「ねえっ、温泉、入りたくない？」唐突に浮かんだ思いをおじさんにぶつけてみた！
　どう考えたって、今朝、初めて遭ったばっかりのおじさんに言う台詞じゃぁないわよね。そんな事承知の上よ！だって、まだ、おじさんの名前も知らないのよ。
「昼間っからお湯に浸かると、後が気抜けするからねぇ。」
「もうすぐ４時よぉ。」おじさんはあまり気乗りしないみたいだったけど、わたしはサッパリしたいのと、昨夜の言い渡した『別れ』を引きずってはいたくない思いから・・・。
「でもここまで来ているンだもの、やっぱり温泉に入りたいわ！・・・ねぇ。付き合ってよ！」って、云ったって、箱根に混浴は一軒しかないのよ。確か湯本にあっただけだわ。
「付き合って。って？そんな関係なの？・このおじさんに、ねぇ？・・・ここからだと、何処へ行くの？」
　多分、街で見掛けたらパッとしないおじさんなんだろうなぁ？とも思ったけれど、何か？とても『一緒にいたい』と思ったの。富士山を半周しただけのおじさんに、こんなこと云う羽目になるなんて、家から走り出した時には考えもしなかったわ！
「ここからだと、やっぱり元箱根ね？」１時間あれば着けると踏んだんだけれど・・・。
「元箱根かぁ。御殿場回りかぁ？・・・お付き合いしますか！」今朝プロポーションを披露したのが多少は効いているのかも知れません？言い出しても、ＯＫしてくれる雰囲気でもなかったんだもの。やっぱりおじさんってスケベ？

　十字路を４６９に乗り換えて、７０ｋｍぐらいだわ。
　富士山をほぼ一周した事にもなるのね。
「御殿場の北で１３８号に当たるから、南下して宮ノ下のＴ字路を右折だわ。その方が早いでしょう？」
「宮ノ下って事は、芦ノ湖は付くまで見られないなぁ！」
「芦ノ湖も見たいの？・・・それだと、乙女峠のトンネルを抜けてから右折でしょう？あっ、乙女峠からだって見ることは出来るじゃない！・・・湖畔の道は結構時間掛かるわよ。」
「樹の中を走る方が多いしな！なんで、そんなに急ぐの？」
　おじさんはいろんな状況を考えていたんでしょう？もしかすると、わたしの知らない何かを知っているのかも知れない気もしたわ。
「ウウン。暗くなっちゃいそうだから・・・。暗いのは嫌なんだ！本当は。」昨夜一晩走ってたくせに、我ながら良く云った！・・・そう思っていたわ。急ぐ理由なんて全く無いんだもの。
「それなら仙石原って手もあるよ。その方が手近だよ。」やれやれ、おじさんにもこの辺を良く知っているンでしょうね？
「あそこはゴルフ客が多いンじゃぁないの？・いろんな企業に人が来ているだろうし、おじさん、お知り合いに会うかも知れないわよぉ。」
「おいおい！・わたしは君とそんな関係じゃぁないよ。」
「でも、お知り合いに見付かったら、そうはなかなか思って貰えないでしょう？・温泉じゃぁ。」
「・・・！湖尻だって同じ様なものだけどなぁ？」
　おじさんは独り言のように微かな声で云ったけれど、わたしの耳にはしっかり届いていたわよ！・でも、無視！
「箱根へ行って来る。って云って来たんだもん！」急におねだり言葉になってしまったの！
　わたしって、自分でも何を考えているのか分からなくなっていました。
　今までにはおじさんとのお付き合いなんて無かったし、歳の離れた男性って云えば、父だとか先生ぐらいしか分かりませんもの。
　ただ、せっかく知り合えたこのおじさんと今日一日で離れてしまうのが勿体なかった。
　恋人と別れたばっかりだって云うのに、信じられない思いだったわ。

　白糸の滝で、おじさんの粘りにお付き合いしたから、湖尻に着いたのはもう暗くなってからだったわ。
　早速、旅館に交渉したんだけれど、時間が遅い事もあってか「入浴だけでは・・。」って応えばっかり。仕方なく泊まる事にしたら、今度はニタァとしたうたぐりの眼！ あの眼に含みを感じたのはわたしの被害妄想なのかしら？ ホントは、そんな見え見えだった訳じゃぁなかったし、神経過敏になっていたわたしにはそう思えただけなのかも知れないわ。？
　箱根とか熱海は、昔っから東京の訳あり男女が利用していたから、慣れている筈ですもの！
　
　仲居さんに案内されたお部屋。和室でした。
　部屋の幅一杯に窓、正面の山の端だけに明かりを残した空と芦ノ湖が広がっていました。
　窓の向こうの暮れなずむ芦ノ湖の景観は、青い色から暗く変わろうとしています。
　暮れ行く景観。昨日までの恋の哀れを見るようでした。
　・・・わたしがそんな事を思いながらお部屋のあちこちを見ている間に、おじさんは仲居さんにチィップを渡して大浴場の場所を聞いていたの。
　お風呂場の扉から顔を出したわたしと眼が合った仲居さんは、「ごゆっくりなさいまし。」と、部屋を出て行きました。
　
「ねぇ！このお部屋内風呂付きよ！岩風呂の。」
「どうせ宿を取ったんだから大きな風呂の方が良くないか？」
「そんな意味じゃぁないわよ！・・・造りがとっても綺麗なの。・見てみない？」
「どれどれ？・・・」内風呂を見に行った、おじさんを確かめて浴衣に着替えてあの。何時までもツナギでいたんじゃぁ、肩が凝ってしまうもの・・・。かと云って、おじさんの目の前で着替える訳にもいかないし・・・。
　
　おじさん、なかなか帰って来ない。内風呂の素敵なのを見たからって、１分も掛からないで見られるでしょうに・・・？
「おじさん？」
　風呂場の方に様子を見に行ったら、脱衣場におじさんの着ていた服があるの！・さてはぁ・・・？
「あぁ〜、先に入ってるぅ！」
「あぁ、・・・云うとおり良い造りだ。大浴場は５階だって云うんだよ。・ここでこれだけの雰囲気があるなら、チョットは入りたくなっちゃったよ。」
　湯溜まりまで岩で、自然の雰囲気に囲まれたお風呂を見回していました。
「何で先に入っちゃうのぉ・？ナンにも云わないでぇ。」
「見たら、気持ち良さそうだったからね。つい。」
「わたしも入ろう！」
「えっ！・・・チョット待てよ！じゃぁ出るよ。」
「駄目っ！・そのままっ！」・・・ナンか？おかしいのよ。・・・わたしね、会社にいる時だって、チョット男の人が触れたって、大騒ぎしちゃう事があるのよ！・おじさんが入っているお風呂に後から入って行ったら、『抱いてっ！』って、云ったりしてるのと同じ事じゃない？！！！
　・・・幾ら何でも、そこ迄の気持ちは無いはずだったの。

　脱衣場の扉を開けたまま、おじさんの方を見ながら浴衣の帯を解いて、浴衣を肩から滑らせたの・！
　タンッタタタタンタン、タンッタタタタンタン、タ〜ンタタタタタンタタタ〜ン・・・音楽なんて無かったけれど、ボレロが浮かんでいたわ、頭の中に。それに合わせて踊るように。
　でも、・・・おじさんは横を向いていたの！・・・失礼よね！
「おじさぁん！・わたしって、そんなに魅力無い？」おじさんが横を向いていたのは意味が違う事なんて端から承知よ。
「そんな事無いよ・・・。」横を向いたままおじさんは応えるのよ。それはわたしの裸の身体を見ないようにしているの？！
「写真を撮っていれば、女の裸なんか見慣れているわよね？・聞きたい事があるの？」出来る限り、わたしを見ない様にしているおじさんに、何が何でもわたしを見させなければ済まない気になっちゃっていたの。おかしいでしょう？続けて、
「わたしって、魅力ある・の・・？・何処が良くて、何処をどうすれば・良い？」わたしの方を見ない様にしているおじさんに、わたしを見せたかったわ！・なんかねぇ、たぶん必死で心を抑えているおじさんに、わたしを抱きたくさせたい。・・・そんな思いがどんどん強くなるの！
「そんな事して・遇ってから一日に満たないオジンに抱かれても良いの？」って、心のどこかで叫んでいるのも聞こえていたのよ。
　１６７Ｃｍの身長、アンダー７３でＤカップのバストだって、５６のウエストと８８のヒップ。５７ｋｇと揃えて、男の人には魅力的で無い筈ないわ。って、自信はあったわ！
　そのわたしに目を背けているのよ！おじさん。
　・わたしはおじさんの好みじゃぁないのかしら？
　わたしの心は自信を確かめたかったのかも知れません？

「おじさんっ！・わたし魅力無いっ？」両手を両脇原に添えて、静かに身体に添って上へ滑らせながら半身に構えるようにしていたの。脇の下まで上がった両手染む値の前から首筋へ通って頭上高くで絡ませたの！・「ビーナスの誕生」を気取ってみたのよ。
「なぁ、おじさんをからかうなよ！・・・アンタは十分に魅力的だよ。」
　おじさんは今度は真っ直ぐにわたしの眼を見て視線を動かしません。でも、話し言葉がしっかりして、あのシャッターを切っている時の真剣さを感じたのです。
「おじさんをからかいに来たンだろう。いつまでもそんな処に立っていると、風邪引いちゃうぞ！・からかわれてやるよ！」っと、少し身体を動かして、湯船に隙間を作ってくれました。・身体が冷える気がしていたのも確かなことで、手桶で掛かり湯をすると、おじさんの入っている小さな湯船に身を沈めました。
　ぁあ、ここまで遣ってしまったら、おじさんに飛び掛かられても文句なんて言えないなぁ！と、覚悟は決めていました。それなのに、おじさんはわたしに手を触れようともしないんです！
　３０にもなる女がバージンなんて思われてはいないでしょうし、いまはおじさんとの合体を望んでさせようとさえいるんだもの！・おじさん、遠慮は要らないのよ。
「身体が触れ合ってしまえば、男なんて抑制が利かなくなるものだわ！」心の奥から、邪な声が聞こえてきました。これ以上に刺激するには・・・・・

　身をひるがえして、おじさんに背を向けて湯船に入ったの！
　わたしのお尻の下にはおじさんの太股があります。
　当然バストへ手が伸びて来るものだ。と思いましたが、おじさんの両手は湯船の縁を握っていました。・・・まだおじさんは、わたしを抱きたい。とは思ってないんです。
わたしに触れようともしないんですもの！
　おじさんの抑制力ってそんなに強いの？
　会社の男達なんか、なにかと、かこ付けてわたしに触れようとするのに！

「おじさん？さっきから『魅力的だ』って云ってはくれるけど、おじさんの膝の上に座っても、わたしに触れようともしないでしょ。どうして？」こんな事聞いたら、『わたしは抱かれたいの！』って云ってるのと同じだって分かっているわ。膝に座っても触れるのを避けるおじさんに、堅い誠実性を感じたのよ。同時に、この人に抱かれるなら、わたしを最高の幸福せを味合わせて貰える。・・・変な確信めいたモノを感じるの！・・・今まで付き合った恋人達は、若いだけで、さして誠実でもなかったし、何時分かれる事になっても不思議でもないお付き合いだった気がしたわ。おじさんの態度に「人を大事にする。」って、云うのがどう云う事なのかを初めて見た様な気さえしたんだもの！
　わたし・・・湯船に立って反対に向きを変えたの。
　自慢のバストをおじさんに向けて・。
「なんだ？どうするの？」
　おじさんの怪訝そうな顔も無視して、おじさんに向いたまま、また湯船に沈んだの。
　両脚がおじさんの両脚を挟んで・・・。
「・・・・・。」
　口をつぐんでいる、おじさんの目は一瞬だけバストに行ったけど、一瞬でまた、わたしの眼だけを見ていました。・・・やっぱり、バストはわたしが自慢に思う価値のあるものなんだわ。変な自信が涌いて来ました。
「ねぇ？わたしを抱きたくないの？」自分の魅力を確信したい。と思いました。
　これまでの行動で、おじさんの誠実さは確実だし、話の内容で、相当な知性を持った人であることも分かってます。
　おじさんの誠実さに対して、わたしの方は、このおじさんがわたしを抱くようなら、わたしの魅力はまだまだ捨てたものではないわ！
　なんて、いい加減な思いもありました。
　当然、好意以上の思いは持っています。それは尊敬に似た感情でした。
　愛する気持ちとはまだ、チョット違うのも分かっています。
　わたしが愛するには、おじさんもわたしを恋しく思ってくれなければならないわ。
　いままでの恋はたいていそうだった。
　でも、おじさんの心は簡単には変わらないでしょう？・・・多分、奥さんもいらっしゃるでしょう。もしかしたら、わたし位のお嬢さんさえいらっしゃるかも知れないわ？
　ハッキリと歳を聞いた訳ではないのに、親子ほどの歳の差があるのは一目瞭然ですもの！
　わたしの恋人としては歳が離れすぎているのは確かです。

　それでも、このおじさんには抱かれたくなっていたんです。
　いいえ、何かが違うんです！・・・このおじさん。
　凄く抱かれたいんです。わたしが！・・・こんな事ってありませんでした。
　わたしが、・・・わたしがわたしを特別に求めてもいない人に恋するなんて、今まで思いもしなかったわ。
「抱かれたい。」なんて、愛したりしていれば不思議もないんですけど、まだ愛している確心はありませんでした。
　それなのに、考えれば考えるだけ、このおじさんに抱かれたいんです。

「魅力的な人を抱きたく無い訳がないじゃないか。でもね、人には分と云う物が付きまとうんだよ。・おじさんは見た目通り、取り立てて良い男ではないし、アンタみたいな若い人とは釣り合いが取れもしないだろう？・釣り合いの取れない事をすれば、結局良い結果は期待できないよ。」
　おじさんもわたしを説得しようとしているンです。
「それ、続きっこ無いって事でしょう？・・・続かなくたって良いじゃない！・明日の事って、おじさん分かる？・・・自然の話をしているときにおじさん云ったじゃない！『地球は本当に微妙なバランスの上に成り立っていて、次の瞬間に生命の住めない環境になっても不思議ではないんだ！』って、・・・それなら、今を生きないでどうするのよ？」
「そりゃぁ、云ったさ！本当のことだからね。でもね、だからこそ神さまに、自分にも恥じない生き方をしたいんだよ。」
「わたしが自分の気持ちに正直に生きるのが、神さまに反することなの？」
「幾ら正直でも、他の人を巻き込む行為は、人の道に照らして考えなければならないんだよ。わたしにも妻がいるし、君だって未来には旦那様を迎える事になる。そうなると不誠実だろう？」
「その未来が来るとも云えないでしょう？危ういバランスの環境なんだから・・。」
「『あぁ云うとこう云う。』だな。・『女子と精進は養い難し。』だ！」
「どうして？」
「いいかい？・さっき云った様にわたしには家庭がある。この家庭を壊したくないよ！それに、歳を取り過ぎて、君の恋人にはふさわしくないよ。君を相手にハッスルする元気はないからね。」
　チョット笑ったけど、おじさんの顔は猫に追い詰められたネズミ。
「わたしは今を大事にしたいし、おじさん素敵よ！・・・おじさんの写真に掛ける思いもよ。他人に対する思い遣りも、わたしはいま出来る事はしないではいられないわ！」
「まさか、こんなオジンを相手に、アンタがこんなに積極的に来るとは、考えらないよ。・圧倒されっぱなしだなぁ！」
「一緒に泊まる事になった時に、こんな事予測したでしょう？・・・「温泉」って話をし始めたときから考えていたんだから、・・・今更云っても遅いわよ。」
「相手を考えろよ。・若い人はもっと、自分を大事にしなけりゃ！」
「大事にしているわよ。・だから出来る事をしないで悔いる様な事はしたくないの！それとも・わたしとじゃ嫌？・？」
「嫌な訳じゃぁ無い・・・。」
「じゃぁ、・して！」おじさんの手首を引いて、バストを掴ませたの！・・・既にお湯に浸かっていたおじさんの手に温もりが少し冷え気味のバストに伝わって来る！
　・・・わたしに掴まれてバストに圧し付けられたままの、おじさんの手がバストを巡るように曳き廻すの！・・・強制的に揉ませるの・。
　こんな大胆な事が、わたしに出来るなんて思っても見なかった！
　バストにおじさんの手を曳き込んだ！・・・それだけで凄く淫らな気がするわ。
　目が潤み、身体が熱くなるのを感じて、おじさんの手を掴んだままの左手を下げて、クリットへ導いたの！・・・指の一本を立てさせてヴァギナへ・・・。
「ン・・ァァッ！」・・・さぁ！もう後戻りなんてさせないわよ！

　おじさんの指をくわえ込んでいるわたしの中心が熱くなってきます。
　中心が熱くなると、熱が広がって行きます・・・全身の隅々まで・。
　おじさん、指を動かさないの！
　わたしの手に曳き込まれたままです。

　まだ、戸惑っているのです。
「おじさん、女にここまでさせて・これ以上に恥を掻かせるつもり・・・？」目を逸らそうとするおじさんの視線の先からわたしは、おじさんの眼の奥を覗き込みました。

　おじさんの心はまだまだ、揺れているのが分かります。
「奥さんを愛していらっしゃるの・・・ね？」戸惑いの奥にあるモノを感じて、聞かずにはいられませんでした。
「・・・・・。」
　その無言の中で、わたしの問いにはイエスと答えている。と、感じたのです。
「でも、わたしがおじさんを好きになったって良いでしょう？」・ホンの少しで良いの。おじさんの愛を分けて・・・・？わたしの賭けよ！
　・このおじさんをわたしに向かせられるだけの魅力は無いのかも知れないわ。恥を掻く事なんて、構わないの！・・・いま、虚ろになりそうなわたしの心を、このおじさんなら埋めてくれる。・・・そう信じられるんだもの。
　毎日の生活の中では、信じられるものなんて、殆ど無いわ。信じるものが無くなっていくの！・・・「信じたい」と「信じられる」との間には、宇宙と同じぐらいの開きがあるの。「信じたい」は一方通行なの。本当は信じられないかも知れないのに、一方的に信じようと思っている事でしかないのよ。・・・「信じられる」って云うのは、自分の気持ちは関係ないのよ。客観的に見た事実なのよ。
　 ・・・昨夜は一番信じたかった人に別れを告げて来たのも、「わたしが信じたかっただけ！」だと知ったからよ。
　信じることは愛の始まり？・・・ポッカリと穴の空いてしまったような心の隙間が、信じられる人に出会って暖かく埋められていくの。

　おじさんのする事は、一本芯が通っているの！
　ホイールベースの長いフュージョンを選んでいるのも、カメラに出来るだけ振動を与えたくないからだわ。・全部が繋がるって人、あんまり知らないの。

　今朝、初めて遇ったばかりのわたしだもの、おじさんはわたしを測り兼ねているンでしょうね？・・・幾ら『据え膳』据えても、わたしがどんな女なのか？なんて分かる筈も無いんだから、躊躇するのが当たり前なのよ。「尻軽女」か「ニンフォマニア」かも知れないもの！遇ったばかりの人に「据え膳」なんて・・・！
　おじさんは心の中で警戒しているンだろうなぁ？

　おじさんを信じられるって云うのは、いま躊躇している事も当然予想出来たの。
　でも、何も無しに今日一日が過ぎ去ったら、もう二度とこのおじさんには会えないかも知れない？！
　信じたいものを手放したばかりで、信じられるものに出会ってしまったの！
　一途に芯を通しているおじさん。言葉では表せない素晴らしさも感じるの。
　このおじさんは、「わたしに掛け替えの無い何かを教えてくれる！」と思えたの。今日一日だけでなく、まだまだお付き合いして欲しい。・・・お付き合いして・・・わたし、おじさんを好き。

「君だけを愛するなんて、わたしには出来ないよ・・・。」
　おじさんの眼には『こんな事になる前に止めるべきだった。』って、思いが溢れていたの。自分の為にではなく、わたしのことを思ってだと眼の光が語っていたの。
　好きになっちゃったんだから・・・しょうが無いじゃない！
　おじさんが惑うのは、わたしのこの先を考えてくれているからでしょう。わたしの事を考えていなかったら、おじさんだって男だもの、こんな据え膳は無責任に『いただきまぁす！』の筈だわ。
　それでも、わたしの方だって焦れてくるわ！・・・いま、おじさんにしている事なんて、恥ずかしさの極みなのよ。どんな男にもした事の無いことなの。・・・これ以上、おじさんをその気にさせる方法なんて、わたしには考え付かないもの・。
　わたしの中のおじさんの指。
　どうしたら、わたしの気持ちを分かって貰えるんだろう？
「好き！」わたし自身の思いに気付くと口付けしていたの！

　おじさんと一つになりたい！
　それだけの気持ちになっていたのよ。・わたしの心にあるのはこの思いだけ。
　必死で抱き付いていたわ。
　両手に力の限りを込めて・・・。
　おじさんに溶け込みたかったの。
　わたしは欲張り。・・・奥さんのいるおじさん。
　一緒にいられる時間は少ないわ。
　そんな時間は貴重なの！
　解け合っていたい。
　そう、・・・いま・は、解け合いたいだけ。
　素晴らしい人に出会ったんだもの！

　長い口付けだわ、思考が薄れて行く・・・。
　もう一度強く抱き締めると、おじさんの強い力で押し放されたの。
　思いっ切り息をしたの。おじさんの眼を見詰めて・・・。
　優しい眼をしていたわ。
　わたしには、わたしを託したくなるだけの度量を感じていました。
「アッ！ンッ・・・。」おじさんに曳き付けられ、口付けを返されていました。
　アァ〜、熱い！・・・わたしからも抱き付き返していました。
　夢うつつとも思える時間が過ぎていきました。
　おじさんを動かしたわ・・・。
　背中を撫でて行くおじさんの手。泣きたく為り掛かっていた気持ちは全て消えていました。

　口付けが離れても、おじさんと見詰め合っていました。
　おじさんが立ち上がり、脱衣場で身体を拭き出しました。わたしはおじさんを見るのを止め、改めてお湯に浸かりました。中年の口腔のにおい。それさえ、頼もしく思えるんです。いままでのわたしには考えられない事です。

　湯負けしそうになって、わたしもお湯から出ました。
　部屋の方に戻るとおじさんは浴衣になり窓際の椅子に座って外を眺めていました。もう表は大分暗くなっています。窓の向こうに見えた山々も微かに稜線が見えるだけです。
　さぁ、改めて、おじさんをその気にさせなければならないわ。
　エモンを抜き気味にした浴衣。効果があるのかしら？
　全身を見せてしまったし、口付けを返してもくれたんだものこのままって事は無いわよね？

　おじさん、真っ暗な窓の方だけを見続けているの。
　うまく話し掛けられずに反対側の椅子に座りました。
　おじさんの見ている処が知りたくなって、窓の外に目を凝らしました。
　目を凝らしていると、既に山の向こうへと沈んでしまった筈の残光の、微かな名残がまだ、幾らか山の形を表していたのです。濃い藍色の空、凄く濃い藍色の山のかたち。
　もう直ぐこの形も分からなくなります。
　この最後の時をおじさんは見続けていたの？
　眼を凝らさなければ分からない掠れ行く景色。おじさんだったら、どんな形で写真に焼き付けるんでしょうか？
　音もなく変わって行くこの一瞬しかない景色に見取れました。

　凄く濃い藍色も程なく黒になっていきます。
　白糸の滝以来、雲に覆われていた空は星の一つも見せてくれません。
　無表情の闇が全てを覆うまでに多くの時間は掛かりませんでした。

　仲居さんが扉をノックするまで、わたし達は一切の口を開く事無く表の闇を見続けていました。
　ノックに応えると、「お食事お持ちしました。」と、お膳を捧げて仲居さんは入って来たのです。沈黙の時間に我を忘れていたわたしは救われて、直ぐにお膳の方に行きました。
　だって、おじさんに話し掛ける切っ掛けが掴めないんだもの！
「わぁ！おいしそぉ。」前菜はたぶん山菜、白ごま和えに鰹節が少しかけてあるけど、何なのかはまだ分からないの。炉付きの煮鍋、大皿の煮魚、中鉢におさしみ、中皿にはてんぷら、四角い小鉢に煮物、舟形小鉢に香の物。・・・それにワイン？食べきれるかしら？

「おじさん、いつまでそこで暗闇を見てるの？・・・食べるわよ！」おじさんに口を開かせないことには、付け入る隙が無いんですもの。
「おぉ、旨そうだなぁ！」
　アグラを組んで座ったおじさんもお腹が空いているみたいだわ。わたしが声を掛けるのを待っていらしたのかしら？
「ワイン、おじさんが頼んだの？」日本酒だって良かったのに。
「そうだよ。」
「お風呂っから、おじさんの口が利かなくなってしまったのが気になったわ。」
「チョット考えさせられちゃったからねぇ。わたしは決して清廉潔白って訳じゃぁないけど、娘みたいな若い子だと・・・。」
「もう決まっちゃったのよ！・ここまで来て迷わないで欲しいわ。」
「ごめん。・でもなぁ・・・。」
「ホテルの人達は、もうそう云う関係だって見ているじゃない・。」そんな確証がある筈も無かったけれど、『既成事実じゃない！』って、云いたかったの。
　だって、箱根のホテルに二人が一部屋に泊まる事になっているのよ。

「そうだなぁ、・仲居さん達もそう思っているだろうなぁ・・・。」
　おじさんの云う事が何かハッキリしなくなって来たわ。積極的に出過ぎてしまったか
しら？
「たぶんね？・ここいら辺はその手のカップルが良く利用したからね。・そんな処を狙っていたの？」
「まっさかぁ！・さっき云ったじゃない。『富士山回りで・・・』って云うと、箱根が第一イメージだからよ。・『箱根に行く。』と云って来たって、云わなかったっけ？」
「それなのに、出会ったばっかりのおじさんと泊まるとは・・・？」
「これは予定外よ！・つい、さっきまでそんな気は全く無かったんだから！・・・おじさんは・？」
「温泉に付き合うだけの予定だったろう？」
「さっき、わたしを確かめちゃったじゃない！」
「良い身体してるものなぁ・・。」
「いつも磨いているんだもン！・チョット太めだけど、良かったァ！」話し合いになって来たので、ゆっくり中腰になっておじさんの方に身を乗り出したの。身を乗り出す必要なんてなかったんだけど、こうすると、バストが強調されるのよ。浴衣の前合わせも身体から離れて中を覗き易くなるの。胸元が開いたら、そこに眼が行ってしまうのは男の人のサガみたいなものだし、一度眼が行ってしまったら、見える筈のない処のイメージも男の人はイメージしてしまうのよ。
　
「ガリガリは好きじゃぁないからね。・・食事が終わったら、５階へ云ってみるかな？」
「大浴場ね。内風呂と同じお湯なのかなぁ？」
「同じお湯でも、湯船が広くなると気分が違うからねぇ。」
「そうね！・じゃぁ、わたしも行こう。」
「駄目だよぉ！こう云うホテルは貴重品は自己責任だからね。これだけ色々持っているのに部屋を空にしたら、他の宿泊客だって部屋には入って来られるんだよ。悪い事を考える奴もいるかも知れないから、部屋を空にして、悪い事を誘発するような状況は作るべきじゃぁない。それはホテルに対してのマナーでもあるんだ。・・・さっきはわたしが先に入ってしまったから、君から行って来ると良い。」
「へぇ〜！そんなマナーがあるンだぁ！」そうかも知れないとは思ったわ。だって、ホテルとは云え、簡単な扉は破ろうとすれば、それ程の力は必要ないでしょう。

　なんだかんだ云いながら、結局、全てのお料理を平らげていたわ！
「あぁ、満腹ぅ！」お湯に浸かって、ストレッチでもして少しお腹を引ッこまさなきゃ！
　大浴場は男性と女性が別々なの・・・。チョットガッカリしたけど、近頃は混浴は減っているんだって知ってますもの。
　些程大きくはない湯船も、内風呂よりも広々感があって、手脚を延ばしても充分な広さはあったわ。大きなお風呂って、この伸び伸びの感じが良いのよねぇ。
　細かいところまで手入れの行き届いたお風呂。お風呂の清潔感って云うのかなぁ？・もう十年以上も経ったお風呂であることも明白なのに、隅の隅まで綺麗にされているの！
　気持ち良い！・・・温泉は好きだから、方々へ行っているけど、ここまで手入れされているお風呂は初めて・・・。
　さっき一度浸かっているから、直ぐにのぼせ気味になっちゃって、そうそうに部屋に引き上げたの。そうしてお部屋に戻ったら、お膳は綺麗に片付いて、もう床が出来てるの！床の間を上に二組の布団が整然と敷かれていました。
　わたしが大浴場に行っている間に床を敷いて貰ったんだわ。おじさんは座布団で横になっていたわ。
「ただいま。おじさんも行く？綺麗なお風呂だったわよ。」でも、おじさんが行ってしまったら、一人で待っていなければならないのね。
「いや、わたしは後でもう一度、内風呂に浸かるよ。」
　わたし、何か寂しそうな顔でもしたのかなぁ？「ン？」と感じたわ。
　また、後で入って行ってやろう！なんて思ったの。さっきも中途半端だったし、わたしはまだ大浴場の暖かさが残っているの。
　
　布団の上に座ったの。どう抱かれて反応しようか？って考えてたの。
　あんまりキャァキャァ云うのは子供っぽいし、反応しないで木偶人形のようには思われたくもなかったわ。
　でも、そんな事考える必要はなかったの。
　おじさんは布団の上に正座しているわたしの正面に座って、手を伸ばしたの。
　両肩を掴んで引き寄せられて、口付け！
　不思議なレモン味？・・・口中清涼剤ね！・・・中年の口臭を気にしているンだわ。
さっきだって頼もしく思ったんだから、そんなに気にしなくても良いのに・・・。中年になると、そんな細かい事にも気が回るのかしら？そんな気の使い方も好きだわ！
　わたしに覆い被さってはいるンだけど、乗り掛かっている訳じゃぁないから体重を感じることはなかったの。
　そうなると、感覚がフリーになるでしょう。・・・人一人の体重って結構、悦びの感覚を邪魔しているンだって、この時初めて気付いたの。
　乳房を覆った手も力を抜いてフワァって感じ・・・。おじさんのする事の全てがわたしへ柔らかく、負担を少なくしているの。微妙な反応まで見逃さないように気を配り、微かな反応にまで対応して、何をするかが決まるみたい。
　これなら、わたしの悦びは、伸び伸びと広がって行くわ。
　雲の上に乗っているんみたい。・・・いえっ、包まれているンだわぁ・。包まれているのに行き止まりが無いの・・・。幾らでも悦びが広がって行くの！

　フウゥっとしたままおじさんが下がっていく・・・？
　心地良いくすぐったさ・乳房に唇が触れているんだわ・。触れているか触れていないかの微妙なところなの。
　膨らみを滑っている唇。・・・ニップルが張ってくる！・
　そこを吸って！・・・わたしの思いを汲んだように微かな口付け・。
　満足と新たな欲。・・・もっと強く、強く悦ばせて！・・・これが欲情？
　ゾワゾワァって、全身を走るものがあるの。皮膚の直ぐ下を・・・。
　何故か気持ち悪いのじゃぁないの、それどころか気持ち良い！
　左の乳房が膨らんでいくような感覚・・・。
　もう一方の乳房の乾き・。胸が張り裂けそう・・・膨らんでいるの！
「ン・・・ンッ！」声になるのを抑えたら鼻に抜けてしまう・悦び。
　おじさんの愛し方凄い・！・・・身体の中から求めたくなっちゃう！
　まだ乳房までなのよ。
　おじさんが上がって来て、静かな口付け！
　・わたしが返す間も無く離れて行ったの。

　身体を下がって行くと、乳房の脇に首を回して脇腹に口付け。左手が渇きを覚えたバストを撫でています。
　くすぐったい！って、身構えたんだけど、そんなくすぐったさが来ないの。その代わりに、ビィンって、頭を内側から叩くような響きが。唇が滑ってくすぐったい様な気もするのに、悦びだけが大きくなる・・・。
　
「アァッ！」途端に、悦びとなった電流のような刺激が広がるの！
　熱くなって来ていた身体に灼熱を感じたの。焼け付くような熱さ。
　・・・身体中の筋肉がブルブル震えたわ！
　前置きだけでわたしをこんなに燃えさせた人はいなかったわ。
　身体の芯からスムースに広がって行く熱気・・・。それは隅々までを熱くしていくの。
　それなのに、今までの彼氏達が真っ先に興味を示して、もう流れ出しそうなほど分泌液を流して焦がれている、わたしの中心にはまだ触れてきてもいないの！
　なんで！・なんで来ないの？
　ヴァギナが収縮を繰り返しているの！
　おじさんを包みたいのよ。
　わたしの自由にならないわたしの一部。凄く熱くなっているの。右の乳房も充分に柔らかく解されていたの。ただ、いま迄の人達なら大きく吸い付いて舌で転がしてくれるニップルには、全く触れてくれないの。
　スゥッと近付く事はあるのに、直ぐ近くから違う方向へ曲がって行ってしまうの！
「アァ〜ン！」これは口には出来なかったの。だって、ニップルへ来て欲しいのに、余所へ行くんだもの・・・。

　今までお付き合いした彼氏達だったら、もう、わたしに入って来ていたはずよ。なんでおじさんは真っ直ぐ来ないの？
　わたしの中に焦れが高まって来ていたわ。
　一遍に高まるポイントをおじさんは外していくのよ！・・・分かっていない訳じゃない！
　その直前で方向を変えるんだもの。
「来るわ、来るわ！」って、わたしの思いに肩透かしするの！
　いじわる！身体中が昂まって、全てのポイントが待っているのに、おじさんは来てくれないの。
　
　わたしは震えまで起きているのにおじさん、まだわたしを焦らすの！
「アッ！」いきなり凄い悦撃が衝撃を与えてきた！
　全身に震えが走ったのだってハッキリ分かってしまったわ。・・・クリットからだったの！
　おじさんの焦らしで、全身が性感帯になってしまったか？と思っているところへ、クリットが例の微かなタッチを受けたの！・・・その刺激を受けたがっていたクリトリスは直接的ではない、この微妙な振動にも悦びを伝えたのだったわ。
　頭を持ち上げておじさんを見たの。そうしたら、わたしの両脚の間にうずくまったおじさんの格好が変！
　おじさんの頭がお股に・・・、舐められたんだわ！
　クリニングス！・・・だけどクリニングスは何度も経験したけれど、こんなに身体が熱くなる様な感じ方はしなかったわよ。
　・・・でも凄い！・・・凄い悦び感！
　全身が総毛立った様な気までしたの。

　ヴァギナだってギュウゥって縮まるの！
　空を掴む収縮がまた、そこにあるべき物を求めるの。
　もう全ての性感帯が極限まで鋭くなっていました。今までなら分からなかっただろう。と思える、おじさんの体毛が触れているところまでも、微妙な接触が全部分かるんです！
　わたしがこんなに敏感だってなんて知らなかった・・・。
　ここまでわたしを昂めてしまうなんて・・・、このおじさん、どういう人？
　クリットを滑る指、速さとタッチの柔らかさが絶妙なの・・・イイッ・。触られたところから強い刺激！・・・また広がる！
「・！」ヴァギナに圧力！
　待ち焦がれた感触が来たの。入り口が押し広げられる。少し・・・。
　ゆっくり満たされていく感触・。指が入って来たんだわ！・・・おじさんは全てゆっくり、ゆっくりしか来ないの。
　そこに入るべき物に比べれば遙かに物足りないのに、幾分にでも満たされた思い！

　こんなに男の人が入って来るのを待った事なんか無いわ！
　凄く求めているわたし・。わたしこんなに求める筈じゃなかった。
　幾ら考えても、こんなの求めてしまった事なんて無いわ。
　男達って、勝手に人の身体を使ってマスターベーションして行くだけでしょ！
　わたしは抑えようとしているのに・・・なんでこんなおじさんに。
　おじさんは冷静なのに、わたしが昂められてるなんて・・・。
　他の人達との時には、全くの逆なの・・・。

　今までの彼氏達の様なセックスなら、わたしは結構冷静でいて、男達が勝手に昂まって行くのを、冷ややかに見ていられたのです。
　それだって、わたしも慎重派ですから、簡単には身体を重ねる関係になんてなりませんよ。知性派で程々にスポーツも出来て、わたしを大切にしてくれる人達でした。
　そんな、わたしが彼氏に選んだ男の人達が、セックスに関しては幼稚な知識しか持っていなかったのかも知れません？・・・そうだとすれば、その理由は「わたしの男を見る眼が出来ていなかった。」って事なのでしょうか？
　でも、どうして・・・？お付き合いのあった方々は、皆さんなりにわたしを大切にして下さっていたのよ。
　わたしには、そんなに人を見る眼がないの？・・・そんな事無いでしょう？・友達達も、わたしが思うような行動を取ることが多いし、友達とまでは呼べない知り合いの人達だって、大まかな予想からそう外れる事なんてないのよ。・それは、わたしが人をしっかり見ているからじゃぁないのかしら？
　予想とか？期待とか？そんな大それた物ではないけれど、わたしが思った方向に人が動くことが多いのは、わたしの人を見る眼がそうは違っていないって事でしょう？
　わたしの心の中を今までの、セックス体験とその印象や思いが、一瞬で駆け抜けて行ったんです。おじさんのドコが違うって云うのかしら？・・・ゆっくりだ。って事以外は・？

　もう、わたしの虚ろな部分を埋めてくれる物を哀願していたわ。
　おじさんゆっくり過ぎる！
　クリットをなめらかに滑り続ける指。女の突起に微かな振動が伝わり続けているの！
　二重の襞を丁寧になぞって行くぅ・。
　身体、お腹からのムズムズ感が大きくなって来るの。肩の両腕の付け根がゾワッてするの。それから両肩が震える様な感じがして、ムズムズは全身に広がって行くの！
　熱い波のような感じ・。
　その波が伝わって行く処も、波を待ち焦がれていた様に迎えるの。
　伝わる波と迎えようとする波が絡まって、ホワァって暖かみを出すんだわ。
　１／１０秒か、１／１０００秒かは分からないの。そのホンの一瞬に起こる伝わり方が全部自覚できてしまうの！
　次々と伝播して行く官能の波。・・・一瞬のような永遠のような・・・。

　わたしには覚えのない感覚なの。
　爪先も頭の天辺も、全身隈無くその感覚に埋められて行く！
「もう我慢できない！」わたしの身体が叫んでいたわ。
「何が？・何を我慢できないの？」心に思考が聞いてたの。
「喜悦が溜まりすぎてるわ、こんなに溜めたら破裂しちゃうわよぉ！」身体は思考に答えるんです。
「まだ、おじさんと繋がってもいないのよ！」思考が答え終わる前に身体の光が消えた・！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　[つづく]