぁ〜〜〜〜た・つ・や・・・・」
　涼子は一気に昇りつめ達也の身体を両脚で強く挟み、小刻みに痙攣を繰り返した。
「あぁ・ぁ・ぁぁ〜〜・・・・・」
　余韻を惜しむように快感の波が涼子から遠ざかる。
　達也は間髪入れずに中に入れた指を涼子のクルトリスの裏側あたり、淫口からすぐの上側を擦るように撫でたり押したりしてＧスポットを刺激した。
「うっ、うぅ〜わぁぁぁ〜〜〜〜〜」
　涼子は今までに経験したことのない快感を感じ、大声をあげて喘ぎ悶えた。
　達也は涼子のアクメを確認しながら、なお刺激を強くした。
　早く、強く、リズミカルにＧスポットを押すように刺激し続け、涼子の表情に目を遣った。
　太股を強く併せたり指先まで突っ張るように伸ばしたりして、涼子には堪えきれない快感に身を捩った。

　しばらくすると呼吸の落ち着いた涼子は、達也に抱きつき激しく口付けをした。
「すごく、良かったわ・・・こんなの初めて・・・」
　そう言うと、涼子は達也の肉棒に手を伸ばしていった。
「どうすれば達也さんに感じてもらえるか分からないけど・・・」
　涼子は浅い経験と聞きかじりの知識で達也に感じてもらおうと、肉棒に手を添えゆっくりと扱き始めた。
　達也の肉棒はすぐに太さと大きさを増し、今にも暴発しそうな勢いで涼子の前にそそり立った。
「こんなになるんですね・・・なんだか不思議・・・」
　過敏な玉袋を両手でそっと撫で、肉棒の柔らかなカリの部分を口に咥えた。
「うぅ〜・・・いぃ・・・りょうこ・・・」
　涼子はそんな達也の反応が嬉しくて、エラの張ったカリを口の中でグルグルと舌で舐め回し、根元まで咥えて思い切り吸い上げたり、唇だけで上下させたりして、必死になって達也に感じてもらおうとした。
　達也は自分のモノを咥えて愛撫を続ける涼子の表情を見ると、もう限界を感じ始めていた。
「いぃ・・・いぃ、よ、りょうこさん、これ以上されると・・・イッちゃいますよ」
「いいですよ、涼子の口の中に思い切りイッてください」
　達也は一瞬迷ったが、
「涼子の素晴らしいアソコに僕のモノを入れ、ひとつにならないと・・・」
　達也の言葉に涼子の淫部は熱くなって淫らな液を溢れさせ、さきほど達也の指で感じた強烈な快感を思い起こしていた。
　達也は体位を整えると、堅く張りつめた肉の棒を涼子の熱い淫口にあて、ゆっくり挿入し始めた。
「うっうぅぅ・・・・・・・、はぁ・・・・・」
　涼子は達也の指による刺激で過敏になっていた淫部が、肉棒が挿入されただけで信じられないような快感を感じ始めていた。
　浅く入れたり深く入れたり、時には恥丘に押し付けるように回転させたりして、涼子のアクメを誘導した。
　涼子は達也が肉棒の挿入を繰り返すたびに、自分の中で何か大きな変化が起きているような気がしていた。
　涼子の淫口は収縮を繰り返し、達也の肉棒に射精を促すように圧迫を与えた。
「すご〜ぃ、ほんとに涼子さんは素晴らしい・・・・・・」
「うぅん〜達也さんのアレ・・・イィ〜・・・・」
　お互いの感覚を口にすることで尚更快感が強まり、すぐそこに絶頂の波が津波のように押し寄せていた。
「あっ、あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜あ、も、う、だ、め〜〜〜〜〜」
　涼子は何がなんだかよく分からないまま、湧き上がり来る快感に身体が自然と反応し、達也を強く締め付けた。
「うぉ〜〜〜、涼子さん・・・僕も、もう・・・・あぁ〜〜〜」
　涼子の締め付けに我慢できなくなった達也は、涼子の中に力強く射精した。
　そのまま、しばらくの間、動くものなどない時間が過ぎた。

　達也の肉棒はまだ涼子の中に入ったままだった。
　そぉ〜と涼子の尻に手を回し、菊の蕾に指の第一関節を差し込んだ。
「えっ、あっ、・・・・」
　涼子は菊の蕾に達也の指による不可思議な快感を感じ、達也を咥えて放さない淫口がキュゥ〜と締まるのが分かった。
「ぅぉ〜いぃ・・・・、あっ、いぃ・・・」
　達也の菊への刺激のリズムに合わせるかのように、涼子の淫らな口の収縮は達也を蘇らせた。
「あぁぁ〜〜〜大きくなるぅ〜〜また、あなたのでいっぱいよ・・・・はぁ〜〜」
　涼子は達也の肉棒が太く膨張する感覚をしっかりと淫口で感じ取っていた。
　達也はそのまま涼子の身体を反転させ、バックから責める格好にした。
「うぁ〜〜〜なんだか、恥ずかしい・・・・」
　そう言いながらも涼子はもう次に感じるだろう快感を期待し、尻を強く押し付けていた。
　後ろから突かれると前のときよりも深く感じ、Ｇスポットを直接突かれる格好になり、強い刺激を受けていた。
「いぃ〜いぃわ〜〜〜、あぁん・・・・・・・・」
　涼子は大きく押し寄せてくる新たな快感の波に身を任せた。
「あぁ〜おしっこを漏らしそう・・・・・・」
　恥ずかしそうに全身を快感で震わせながら、涼子は小さな声で呟いた。
　それでも達也の挿入の出し入れは止まず、なおピッチを早めていった。
　涼子は言いようのない快感にもうすべてを委ねていた。
　達也は肉棒の送出に合わせて中指を涼子の菊蕾に浅く入れ、挿入を繰り返した。
　突然、達也の下腹部に涼子の淫口から液が飛び出してきた。
「わぁ〜すごいよ、涼子さん。汐吹だね〜」
　涼子は何も分からず、かつてない快感に意識が遠くなりそうな感じがしていた。
　達也の前後への刺激が、涼子を未知の境地まで感覚を引き込んだのだった。
　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

　優しいキスを交わすと、ふたりは朝まで合体したまま眠りについた。
　窓の外が明るくなり、ふたりは惜しみながらも別れの時がきたことを感じていた。
「また、連絡して・・・・・」
「もちろん、君さえよければ、僕は・・・・・」
　まだ明けきれない戸外に、達也は人の目に注意しながら帰途に着いた。

　達也と涼子は、あれから逢瀬を繰り返していた。
　涼子の身体は達也によって目覚め、開花していった。
　今までに得られなかった快感や男女の営みがいかに素晴らしいものかを実感し、世界が変わったようだった。
　それに併せて達也も涼子の目まぐるしいテクニックの進歩に驚きの連続だった。
　時間の許す限りお互いに快感を与えあうことで、日々の充実感さえ感じていた。
（セックスがこんなにいいなんて・・・相性がいいのか毎日でもいい・・・・）
　涼子の家だけでなく、車でも・・・どこでも、愛し合う日々が続いた。