第七話「共同戦線」

　カラオケみんな上手いね。優ちゃん大ピンチだねぇ。僕、寝よっかなぁ。
（うぅ、優ちゃん、私も歌わないと駄目かなぁ。困ったなぁ。）

大角「ね、なんか歌わないの？あの、僕は犬村大角です。」
優子「大角？凄い名前ですね。私、柏木優子です。うわぁ、手がでかい。身長いくつですか？」
大角「180ｃｍ。でも、そんなに特別じゃないよ。水泳やってると全国だと僕が小さい位だもの。」
優子「そうなんだぁ。肩とか凄いね。ねね、腕にぶらぁ〜んとかできないかな・・・。」
大角「いや。どうだろ。え？やりたいの？」
優子「うん。うん。めっちゃやりたい。」

朋美「ちょっとあんた何してんのよ。カラオケボックスで男の腕にぶら下がる馬鹿がどこにいるのよ。」
優子「朋美もやりなよ。凄いよ、この腕。ぶら〜ん。ぶら〜ん。きゃはは。」
千沙「まぁまぁ、朋美。優ちゃんのすることだから・・・。」

舞　「これが噂の優子さんか・・・。すごい積極的だね。ね、真琴。」
真琴「いや、舞。あれはそういう意図はないよ。ただ、腕にぶら下がりたくなっただけだと思うよ。」

　優ちゃん。僕、大角はありだと思うよ。ちと顔が優しすぎるけど、体付きとかナイスだし。
（優ちゃん。わたしもありかなぁ〜と。体でかくてちょっとだけど、笑顔がやさしいし。）
　え？じゃ初めて趣味あったね。よし、レッツゴーだ。あとは任せた。
（え？任せないでよ。どうすれば良いのよ。）

大角「ねぇ？歌わないの？」
優子「え？歌？あ、そか。私下手だから。あまり・・・。」

（うぅ、意識したら恥ずかしくなってきた。どうしよ。）
　大丈夫だってば。
（どう、大丈夫なのよ。あ・・・。めっちゃ目あってるよ。どうしよ、そらしたほうが良いのかな。でも、そしたら気がないって思ったりするかな・・・。あ、どうしよ。目離せないよ。）
　見つめすぎだよ。ほらぁ。なんか話しなって。水泳。そう、水泳やってるって言ってた。聞け。急げ。

優子「あ、あの。泳ぐの好きなんですか？」

　　　　な、そっちかよ。優ちゃん。部活大変ですか？とかそっちだろ普通。

優子「あ、ごめんなさい。部活とか大変ですか？」
大角「え？いや、部活って言うか小さい頃からスクールに通ってるから、あまりキツイ実感はないよ。たまに気絶しそうな位苦しい時とかあるけど、苦しいのにも慣れちゃったし。なんか部活とかしてるの？」
優子「ううん。なにもしてないです。でも、苦しくても続けてるってことは好きなんですね。」
大角「いやぁ。実際、好きじゃないかも。どっちかと言うと泳ぐの嫌い。」
優子「え？じゃぁ、なんで？」
大角「これまで勝ってた奴らに負けるのって癪でしょ？だから、負けるの嫌だから仕方なく泳いでる。」
優子「そっかぁ、男のプライドって奴ですね。」
大角「あはは。そっかこれってプライドなんだね。初めて気付いたかも。」

雄太「大角・・。おい、そろそろ、俺、良いかな。」
大角「え。まだ３０分もあるんだから、もう少し待ったほうが良いよ。」
優子「なにが？ねぇ、大角さん。なにを待つの？」
雄太「げっ。小さくて見えなかった・・・。」
優子「なっ、私が小さいんじゃなくって大角さんが大きんだもの。ね、大角さん。」
大角「いや、あ、うん。僕が大きすぎた。ごめん。」
雄太「まぁ、いいや、じゃさ、終了１０分前でやるから、サポート頼むぜ。本当に頼むぜ。」
大角「わかってるよ。僕たちの友情を信じろ。あとはお前の心の力で勝負だ。頑張れ。」

優子「ねぇ、大角さん。なにを頑張るの？」
大角「いや、あの、ま、すぐわかるからさ。あとのお楽しみ。ね？」
優子「う〜ん。ねぇ、さっきの人って千沙のこと好きなの？」
大角「え？なんでそれを・・・。あ、秘密だぞ。な。」
優子「ばればれだよ。朋美も気付いてるし、たぶんみんな気付いてるよ。」
大角「マジかよ。で、その千沙さんはどうなの？」
優子「さぁ。嫌じゃないっぽいよ。さっき、赤くなってたし。」
大角「え？本当に。それいつのこと。」
優子「気付いてないんだ。鈍感だなぁ。最初にあの人が千沙に綺麗だって言ってたでしょ。あの時。」
大角「あ、あれそうだったんだ。嫌がってるのかと思った。」

　優ちゃん。面白そうだね。どうなるかな。千沙と雄太さん、ラブラブになるのかな。
　でもなぁ。ここで告白するつもりかなぁ。千沙のことだからはずかしがって断っちゃうんじゃ・・。
（え？ここで？そうなの？）
　だって、終了１０分前に告白するっぽいじゃないか。
（あ、そういうことだったんだ・・・。え？駄目になっちゃうじゃない。）
　うん、大角さんに言っといた方が良いよ。二人っきりじゃないと千沙は絶対断るって。

優子「あの、大角さん。」
大角「ん？なに？」
優子「秘密のお話が・・・。ちょっと耳こっちに寄せて。ね。」
大角「あ、うん。」
優子「こしょこしょ。あのね。千沙って結構恥ずかしがりやで見栄っ張りだから、人前で告白なんてされたら怒って断っちゃうと思うよ。」
大角「え？そうなの？ドラマとかだとみんなの前でバーンと男らしくした方が格好良いじゃん。」
優子「え？あれってありえないじゃない。二人で手を繋いでデートとかしてて、静かな公園で告白とかがベストだよ。たぶん。帰りに誘って、二人きりじゃないと。」
大角「そうなんだ。ありがと優子さん。」

　優ちゃん。ナイスだよ。大角さんと秘密会議＆千沙と雄太さんのサポート。完璧だよ。
（優ちゃん。そ、そうかなぁ。へへへ。）

舞　「ねね真琴。優子さんと大角さんだっけ？ひそひそ話する位仲良くなってるよ。」
真琴「う・・・うん。高校入って優ちゃんも大人になったってことかなぁ。前は私の後ろに隠れてたのに。」

朋美「今日はありがと。楽しかったね。」
雄太「いや、こちらこそ。すげぇ、楽しかった。また、みんなで集まりたいな。ね、千沙。」
千沙「う、うん。そうだね。」

雄太「ねぇ、千沙。この後、二人でちょっと歩かない？あの、涼しいし、お茶とか飲んでも良いし。」
千沙「え。そんな。みんなと帰るよ。あ、あの、嬉しいけど。」
雄太「あ、待って。じゃぁ、明日は？ねぇ、明日の昼ご飯一緒に食べようよ。」
千沙「うん。それならいいよ。メールしてね。じゃ、また明日。ね。」

大角「あ、あの、柏木さん。来週の土曜日、遊びに行かない？」
優子「え？あ、うん。」
大角「平日と日曜は泳ぎに行ってて、土曜しか休みじゃないんだ。」
優子「そっかぁ。急がしいんだね。こ、これ、私のメルアドです。」
大角「あ、ありがと。お、俺の・・。ペンないや。あの、あとでメールするから。」

　やったー。
（ヤッタね。う、うん。なんか、あたし来週デートだね。）
　うん。優ちゃん。完璧だよ。マッチョスイマーだ。最高。
（顔、結構、綺麗だったよね。うん。声が優しくって。あの、変な人じゃないよね。）
　うん、大丈夫。ちゃんと観察しまくったから。ちょっとシャイだけどナイスだよ。
　でも、一応、来週のデートではキスなしね。もっとちゃんと観察したい。ね。
（キス・・・。しないよ。そんなあったばっかりだもの。）