２　陰欲

「どうだ、思い出したか。」

　田所の声に麗子は目覚めた。

「性に目覚めたお前は、俺の予測どおり、常識など構っていられない程、貪欲に、陰湿に、行為にはまりこんでいくのだ・・・。」

　田所がそう言うと、また麗子の記憶が甦った。

　麗子はその後、もう一度、いや何度でもあの快感を味わいたいと思うようになっていた。

　目の焦点のあっていない、壊れた大人の手の中で快感に喘ぎまくる、美しい自分の姿が頭から離れなかった。しかし、まさか学校でそれを求めるわけにはいかない。誰かにばれればそれこそ変態扱いされてしまう。父の耳にも入るかもしれない。

　葛藤の日々が続いた。やってはいけないことだということは分かっていた。誰とでもいいなどということはどう考えても正常であるはずがなかった。しかしいくらオナニーに耽ってもその憧れは消せなかった。
　悪いことだと思えば思うほどその世界に惹かれる。『ばれなければいい』。思春期の麗子がその考えに到達するのは至極自然なことだった。

（あのときと同じだ・・・・）

　麗子は記憶を辿りながら、初めて商店街で露出したときのことを思い出した。
　あのときも、『ばれなければいい』から始まった。やはり、歴史は繰り返すものなのか。というよりも、結局はどうやっても押さえつけることができないほど、その黒い欲望が強いと言うことだろう。そう思うと、この後の記憶を思い出すのが怖かった。

　麗子は、いつも挨拶していく近所の中学生に目を付けた。親しい子というわけではないが、よく見かける子だった。たぶん一年生だろう。ドギマギして挨拶していく姿を見ると、どうやら麗子に好意を持っているようだった。

　ある日の夕方、学校帰りにその子を見つけた麗子は、意を決して話しかけた。

「君、ちょっと私ん家に寄っていかない？おいしいケーキあるから・・・」

　麗子はニッコリと微笑んでみせた。その笑顔は少年には女神のように見えたことだろう。

「えっ？ぼ、僕ですか？」

　少年は信じられないようにキョロキョロと辺りを見回した。

「そう、ボク。」

　麗子はまるで小学生でも相手にするように言ったが、内心はドキドキしていた。
　綿密に計画を立てたり、事前調査をしたりしたわけではない。勢いまかせの部分がほとんどだった。
　少年は麗子の予想通り、二つ返事で承諾した。

「さ、入って。」

　麗子は自分の部屋に少年を通した。
　それほど女の子らしくないが、きれいに片づいて落ち着いた雰囲気の部屋に、夕焼けに染まり始めたオレンジ色の光が射し込んでいる。
　麗子が高校に上がった頃から、父親は会社の会議で毎週水曜日は夜中まで家を空けるようになっていた。その隙は、年頃の子供にとって致命的な隙だった。

「そうなるだろうと思って、俺がわざとあいつに家を空けさせたんだ。」

　記憶の隙間に、男の声が聞こえる。

（何もかも、計算ずくだったなんて・・）

　麗子は記憶を辿りながら、自分の人生を想った。

「お茶、煎れてくるわね。」

　記憶の中の麗子は、そう言うと部屋を出ていった。

（ふう･･･）

　麗子は階段を下りながら胸をなでおろした。これから自分がしようとしていることへの期待。不安は多少あったが、若さ故の好奇心がそれを凌駕していた。

　焦らないよう自分に言い聞かせて、ジュースとケーキを用意すると、パンティーを脱いだ。

（ああ・・・）

　今まで、ノーパンになどなったことはない。薄い布が一枚なくなっただけで、とてつもない頼りなさが全身を緊張させる。
　麗子はお盆を持つと、階段を上がった。

「はーい、おまたせー。」

　少年は部屋の雰囲気とは裏腹に落ち着きがなかった。当たり前である。『憧れのお姉さん』の部屋に自分がいるのである。しかもその理由が子供ながらに、腑に落ちなかったに違いない。話をしたこともない自分を部屋に入れるというのはどう考えても脈絡がない。

（とにかく、警戒心を解かないと・・・）

　二人はケーキを食べながら中学校の話などをした。麗子も同じ中学校だったので、当然話が弾む。共通の話題で少年の緊張もしだいにほぐれたころ、麗子は突然切り出した。

「ねえ、裕太君女の人の裸とか見たことある？」

　少年はギョッとした。見る見る顔が赤くなる。

「そ、そんなのないですよ！」

　少年は慌てて否定した。少年にとってはまだ、淫らなことは『悪い』ことだった。麗子も少し前までそうだった。経験して、その中に言いようのない快感があることを知ったのだ。麗子は意地悪く微笑むと、少年の耳元で囁いた。

「・・・見たくない？」

　麗子の胸の鼓動が高鳴っていた。自分はこの幼気な少年を誘惑している。

　麗子とて、経験は一回のレイプ限りだ。この先どういう展開になっていくのかも、全くの未知数だった。しかし、その不安を差し引いてもあまりある性への欲望と興味があった。

「・・ええっ・・」

　少年の顔が熱を持って緊張しているのが手に取るように分かる。

（かわいい･･･でも、こんなことで恥ずかしがってたらダメよ・・・）

　麗子はその猟奇的な興奮に愉しみを憶えた。

　少年から離れて壁により掛かり、戸惑う少年の表情を観察しながら、立て膝をした両脚をゆっくりと開き始める。
　意のままに性欲を満たそうとしている自分の行為の恥ずかしさに、心臓が妖しく高鳴っていく。

（ああ・・・恥ずかしい・・・私ったら、こんな子供の前で・・・）

　純真な男の子を淫らに誘惑する背徳感に麗子は興奮した。

　静まり返った部屋に、蜩の声が響き、オレンジ色の夕焼けが差す。いつもと同じ夕暮れのはずが、違って見えた。いつもの夕焼けは今、淫靡な快楽に動揺する少年の頬と、少女の美しい脚の内側を照らし出している。

股が開いていくに連れて、少年の顔が見る見る緊張に強ばっていく。少年は始めてみる女体の蜜園に釘付けになったまま絶句していた。

（ああ･･･見てる・・・すっごい見てる・・・）

　麗子は壁により掛かったまま手で両脚を抱えて、これ以上ないほど大胆に股を開くと、悩ましげな表情で言った。

「裕太君・・・もっと近くで見て・・・」
　
　少年は言われるがまま、四つん這いでおそるおそる麗子の大きく開いた脚の中に来た。

　少年は興味の対象を食い入るように凝視している。

（ああ･･･なんか変・・・私、すごい感じてる･･･）

　麗子は恥ずかしい部分を少年に至近距離で見つめられて興奮した。

「どう？いやらしいでしょ・・・お姉さんねえ・・・ここを舐めて欲しいの・・・」

　麗子は自分の言葉に鳥肌が立った。何と卑猥な言葉だろうか。しかし、その背徳感がどんどん自分を淫らにしてゆくのだ。麗子は性欲を恐ろしいと思った。
　少年は素直に麗子の汁の滴る柔肉をペロリと舐めた。麗子の身体の中に、いきなり電気を通されたような衝撃が走った。

「あぁ！・・・」

　麗子の喘ぎ声に少年は怯えた猫のように一瞬顔を引っ込めたが、また、ペロリと舐めた。

「んん！・・・」

　今度は少年は驚かなかった。少年は無言で舐めた。だんだん息づかいが荒くなっていく。麗子の頭の中が快感に白くなってゆく。

「へあっ！・・・へあっ！・・・」

　興奮してきたのか少年の動きが激しくなった。さっきまで純真だった少年は、今や野獣へと変貌していた。

「ああ！・・気持ちいい！・・・ああ！・・・」

　抑圧から解放された麗子の欲望は、蜜肉の触感を敏感に研ぎ澄ました。乾ききった砂が水を吸い込むように、必死に快感を吸い上げる。少年の舌の動きが麗子の脳に正確に伝わる。

「んんん！」

　興奮した少年は狂ったように麗子を押し倒すと、引き裂かんばかりに思い切り麗子の股を開いた。そして、再びむしゃぶりついた。

「ファッ！・・ヘアッ！ヘアッ！・・」

　ピチャピチャグチュグチュと、幼い少年が、快感に身体をくねらす女を押さえつけて蜜肉を貪る音がいやらしく部屋に響く。

「ああ・・・・あぁあっ・・・・」

　麗子は悦に入った。ここなら誰にも知られない、思いの丈、性欲を満たすことが許されている。葛藤から開放された快感は、想像以上だった。

「・・あ・・・裕太君、お姉さんにも舐めさせて・・・」

　麗子がそう言うと少年は弾かれたように飛び退いた。

　少年は我に返ったのか、真っ赤になって、自分のしていた行為を恥じた。麗子はそんな裕太にすり寄った。

「いいのよ、裕太君、あなたは何も悪くないのよ。」

　麗子は裕太のズボンを脱がせ始めた。

「あ！・・ちょっと・・だ・・」

　裕太は抵抗したが麗子は構わず少年の萎縮したペニスをつまみ出した。

「かーわいー。」

　麗子が舐め出すとペニスは見る見る大きくなった。

「あ！・・ああ！・・・」

　少年のキチガイじみて大きくなった声に、麗子もつられて興奮してきた。

　やり方は本で読んだ知識しかなかった。しかし麗子は男の感じるやり方を把握していた。それはクスリによって早熟させられた麗子の、長年に渡る妄想によるオナニーの成果だった。

「うふふ、どうしたのー？・・・気持ちいいんでしょ。」

　麗子は畳に垂れ落ちるほど大量に涎を絡ませた。少年は憧れの『お姉さま』が自分のペニスをジュルジュルとしゃぶっているその光景と、背徳感の伴う快感に、ビクビクと痙攣している。

　麗子は少年の首に両腕を巻き付けると、そのまま仰向けに寝そべった。
　自分が『お姉様』を押し倒したような格好になって、少年はオロオロとしている。

「ほら、今硬くなってるでしょう？・・それをこのお姉さんのヌルヌルしたところに宛てて・・」

　麗子は自分に覆い被さった少年の目をじっと見つめながら、ペニスを下からいざなった。

「そこにぐっと押し込むの・・・」

　少年は言われたとおりにした。自分の敏感になったペニスに圧力がかかる。その瞬間、ニュルっと、ペニスが『お姉さま』の身体の中に埋もれた。

「そう・・・そのまま奥まで・・・ああ！・・」

　麗子が言う前に少年は入れていた。

「出したり入れたりして・・・。抜けないようにね・・・ああ・・・ああん！」

　麗子が声を出すと、少年のペニスは更に硬く、大きくなった。

「ああ！・・そう！・・そうよ！・・」

　蜜肉を滑る少年のペニスの感覚に麗子は感じた。少年の目が据わっている。一心不乱に己の肉棒から伝わるその快感を貪っている。
　麗子は開けるだけ脚を開いた。するとそれを更に少年が掴んで押し開いた。開ききった麗子の脚の間から、ズプズプと柔肉に差し込まれる少年の凶暴な肉棒が見える。

　少年は昨日まで遠くで見ているだけだった憧れの『お姉さま』を犯した。