第五話「友情」

（ねぇ、なに不貞腐れてるのよ。昨日はちょっと調子に乗ったの悪かったわよ。でも、そんなに怒らないでよ。だいたい、言いだしっぺは優ちゃんじゃない。）
　でもさ、でもさ、あんなのないよ。最後なんて寝ながらしてるしさ。
　僕がＨな気分になったのがいけなんだけど、あんなの非道いよ。馬鹿。

（寝ながらは覚えてないもの。ごめん。ね？優ちゃん。大好きだから機嫌直して。ね？）
　今度、優ちゃんがＨな気分になってるじゃん。電車の中でこんな気分は変態だよ。変態。
　うぅ、許してあげるから、前言撤回で・・・。ごめん。ちょっと怒った？よね・・・。
　あ・・・、また、急にＨな気分になった。ねぇ、なんで？駄目だよ。
（なんか昨夜の優ちゃんってエロかったなぁ〜って。優ちゃんってＭだよね。実は・・。）
　ち・・・違うよ。優ちゃんが勝手にＳになっただけだよ。僕はノーマルです。

千沙「ねぇ、朋美。おっはよ。ねね、ここだけの話ね。シー。静かに。ばれたらやばいわよ。」
朋美「え？なになに・・・。ふんふん。え？本当？行く行く。絶対行くよ。」
千沙「ねぇねぇ。優ちゃんって馬鹿をフッタって本当？」
朋美「うん。綺麗にすぱっと切り替わったみたい。まぁ、優ちゃんのためには良かったよ。」
千沙「じゃぁさ、優ちゃんも呼びたいね。ちょいジャニ系もいるんだよ。あと、超筋肉マッチョと、普通に格好良い人もいたよ。」

朋美「うそ。ちょいジャニが良いけど、それだと優ちゃんとかぶるなぁ。何対何？」
千沙「5：5」
朋美「なら、他にも良いの来るかもねぇ。」
千沙「うんうん。類は友っていうから絶対良いと思うよ。じゃ、優ちゃんは頼んだよ。ばれないようにね。優ちゃん連れて行ったのばれたら男子うるさそうだから。ね。」

　げげ、校門に馬鹿がいるよ。優ちゃんどうする？ あ、朋美みっけ。朋美のとこに避難しよ。
（あ、助かったぁ。千沙もいるし、良かった。）

優子「おっはー。朋美。千沙。おっはー。」
朋美「お、おはよう。いつもの朝は干からびてるのに、なに、その明るさは・・・。」
千沙「優ちゃん、おっはー。」
優子「おっはー。なんでもないよぉ。一緒に学校行こ〜。ほら、手を繋いで。ねっ。」
千沙「う・・・。なに？手を繋ぐって・・・。もしかして変な趣味に目覚めて・・・。」
朋美「あ、そういうことか・・・。ほら、千沙。校門見て。」
優子「お姉さま。あたしと楽しく登校して下さい。お願いします。」
千沙「あはは。結構しつこいねぇ、アイツも。うん、お姉さまにおまかせなさい。優ちゃん。」

一樹「おはよう。」
朋美「おはよう。」
一樹「優、おはよう。」
優子「おはよう・・・。」
千沙「おはよう。じゃ、まったねぇ。」
一樹「ちょ、ちょっと待てって。なぁ、優。こっちでちょっと話そうぜ。」
朋美「ごめん、この子、私達が先約なの。お互い干からびて同窓会でも開いた頃にして。」

　うわ、朋美って強い・・・。
（う、うん、凄みがあるね。友達で良かった。）

優子「朋美、ありがと。千沙もありがとね。」
千沙「あはは、私は何もしてないよぉ。朋美がちょっと怖くて面白かったし。」
朋美「こ、怖いってそんな・・・。だってさ、優ちゃんのこと追い回すなんて非道いじゃん。アイツ。」
千沙「そだねぇ。男子からも言ってもらうようにしとくよ。」
朋美「う・・、裏工作か。千沙の方が怖いじゃんか・・・。」
優子「二人ともありがとね。凄い助かるよ。嬉しい。」

千沙「これに懲りたら変な男には引っかからないこと。いい？優ちゃん。」
優子「はぁ〜い。肝に命じておきます。」

（はぁ〜。数学の授業かぁ〜。頭痛くなるんだよなぁ。ねぇ、優ちゃん。数学好き？）
　うん。好き。
（え？好きなの？数学だよ。数字が訳もなく並んでるあの数学だよ？）
　うん。優ちゃんが嫌いなのは知ってるけど、僕は大好きだよ。
　ねね、将来はさ、僕ががんばるから数字関係の仕事につこうよ。

（えぇ〜。ありえないよそんなの。主婦が一番です。）
　な、なに言ってるんだよ。お母さんだって外で働いて楽しそうじゃんか。
　僕ね、お母さんといっしょで税理士って言うのになりたいな。
（無理。私の頭じゃ無理です。）
　大丈夫だよ。二人で力をあわせて未来を切り開こうよ。
　あ、数学のマッチョ先生来たよ。ほら、授業に集中しよ。
　数学の大学教授とかも格好良いな。でも、それはさすがに無理だよね。

（主婦が一番です。かわいい娘とクッキーとか焼いてね。で、お茶とかもいろんな種類集めて、あ、喫茶店開きたいなぁ。
　お店にはね、あちこちからマダムが集まって来て、お宅の娘さんのクッキーもとても美味しいですわね。
　とかちょっと評判になっちゃうの。でねでね・・・。）

　優ちゃん、料理できないじゃん。
　お茶って何よ。アールグレイとかアッサムとか種類いっぱいあるんだよ。
　僕たちの舌じゃ見分けもつかないよ。それこそ無理。
（う、小さな夢がもう終わっちゃった。私の将来って寂しい。）

　あ、今日、新しい数式の日だ。わぁ、何これ。変な記号。なになに・・・。
　この先生ってさ、数学なのにマッチョで、マッチョなのに説明丁寧で変だよね。
（私、ぼーっとしてるから、勝手に授業受けててね。時計さぁ〜ん。お仕事さぼっちゃ駄目よぉ。まだ10分しか回ってないじゃない。リストラされちゃうぞ。ほら、回れぇ。くぅ〜る。くぅ〜る。）
　優ちゃん、ページ捲って。時計じゃなくてテキストを見てて。あ、その左のページの上の方。
（面倒臭いなぁ。もう。テストの時は頼むわよ。ここまで付き合せるんだから。）

　あ、優ちゃん、寝るな。おーーぃ。
（むにゃむにゃ。駄目ぇ。限界ぃ。おやすみぃ。）
　ふあぁ、僕も寝ちゃうぅ〜。あぁ〜、おやすみぃ〜。むにゃむにゃ。

朋美「優ちゃん、起きてぇ〜。お弁当のお時間ですよぉ。」
優子「え？まだ2限じゃないの？」
朋美「何言ってんの。数学・国語・化学をぶっ続けで寝て、今はお昼。外で食べよ。ね？」
優子「そっか。ラッキーだね。あ、お腹空いてるかも。」

優子「えぇ？合コン？って、男の人とお酒飲むあれだよね？」
千沙「うん。そうだよ。格好良い人いっぱいいるよ。」
朋美「うん、ジャニ系いるって。」
優子「ほんとに？やったー。行きたいかも。」

　えぇ、合コン行くの？優ちゃん、僕、あんまりそういうの嫌だなぁ。

千沙「うん。背の高いマッチョとジャニ系と、あと格好良い人がいる。」

　背の高いマッチョ！ほ、本当かな・・・。ねぇ、優ちゃん。格好良いかもよ。
（マッチョは嫌いです。残念。）

朋美「決まりね。土曜の夕方4時からよ。」
千沙「あと隣のクラスの舞ちゃんと真琴で5人だよ。優ちゃんって真琴は小学校一緒だよね。」
優子「うん。真琴来るんだ。嬉しいな。最近部活ばっかりで真琴、お話なかなかできなくって。」
千沙「説得は大変だったよ。でも陸上部が土曜休みってのは調査済みだったからさ。優ちゃんの名前だしたら、仕方がないって腰を上げてくれた。」

　ねぇ、優ちゃん。真琴にお願いして陸上部入ろうよ。
（えぇ〜。私疲れるの嫌い。）
　だってあの人の足、凄い綺麗じゃん。カモシカっていうの？素敵。
（真琴・・・。やっぱり。ねぇ、優ちゃん。友達に欲情するのやめて。）
　ご、ごめん。でも、真琴に欲情してるんじゃなくって、足にちょっとだけ・・・。
（変態じゃない。私の足は？ほら、じ〜っと見てみ？どう？・・・ちょっと位欲情してよ。もうっ。）
　え？だって自分の足だし・・・。欲情しようがないじゃん。ねぇ、僕は変態じゃないんだからさ。
（う、でもなんか敗北感が・・・。）

　あ、あの人の足も綺麗ぃ。ってこの間もいた人だね。登下校のタイミング一緒の社会人って珍しいね。
　うわぁ。綺麗。いいなぁ。優ちゃん。僕たちもああいうの目指そうよ。ね？
（うん。それは同意だけど、陸上部は無理かなぁ。）
　そだねぇ。優ちゃん、根性ないし・・・。
（うっ、酷い。言いたいことをずけずけと・・・。）
　あ、ごめん。今のは内緒で思ったつもりだったんだけど、最近、内緒の声も漏れちゃって・・・。ごめんなさい。

　あ・・、ねぇ、優ちゃん。あのお姉さんと目合っちゃってるよ。ほら。
（う、しまった、ずっと見つめてた・・。）
　恥ずかしいね。なんか、ちょっと口元で笑ってるよ。あのお姉さんレズかな？
　ねね、あの人なら僕、ＯＫだよ。
（だから、レズは駄目。でも、友達になりたいね・・・。お化粧とか教えて欲しい。）
　うん。思い切って話しかけて・・・。
（無理。そんな勇気ないよ。あ・・・、降りちゃった。あぁ〜ぁ。）