第二話「幻滅」

　一樹君、絶対一番格好良いのに、なんで優ちゃんわかってくれないんだろう。
　あ、また馬鹿なことやってる。楽しそう。あ、目合っちゃったよ。恥ずかしいなぁ。

優子「ねぇ、朋美。一樹君ってさ、馬鹿かな？」
朋美「えっ！優ちゃん、なにを今更。あいつは馬鹿だけど、え、なに、気付いちゃったの。」
優子「あ、いやぁ、好きだけど、他の人は一樹君のことどうゆう風に見てるのかなぁって。」
朋美「いやぁ、あたしに聞かれちゃうとちょっと困っちゃうよ。ねね、もしかしてなんかされたの？キスとか？Ｈとか？優ちゃん、初Ｈしちゃった？処女卒業？うそー。何あったのよ。」
優子「ううん。なんもないよ。ただなんとなく冷静に見ると一樹君ってもしかしてナルシストの馬鹿なのかなぁ？ってちょっと疑問に思ったの。好きだよ。でも、ちょっと気になった。」
朋美「ふぅん。なんか大人の恋ね。まぁ、友人代表として小声で本音を言うとね。あのぉ、怒らないでよ。コホン、あいつは本当に駄目な男だと思う。」
優子「そ、そこまで言わなくたって良いじゃない。一樹君、優しいし笑顔がちょっと良いもの。」
朋美「おっとっと。怒らないでよ、もう。優ちゃんが聞いたんじゃない。ま、なら良いじゃん。好みは人それぞれだしね。」

　そっか、やっぱり駄目男なんだ。だから優ちゃんあんなに嫌がってるんだ。
　はぁ、私の大好きな彼氏は馬鹿な駄目男です。なんか、悲しい。私って趣味悪いのかぁ。

　なんとなく今日はいろいろ考えて疲れてしまいました。
　あぁ、優ちゃんみたくおやすみってどこでも好きなトコで眠れればなぁ。
　うぅ、早く学校終わらないかなぁ。地理の授業つまらないよぉ。
　あぁ、だるいなぁ。

　スヤスヤ

「オイ、柏木優子っ。一番前で寝るな。後ろの水原朋美も寝るなっ。」
　うぅ、しまった。またやってしまった。しかも、朋美もか。なんか嫌な予感。

「次回までに柏木が第二テキストの２４ページから３０ページと、水原が３１ページから３４ページを要約しておくこと。いいなっ。」

　えぇ、ひどいよぉ。私がついつい人生に悩んで疲れ果ててる時に限って宿題なんて・・・。
　あぁ、私は不幸で不幸でたまりません、神様。
　あれ？私の宿題の方が多い。ずるい。

「一番前で寝る馬鹿がいるかっ。」

　そんなの入学してから席替えすらしない担任のせいじゃない。ってあんたが担任じゃない。
　あぁ、世の中の大人ってなんでこう自分の責任を若者におしつけるのかしら。
　不条理だわ。嫌になっちゃうわ。

「柏木っ！ぼそぼそと目の前で喋るな。まだ授業中だ。」

　我慢よ。優子。私は耐える女なの。ほら、あと１０分で終礼じゃない。
　私、がんばれ。悪夢の授業ももうすぐ終わるわ。そしたら、家に帰って不貞寝してやるわ。
　ほら、時計。がんばって回って。くぅ〜る、くぅ〜る。がんば。

　ねぇ、優ちゃん。楽しい？時計の応援。
　僕、そういうのちょっとわからないんだよね。
（あ、優ちゃん。そうだ。つまらない時は優ちゃんとお話すれば良いのよ。やった。）
　やったじゃないよ。ほら、口半開きでボーっとしてたら、またあの禿教師の説教喰らうよ。

（うん。わかった、テキスト読んでる振りするよ。ねね、一樹君が駄目男なのはわかりました。でも、やっぱり好きです。）
　う、駄目なのに気付いても好きなの？手の施しようがないじゃない。
　嫌だなぁ。どうせ今日もあいつと放課後一緒に帰るんでしょ？良いけどね。
　でもキスは絶対駄目だよ。僕のファーストキスがあんなのとだと、ちょっと不幸すぎる。

（うん。私も今日はいろいろ考えて疲れちゃったから家帰って寝るよ。だから、安心して。）

一樹「優。一緒に帰ろうぜ。」
優子「ごめん、今日疲れたから帰るよ。また、明日ね。一樹君。」
一樹「ちょ、ちょっと待てって。良いじゃん。な、お前と一緒に帰りたいんだって。な。」
優子「あんもう、本当に疲れてるのよ。ね、バイバイ。」

朋美「あれぇ、優ちゃん、今日はデートしないで帰るの？珍しいね。」
一樹「あ、水原。そうなんだよ、なんか疲れてるって言ってさ。」
優子「私だって疲れるよ。人生って本当に大変。あぁ大変。また明日〜。」

一樹「な、ちょっと待てって。なんだよ、そっけないじゃんか。俺、今日友達の誘い断っちゃったんだよ。お前と一緒じゃないとつまらないじゃんか。付き合えってば。」
優子「疲れてるっていうのは本当なの。だから、離してってば。もう、帰るから。」
朋美「まぁまぁ、ねね、一樹君もたまには優ちゃんのこと休ませてあげなよ。ね。」
一樹「なんだよ。勝手だな。なに不機嫌なってんだよ。あ、あの日？」

（むかついた。なにこの馬鹿男。ちょっとデリカシーなさすぎ。あぁ、本当、昨日間違ってキスしなくて良かった。優ちゃんと朋美の言うとおりだった。こいつ超超超馬鹿男。）

優子「帰る。」

（なんか後ろで朋美が一樹と口論してるけど、無視無視。あいつとは別れよう。）
　ナイス。優ちゃん。やっと気付いてくれたね。ねね、あいつ本当に馬鹿だろ。
　よかったぁ〜。やっと悪夢から醒めた感じだよ。
　大丈夫、優ちゃんかわいいから、良い男いっぱい寄って来るって。
　あんなの相手にしなくてＯＫだよ。

（ねぇ、私、凄い不機嫌なのに、あなたのウキウキが混じって凄い疲れるよ。）
　あ、ごめん。僕も優ちゃんの怒ってるの感じてたのに、ごめん。
　あの、本当にごめんなさい。

（そ、そんなに申し訳なく思われると悪いことした気分になるじゃない。良いよ。許してあげる。なんかしょうがないことだし。）
　ありがと。優ちゃんの優しいところって、僕、本当に好きだよ。

（なんか、複雑ね。この怒ってるのにウキウキが染み込んで来て、優ちゃんに怒ったら申し訳ない気分が染み込んで来て、ねぇ、なんで私の中に住んでるの？）
　さぁ？生まれた時からいたんじゃないかな。
　幼稚園の頃とかは、今ほどじゃないけど少し話とかしたよ。
　だから、その前からいるってことだよね。
　あ、あれじゃん。双子の妹をお母さんのお腹の中で食べちゃったとか・・・。

（食べません。）

　あ、ねね、あの人綺麗ぃ〜。あぁ言うお姉さまならレズでも良いよ。
（レズは駄目です。って、ねぇ、優ちゃんって本当に女なの？）
　え？そりゃ女でしょ。
（だって自分のこと、僕って言うし、さっきから見てるの女の人ばっかりだよ。）
　でも優ちゃんだって綺麗な女の人いたら取り合えずみてるじゃん。あ、あの男、結構渋い。

（え、どれどれ・・・。抹茶だね。その趣味やめて。あんなのとは私付き合えないからね。優ちゃんって芸能人で誰が好き？浜崎あ○みもペネ○ペ・クルスもなしね。男よ。）
　男かぁ。うぅ〜ん。迷うなぁ〜。バン○ラスとかリーリ○チェイとかぁ。
　えぇ、どうしよう。子供の頃はランボーかシュワちゃんと結婚したかったよ。

（あのぉ、全部無理。実現可能性のことじゃなくて、私ね、ああいうの生理的に無理。）
　知ってる。どうせジャ○ーズとかが良いんでしょ。あのへなちょこ系が良いんでしょ。
（な、へなちょこってなによ。汗臭いよりぜんぜん綺麗じゃない。）
　なに言ってるのさ。あんな女の腐ったような男達のどこが良いのさ。
　それにリーリ○チェイの汗はさわやかだぃ。