３　餌食

　再び電車が走りだす。『手』はまたすぐに戻ってきた。そして、異変が起こった。

「！」

　麗子は、思いもしなかった感触に焦燥した。再び伸びてきた『手』は一本ではなかった。麗子が驚いた瞬間、あらゆるところから数え切れないほどの手が伸びてきたのだ。

（ああ！何これ！・・・何なの！！）

　麗子は気づいていなかった。『手』に犯され、サングラスの奥で長いまつげの瞼を閉じ、眉をハの字に歪めてとろけた自分の表情が、周りの男達にその欲情を露呈し、性欲に火を付けてしまっていたことを。

（ああ！・・・・ああっ！！）

　麗子は信じられない状況に気が狂いそうになった。
　数え切れないほどの『手』たちが麗子の両腕を掴み、首、乳房、乳首、腹、尻、太もも、ふくらはぎ、そして蜜壺と、体中を蛭のように這いずり回って麗子の、つきたての餅のような柔肉を犯している。

　手だけではない。首と太ももに感じる、ナメクジが這いずり回るような感触は、おそらく舌だろう。
　パンティーはすでに膝までずり下ろされ、前のボタンもほとんどはずされて、しかし露出するはずの白い肌が見えないほどに『手』達が群がっている。
　火照った身体に、外気と汗ばんだ男たちの手が交互に襲う。

（あぁああ！･･･）

　体中の感度が一気に最高潮に達して、麗子は失神寸前だった。

　次の駅、また次の駅。もはや駅に止まっても手は陵辱をやめない。

（凄い！・・・凄い気持ちいい！・・・）

　最早脳はとろけ、生クリームのように甘く、柔らかくなり、愛液は止めどなく溢れ、汗と、誰のものともわからないよだれに、脚がベチョベチョになっている。
　たくさんの良識人がいる車内で、人知れず陵辱される自分のエロスに、麗子は陶酔していた。

　終点に着くと、手は一斉に引き、ぞろぞろと下車するたくさんの一般人に紛れて消えていった。
　車内には犯され疲れてぐったりとドアにもたれた麗子だけが残された。

（凄い・・・こういうのもいいわね・・・）

４　精液便所

　麗子は何とか起き上がり、駅の構内を会社のあるほうの出口に向かった。

　公衆トイレの前に差し掛かったとき、いきなり誰かに手を引っ張られた。

「！？」

　まだ、車内での陵辱の余韻に、意識が朦朧としていたせいもあって、麗子は状況がつかめなかった。
　手はものすごい力で麗子を引っ張っていく。麗子の視界に小便器が入った。

（男子トイレ？･･･）

　手は麗子を個室に引きずり込むと、乱暴に戸を閉めた。

「あっ！・・・」

　麗子が振り向こうとすると、手が麗子の首筋をつかんで壁に押し付けた。麗子は抵抗をやめた。

「ハアハア・・・」

　背中で荒い息が聞こえて、その手の主が男であることがようやく分かった。その男の他にも、人の気配がする。

　ふと、麗子の顔の横にギラリと冷たく光るナイフが差し出された。

「きゃっ」

　傷だけは、絶対につけられたくない。

「声を出すな・・・。」

　麗子は状況を理解した。どうやらこの男達は自分を犯したいらしい。きっと電車内の『手』の持ち主のうちの何人かだろう。

（ガマンできなくなっちゃったのね・・・しょうがないコねえ・・・）

　麗子は動揺しなかった。麗子自身も燃焼し切れていないところだったので、ちょうどよかったと思った。
　それに、自分とやりたいがために『犯罪』を犯したという男達の行為が、麗子の性欲を刺激していた。この犯罪の重さは、当然痴漢の比ではない。

『社会人である大人たちが、自分を犯すために、一生を捨てる覚悟で犯罪を犯す』。

　麗子の女としての魅力に対して、これ以上の賛美があるだろうか。それを思ったら、熱烈な『ファン』にサービスすることに対して、全く抵抗は無かった。

　狭い個室の中には麗子を連れ込んだ男を含めて三人の男がいるようだった。
　男は麗子に両手を壁に付くように指示すると、小さなレースのパンティーを乱暴に引き摺り下ろし、はちきれんばかりの肉棒を宛がった。

（ああ・・・）

　まだ湿り気を保ったままの蜜肉に、彼の男根と、その先から染み出ている粘り気のある液体が心地いい。

「ようし・・・やってやるぜ・・・」

　男は自らを鼓舞するようにそう言うと、肉棒を挿し込んだ。

「んんっ・・・」

　男の男根は驚くほどスムーズに奥まで到達した。麗子にとっては、久しぶりの感触である。

「おおお・・・・」

　男は、暖かく、適度な粘り気と締め付けのある麗子の内肉の感触に、『強姦した甲斐があった』と言わんばかりの感嘆の声を上げた。

「んん・・・うん・・・・」

　麗子は小さく、しかし男の性欲をくすぐる色気を孕んだ声を漏らした。純粋に肉棒の感触がうれしかった。
　男がゆっくり腰を動かす。欲望の化身である肉の塊が、誇らしげに自分の身体を犯していく。

「ああ・・すげえ・・・」

　男は麗子の肉の尋常でない心地よさに驚いた。
　
「中出しはまずいですよねぇ・・・。」
　
　麗子の背中で、今までじっと黙っていた他の男の、少し気弱そうな声がした。
　
「関係ねえよ。俺は出すぜ。」
　
　犯している男は、履き捨てるように言った。どうやら三人は赤の他人のようだと麗子は思った。

「へああ・・」

　男は早くも腰を激しく使い出した。

（よっぽど我慢してたのね・・・）

　感触に陶酔する余裕もなく射精の快感を急ぐ男に、麗子は愛らしささえ覚えていた。

「んんん！････」

　麗子の中に熱い液体が快感を伴って広がった。

「あっ！・・あぁん！・・・」

　麗子は必死で喘ぎを噛み殺した。

　男はそそくさと身支度をすると、黙って出て行った。

　残った男達は、まだオロオロとしていたが、壁に手を突いたまま待っている麗子の、高々と突き出した尻の蜜壷から、ピンと伸ばした美しい脚のももの裏側をゆっくりと溢れて流れるさっきの男の精液を見ると、慌ただしくズボンを脱ぎだした。
　次の男がペニスを挿し込む。

「あぁん････」

　微妙に違う感触。それはまるで次々運ばれてくるフルコースのようだ。

「はあ・・・」

　男は、麗子の痴肉の感触に消え入りそうな情けない声を出した。しかし、男根は長く逞しく、麗子の体内を陵辱している。

（この人・・・結構凄いかも・・・）

　麗子は愉しんでいた。

「・・・やっぱ、中出しはまずいよね？」

　男はやりながら、さっきと同じことをもう一人の男に言った。麗子の中の男根は、明らかに出したがっている。

「・・・混ざっちゃえば、分かんないんじゃない？・・・」

　それからは無言だった。二人ともしっかり中出しして、個室を出て行った。
　麗子は自分で個室の鍵を閉めると、しばらく今の快感を反芻した。