目次

　未知との遭遇―幻滅―食べちゃうぞ。―双思双愛―友情―着せ替え人形―共同戦線―遅く起きた朝―学園天国―パラダイス・シネマ―チアギャル―第一級戦略会議―ミッションインポッシブルー―クイックターン―初登校―摂氏100度―シンクロ

人物紹介

柏木　優子
水原　朋美
　　　　千沙
　　　　真琴
　　　　舞

山池　澄香（真琴の姉）

犬村　大角
　　　　雄太
　　　　一樹

　あらすじ

　優子の初恋は、ちょっと変なコブがついてました。
　彼女の中の彼女と彼女のラブコメ。

第一話「未知との遭遇」

　僕の外のもう一人の私さん。おはよう。
　僕のことを君は知らないみたいだけど、僕は君の事を良く知っているよ。
　たまに僕の声に気付くこともあったようだけど、いつも君は気付かない振りをして、幻聴とか言って騒いでいたね。ほら、今も。

　このまま君の中で眠っていようと思ったのだけど、君が好きになった彼を僕は好きじゃないんだ。
　だから、君がもし彼とキスしたりＨしたりなんてことになったら、僕にとってそれはレイプまがいの悲惨な出来事になってしまうの。

　ねぇ、聞こえてるのでしょ。
　僕には君の思っていることが聞こえるし、
　君が僕の思っていることを聞こえていることも知っているんだよ。

　もう、まただんまりだよ。悔しいな。無視されるのって結構悲しいんだよ。

　あ、ねぇ、優ちゃん。あの人好みのタイプでしょ。右手の、ほらあの背の高い人。
　ほら、優ちゃん。僕の声に反応してるじゃん。なにをキョロキョロしてるの？
　ねぇ、でも僕はあれよりも、その向こうのがっしりした人の方が少し好みかな。
　まぁ、こんな電車の中では良いほうだと思わない。

（また、幻聴がひどくなっている。はぁ、高校に入ってからずっとだもの。嫌だわ。）

　嫌なのは僕の方だってば。ねぇ、優ちゃん。僕は君の彼氏とＨしたくないの。
　君がオナニーで彼を想像しちゃうのは我慢するけど、本物だけはちょっと勘弁だからね。
　こないだキスＯＫの仕草とか優ちゃんがした時、背筋が寒くなったよ。

（ねぇ、本当に私の中に誰かいるの？どうして私と彼のこと知っているの？・・・って私馬鹿みたい一人問答なんてしちゃって。疲れてるのかな・・・。）

　だから、もう何度も同じ説明してるじゃない。僕は君の中にいるの。
　だから全部分かるし、優ちゃんだって高校受験の時、僕がいくつか答え教えてあげたの気付いたでしょ。
　優ちゃんより僕のほうが勉強できるみたいだったから、凄い頑張ってサポートしてきたんだよ。
　さっさと認めて気付きなさいってば。

（あのぅ、本当に私の中にあなたはいるのですか？）
　うん。いる。優ちゃんのＨな妄想のお話とかもしようか。僕と優ちゃんだけの秘密じゃない。ねぇ、聞く？

（いや、いいです。恥ずかしいし・・。他の人には秘密にして欲しいです。）
　大丈夫だよ。僕は優ちゃんとしか話せないもの。だって、唇は優ちゃんしか動かせないでしょ。
　でね、今のあの彼とは別れてくれるでしょ？あいつちょっとナル入ってるって。ね。

（あ、あの。一樹君のことを私大好きだから、別れるのはちょっと・・・。）
　えぇ、じゃ、僕に一樹に犯されながら泣き叫べって言うの？酷いよ。そんなの。
　僕は逃げも隠れもできないんだよ。
　１４年以上一緒なのに、一樹の奴とＨしたいってだけで、僕の処女・・・優ちゃんの処女だけど、僕のでもある。
　うん、そうだ。僕だって始めて位、好きな人としたい。

（そんなこと言われても困るよ。）
　こっちだって困るよ。もしあいつとＨしたら一生、優ちゃんの中で泣き叫んでやるからね。
　女の恨みは恐ろしいぞぉ。怖いぞぉ。そんなことになる位なら、お互いが気に入った人を探そうよ。
　ね、お願い。一生のお願い。

（一樹君の何が駄目なのよ。凄く優しいよ。運動だって人より少し良いし。）
　生理的に無理。それに冷静に見てもあいつ大したことない。頭悪い奴嫌いなんだよね。

（酷いよ。私の一樹君にそんなこと言うなんて・・。）
　優ちゃんが聞いたんじゃないか。
　それにお互い嘘を言えないんだよ。脳味噌繋がってるようなものだもの。

　悪意はないけど、あの馬鹿男・・・とと、ごめんごめん。でも本当だし・・。あぁ、難しい。
　いつもは優ちゃんが耳を塞ごうとしたら、僕の声聞こえずらくすることもできたんだけど、なんか優ちゃんが僕にちゃんと気付いてくれたおかげで、僕の声全部伝わっちゃうな。
　諦めてね。

（じゃぁ、一樹君のことも諦めて私に任せてよ。）
　嫌。絶対嫌。死んでも嫌。あいつに犯されるくらいだったら、死んだほうがまし。
　しかも、優ちゃんのことだから絶対イカされちゃうだろうし、そしたら僕も嫌いな男に凄く気持ちよくされちゃうんだよ。
　もう、本当勘弁してよそんなの。レイプのほうがまだましだよ。

（うぅ。せめてデートは良いでしょ。手繋いで歩いたり、一緒にアイス食べたりとか、凄く幸せなんだもの。）
　うん。それは優ちゃんが幸せなのを僕も感じてたから許す。
　でも、キス以上は絶対駄目。こないだみたいに上目遣いに見つめて唇突き出したりとか絶対駄目。

（そ、そんなことしてないよ・・。）
　しました。嘘は無理なんだから諦めなさい。
　あいつが気付いてキスなんかしてきてたら、僕は今頃、狂い泣きしてるよ。
（なんでキスしてくれなかったのかな・・・。）
　だから、しなくてよかったの。

（あの、あなたのお名前は？なんて呼べばいいの？）
　え・・？名前？うーん。ない。どうしよう。考えても見なかった。
　僕も一応優ちゃんなのかなぁ？でも、それなんか変な感じだね。
　あ、そうだ。僕の名前、今日から浜崎あ○みにしよぉ〜っと。

（あのぉ、本当に名前ないなら・・ちゃんと考えてつけようよ。）
　じゃぁ、ペネ○ペ・クルス・・・。駄目かな。あの人好きなんだよね。
（ねぇ、ちゃんと考えようよ。）
　じゃぁ、優ちゃんで良いよ。１４年も優ちゃんって人に呼ばれて慣れちゃったし。
（駄目よ。同じ名前になっちゃうじゃない。）
　だって、同じ体に住んでるんだし、僕も優ちゃんだもの。
　ねぇ、優ちゃんって呼んでみて。

（えぇ、そんなのなんか変よ。・・・優ちゃん。）
　あ、なんか優ちゃんに優ちゃんって呼ばれるとゾクゾクする。
（私も優ちゃんがぞくぞくしたの感じだ。本当に繋がってるんだね、私達。）
　あれ？僕の感覚も繋がったの？これまで一方通行で、貰いっぱなしだったから不思議。

　ふぅ。ちょっと疲れちゃったから眠るね。なんかやっぱり少し僕、疲れやすいみたいだ。
　寝てる間に一樹の奴となんかしようとしても駄目だからね。
　一応、眠ったような感じで休めるけど、優ちゃんが眠らないと僕も眠れないんだから、全部わかってるからね。

（これから学校だもの、そんな何もしないわよ。おやすみ優ちゃん。あ、今、ちょっと嬉しいって思った？）
　うん。なんか始めてちゃんと優ちゃんと話できて嬉しい。
　それに、おやすみなんて言ってくれたの幼稚園の頃以来だもの。ありがとう。優ちゃん。
　あ、優ちゃん、照れてるでしょ。照れないでよ私も照れちゃうじゃない。
　あれ？これどっちが照れてるの？２倍照れるね。恥ずかしい。
　ま、いっか。おやすみ。また、あとでね。