４　公開陵辱

　麗子は宿へ帰った。
　部屋の前に来ると、中から話し声が聞こえた。少年達はもう帰ってきているようだった。

　ドアを開けると、少年達と、女の子が二人いた。テーブルにカズヤとヒデキが座り、それぞれ膝に女を抱いてイチャついていた。
　マサトは窓際の椅子にふんぞり返ってそれをニヤニヤと見ている。麗子はちらりと女の子達を見た。高校生くらいだろうか。様子がなんとなくおかしい。

（薬を打ってるのかもしれない・・・）

　この少年達は、それくらいのことは平気でしそうな気がした。

　麗子は無視して着替えを始めた。裕也の部屋で、あれだけ辱められたのだ。もはや隠す気もなかった。マサトがニヤニヤと麗子の着替えを眺めている。

「あなたは、しないの？」

　麗子は冷めた口調で言った。

「俺はほら、サセ子ちゃん一筋だから。」
　
　ニヤつくマサトを、麗子は無視した。

「よっ！」

　麗子が浴衣に着替え終わるのを待っていたかのように、マサトがいきなり立ち上がった。
　
「さ！行こうか！」
　
　そう言うと、カズヤとヒデキも立ち上がった。それぞれ女の腕をつかむ。マサトは麗子の浴衣の胸元を掴んだ。麗子は、その危険な予感に戦慄を覚えた。

　少年達は勢いよく部屋を出ると、旅館内を闊歩しだした。他の泊り客達が、中学生に乱暴に浴衣を引っ張られて半裸で翻弄される、フェロモンの塊のような美女を、怪訝そうな顔で見ている。

（いやぁ・・・・はずかしぃ・・・）

　少年達は自分達の力を誇示するように、わめき、はしゃぎながら女達を引きずりまわす。麗子は乱れる浴衣を必死で抑えた。

　少年達は浴場に着くと、マサトと麗子を先頭に、迷わず男湯へ入っていった。

（ああ！･･･）

　信じられなかった。麗子の身体は恐怖によって一瞬鳥肌が立ち、そして羞恥によって一気に熱くなった。心臓が張り裂けそうになる。
　脱衣所では、当然ながら半裸、もしくは全裸の男性達が、何が起こったか分からないという表情で立ち尽くしたまま、一行を見ている。

（きゃあ・・・きゃあ・・・）

　あまりの状況に叫び声も出ない。
　少年達はそんな『一般人』の視線などお構いなしに、むしろその視線を愉しんでいるかのように、裸の男だらけの脱衣所で女たちの服を乱暴に剥ぎ取った。

「キャッ！」

　成熟された麗子の真っ白い雪のような肌が見知らぬたくさんの男達の目の前に晒される。目の前がクラクラとする。

「ひぃい・・・」

　麗子達は小さな叫び声を上げて身体を抱えた。羞恥心に敏感になった肌に、針のような視線が刺さっているのを、はっきりと感じる。

「ヒャッハッハッハ」

　少年たちはその女達のうろたえぶりに満足したように凶暴な笑顔を見せると、戸をガラガラと勢いよく開けた。

「オラァ！」

　女達を浴場へ蹴り入れると、ぴしゃりと戸を閉めた。その向こうでまた笑い声がする。

　女達は取り残されて、素っ裸の身体を、身を寄せ合って隠した。

（いやぁ・・・もう・・・）

　麗子は泣き出しそうだった。しかし、グラグラと目眩がするほどの凄まじい緊張に泣き出す余裕もない。

　浴場の中の男達は、突然入ってきた、素晴らしく美しい全裸の女達に、言葉も出ずに釘付けになっていた。
　麗子たちも含めて、誰も今のこの状況を理解できなかった。旅の疲れ、スポーツの疲れを癒すため、暖かい温泉に浸かり、身も心もリラックスしていたところへ、思いもよらない淫欲の緊張が飛び込んできたのである。

　麗子たちは、その真意を探るような冷めた視線に、隠しきれるはずのない身体を精一杯隠していた。それでも体中を隅々まで見られているような凄まじい羞恥は消えない。
　逃げ道は思いつかなかった。少年達のなすがままにことは進んで行くに違いないのである。
　突き刺さる視線に肌が敏感に反応して、その感度を上げていく。

（ああ・・・おかしくなりそう・・・）

「ウィーッス」

　すぐに少年達が入ってきた。周りの目など全く気にしていない。まるで王様だとでも言わんばかりに堂々としている。

「ホラッ」

　少年達はまた女達を蹴り倒した。そのまま三人の美女を四つんばいにさせる。麗子は真ん中だった。

「おら、ちゃんと尻突き出せよ。」
（誰か・・・助けて・・・）

　周りの大人たちは誰一人動かなかった。少年達のその圧倒的な無法ぶりに、全員が呆気に取られていた。

「ほら、もっとくっつけくっつけ。」

　女達は浴場の湿気に汗ばんだ身体を寄せ合った。

「はあっ・・・」

　真っ白な肉と肉が、汗をテカらせながらクチャクチャと押し付けあって揺れる様は、異様なエロスを浴場中に撒き散らす。
　少年達は、『まず手始めに』とでも言うように、女達の高潮したボリュームのある尻に並んで肉棒を挿し込んだ。

「あぁあ！･･･」

　麗子たちの黄色い、色気を存分に含んだ喘ぎが浴場に響いた。みんなが呆然とそれを見ている。

（やらしい・・・やらしすぎるわ！・・・）

　浴場のど真ん中で女達が犯されている。
　誰かが警察や旅館の従業員を呼んでくるかと思ったが、誰も来なかった。『触らぬ神に祟りなし』とでも言わんばかりに、誰もが少年達に触れることを躊躇していた。

（あぁっ！・・・あぁっ！・・）

　麗子は、そのあまりに現実離れした淫行に、自分の身体が異常なほど反応しているのを感じていた。
　ヌチャヌチャと擦れあう肌と肌。湿ったタイル。信じられないが、これは『現実』であり、『現実』であるからこそ、凄まじいまでの興奮が生まれていた。

（ああ・・・こんなところで・・・私、みんなの前で犯されてる！・・・）

　その快感に汁が染み出る。快感に埋没しそうになる思考を、辛うじて『常識人』の理性が抑えていた。

　ひとしきり麗子の肉の感触を堪能すると、マサトは悦楽の半ばで男根を引き抜いた。

「ああ･･･」

　麗子は陶酔しかけた意識を現実に引き戻されて、ゆっくりと目を開けた。

（ああ・・・）

　みんなが自分を見ていた。男達の視線が、全ての毛穴という毛穴から染み込んでくるように感じられた。その視線に鳥肌が立ち、羞恥に顔が紅潮する。
『複数に犯されること』と『関係ない人に見られる』ことは、全く違う。

（凄い・・・・）

　マサトはそのままツカツカと洗い場のほうへ歩いていきながら、振り向きもせず指で麗子を従わせた。

「・・・・」

　麗子は黙ってマサトの後に続いた。最早身体を隠す気力もない。その完璧な色気を誇るプロポーションを惜しげもなく披露する。

　マサトは洗い場に座っていた、高校生くらいの青年の横に仁王立ちに立つと、彼を睨みながら麗子を招き寄せる。青年が立ち上がりかけたとき、マサトが凄んだ。

「座ってろよ。」

　静かだが、その目には凶暴な威圧感があった。人を脅し慣れている目である。青年は仕方なくまた座りなおした。

「えっ？・・・・」

　マサトは黙って麗子の長く美しい脚を左足だけ抱え上げると、その頭を跨ぐように、青年の頭の真上の壁の出っ張りに掛けた。

（ああ！･･･悪夢だわ・・・）

　青年が顔を上げれば、そこにはさっきまでマサトの肉棒をくわえ込んでいた麗子の蜜壷があるのだ。
　麗子は身体に火をつけられたような熱さを感じていた。これほど恥ずかしい格好があるだろうか。

「見ろよ。」

　マサトは青年に命令した。

（ああっ！・・）

　麗子の心臓の高鳴りは、マサトの行動に一々敏感に反応する。
　青年は黙って下を向いている。その横顔に、理不尽な暴力を突きつけられた悲痛な表情が浮かんでいる。

（ごめんね・・・ごめんね・・・）
「見ろって。」

　静かであればあるほど凶暴性を顕わにするマサトの声。青年がゆっくりと顔を上げていく。

（はあ！・・あぁあ！・あ・・）

　麗子はあまりの羞恥に狂いそうだった。体中の神経という神経が蜜壷一点に凝縮されて集中しているのだ。その傷口のように敏感な部位を、青年の視線が責める。

　麗子は、この青年を含んだ、じっと自分達を見ているたくさんの人たちと自分達の間に、透明なガラスの壁を感じていた。
　こんな異常行為とは全く無縁の子羊のような常識人の中に、断りもせずに押し入った狼達。それが自分達なのである。
　自分達は『加害者』であり、彼らは『被害者』なのだ。彼らは『常識人』であり、自分達は『異常者』なのだ。

（ああ・・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・・）

　その『ガラス』の向こうから、青年は麗子の妖艶な痴態と、淫汁に溢れた蜜園を凝視している。麗子の中の、『常識社会』に対する背徳感が究極まで上がっていく。

（ああ･･･どうしてこんなことができるの・・・・）

　麗子はマサトの残虐性、凶暴性に恐怖した。それは麗子の肉体と精神を這い上がれないほどどん底までおとしめる。しかし、麗子の身体はそれを喜んで、たっぷりの愛液で答えてしまっている。

（私っておかしい・・・おかしいわ・・）

　その屈辱感と自己嫌悪に、精神が粉々になってしまいそうだった。

「舐めろ。」
「！」

　砕かれた心を更に磨り潰すような徹底的な陵辱。

（ああ・・・）

　仮にも自他共に認める類稀なる美貌の持ち主である麗子を、ここまでおとしめることのできる男が他にいるだろうか。その点に於いて、マサトは世界中で最高の男であるかもしれない、と麗子は感じ始めていた。
　青年は困惑して視線が定まらない。

（！？・・・）

　ふと麗子はその青年の目の光の中に、陰険な性欲を感じてはっとした。信じられなかった。が、確かに淫欲を感じる。麗子の中で何かが音を立てて崩れ去っていく。

（それが男達の本性かもしれない・・・）

『正常な人』『常識的な人』。その人たちは確かにこんなまねはしない。しかし、本当に『したくない』からしないのだろうか・・・。

　麗子は今までのことを思い返していた。自動販売機の前で麗子の尻を舐めた男、職場の上司、浮浪者たち。彼らは確かに表立ってこんなことはしないだろう。しかし、そこに付け入る隙を見つけたとき、牙をむく。
　今ここで繰り広げられている惨状は、全ての男達が心の奥底で望んでいるものなのかもしれない。
　関わり合いにならないように眼を伏せながら、ちらちらと麗子たちの身体を見ている大人達が視界をよぎる。

（この人たちは、すでに頭の中で私を陵辱しているのかもしれない・・・そしてその目に焼き付けた私の美しい肢体の記憶を大事に持ち帰って、一人思い出してはオナニーにふけるんだわ・・・）

　少年達はそれを知っている。社会的な顔で偉そうに街を闊歩している人間も、一皮向けば同じ穴のむじなだということを。そしてその矛盾に反抗している。欲望を隠し、潔白そうな顔でのうのうと生きる矛盾に、牙をむいている。

　少年達は、なんだかんだ言っても結局は暴力に逆らうことのできない、貧弱な常識人を嘲り笑っているのだ。彼らと同じように、この美しい女達を心の求める限り陵辱できる者は、ここにはいない。
　今現実に、これほどまでに傍若無人に平和を踏みにじる彼らを、誰も止めることが出来ない。
　女達を助けもせず、美しくエロティックな身体を家畜のように陵辱する少年達の『勇姿』を羨望のまなざしで見ているだけだ。

（ああ・・・・）

　麗子は『常識』の、『正常さ』の、あまりに惨めな脆弱さを思い知らされた気がした。
　その瞬間、それにしがみついて常に葛藤し、苦しんできた自分が馬鹿らしく思えて、悔しさが沸きあがってきた。

（触らぬ神に祟りなし・・・そうか・・・）

　麗子は全身の力が、今湧き上がってきていた怒りが、すうっと引いていくのを感じた。

（このコ達は、中学生でありながら神なのね・・・。）

　麗子はそう悟った。誰も彼らに逆らえない。彼らは、この大勢の小市民の中で、堂々と欲望の限りを尽くせる唯一の存在なのだ。

（凄い・・・この子達って・・・）

　麗子は、この凶暴な少年達の『オモチャ』であることに、誇りすら沸き起こってきているのを感じていた。

「舐めろ。いちいち何回も言わせんなよ。」

　マサトは青年を脅しているようで、実は大義名分を与えている。
『やらされている』。他の常識人達の目にそう映れば、青年は自己の立場と尊厳を保ったまま、この振って沸いた『チャンス』に飛びつくことができる。マサトはその心境のメカニズムを知っている。
　青年が、怯えたような顔をしていながら、実はこのいやらしいまでの色気を発揮する女を陵辱したがっていることを知っている。

　それを証明する狡猾な光を、麗子は青年の目に見た。
　そして、最後の理性の糸が切れた。

（さあ、この人がこう言ってるんだから、いいのよ・・・。こんないい女、中々お目にかかれないでしょ？・・・）

　麗子のナルシズムに一気に火がついた。少年は麗子の愛らしく潤んだ瞳からその意志を感じ取ったのか、ゆっくりと首を伸ばし、舌を出した。

（ああ･･･）

　自分の股の下の、青年の目が血走っている。常識人が理不尽な性欲と暴力に屈服する瞬間である。

（いいわ・・・・きて・・）

　ガラスの壁が破られてゆく。とうとう彼は、『正常』と『異常』の境界線を越えた。生暖かい、にゅるっとした感覚が麗子の恥部を襲う。

「あぁあっ！」

　浴場に麗子の叫びが響き渡った。その瞬間、全ての『常識人』が『仲間』の敗北を知った。

　麗子の全身に鳥肌が立つような快感が走る。失禁してしまいそうなほどの凄まじい幸福感。正常と異常が協力して麗子を犯している。寄ってたかって麗子を辱めている。

「んぁっ･･はぁっ！･･･」

　青年の息が荒くなる。最早青年の柔らかい口の肉からは醜い欲望しか伝わってこない。その醜い欲望が麗子のとろけた肉ひだを美味しそうに侵略している。

　マサトはそれをじっと見ていた。青年はその甘い蜜肉をより味わおうと、麗子の腰を両手で掴んだ。

「あぁあ！･･･あはぁっ！･･･」
（犯されてる！・・・私、『このコに』犯されてる！！）

　そのときにマサトの蹴りが飛んだ。

「うげっ！」

　青年は全く無防備だっただけに、派手な呻き声を上げてタイルの床に崩れ落ちた。その滑稽なほどに惨めな姿と裏腹に、ペニスだけが隆々と男らしく勃起して彼の本性を露呈しているのを、麗子は見た。

「はい、ここまでね。」

　マサトは最早青年を見ずに、麗子の腰に手を掛けた。

（ああ・・・）

『支配者』の手の感触である。少年は納得のいかない、しかし抵抗することのできないもどかしさを表情に浮かべ、恨めしそうに麗子を見ている。

（ごめんなさいね･･･でも、私を自由にしたいなら、この人くらいにならなきゃ・・）

　麗子は心の中で、青年を、そして周りで見ている常識人を嘲った。嘲るしかなかった。

　あまりに無力な『常識』『正義』。何のことはない。この少年達のほうがどれだけ頼もしいか、どれだけ男らしいか。

　マサトがゆっくりと麗子のアナルに肉棒を宛がう。麗子は、身体が幸福感にとろけていくのを感じた。

（見てなさい・・・男はこうでなくちゃ、ダメなのよ・・・）

　中学生のペニスが、ずぶずぶと麗子の尻を侵していく。麗子は青年の目をじっと見つめていた。青年も、尻を犯され、隠すことのできない歓喜を表情に浮かべる麗子の艶やかな顔を、物欲しそうにじっと見ている。マサトが自信満々にピストンを始める。

「ああ！あぁあ！」

　いきり立ったペニスから伝わるその圧倒的な自信に、麗子の身体は否応なく男らしさを感じていた。

「うらうらうらーっ！！」

　凶暴な支配力。全身が、完全にマサトに屈服していた。麗子の中で全ての価値観が音を立てて崩れてゆく。

「ああ！マサト君！・・・私をあなたの女にして！・・・」

　麗子は叫んだ。自分自身信じられない言葉だった。それは脳からではなく、身体の奥底から湧き上がった言葉だった。
　浴場にいた全ての人間が固唾を飲んだ。麗子は『暴力によって陵辱されている』という大義名分を自ら破った。
　この女は『被害者』ではない。この女は『自分で望んで陵辱されている』。その、少年達にさえひた隠しにしてきた本心を、麗子は見も知らぬ善良な小市民達の前で告白したのだ。

「ああ？『してください』だろ！？・・・『してください』！！」

　マサトが勝ち誇ったように叫ぶ。その肉棒は揺るぎ無い力強さで麗子のアナルを、全てを虜にし続けている。

「んああっ！・・・してください！！･･･奴隷にしてください！！」

　麗子の告白に感応するかのように、肉棒は更に男らしさを増した。『グッチャングッチャン』とペニスが肛門を出入りするいやらしい音が大きくなる。

「ああ！いい！・・・気持ちいい！！」

　麗子は没頭した。全ての神経が、感覚が、マサトの肉棒に集中し、その快感を一滴も漏らすまいとしていた。

「へえ、麗子ちゃん、マサトのこと好きなの？」
「！」

　いつの間にか自分の女を犯し終えたヒデキが、快感に喘ぐ麗子の顔をすぐ横で眺めていた。

「じゃあ、俺がキスしちゃおう。」

　ヒデキはそう言うと、今マサトに告白したばかりの麗子の唇に、よだれだらけの舌を滑り込ませた。

「んんっ･･･ん･･」

　口の中でヒデキの舌が、ぬめぬめと蠢く。それは凄まじい屈辱でありながら、快感を更に一段上に引き上げる。二人の口の間から漏れた唾液が糸を引いて垂れる。

「ギャハハハハッ」

　マサトは容赦なく麗子の心を嘲り笑う。

（ああ！・・・素敵！・・素敵！・・）

　地獄である。しかし、その地獄は、快感なのである。
　麗子は今まで意識もしなかった自分の中のマゾヒズムに底知れぬ恐怖を覚えた。

「なんだてめえ！！」

　背中のほうでカズヤの怒号が聞こえた。しかし、麗子にはそれを認識する余裕はなかった。

　カズヤは、三十歳くらいの、もちろん自分より背の高い男性を麗子の横の壁に引きずってきた。手は相手の髪の毛にがっちりと喰い込んでいる。

「てめえ、なにガンたれてんだよ。」

　カズヤは男性に絡んでいた。目がおかしい。カズヤも薬をやっているようだった。男性の顔は、恐怖に強張っている。

「てめえ、ぶん殴ってやるよ。」

　カズヤがニヤリと悪魔的に笑う。麗子はマサトに犯されながら、その狂気的な顔に鳥肌が立った。

　バキッという鈍い音と共に男性の顔から血が吹き出した。

「！・・・」

　麗子は目をつぶった。しかし、また開いた。ぐったりした男性の血まみれの顔を見て、返り血を浴びたカズヤが目を爛々と輝かせて薄笑いを浮かべている。

（なに！？・・・この感覚・・・！」

　麗子の体中の血の気が引いた。だが、その次の瞬間、信じられないほど熱い血が体中を駆け巡り、その血に運ばれるように快感が体中を包んでいったのだ。

「ああああ！････」

　麗子は気が狂いそうだった。それがどんな体の反応なのか理解できなかった。わかっていることは、『カズヤの暴力を見て、結果的に体が快感を増している』ということと、『それが極めて異常であり、道徳的に許されないこと』だということだけだった。

（いやぁっ！！・・・・いやぁっ！・・）

　暴力と淫欲、そして狂気。『繋がってはいけない』感覚が、狂ったように感応しあっている。

「ヒャハハッ」

　カズヤがもう一度男を殴る。それも手加減なく、思い切り振りかぶった拳が男性の顔面に喰い込み、言い表せない残酷な音を麗子の耳に届けた。するとまた、大量の愛液が溢れて、ぼたぼたと床に落ちる。

（凄い・・・凄い！！・・・）
「あぁっ！・・・あぁあんっ！！・・」

　麗子は自分の狂気に焦燥し、パニックに陥った。そのパニックの中で、凄まじく甘美な快感が踊っている。
　男が麗子の足元に倒れ、麗子の白く美しい脚に血が跳ねた。

「あぁっ！・・・あっ！・・あっ！・・」

　麗子は絶頂に達していた。体中の力が抜けて、意識を失いそうになる。

「おら･･いくぞ！！・・・」

　力の入らなくなった麗子の体をマサトが更に激しく突き上げる。

「んはっ！･･･んはっ！･･」

　大腸に大量の精液が注入され、麗子は血まみれで痙攣する男の横に倒れこんだ。

　少年達はひとしきり性欲を放出すると、貧弱な『常識人』達を見回した。
　大人達は一様に目を伏せ、彼らの視線を避ける。

「この女達とやりたい人―。」

　マサトはその『観衆』達に、志願者を募った。浴場が静まり返る。

「は･･･はい･･･」

　一人が手を上げた。洗い場で力なく倒れたまま聞いていた麗子は絶望した。

（なんて恥知らずなの・・・）

　この惨劇を見て、何もできなかった自分に良心が痛まないのだろうか。

　マサト達も、まさか志願者が出るとは思っていなかったらしく、顔を見合わせてその節操のなさを笑った。

「よし、そこのデブ男、お前、出てこい。」

　おそらく二十歳は年下だろう中学生達にそう言われて、男は照れ笑いを浮かべておずおずと出てきた。
　青白く太った体は、汗でヌメヌメと光り、生肉のような不快感を発し、頭は禿げ上がり、その代わりに痴毛のような体毛が汚らしく体中に散りばめられている。目はよどみ、口はだらしなく半開きになっている。

　最悪の男だった。しかし、男の心境もわかる。『どうせこの先あんないい女とやれることはない。恥だろうがなんだろうが、この機会にやってしまえ』というところだろう。

　従うしかない。それはわかりきっていて、逃れられないことだった。

　カズヤとヒデキもそれぞれ男を引っ張り出してくると、湯船の前で女達を始めのように四つん這いに並ばせた。女達は放心状態で肌を寄せ合うと、タオルで両手を後ろ手に括られた。
『俺達がやったようにやれ』。

「それと、中出ししていいから。」

　三人はそれだけ言うと、湯船に浸かって女達の犯される表情を愉しんだ。
　吐き気がするほど醜悪な男の、汚らわしい肉棒が麗子の体内に侵入する。

「グヒヒヒヒ・・・」

　男の生ぬるいよだれが、腰のくびれに垂れる。

（ああ・・・汚らしい・・・）

　しかし気持ちいい。自分の身体が恨めしかった。
　女達は押し殺した声を上げて、それぞれの男達の男根による陵辱に耐えた。

　男達が果てそうになると、少年達は急いで湯船から上がって、射精を受け入れる結合部を眺めて笑った。

　それが終わると、少年達は湯船のヘリに並んで座り、手は縛りあげたまま女達に肉棒を口で奉仕させた。そしてそのまま口の中で二度目の発射を済ますと、女達をほったらかしてさっさと出て行った。

（ああ・・・ああ・・・）

　ゴミのように打ち捨てられた麗子たちに、手を差し伸べるものはいなかった。

５　終焉

　次の日の朝、警察がやってきた。マサトたちは婦女暴行と、薬物使用で逮捕された。少女達は正直に告白した。

「あなたは？あなたもやられちゃったの？」

　若い警官が麗子の身体を舐めるように眺めて訊いた。目に興味の色が出ている。麗子は何も言わなかった。

　マサト達は、一年以上は少年院から出てこれないだろう。帰りの新幹線に乗りながら、麗子はこれからのこと考えた。

　マサト達とは、二度と会わないつもりだった。確かに少年達の性行為は刺激的であり、魅力的であった。しかし、麗子は思い直していた。

（もっともっと、色んなことをしたい・・）

　彼らの『所有物』になることは麗子の自由を奪う。マサトに『飼われて』いては、『真の自分』は見つからないように思えた。麗子は、まだまだ色んなものを見てみたかった。

　帰るとすぐに、麗子は裕也に電話をした。

「おう･･･おかえり。･･･どうだった？」

　裕也の動揺に麗子は確信した。

「私、マサト君の女になったから。」

　麗子は鷹揚なく言った。

「ああ･･･そうか･･･」
「全部話してくんない？マサト君にあなたに聞けって言われてるの。話してくんないと、マサト君怒るかもよ。」

　裕也は惨めなほど焦って、全て話した。彼らとは暴走族の仲間で、常に馬鹿にされ、使われて、女を供給させられていたこと。初めから少年たちに渡すつもりで麗子と付き合ったこと。麗子の予想通りだった。

「まあ、いいわ。もう会わないと思うけど、元気でね。」

　麗子はそれだけ言って電話を切った。

　空を見る。『愛』を求めた末、結局麗子が悟ったのは、常識社会と愛への不信感と、自分の性癖の強力さだけだった。

（いいわ･･･好き勝手やってあげる・・・）

　麗子は生まれ変わることを決意していた。