１　睡魔

「俺は直にお前に会ってみて確信した。プロジェクトは成功だったと。
　仕草、カラダ、テクニック、お前の全てから染み出すフェロモンは、まさに最高の性欲を俺に与えた。最高の女だと思った。だが、まだ完璧ではなかった。
　お前を完璧な『男の為だけに存在するイキモノ』にするためには、マゾの部分をもう一段階上のレベルに引き上げなければならない。それには、やはりあの計画を実行するしかなかった。・・・・危険な賭けだった。しかし、ここまで来たらやるしかなかった。」

　田所は、感極まったように虚空を見た。

「俺はお前のいない間に家に行き、父親役をさせていた男と最後の打ち合わせをした。そして蚊に刺されたほどにも感じない小さな棘に、睡眠薬を染み込ませてスリッパ仕込んだ。
　お前を三十分眠らせればよかった。その間に頭にクスリを注射できる。」

　麗子の脳裏にフラッシュバックのように記憶が甦った。
　
「ああ・・・」

　ヘッドフォンで音楽を聴いている自分、少年の右手に捕まれた誰かの死体、笑う男、陵辱されている自分の姿・・・。

「お前のよがりっぷりは、最高だったなあ。」

　田所がニヤリと笑った。麗子の頭の中に、全ての記憶が甦った。

「ああ！・・ああ！・・」

　麗子はまた、気を失った。

　その日、麗子は夜遅くに帰宅した。スリッパを履き、二階の自分の部屋へ向かう。父はまだ起きているようだったが、いつものように知らぬ顔で階段を昇った。

「ふーっ。」

　部屋に入り、一息ついてヘッドホンで音楽を聴き始めると、突然、眠気が襲った。

「・・・あれ？・・」

　麗子は時計を見た。午前二時を回っていた。

（・・・時間は時間だけど・・・嫌に突然にくるわね・・・）

　眠気は我慢できないほど強烈だった。麗子は、ヘッドホンをつけて壁にもたれて座ったまま、意識を失った。

「そして俺は頃合いを見計らってお前の部屋に行った。お前が帰ってくる前から、俺達は家の中にいたんだよ。」

　田所は気を失っている麗子に向かって笑った。

「予定どおり、お前はぐっすり眠っていたよ・・・・。ベッドに寝かせて、後頭部の『ある部位』に注射を打った。特殊な注射だ。脳が緊張したり興奮したりすると触感が格段に鋭くなる。つまり、それが異常なことであればあるほど、お前は感じるようになるということだ。レイプ、ＳＭ、露出・・・くっくっく、なかなか素晴らしいクスリだろう。」

　麗子は目をつぶったまま、夢の中の、また夢の中で田所の声を聞いていた。

２　侵入者

　麗子は争う声に『夢の中で』目を覚ました。

　いつの間にかベッドに横たわっていた。きっと無意識に自分で上がったのだろうと思った。
　また下で声がした。言葉まではよく聞こえないが、父の声は興奮しているようだった。時計を見た。午前三時。

（こんな時間に、誰か来ているのかしら・・・）

　麗子は不審に思ったが、父の話し声が聞こえる以上泥棒でもなさそうだった。すると、ドタドタと大勢が階段を上がってくる音がし始めた。

（何？・・な、何よ・・・）

　麗子は緊張して手元にあった枕を抱きしめた。目の前のドアがガチャリと開いて、男と、父と、何人かの小学生ぐらいの子供達が入ってきた。

「！」

　男は電車の中で会った、あの男だった。麗子は訳も分からず呆気にとられた。

「頼む！やめてくれ！な？」

　父が男に懇願している。男はいきなり父を押さえ込むと後ろ手に手錠をかけた。

「足も縛っておけ。」

　男は小学生にそう言うと、麗子に近づいた。

「さあ、仕上げをしようね。」

　そう言っている間にも、小学生達は父を乱暴に縛り上げている。

（何！？・・・何が起こってるの？・・）

　子供たちは、興奮しているのか、その凶暴な感じは普通ではない。

「おい、いいぞ。」

　男がそう言って下がると、異常な目つきの三人の少年は父親を放して、麗子ににじり寄った。
　目が異常だった。血走り、焦点が安定していない。麗子は身の危険を感じた。

「な、何？・・・やめて・・・」

　麗子は恐怖していた。まるでここが自分の部屋ではないように感じるほど、空気が異常に張り詰めている。
　ベッドの上で後ずさりする。少年の一人が目を剥いて麗子に飛びかかった。

「キャァーーーッ！・・・」

　麗子の叫び声と共に、あとの二人も飛びついた。ぬめりとした感覚が麗子を襲う。

「ああ！・・・ああ！・・・」

　舐められていた。三人の小学生、しかも内二人はどう見ても低学年だった。その子供達が、十九歳の麗子の身体を『暴力』で蹂躙している。

「ヒィ・・ヒィーッ・・・」

　麗子はその、あまりに異常な光景に恐怖し、暴れた。が、少年達は信じられないほど強い力で麗子をねじ伏せる。その力は、まるで大人の男並だった。

（何！？・・分かんない！！分かんない！！）

　狂っている。何か想像もつかないほど狂っていることが行われていると麗子は思った。少年達は手加減なしに麗子の成熟した身体を掴み、舐めまくる。

「ああ！・・・あぁあ！・・・」

　少年の一人が麗子の蜜肉にむしゃぶりついた瞬間、淫らな蜜液が大量に溢れでた。麗子の脳にショックが走った。

（私・・・か、感じてる？・・・・）

　この状況で身体が『性的快感』を感じている。それはどう考えても異常である。

（ああ！・・・私・・・私っておかしい！・・・なんて恥知らずな・・・）

　麗子は凄まじい自己嫌悪に襲われた。しかし、どんなに必死に否定しても身体は快感に悦びの汁をまき散らしてしまう。その汁を、子供たちが我先にと貪る。

　身体が異常に敏感になっている。こんな感覚は初めてだった。

「はあっ！・・・はあっ！・・」

　麗子は父に目で助けを求めた。父は手足を縛られたまま、犯される麗子を見て悔し涙を流している。その隣で、腕組みをした男が満足そうに笑っている。

　この男が何かを知っている。電車で麗子に痴態をさらけ出させたのも偶然ではなかったのか。それとも電車のことがあって、麗子に目を付けたのか。麗子には全く訳が分からなかった。

「ハーッ！」

　そうこうしている内に、二人の子供が麗子を四つん這いにねじ伏せた。

　すでに三人とも素っ裸だった。その内の、まだ低学年くらいの子が、麗子の突き出た美しい尻を舌なめずりして眺めている。

（まさか・・・）

　麗子は鳥肌が立った。十歳にもならない子供である。出来るはずがない。しかしそんな常識を嘲り笑うかのように立派に勃起した男根が、レースのパンティーの間から、形の良い尻の中心にある麗子の柔らかい蜜壺に侵入してくる。

「いやあ！・・・ああ！・・・」

　麗子は叫んだ。気が狂いそうだった。『子供』の肉棒が根本までずっぷりと入った。

「キェーッ！キーッ！」
　
　少年は真っ白な尻の後ろで、勝ち誇ったように奇声を上げた。淫らな快感が麗子の全身を覆う。確かに性行為は麗子の身体の『大好物』である。しかし、状況が違う。『人間』として、この状況で感じてはならない。

　麗子は恐怖した。自分の身体までもが精神を裏切っている。『犯される』ということの本当の感覚を、初めて知った気がした。
　
「・・・ああ！ああ！」

　少年が腰を動かす度に普段とは比べものにならないほどの官能が麗子を襲った。今、年端も行かない子供の逞しい肉棒に、エロティックなフェロモンを放つ麗子の身体は喜びの紅潮を表している。

（ダメ！・・感じちゃダメ！・・・）

　麗子はそれに耐えた。これを『愉しんで』しまったら自分は人間ではないと思った。

　そのとき、ガチャリとドアが開き、もう一人の少年が入ってきた。それを見た瞬間、麗子の中の全てが砕け散った。