１　性欲の目覚め
　
　夏休みだった。麗子はバレーボール部の練習に行くため午前十時に家を出た。
　それほど強い部ではなかったが、和気藹々とした雰囲気が好きだった。

　家を出て少し歩くと神社がある。いつもはその外壁沿いに道路を歩いて駅に行くのだが、今日は中を横切ってみようと思った。
　夏らしい、気持ちのいい天気だった。神社の敷地に入ると、美しい緑の草木が目に入った。蝉の声が染み通るようだった。

　麗子は鼻歌混じりで神社の中の静かな空気を楽しみながら歩いていた。
　広い境内に出ようとしたその時、いきなり誰かに後ろから口を押さえられた。

「ん！・・んん！・・」

　その何者かはそのまま凄い力で麗子を茂みまで引っ張っていった。麗子はあまりの唐突さに、何が起きたか分からなかった。ガサガサと茂みに入ると、男は止まった。

「見られなかった？見られなかった？」

　他の男の声がした。声の感じから四十代くらいだと麗子は思った。やけに明るい声だ。

「大丈夫だよ。たぶん。」

　口を押さえている男が答えた。こっちはもう少し若そうだった。麗子から確認はできないが、男は三人いるようだった。

「やった、やった。麗子ちゃん、山崎麗子ちゃん。」

　もう一人の、もっと壮年そうな子供のようにはしゃいだ。麗子はドキッとした。

（この人、私の名前を知ってる！・・・）

　麗子は暗い不安を感じた。心臓はドキドキと今まで経験したことのない様なリズムを奏でている。夏の暑さの中、熱いのか冷たいのか分からない汗が体中に染み出る。

　男達はこの辺に徘徊するホームレスに違いなかった。たまに見かける彼らのせいで、いつもは境内を通らずに回り道をしていたのだ。

　男達は感情を出さなかった。感情という物が欠落しているように感じた。長い、荒んだ生活のせいか、彼らは『壊れて』いるようだった。その証拠に、明らかに犯罪を犯しているにもかかわらず、男達の声はまるでオモチャを手に入れた幼稚園児のように明るい。
　麗子はそこに異様な恐怖を感じた。彼らが自分を拉致した目的は薄々分かる。この男達は自分を犯そうとしているに違いない。

（・・・きっと、前から私を狙ってたんだ・・・）

　麗子は最近よく鏡を見た。自分がテレビの中で脚光を浴びているアイドル達よりも美人なのではないかと思うようになっていた。
　中学の頃からよく男子に告白もされた。厳しい父の目が光っている限り、麗子には迷惑にしか感じなかったが、それでも自分の美貌の基準にはなる。

　前々から興味のあった性の世界が、異常な形とはいえ、今、目の前にある。

（どうしよう・・・どうするべきかしら・・・）

　麗子の頭の中はあらゆる可能性でいっぱいになった。彼らは無感情なだけに、何をしでかすか分からない恐怖がある。

（抵抗したら体を傷つけられるかも・・・もしヤられてしまったらお父さんに怒られるかしら・・・初めては痛い？性病は？・・・初めてがレイプは異常？・・・）

　頭の中がぐるぐると回っている間にも、男達の手は珍しいものでも触るように麗子の身体をまさぐり出す。

（ひゃあ・・・）

　麗子はなんともいえない緊張を含んだくすぐったさを感じた。肌が、鳥肌を立てて拒絶する。しかしその中に、甘ったるい、不思議な感覚が沸いてくるのに、麗子は驚いた。

「ひゃあ、スベスベだあ。」

　汗ばんだ手が、我が物のように麗子の太腿や乳房を掴む。男が麗子の腕に頬ずりする。

「俺もー。」

　仲間達の快楽の表情に、麗子の口を押さえていた男も、手を離し、その代わりに用意していたガムテープで麗子の口を塞ぎ、後ろ手に手首をぐるぐる巻きにして、行為に参加した。

「んっ・・・んっ！・・・」

　『他人』に体中をまさぐられる感覚。その新鮮な感覚に麗子は集中せざるを得なかった。

　男達は、膝を立てて突っ伏した麗子の突き上げた尻を、三人並んで後ろから眺めた。

「んんー。」

　紺のスカートがゆっくりと捲られ、パンティーが下ろされる。食べ頃の果実のように大きな、張りのある美しい尻が、薄汚い、壊れた大人達の目の前に剥き出された。敏感な部分にスースーと外気が触れている。

　麗子は変な気分になっていた。見ず知らずの頭のおかしい男達に一番大事な部分を眺められているのだ。暴れるべきだった。泣き叫ぶべきだった。しかし麗子は、密かに甘いスリルと背徳感を愉しみ始めていた。

　自分の身体に男達は性的興奮を感じている。それは、裏を返せば麗子に女としての魅力があることを示唆しているのである。そこに、何ともいえない優越感のようなものを感じていた。

「いい尻ですねえ。」

　一人の男が言った。

「これはなかなかのもんですよ。上等ですねえ。」

　男達は麗子の尻の品評会を始めた。その感情の入っていない声は、最早麗子を人間とは思っていないように聞こえた。そのとき、麗子の柔肉に、無造作に誰かの指が触れた。

「んー！・・・ん！・・」

　全身に鳥肌が立つような快感が走る。麗子は焦った。それは自分で触るのとは全く違う感覚だった。

（ダメ・・・こんなに感じちゃったら、私普通の子じゃないわ・・・）

『今自分は、レイプを受け入れようとしている』。そのことに麗子は焦った。自分が異常であるなどとは、思いたくなかった。

「これ、もう入るよ。早速、入れちゃう？」

　快感と理性に葛藤する麗子と対照的に、何の興奮も、罪の意識も感じていないような男の声が現実感なく響く。

（に、逃げなくちゃ・・・）

　麗子は必死で這いずった。

「おっとっと。」

　男達は逃がすまいと麗子を押さえる。

（ああっ・・・・）

　押さえられて喜ぶもう一人の自分に麗子は恐怖した。自分が、犯されたいのか犯されたくないのか、麗子自身にはもう分からなくなっていた。

「ちょっと擦っちゃおうっと。」

　一番年のいった男はそう言うと、二人に押さえつけられた麗子の尻になま暖かい男根を擦りつけた。

「んー！・・んんんー！」

　麗子は必死で抵抗した。だが男は構わず、先からトロトロの液体が染み出た肉棒を麗子の濡れた柔肉にクチャクチャと擦り付ける。

　凄まじく勃起している。感情として表に出ない、彼らの荒んだ感情が男根に閉じこめられているのか、それは冷静でドライな主人とは裏腹に凶悪に歪んだ性欲を露出していた。

　電流に打たれたような感覚が何度も何度も麗子を襲う。

「ああーっ。気持ちいーい。じゃちょっとだけ、ちょっとだけ入れちゃおー。」

　男には麗子に対する哀れみも、自分の行為に対する罪の意識も、全く無い。
　平和な入道雲の浮かぶ真っ青な空の下、見る見るうちに肉棒は麗子の濡れた柔肉を掻き分け、ズブズブと奥まで入った。

「んんんー！んんー！んー！」

　麗子はあまりの快感に抵抗を忘れた。敏感になった膣肉を男の凶暴さ剥き出しの熱い男根が刺激する。ヌメヌメとした汗の感触が更に淫靡な気分を増幅させる。真っ白い尻が快感にピクピクと痙攣し、柔肉から勝手に溢れ出す蜜が、まるで肉棒を喜んで受け入れているかのようにクチャクチャと卑猥な音をたてる。
　その快感は麗子の知らない世界だった。

「あれ？麗子ちゃん処女でしょ？そうだよね？すんなり入っちゃったよ？」

　男は当たり前のように慣れた動きで麗子の純潔を犯しながら、それどころではない麗子を無視して仲間に問いかけた。
　麗子は確かに処女だった。麗子にも不思議だった。

「きっとあれだよ、オナニーで破れちゃったんだよ。」

　若い男が言った。

「そうかそうか。ま、何でもいいや。」

　蒸し暑く、蝉の声がうるさいほど響く夏の日、麗子は頭のおかしい男達に処女を奪われていた。容赦なく責め立てる肉棒の快感に没頭していた。初めてであるにも拘わらず、麗子は快感に身をゆだねていた。

「代わって代わってー。」

　四十男が、どうでもいいような言い方で、麗子を責めている男にせがんだ。今度は違う肉棒が麗子の体内に挿し込まれた。

「ん！・・んん！・・・」

　これも無感情な表面とは裏腹に、はち切れんばかりにそそり立っていた。男は、麗子の左足を抱え上げると、そのまま横倒しになった。完全に露呈された結合部を、他の二人が楽しげに眺める。

　微妙に変化した快感に、またも麗子は没頭した。結合部からは生暖かく、粘度の高い液が、止めどなく溢れて、青臭い雑草たちを濡らす。

　最後の男は、麗子を自分の上に乗せた。下から突き上げてくる隆々とした肉棒に、無意識に腰がグラインドする。制服姿の麗子の目の下で、壮年の男が汗だくの顔に満面の笑みを浮かべている。

　壊れたオモチャのような男達が、入れ替わり、立ち替わり、その凶暴な性欲の赴くままに十六歳の少女の蜜肉を犯し続け、汚れ切った体液を注入した。