３　女神の肢体

「よーし・・・服、取っちゃおうか。」

　人を殴ったせいか、異様にテンションが上がって嬉々とした男達の手によって、セーラー服と、パンティーが切り取られた。

　車のヘッドライトが、セーラー服から染み入ってその全身に塗りたくられたローションを、焼くように照らす。麗子はあまりの羞恥に顔を背けた。

　男達は、息を呑んだ。完璧なまでに均整の取れた肢体の曲線が、ローションにギラギラと湿っぽい光を放ってそのラインを強調する。
　その透き通るような、一点の曇りもない真っ白な肌に、シャギーの入った金髪が張り付いている。
　そしてそんな淫らな湿り気の中で、キラキラとヘッドライトの光を反射する銀色のアクセサリーと、銀ラメのハイヒールのサンダルだけが、この世のものとは思えないほどの無垢な光を放っていた。

　悔しさと無念に眉をハの字に歪め、諦めを表す麗子の表情。猥褻な遊びに汚された美しい肢体。キリストのように張り付けられた麗子の、そのあまりの『美』の景色は、まさに『エロスの女神』のように少年達の目に映った。

「・・・・すげえ・・・」

　少年たちは、その美の力感に立ち尽くしていた。誰かがゴクリとつばを飲み込んだ。沈黙の中、一人の少年が呆然としたまま一発水鉄砲を打った。

「ん！・・・」

　ローションは、光り輝く麗子の身体の、ピンク色の乳首に命中した。麗子がビクリと身体を震わせ、粘度の高い液体が既にギトギトの乳房から腹へと伝い流れる。

　男達の全身に電流のような快感が走った。二発、三発とローションが発射される。

「あん・・・あんっ・・・」

　麗子の身体は見る見る半透明のローションだらけになり、ライトに照らされた神々しい肢体がギラギラと卑猥さを増していく。

　男達の顔はすでに狂気に歪んでいた。誰からともなく麗子に近づき、その美しい身体を舐めた。

「ヒヒヒ・・・いいザマだな、麗子さんよぉ。」

　男がピタピタと頬を叩く。両手首の紐が解かれ、ジーパンをずり下げた男の上に乗せられる。ひきつけを起こしたかのようにビクビクと痙攣する肉棒が、体内にズブズブと侵入してくる。

「ああ！・・・あん！・・あん！・・」

　下から突き上げられる。勝手に腰が動いてしまう。

「スゲエ。ズッポリだ。」

　後ろから男達が結合部を覗き込んでいる。自分の全てを侵略している源を、凝視され、嘲笑されている。それでも、腰のグラインドは止まらない。

「ナンバーワンエロ女子高生麗子ちゃんは、アナルはどうなのかなあ？」

　後ろでカチャカチャとベルトを外す音がする。

（ああ・・・）

　アナルも犯されるのである。完敗である。最早、何の抵抗もできない。

「ククククッ！・・」

　ローションでテラテラと光る麗子の尻は、剥きたてのゆで卵のようにつるりとした艶を露呈している。男が、満足そうにその尻を眺めながら、ペニスを埋没させていく。

　蜜肉に逞しい肉棒を挿し込まれたまま、別の肉棒がアナルを侵略していく。凄まじい屈辱である。

（ああ・・・凄い・・・）

　身体が熱い。下半身が麻痺して、まるで自分のものではないように感じる。ただ、二本の肉棒がもたらすに快感だけを正確に脳に伝えている。

（ダメ・・・感じちゃ・・・）

『感じないこと』が唯一の抵抗であった。が、しかし、身体は最早麗子の命令を聞かない。

　クッチャクッチャとなぶるようにピストンが開始される。

「このタカビーが！・・・調子ん乗りやがって・・・。」

　男は尻をゆっくりと犯しながら、言葉で麗子を責める。ピストンする度にプルプルと揺れる尻。男はその肉の柔らかさに狂気の笑みを浮かべた。

「ん？どうだ？『女王』麗子サマ？『庶民』のチンチンはよう。」

　凡人の手の届かない上等な女。そしてこの稀有のタカビー女は、虐めれば虐めるほどエロスを増すのである。

（こんな女は、他にいねえ・・・）

　恍惚の快感が男の身体を駆け巡る。

　凄まじい悔しさと怒りに、麗子は奥歯を噛んだ。殺してやりたいと思うほど憎かった。男がビタビタと尻を叩く。目の前の顔が、醜悪に笑っている。

「『女王』サマ。腰振ってよ。」

　麗子は無視した。と言うより、余裕がなかった。下から上から責め立てられて、身体が異常に反応している。

「ケツ振れって言ってんだよ！！」

　後ろから髪を鷲掴みにされ、怒鳴りつけられる。

　圧倒的優位の毎日を送っていた麗子にとって、初めての屈辱である。しかし、なぜか身体は悦んでいる。

（ああ・・・ダメだって・・・）

　認めたくなかった。こんな矮小な男たちに感じるなどということは、常に男たちの羨望の的である彼女の誇りが許さなかった。

　人も羨む美しい肢体。その非の打ち所のない自慢の身体が、ゴミのような連中の性欲便所と化している。

　麗子は言われた通り、艶かしく腰を振った。

「んん・・・あぁああぁあんっ！」

　大量の快感が身体に流れ込む。麗子はその自分に恐怖した。

「そうだそうだ！！いいぞ！エロ女！」
「ギャハハハハッ！！ギャハハハァ！！」

　麗子はいつしか陵辱の快感に没頭していった。

　次の日の放課後、麗子は駅前の公園にいた。麗子の目の前には昨夜の三人が正座している。

　そしてその三人を囲むように、二十人あまりの不良たちが手に手に武器を持って待機していた。

「お前ら、面白いことしてくれんじゃん。」

　佐竹が凄む。三人は何も言えずに震えている。

　麗子は次の日にすぐ佐竹に報告した。佐竹は麗子のためというよりも、自分のプライドのために、子分を使ってあっというまに三人を捕らえた。

　中村のことは言わなかった。むしろ、麗子は中村への償いのために彼らを捉えていた。

　麗子はパンティーが見えそうなほどのミニスカートからにょっきりと伸びる自慢の美脚を見せ付けるように、正座した三人の前に仁王立ちした。

「あなた達、どうしちゃおっかなぁ。」

　三人は麗子のハイヒールのサンダルから覗く上品なつま先を見つめながら震えていた。

「震えるくらいなら、やめとけばよかったねぇ？」

　麗子はアイドル並の無垢な笑顔を彼らに送った。麗子がこの笑顔を見せるときは、要注意である。周りを取り囲む屈強の男達は頭を掻いた。

「じゃあ・・・私の脚舐めて。それで許したげる。」

　麗子は笑顔を崩さない。三人は顔を見合わせると、一人が麗子の足首を舐めた。

「あぁん。」

　麗子はわざとらしくよがって見せた。その瞬間、少年の左肩に激痛が走った。麗子のハイヒールがめり込んでいた。

「ぐああああっ！」

　少年はのた打ち回った。

「ごめんねぇ。痛かったぁ？」

　麗子は激痛にうずくまる少年に、やさしく言った。次に、その隣の少年の手を、ヒールで踏みつけた。

「あっががががっ！」
「キャハハハッ」

　麗子は屈託なく笑う。

　その後、三人は佐竹らに執拗に殴打され、そのまま病院送りになった。